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日々是々

金神114話「エチンケ」 感想 #ゴールデンカムイ

今週は小ネタが面白い。

てらいもなくヒモになりきる白石は素直だ。
谷垣との違い。
(谷垣、結局は奢ってもらおうとしてたし、なのにインカラマッ助けるのに躊躇してたりするしなあ)

やっぱあの三〇年式、素人には修理できないんだなー
尾形と杉元の応酬がたのすぃ。
なんだかんだ言ってこの二人、仲良いよね。少なくとも尾形のほうから声掛ける相手ってのは数少ないわけで、ただ彼の場合は親愛の情の表現が嗜虐的になるんだ。

99話の銃のネタ、やっと明かされてる。
(→三八式について #ゴールデンカムイ - day * day

94話で有坂が本部に納入したついでに、一部、鶴見隊にも横流し、というか、多分に淀川中佐にハナシつけて持ってきたんだろうな。つまり鶴見隊も三八式になりつつあるようだ。
尾形が鶴見の元から逃げ出したときには、鶴見隊にはまだ三八式なかった、なのに尾形はこれが三八式だと知ってる、ってことは、鶴見隊にもまだ造反組の内通者がいるのか、本部と密かに連絡とってるのか(が、本部には鯉登がいたしなあ。もしかすると淀川と通じてたりする?)

上等兵殿の、銃講座。
尾形「お前の三十年式は」って、もう完全に、三八式は尾形のものになってるのね。(うん、まあ、猫に、返せっていっても無駄だしな……)
うわこの渾身のウエメセ(笑) すげえムカつくwww*1
三八式、明治38年(1905年)開発で45年のWW2終戦まで日本陸軍の制式だったつーのが、なんだか。*2

尾形「豚に真珠ってことだ」
ここで、日本の諺の「猫に小判」でなくて、新約聖書由来の「豚に真珠」って言ってるのが目を引いた。
猫って言っちゃうと、やっぱ“山猫”尾形に帰って来ちゃうし。
そもそも、「豚に真珠」って新約聖書のうちの『マタイの福音書』の一節じゃん。従前、尾形はマタイになぞらえられてるのだ(→81話)。*3
この『ゴールデンカムイ』って物語、21世紀になってどこかの老人ホームで100歳超えた明日子婆ちゃんが語ってるのかと思ったけど、もしかすると、尾形老人の遺品*4から出てきた手記なのかも知れない(尾形、常にクールでどのキャラとも距離置いてるし、たまにメタな目線になったりするので、なんだか記録者っぽい)。
尾形がどこでこの聖書の言葉を知ったのかってちょーっと気になってしまった(当時、この諺がどれくらい人口に膾炙していたかわかんないけど)。

二瓶。 とうとう扉まで飾っちゃったよ。
なんか、二瓶、死んだ気がしない……『スピナマラダ!』では健在なせいだろか。
銃、犬、皮、魂、って、みんなそれぞれ残ってるので、本人の中身だけが不在ってだけにすぎないから?
あの銃床の刻み目にはそんな重い意味が。
尾形は銃の個体にはちっともこだわってなくて、あくまでツールでしかないのだよな。 このへん冷血なんだよなあ。

インカラマッ、結局、誰を追っかけてるんだろ?
アシパさん「結婚しろっ」とか、さらっとそんなことを。

海行くとみんなこう飛び跳ねたがるのね……リュウまでいっしょに。
しかし尾形はいつも通りだ。あれ、ケープの下になにか背負ってるん?*5
波打ち際で一人佇んでる尾形*6……ウミガメ漁にも参加してないし。かと思うと飯のときにはちゃんといる。
飯時になると帰ってくる、って、どこの猫だよ。

クンネ・エチンケが和名アオウミガメ、フレ・エチンケがアカウミガメなのかな。

ウミガメを食べる話、去年のマンガ大賞の授賞式でチラッと語ってたけど、今回ここで出てきた!*7
先生、ウミガメのスープ召されたのか、羨ましい。

一瞬、「偽ウミガメのスープ」なんて言葉が脳裏を通り過ぎていったが、全然関係ないよなあ、こっちはホントのウミガメのスープだし?
――て思ってたら、刊末のコメントでソイレント・グリーンなんて挙げちゃう野田センセー……orz
なんでそれが出て来るの!? やっぱり、ウミガメのスープ→偽ウミガメのスープって連想なのっ?*8
(なんでこういう、いちいち、ワタシのツボを突くようなネタが出て来るかな……)

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ヤングジャンプvol.1820)*9

アシパさんの。
ウミガメを殺して食うことが、穢れの祓いになるっていう理屈がちょっと面白いと思った。
こういうのがアニミズムの哲学なんだろうなあと感じる。
例えば宮沢賢治のような近代的理性主義者かつベジタリアンにとっては、食うためにでも殺すことは「悪いこと」なんだよね。『なめとこ山の熊』でも主人公は生活のためとはいえ熊を殺すことを悔いてる。『注文の多い料理店』では成金の道楽者の狩人達は徹底して卑下されてる。
近代では、個々の命は独立して、それぞれが「自分の」ために「自分の」生を生きてる、とするから。
アニミズムだと、宇宙は一つながりになってて、ただ形態が変わるだけ。 猟の獲物は、神として屠られ、その肉は人間達の血肉となり、神はこの世から神の世に還ってく。そしてまた他の形をしてこの世に受肉する。ただし、正しいやり方で屠らないとこの世に帰ってこない(つまり獲物がいなくなる。資源管理って考えるとすごく現代的だ)。
アニミズム近代主義と、どっちが良し悪しっていうんじゃなくて、宇宙観の違い。
アシパさんはその両方の価値観を持ち合わせてる(前回113話で、彼女が「自分の未来の為に」って言ってるのは、近代的な個人主義に感じる)。
これが更に、分子や原子のレベルでは、また、宇宙は一つながりで、物質は形態や相が変わっていくに過ぎない。
俗に、私の食べたもので私の身体は出来ている、という。食物の分子は消化器系を経由して血となり肉となる。*10
分子が循環し変遷していく、新陳代謝こそが生命活動といえる。

万物の循環が生命の本質だとしたら、無為に殺す姉畑の所業はやっぱり悪でありケガレなのだよな。
姉畑はあくまで近代的合理主義に軸足を置いてるのに、アニミズムにも通じる原初的な性衝動に駆られる自分を恥じてる。
アシパさん達が姉畑を嫌悪するのは、人獣混交のウコチャヌプコロでも殺すことでもなくて、姉畑本人がそれを罪だと自覚してること、なんだなー。

でもやっぱあのカムイオハウはキモいよね。

キラウシたちの物語もまだ続くのか。
え、飛蝗かよ。
ヤバいぞ。

*1:そういうとこがツボなんである、ヤマネコスキーは。

*2:当時から世界のトップクラスの水準だったって説と、日本軍の構造的な問題で技術開発よりも精神論で誤魔化そうとしたって説とある。

*3:金神 9巻の感想 上 ゴールデンカムイ - day * day
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(『ゴールデンカムイ』9巻)

*4:きっと孤独死して2カ月後にミイラ化して発見される。東京五輪の頃か、札幌五輪の頃かな。

*5:よくよく見ると86話の偽コタン入る直前で背嚢背負ってるのだね。杉元と同じ軍の制式装備のはず。しかし他の絵では背負ってるように見えないのだよな……

*6:考えたら、尾形の実家って茨城の海の近くなんだっけ。アンコウが地元って言ってるし。浜辺の景色が懐かしいのかも。

*7:マンガ大賞2016 授賞式 - YouTube

*8:「偽ウミガメ mock turtle」、元ネタは『不思議の国のアリス』だが、それを踏まえてアガサクリスティが短編を書いてるのだ。「ある男がレストランでウミガメのスープを食べた後に自殺した、それは何故か?」というようなミステリー。オチはまんま『ソイレント・グリーン』と同じで、まあ、文学屋が大好きなネタではある。エリンの『特別料理』とか、宮沢賢治注文の多い料理店』とかね。アリスの“偽ウミガメ”は子牛だけど、クリスティやソイレント・グリーンやエリンや宮沢賢治は、人間の肉だ。家永が好きそうだなあ。

*9:ちなみに、質問内容は
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*10:人の肉を食うことは有史以降、多くの人がタブーと考えるけど、しかし、輸血や臓器移植という形で他人の肉体を自らのものにすることにはだいぶ、抵抗が減る。一方で宗教的理由から輸血を拒否する人達もいるので、このへんは科学技術と倫理のボーダーであるようだ。