金神161「カムイ レンカイネ」 ゴールデンカムイ
情熱と冷静と。
扉が尾形とアシリパさんて珍しい。
とうとう語学監修3名に。
18頁の中で、日本語・アイヌ語・ウイルタ語・ロシア語が飛び交うなんて、スゴいな。
文化の多様性ってやつだ。*1
銃撃戦なんて、尾形は得意中の得意なんだろう。
尾形が狩人から戦士に。
途端に饒舌になるオガタ。
ロシア兵4人。狙撃手の兵士、白石に似てるな……目とヒゲのせいか。
ロシア兵「オロッコが日本陸軍の最新式の小銃を持っているはずがない」
尾形「木の陰からモシン・ナガンの銃身が少し見えた」
ロシア兵、あの距離から三八式の識別できたのかっ。三十年式と三八式、機関部のダストカバーとボルトレバーしか違いないんじゃ。
尾形もこの距離でモシン・ナガンと識別してるし。
お互い、狙撃手って目が良すぎ。
尾形「シライシ 走って三八式を拾ってこい」 容赦ない無茶振りwww
この尾形の顔スタンプ、10巻のとは違うやつだ。
巻き添え食らう馴鹿達……
あ、ここでやっとアシリパさん、今回初めて口を利いた。狩猟ではなく戦闘の場面だと、アシリパさんは存在感薄くなっちゃう。
尾形とアシリパさんて、理性的なとこが共通なんだ。
二人で理性の両面を象徴してるようにも思える。尾形のエゴイズムとアシリパさんのモラルと。金神って全体、男性が衝動や情熱、女性が理性を表現してるけど、尾形は男性キャラの中では合理的理性的で、そのへん、女性に人気の所以なんだと思う。ただし「自分がなりたいキャラ」として。
キロランケの回想……
キロランケのお父さんも、テロリストとして処刑されたのかな。
狙撃手の男が撃たなかったのは、キロランケが三八式に目もくれなかったからだろう。あからさまな敵対行動ではなく、あくまで、負傷者の救護に徹したから。
そこでキロランケが三八式に近寄ろうとしてたら、撃ってたはず。
……って単純に考えればそうなるけど、それ以上に複雑な事情があるのかな?
狙撃手が、負傷者を囮にして、救護に当たる兵士を次々仕留めるって、銃撃戦のドラマのオヤクソクなんだ。この狙撃手がそうしなかったのは、この時点ではまだその戦術が確立されてないのか、個人的な思いがあるのか?
焦ってるうちにロシア兵の隊長撃たれた!
尾形嬉しそう(笑)
……なんかこの尾形の顔、(負傷前の)鶴見に似てね?
そうか、尾形が目を細めると鶴見に似てくるのか……サディストって共通項が。
これでロシア兵達にも、相手側に凄腕の射手がいることがわかった。
三八式回収しない限りは、銃は尾形の一丁だけ……かな。
三八式を取りに行こうとすると確実に撃たれる。
尾形は拳銃も持ってるだろうし、キロも手榴弾なんか持ってそう。あとアシリパさんの弓矢。
一方でロシア兵達はフル装備。
4vs4。
親父さんは一命取留めて一安心。
白石、薄情だw
キロランケは情熱に浮かされてるんだ。彼が暗殺事件の現場から逃げ延びて今迄生きてるのは幸運があったからかも知れない。「カムイのおかげ」……て、キロ、もしかしてクリスチャンだったりする?
対してあくまで合理主義に徹する尾形。
尾形「全ての出来事には理由がある」 ……いやまあたまには、すんごい偶然ってのもあるけどさ。
その理由から結果をもたらすのは、誰のチカラなのかってことになっちゃう。まさか尾形になにかの信仰心があるとは思えないが、不可知論者でもないのかな。
そういや、
尾形「俺たちが襲われてるのにも理由があるはずだ」とはいうけど、キロランケが撃たれなかったことについては尾形は気にしてないんだな。そこまで余裕ないのか。
アシリパ「助けたことは絶対に間違ってない」って言い切れるアシリパさんがステキ。
キロランケは革命について誰にも話してない?
尾形と組んでるようで、尾形も知らないんだな。
……というか鶴見はどこで調べたのよ……
ん、この狙撃手もまたテロリスト達に思うところがあったりするのかな?
キロと古い知合いってことはない……よな?
もしそんな因縁があったとしたら、それこそ、「カムイ・レンカイネ」かもだ(笑)
尾形「日露戦争延長戦だ」
杉元一行もまた日露スチェンカ対決なんてやってたけど、あっちは殴り合いなんて、生身で、汗と体温と筋肉が熱くて、お互いの顔と顔くっつけ合うくらいの、肉体の衝突だったのに。
尾形達と来たら、遠距離での銃撃戦なんて、冷徹で、火薬と金属の熱、なんて、とことん非人間的な対決ってのが、イカニモ。
尾形と杉元の違いを端的に表わしてるみたいだ。*2
巻末の作者氏コメント……え、それなの?
アニメ開始や手塚治虫文化賞受賞でなくて?
追記。
Twitterつらつら眺めててふと気付いた。
あーキロランケと、尾形、十以上も歳が違うんだな、と。キロはアラフォー、尾形は20代後半。
キロがサンクトペテルブルクにいたころちょうど尾形が生まれたくらい。
キロは数十年かけて、蝦夷が島まで辿り着いた。
尾形には決定的に人生の経験値が足りないんだ。
キロは熱い男なんだよ。
革命の情熱を数十年も燃やし続けてた。
革命なんて情熱がなきゃやってられませんて。*3
いろいろあって樺太から北海道まで落ち延びて来たときにはもう革命を諦めかけてたのかもだけど、そこでアイヌの金塊の話を知り、再び情熱が再燃した。
キロ、生まれたときはロシア正教徒かもだ。若さかあるいは共産主義のせいか、信仰を捨てて、革命運動に身を投じたけど、いろいろあって、挫折しかけた後に金塊の話を知ったときには、神の思し召しを感じたかも知れん。それに今まで逃げ延びて来たこともまた。
今になって神を、ロシア正教のでもアイヌのカムイでも、とにかく信念を持って銃口に身を晒した、兵士はそれに気圧されして、躊躇した。(上で書いたように、キロが人命救助に徹したってのもあるよね)
念為、キロが狂信的ってわけじゃないよ。むしろ信念だ。そもそもが虐げられた人々を圧政者から救うっていうのが革命の理念なのだから、ここで彼を見捨てたら、その意義に反する。確かに危険ではあるし、全く不合理ではあるけど、でも、やらずにいられない。信念を持って行動すれば、神の加護があると……て、いや、そこまで明確に信じたわけでもないだろうけど。
そして結果として彼は撃たれなかった。「カムイ・レンカイネ」があったと信じるに至っても不思議じゃない。
ただし、神そのものではなく、神を信じる心だ。神が実在するかどうかなんて、信仰者以外にはどうでもいいこと、でも、神を信じる人達は確実に存在する。
だけど尾形は神を信じない、キロの信念、それにロシア兵が気圧されたことに気付かない。だから、「俺のおかげ」て言っちゃう。
確かに結局は尾形がリーダー撃ったんだけど、その前に、狙撃手が躊躇したことに思い至らない。
「今だ!」と叫ぶ、なんだか鶴見っぽい尾形の顔は、ゲームで高得点出してはしゃいでるようだ。
神なんか信じない、全ては理性や理屈で説明出来る、て、言い切っちゃう尾形は、キロからしたら、自身が神を否定していたころのような、経験の浅いガキに見えるかもね。
明確に共産主義とは書かれてないけど、まあとにかく、無神論と唯物論、プロレタリア革命の原理だ。神への信仰や皇帝の権威が、人民を貪るための非合理な掟でしかないなら、そんなものは否定すると。
だけど、共産主義の蹉跌は結局は、現実の人間の不合理さ故。人は常に理屈や理性だけで生きてるわけじゃない。
尾形も、神や愛なんか信じない、て、徹底して合理的理性的でいようとして、でも詰めが甘くて往々にして死にかけてるけど、その度に偶然や人に助けられてる、それこそ、彼が否定しようとしてる神や愛ってやつだよね。(尾形は、不可知論でなくって、無神論なんだな……)