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日々是々

#ゴールデンカムイの魅力

Twitterで、「#ゴールデンカムイの魅力」、なんてとんでもないタグを見つけてしまった……延々と語り続けられるぞ……

と、先日、延々とつぶやき続けたのを、100話記念にまとめておく。

尾形

……だけじゃなくて。
いろんなタイプのイケメンが入り乱れて、イチャついたり、血塗れで戦ってたり、鞘当てしたりしてるとこかしら……(ヲトメの目線)

も少し真面目に書くと。
最初の出逢いは、それまで全く知らなかったんすけど、たまたま本屋で手に取った見本誌を一読して即レジに向かったのよ。3巻が出たころ。
とにかくフックが多い、それも私の興味の範疇にジャストミート。民族学動物学活劇猟奇犯罪伝奇浪漫映画芸術論猫男BLクマ――!……むしろ嫌いな要素がないんですよ。
さらに、今までそんなに興味のなかった方面にも目が向いた。日露戦争含めた近代日本史とか。新撰組とか。ミリタリーとか。

技巧

まずは基本的なとこから。
キャラの造形、ドラマを文字に頼らないで絵で綴ること、絵の技量(デッサンの正確さとデフォルメの巧みさ)といった漫画の技術的な面はさすがで、安心して読んでられる。

本誌と単行本と両方読んで驚くのは、すごーく細かいところが、単行本で修正されてたりするのだよね。ちょっとした表情のつけ方とか、そこにこだわるんだーと。

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(左:ヤングジャンプNo.1786、右:ゴールデンカムイ9巻)
こんな感じで。写真で撮ったから歪んでるんじゃないよ、微妙に線が変わってる。

しかし、9巻の修正で一番笑ったのはココだけどな……
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(左:ヤングジャンプNo.1791、右:ゴールデンカムイ9巻)
な・ぜ・に・そこを修正した!?

キャラ

類型的な、ありがちな、どこかで見たような、舞台やストーリーから浮いたような、パペットのようなキャラがいない。
皆、それぞれ、自分なりの価値観を持って行動してる。キャラがふとした拍子に思ってもみなかった言動をして、新たな魅力を作る、しかもそれが不自然ではない、キャラに深みを与える。
例えば、9巻の杉元と尾形のやりとりなんかサイコーだ。嫉妬に燃える杉元なんて思ってもみなかったぞ。可愛すぎるだろ。
尾形といえば、6巻の最後で新平を助けたのも意外だったし、あれで彼の株が私の中で上がったんだ。日泥も新平も、二人とも殺して刺青人皮を奪ってもよかったのに。さらにここでの台詞から、彼が父権的なものを嫌悪してることを伺わせる。そして土方一味への合流で見せる強かなプライド……(穿った見方をするなら、おそらく、元々、尾形は咬ませ犬的な仇役で、詳細な設定もなくて、アドホック的に形作られていったんじゃないかって気もするけど、それでもキャラが一個の人間として成り立つのは、キャラにそれぞれ哲学があるからだろうな)

リアルワールド

あくまで現実世界が舞台なので、魔法や超科学に逃げられない、て制限の大きい中でダイナミックなドラマが展開する。不死身の杉元でも頭に銃弾喰らったら死ぬんだぜ。
そうでなくても20世紀初頭なんだ。血液型が発見されたばかりだから輸血もままならないし*1抗生物質もないしCTもMRIもない……麻酔だってモヒやコカインの時代。それ考えると、杉元や鶴見、よくあの負傷で生きのびたよな……

圧倒的な強者がいないっていうのもドラマを巧く盛り上げてる要素かも知れない。それぞれ得手不得手があって気合と運で生き延びたり死んだりする。だからどのキャラがいつ死ぬか予想つかなくて緊張感が続く。主人公属性でアシリパさんと杉元は最後まで生き残りそうだけどなあ……あと白石もヒロインだし?

パロディ

特に元ネタ有りきのギャグが秀逸だ。シリアスだったり凄惨な場面で真顔で大ネタぶっこんでくる。家永ホテルのドリフとか江渡貝くんとか「最後の晩餐」とか。99話の空中戦はどうみても宮崎駿だし。トロッコチェイスはやっぱインディジョーンズだろなーとかさ。
細かいギャグなら至る所に。下ネタも少なくないけどエロというよりかはシモだ。それも小学生男子がいいそうなレベルの……
作者のコダワリなのか、あんまり、マンガが元ネタのパロディってないんだよね。映画が主だったりして、そのへん最近のマンガにちっとも詳しくない私にもわかりやすくて好きだ。

LOVE&THANATO

ギャグなのか迷うけどぎりぎりでシリアスなのが(男同士の)ラブアフェア*2……杉元×辺見、鶴見×江渡貝、牛山×家永、鶴見×二階堂、杉元×白石、杉元→尾形、鶴見←鯉登、土方×犬童……熱いよ。ラブという言葉がゲシュタルト崩壊してくるよ。(若山×仲沢はフツーのカップルで面白くない)
私は、創作におけるラブとは、「強い感情の交流する、他人の介在できない1対1の関係」て定義しとく。性愛の要素は必須ではないのだ。
しかしエロスが皆無とも限らなくて鶴見が二階堂の耳削ぐシーンなんてゾクゾクする。特に二階堂の「皆で楽しんでくださいよ」なんて台詞はよく書けるものだな!と。
そもそも本作、全般、キャラ同士がそんなに親しくないのだよね。主人公のわりに猜疑心の強い杉元はじめ。もしかして、みんな、コマに描かれてない部分では一切会話してないんじゃって思えるくらい。
だから、特殊な1対1の関係が際立つんだ……エロスとタナトスが手に手を取って踊りあってるような……!

エロ中尉

鶴見は人誑しだ。エロくて怖い。……イイ。変態だけど。
鶴見も意外性に富んだ人物で。マキャベリストで勇猛果敢な指揮官で、その一方で猫スキーとか下戸の甘党とか教養人とか。それになにげに面食いだ。師団中に彼のFCがあって、あのブロマイド配布してるんじゃないのか? そも、平時だから、鶴見の小隊が編成されてるわけじゃなくて、彼の部下達はあくまで有志で付き従ってるだけなのか。つまりは彼の部下達=鶴見FCだ。そのへん和田大尉との会話や尾形の説明からも伺える。

肉。肉体美。メールヌード

青年誌の連載なのに女性のヌードがほとんどない、あってもちっとも色気のないシーンだけど、代わりに、男ばかりが脱ぎまくるてのも、魅力の一つなのか……? 暗号の刺青も男性キャラ脱がせるためのギミックかしらって気がしてきた。
脱いだら凄いんです、な杉元を筆頭に。1巻と5巻で肉付きが全然違うんですが。アシリパさんと行動して動物性蛋白摂りまくったせいかしら。
杉元やキロランケ、牛山みたいな、いかにも、鍛え上げてるぜ、なマッチョは、なんだか、立派すぎて、美術解剖図かアスリートみたいだ。むしろエディのしまりのない腹とか、白石のお前いくつだ、みたいなメールヌードはリアルで生々しいわっ。鶴見の細マッチョな胸とかね。家永もジジイのヌード披露してたな!

チシャ猫のように笑う。*3

しかし私が一番に好きなキャラは色気も可愛げもない、ヌードどころか全キャラ中で露出も最小な、尾形だ。 いつもポーカーフェイスなのにたまに見せる笑顔がイイ。しかもどれもロクな場面じゃない。
マイベストは82話でボコられてるときの笑顔だ。そこで笑うのか! 杉元に腕折られたときも苦鳴上げるでもなく薄笑いしてるし、あと、誰か〆るときの、にや~って笑い方がイイ。

めめたふぁ

話はあくまで現実ベースなのに、どうにも全体にめめたぁと漂う神話的メタファ。それだけ類型的な物語てことかも知れないが。
「黄金探し」てことでまず思い浮かんだのは北欧神話ラインの黄金だった。囚われの男(オーデン=のっぺらぼう)(復讐の神でもあるしタロットの「吊られた男」=死刑囚の元ネタでもある)、その娘で狼を駆る戦乙女(ワルキューレ=アシリパさん)、彼女の夫になる不死身の英雄(ジークフリート=杉元)、彼の仲間だけど裏切り者の鍛冶屋(レギン=キロランケ)、……なんかいくつも符号する箇所が。惜しいことにジークフリートの父がシグムントなんだ。シグムントとスギモトって似てない?
更に、82話の「最後の晩餐」のパロディで示されたイエスと使途達との類似性。聖書に「神の顔見た者はいない」(旧約でも新約でも繰り返される)とあるので、顔のないのっぺらぼうが、神(黄金のカムイ)に擬えられてるようにも思えるし、半分だけ顔のない鶴見は半神、うさん臭いデミゴッド、更にメフィストフェレスだ。絶望した人に囁きかける。君のいる世界には生きる価値がある、と。
斯様に、いくらでも、深読みしたくなってしまうのだよ!

CRIMINALS、CONDEMNED

本作の闇鍋の中のスパイスになってる、犯罪者達……
いやね、従前、犯罪学にも興味あったんすよ。
だから辺見和雄の登場にまずびっくり。ヘンリールーカスだよな、これ? 魂の抜けたような表情がまんまヘンリーの写真にソックリだ。
それから家永には爆笑しましたわ。HHホームズかよ! *4
そして江渡貝くんには悶絶……
皆、元ネタの人物からかなりアレンジされてちゃんとこの作品世界のキャラになってるんすけどね。しかも濃いいいい。元ネタの彼らも充分にエキセントリックだけど、奇妙に魅力的な奇人に変わったことよ。アレンジされてるんだけど細かいとこで元ネタ残してるのもニクイやね。家永が元医者とか、世界ホテルが火事で焼失とか、江渡貝くんはシリアルキラーではないとか。
白石はじめ、熊岸とか鈴川とか千鶴子とかも元ネタがちゃんとある、けど、知らなくても充分に楽しい。知ってるともっと楽しくて、しかも他人に教えたくなる、つーね。
インカラマッもなあ……「狐女」てのはもしかして19世紀欧米で有名な「霊媒師」フォックス姉妹だったりする〜? て勘繰りたくなる。
「33人殺しの津山」と鶴見隊との死闘もすごく気になるけど、そのうち描いてくださるのかなー

尾形百之助。

猫男てだけでもお大好きだけどね! 群れるの嫌いそうなとことか。いつもパーティのシンガリを歩いてる、単独行動多い、かと思うとオミヤゲ取ってきたりする。プライドたけー。前髪掻き上げる仕草は毛繕いなんだと気付いた。ほら、猫が緊張するとわけもなく背中舐めたりするような。
前はもっと冷酷でヤンチャな無頼漢だったのに、杉元達と仲間になってからはだいぶ丸く、というか、優等生ぽくなったよ……

*1:当時は血液の保存技術なんかない。

*2:作者氏も、記者に「一言で言うと何マンガですか?」て訊かれて「恋愛マンガですかね」って答えてたし?

*3:ルイスキャロルの『不思議の国のアリス』で有名なチシャ猫の由来については諸説あるけど、私が好きな説は、その昔、チシャ州に敏腕のレンジャーでカッツという男がいて、そいつが密猟者を始末するときに決まってニヤニヤ笑いを浮かべて、それが彼のトレードマークになり、やがて“チシャキャットのように笑う”という慣用句ができた……と、だいぶ前に本で読んだんだけど出典思い出せない。なんとなく尾形思わせる逸話じゃん?

*4:悪魔と博覧会 HHホームズの事件、と、その背景にあるシカゴ博覧会について。肝心のHHホームズについては少な目だけど、シカゴ博覧会自体が面白すぎる。HHホームズ、考えてみると、ジャックザリパーよりも古い犯罪者だけに、あんまり分析されてないのだなあ。