day * day

日々是々

金神15巻の感想 ゴールデンカムイ

表紙は、月島軍曹。表紙初登場。
下の名前の初披露だとか、過去の重い話だとか、なるほど今巻の主役は月島に相応しいかも。
本文はもう樺太篇なのに、なんで網走監獄でのシーンなんだろうと思うと、これ、月島の心が囚われてる、って寓意なのかと気付いた。
紙本限定のお楽しみ、本を裏返して裏表紙を見ると、月島の銃剣は切っ先を鶴見に向けてるようにも、すこし逸れているようにも見える。
その鶴見は、切っ先を睨んで狂乱している。
後半で語られる二人の因縁を知ってから改めてこの絵見ると、イミシンだ。

もう一つ紙本限定の本体表紙の衣装図鑑は、「テタラペ(草皮衣)」、エノノカの服だそうで。

(アニメについてはページ分けました)
アニメ「茨戸の用心棒」感想 ゴールデンカムイ - day * day

今号から本格的に樺太篇。
そういや、杉元一行、「先遣隊」って鶴見が称してるってことは、鶴見もいずれ樺太に来るってことなんですかね。
先遣隊の一の目的はアシリパ奪還で、刺青人皮探しは副次的なミッションらしい。

おさらいページ、
犬童の土方コレクション、TOSHIZO団扇とか、そんなものまであったのか……
犬童、わざわざ団扇に土方の似顔絵描いたのね……

目次

第141話 樺太アイヌ

いきなり鯉登がケダモノに襲われてるシーンから。

クズリ、コエエ。
最大でも体長1mほど、体重30キロちょいだそうだけど(→クズリ - Wikipedia)、けっこうデカいぞ。人間でも成人男性の体長(≒座高)1mあるかないかなので。
食肉類は狩のプロだから、素手だったら人間はかないそうにない……

月島を動物に例えるとそういえば、クズリかも知れない。
小柄だけどタフで強いし、実は知的。
月島がロシア語もできる、ってのは、『X-men』のウルヴァリンが語学が堪能、っていうのを牽いてるんだろか?

杉元「当んねえ!!」
杉元は射撃が苦手(って本誌連載時には書かれてたの)

橇から放り出される谷垣。
鯉登も鯉登だけど、杉元も無慈悲すぎるw

鯉登が傲慢なのは、当然といや当然だ。陸士出のエリートだもの。
恐らくは士族か華族だし、兵卒(や民間人)とは身分が違う。
父親も将軍だし、幼年学校からずっとそういう世界で生きてきてそれ以外知らなさげだ。

んー、この樺太行、音之進君の成長譚になるのか。
実戦経験も一般常識もない、軍組織しか知らないアホな将校が、痛い目に遭ってちったあ成長するっていう。
少なくとも鯉登パパはそのつもりだ。
成長するのかな。するといいなあ。昭和陸軍の上層部になる前に。*1

杉元って妙に谷垣に冷たいし辛く当たるんだ。姉畑狩りのときもだが。
最初の出会いが敵対してたから、未だに悪い印象引きずってるのか?
単に谷垣がイジメられっ子体質なのか……?
……谷垣、デカくて頑丈だし、純朴ゆえに打たれ強そうで、なんかもー恰好のイジメられっ子ってカンジ。

ところで杉元、谷垣の胸揉んでる……?

リーダー犬の飾りについては、アイヌミュージアムTweetが。

リュウが目を輝かせてますよ……?

トイチセ、冬の家。
1.5mくらいの深い竪穴式住居。
これはアイヌ文化に先行した擦文文化の様式だそうで、樺太アイヌは当時の様式を近代まで受け継いでいる……ということらしい。*2
防風防寒対策だよね。

杉元、さすがに、谷垣のブロマイドは既に封印したようだ。
ここでまた谷垣の写真が出て来たらクドすぎる! 杉元が、てよりか、センセーが。

エノノカちゃん。
可愛らしい名前なのに由来がヒドイ。
チカパシもだし、オソマちゃんにしても、ロクでもない名前の子供ばっかりだけど、アシリパさんは例外的にキレイな名前。そのへん、ウイルクが近代的な感覚なんだろうか。

これだけコケモモ推されてると、食べてみたくなってくるよ……
(栽培はされてない模様。ブルーベリーの近縁種ではあるんだが)

第142話 在留ロシア人の村

扉のチカパシ、ちょうど、3巻23話の二瓶鉄造と同じ構図だ。谷垣とリュウもいっしょ。
勃起!

鯉登少尉、とことんお坊ちゃま……
満州の戦場、経験してないから;

エノノカ、鯉登相手に対等にきっちり交渉しててしっかり者、って、そういや、彼女、クズリのいる森を突っ切ってこうとしたんだっけ。
大人物だ。
チカパシとの差(笑)

ザンギエフロシア人の村。

杉元が喧嘩っ早いのは脳ミソ欠けたせいではなくて、元からだよな……
鯉登が頼りないのになんで鶴見が派遣したかって、もしかして財布役なの?
(少尉自体の給料は大したことないそうだが、鯉登パパ、海軍少将なのでかなり高給取りのはずだし、爵位持ちかも知れないし)

二人の荒くれ者の面倒を見させられる月島、気の毒としか。

月島「難しい表現の通訳は出来ません」……というより通訳したくないのでは。

なんだよ、パヤパヤ頭って!
頭を三枚おろしってどうすんのさ!? 右耳・真ん中・左耳かよ!? それとも門倉さんみたいなのを、右の白いところ・真ん中の黒いところ・左の白いところの3枚かよ!?*3 右脳・脳梁・左脳なのかよ!?
……鯉登の腕なら頭蓋骨もあっさりサジタル面切断できるんじゃないですかね。

Те кого вы ищете искали человека с наколками который приехал с Хоккайдо(あなたが探しているのは、北海道出身の入れ墨を持つ人を探していた)

脱獄囚、樺太にも……
どこでその情報を仕入れたんだろ、キロランケたち。鶴見はその情報を持ってないはずで、知ってたならとっくに樺太にも行ってるよねえ。
もしかして土方から? 網走行より前に樺太の脱獄囚のことを知ってた?
土方、脱獄してまっさきにキロランケに会いに行ってて、そこで何を話したのか、真相は二人しか知らないんだ。
だから、そこからキロランケと土方が組んでて、尾形もその一員って説も有り得るし。ウイルクの射殺も土方の差し金かもだ。

スチェンカ、「стенка на стенку」だそうですよ。

ザンギエフがいっぱい!
飛び散る漢の汗と汁!
ムンムンと充満する肉肉の匂い!

杉元がのけぞるくらいなので、すげえ臭そう……
え、匂い、なんだ? 臭い、でなくて。

ああこういうの、野田センセー好きそうだよなあ。
のわりに、初めてだ、こんな、武闘会

まるでジャンプの漫画みたいじゃないか、この展開。
オラ、ワクワクしてきたぞ。*4

熱気と臭気にあてられて、すっかりやる気満々の杉元。
やっぱ杉元って脳筋だよねー。

月島「俺たち?」
ほらー月島が戸惑ってるじゃないのさー。

第143話 スチェンカ

通訳兼ねてるから月島の台詞多いっ
ちゃんと、鯉登に対してだけは丁寧語になるんだ

谷垣、鯉登に追従しすぎ。
そりゃ階級からしたら鯉登はエラいんだが。
権威に弱いんだな、こいつ……
軍を抜けたつもりじゃなかったんかw
まるで鯉登の従卒みたいだ。

アオリに弱い一同。
青筋立てちゃってる。
鯉登も喧嘩っ早いけど、ここでも谷垣w

ゴールデンカムイのオヤクソク、男だけの裸祭。
皆さんさすがにイイお肉(はーと
キャラによって描き分けられてるのがイイ。
わざわざコマ分けて御披露目してる。

なにげに、月島が脱ぐのって初めてじゃないですか。
彼も歴戦の強者だけあって、満身創痍だ。
実戦知らない(割に肉だけはエラい鍛え方してる)鯉登なんかキレーなもんですわ。
……月島、ハラキリみたいな傷痕が気になる、と思うと後々逸話が。

あ、鯉登も胸まで脱いでみせるの初めてか。
谷垣、あの戦場潜ってるはずなのに、ちっとも傷がないのは、杉元以上の回復力なのか、【いのちをだいじに】モードだったのか……?

日本人が小柄っつーても、彼等は軍人だ。
そこらのオッサンなんかかなうわけない。筋肉からして違いすぎる(笑)
こう見えて、鯉登がいちばん、本式に格闘技やってそうな気がする……示現流だけでなくて。
如何にもトレーニングしてますって肉だよね。脇の下に見える広背筋がスゲェですよ。

なぜか、インタビュー……
誰よ!? インタビューアー。
なんでテレビになるのよ!?

戦うこと自体に拘泥する脳筋な杉元。まだ戦場から戻れてないらしい。よっぽどロシアに恨みが……あるのか。親友が戦死したんだし。
とにかく自信家で傲慢な鯉登。立ち姿勢からして、ボクシングでも本格的にやってるんですかね? 体重の軽さを筋力とスピードで補うタイプと見た。
理論家な月島。打ち負かした相手にちゃんと手を差し伸べるナイスガイ。よく見ると彼、身体の前面は傷だらけなのに背中は無傷なんすね……「向い傷は男の勲章」(by 鶴見)て言うならば、月島は正に男の中の男だ。
流されっぱなしの谷垣。……ねえちゃんと考えてる?

谷垣、あっさり顔に食らってる、けど体格のおかげで打たれ強いんすね。
精神的にも、流されやすいけどタフ、って、恰好のイジメられっ子じゃないですか。
(二瓶と組んでたり尾形に反撃してたりするころの谷垣ってもっとアグレッシブだったのに、なんか、腑抜けたな……女が出来たせいなのか?)

7ページも続く殴り愛。

17人目の「刺青の脱獄囚」。
牛山と親交がある模様。
門倉さんってば……

またコイツが、目をキラッキラさせて、イイ笑顔しやがるwww
話す内容はヒドいんだけど、純真すぎて。
そういや、姉畑と近いキャラかも知れない……

試合に勝ってみな嬉しそう。
杉元がこんな笑顔見せるのも久々じゃなかろか。

第144話 劇突!壁デスマッチ

扉はまるで昔のプロレスの地方興行のポスターみたい。

奇公子ってナニヨ。
谷垣、「1000年にひとりのマタギ」ってwww
これ、本誌連載時は、「100年に」だったじゃないですか。レア度10倍になってるし。

握手して相手の力量推し量るって、6巻の牛山との初対面のときと同じ。
てか、ズギュウウウンッって、もしかして、ジョジョ??

岩息舞治……強引な名前だ……
杉本の目、光が消えてるんだ……
対照的に岩息の眼がキラッキラしてること(笑)
彼のことをパーティメンバーに教えない杉元。
なぜか杉元、皆で作戦を練る、少なくとも教えるってことしない。

相変わらず横柄な酒場の親父。
この連中が凶暴なのわかってるのに、この態度ってのも、イイ度胸してる。
樺太アイヌの刑罰も面白い。
人差し指から斬ってくんだー。
谷垣、そういや、鼻削ぎされそうになったんでした。*5

鯉登、こういうの好きそう。
刀抜きかけて、髪の毛逆立ってる。
やる気だ。
鯉登も沸点低いっ。

岩息は刺青を人目から隠そうともしない。
どうせ意味を知ってるヤツはいないとタカ括ってるのか?
でも、「めっちゃ強くて奇妙な刺青の男」なんて噂、すぐに広まるだろし、そもそも、ウイルクやキロランケは樺太経由で北海道に来たんだから、現地に仲間がいるかも知れないのに。
なにか計略があって、刺青に反応するやつを待ち受けてるのか、或は、ただただ戦いたいだけで、なにも考えてないのか……?

<暗号の刺青……>のカット、4人の身長比がわかる。
月島と谷垣、ほんとに、頭一つ違うんかっ
鯉登より杉元のほうがやや背が高いのもなんだか意外。
あんまり杉元ってデカいイメージなかったけど。
鯉登はぬぼっと背の高いイメージがあった。

いきなり吹っ飛ばされる杉元。
岩息、初っ端からフルスロットル、バリバリ全開だ……!

第145話 ミスター制御不能

殴り合いのシーン、一気に4ページも大増量。
岩息「コラーッ私を見ろ!!」 ポカポカポカポカ……とかwww
岩息のカワイサがマシマシですよ!
連載時に、143話の扉に、「殴り愛こそ人生だ」ってアオリ文句が入ってたんだけど、それがまんま象徴してる。→
*6

……杉元ってこういうタイプの漢にモテるんだな……
(辺見ちゃんとか)

4on4 からの 4対1。
岩息、ボコられてゲージ溜め。
そこからPPPでダブルラリアット発動!
……てやっぱりこれ、ザンギエフよね??*7

……つええええ……

杉元、ゲージ振り切っちゃった!
殺意の波動かよ!
かと思うと、
杉元「俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺」ジョジョかよ! 俺俺ラッシュかよ!*8

乱闘こそがスチェンカだと感動に胸震わせるジジィ。
そんな場合じゃないって。

ああああ脳汁が。
鎌を手にする杉元……
この杉元の立ち絵の得物はどー見ても、あの鎌と鎚。*9
☭ ってunicode にあるの知らなかったよ!
起て地に伏す者かよ!*10
聞け万国の労働者かよ!*11

忘れそうになるけどゴールデンカムイって、1905年に血の日曜日事件戦艦ポチョムキン事件があったすぐ後、1917年のロシア革命までもうちょっとの時代なんだよなあ。
ボコられ過ぎてバーサークって、そういや革命の原理かもしんない。
杉元 REVOLUTION ですよ。
当分は恐怖(テロール)が続くやね。戦乱(アレス)敗走(ポボス)恐慌(ディモス)の父なのだ。

月島「「殴られ過ぎ」ですッ」……の台詞がちょっとシックリこない。
パンチドランカーとか、それに類することを言いたいんだろか。
杉元、脳の器質障害と殴られた衝撃で、錯乱してる模様。
凶器を手にしてるので手がつけられない。

岩息「最初から私の刺青が目当てか?」
ってまるで悪い男に騙されたみたいな。
岩息、なんて純真なんだ……
そうだよ、どうせ、アンタの刺青(カラダ)が目当てだったのさ……

岩息みたいな、「拳でしか語れない」ようなキャラを、ここまで純真無垢に描けるのってスゴい。
暴力の世界しか知らないけど、彼にはその中で確固たる居場所があるのだ。

先に挙げた「自由さ」もそうだけど、ゴールデンカムイの爽快さの一つは作中で作者があらゆる価値観をウエメセで裁定しないところなんだよな。
「こんな非道いヤツは報いを受けて然るべき」なんて断罪したり、或いは「こいつは可哀想だから救われなければ」なんて、オヤクソクの展開に進まない。ただ皆が皆、自分の宇宙で必死に生きている。*12

岩息追っかける3人。

ふたたびクズリ、こえええよ。
鯉登にしろ岩息にしろ、腕に覚えのある猛者でも、クズリにはかなわない模様。
やっぱり野生の猛獣は強いよなあ。
(特にイタチ科は食肉類の中でも凶暴っつーから)

鯉登「銃は持ってるのか!?」
この状況で、なぜにその問いが出て来る。
鯉登に、すっかりドラえもん扱いされてる月島。

そして逃げ込んだ先が……サウナって。
あざとすぎるだろ……
男性ヌードで読者サービスとか、も、もう、驚かないぞ……
(感動に打ち震えながら)

やっぱりみんなカメラ目線だし……

ストファイだのジョジョだのプロレタリア革命だのときて最後は全裸なんて、
なにこの闇鍋(カオス)

第146話 ロシア式蒸し風呂バーニャ

エノノカとチカパシ、良いコンビ。

一方、バーニャ(サウナ)では。

源次郎は秋田出だけど、月島も佐渡の人らしいし、熱さに弱そう。
鯉登は薩摩人だから熱に強いのかしら。
鯉登って体温高そうだ。平熱38℃くらいありそう。

岩息って、喋り方とか素朴な紳士っぽくて。
牛山と良いコンビ。
ドツキ漫才のコンビみたいだ。
軍人達のほうがよっぽど、信用できないっていう。

岩息の台詞にいちいち☆が。
殴られて……喜んでるのっ?
辺見と同じタイプなの?

月島〔俺は何をやっているんだ?〕 ……うん。
こうやって我に返っちゃうところが、月島、苦労人な所以。

鯉登「妙案なんだよな?」
なんでまだ信じてるんだっ!?
鈴川の件のときは即、杉元の計略見抜いたのにっ。
一旦信用するととことん疑わないタイプかっ。
状況が見えてないのかっ。
鯉登がどんどんアホの子になっていく……頭に葉っぱついてるし。
鯉登って、ソロのときは優秀で出来る子なのに、周囲に頼れる人がいると途端にgdgdになってくんだよな……イカニモお坊ちゃまってカンジ。

月島「絶対違います」
月島、あくまで冷静だ……

子供達の犬奪還作戦。
クズリばかりかバーサーカーモードの杉元まで……

チカパシのピンチに、リュウ
このリュウの登場は単行本での追加。
やっぱりリュウは猟犬で、クズリを前に逃げ出す橇犬とは違う。
最初は、リュウも、クズリに怯えてたのにね。
どうやら、リュウの成長譚でもあるらしい。

杉元まで乱入して、最後は谷垣!
いやカッコいいんだけどさ。
(小さな「ジュウ~」の文字がどうしても気になってしまう……冷たそう……いや冷気には強いのか、げんじろ)
だんだん、勃起の言葉がゲシュタルト崩壊してきそう。
ようやくクズリ仕留めた。

第147話 トドを殺すな

殴り合いって世俗の極みのような肉と肉の交流と同時進行で、崇高な対話が。

杉元は、結局は、神(のようなもの)を信じてるんだ……
「カント オロワ ヤク サク ノ アランケプ シネプ カ イサム」、自分には天から下された役目がある、と。
だけど、梅ちゃんにしろ、寅次にしろ、のっぺら坊にしろ、周囲の人を守ることが出来ない、彼等のためになにもしてやることが出来ない。遣わされた役目を果すことが出来ない。
彼の怒りは、自分に役目を与えてくれたナニカを裏切り続けている自分自身への怒り。

岩息は、まるで教誨師、聖職者のようだ。
どうして他人でタダの殴り合いの相手である岩息が、杉元に許しを与えることが出来るのかったら、人を許すとか、神のようなものは、個人の心の中に存在するものだから、だよね。
岩息は、杉元の中のナニカを代弁して、許しを与えたわけだ。

岩息、ぶん殴りながら勃起してるんですが。
暴力の快楽と宗教的な法悦と、聖と俗が渾然一体になってるんだなあ。

そして、水入り。
これって洗礼なんですかね。
再び、バーニャ☆……なんでみんなカメラ目線になるんだよっ!?
まだ杉元のいった「妙案」にこだわる鯉登。 結局、杉元は、岩息と戦いたくて、面々を黙らせるために「妙案がある」ってデマカセ言っただけなのね。
鯉登はそういう機微はわからない。月島はさっさと勘付いてたようだけど!

岩息「もっと強いやつを探しに行こうか」って、「ストリートファイターII」のコピー「俺より強いヤツに会いに行く。」を思い出させる。*13

子供達はバーニャには入らない模様。
……エノノカちゃん、どこ見てるんですか……?

ところで。
月島「樺太を出ろ」のコマ、よく見たら、月島の背景に描かれてるの、鯉登の股間というか陰毛……?じゃん。
絶妙な吹き出しの配置の合間にチラ見せとか、なにを描かれてるんですかっ先生。

ところかわって。

尾形!
139話以来、15巻で最初の登場。
(14巻で最初の登場が137話で、15巻が147話だ……)

アシリパさん、取敢えず元気そうで良かった。
なんだかんだいって、みんなでサバイバルしてる。

二又の銛って初めて見た。
樺太で使われてるんだろか。

尾形の変顔って珍しい(笑)
相変わらず「ヒンナ」って言わない。
頭に当てても死なないやつもいるんだよ。
杉元とか。

アシリパ「今度強い奴を倒す時は頭を狙わないことだな」……って対杉元の伏線ですかね。
アシリパさんはしばし預言者になる……

そういや尾形の獲物で大きいのはせいぜい人間、あとエゾシカくらいなわけで。
ヒグマ猟の経験はなさげ(5巻では、単に追い払っただけだし)
ヘッドショットで仕留められなかった、って、悔しいだろうな(笑)

今回のサブタイは、フォークソングに由来するようだ。
トドを殺すな/友川かずき - YouTube
(大型の食肉動物はたいていそうだけど)人間との生存競争で個体数が減少してるし、今では国際的には保護動物に指定されてるし。

しかし、トドといって、私が真っ先に思い出すのは唐沢なおきのマンガ。ラッコの密漁していてトドに食い殺されたという親戚……昭和時代とは思えないワイルドな話。
海のギャングて言われたりもするし、単に憐れな絶滅危惧種ってわけでもない。
なんせ最大で1トンにもなる大型肉食獣だ。*14

再び、岩息と杉元……ってこの背景、トドとヒグマか(笑)
アシリパさんと白石がお茶してる店。
テーブルの上のオブジェは、サモワールて湯沸かし器。
ロシアつーたらサモワールで湯を沸かして淹れるロシアンティだ。

アチャ(ウイルク=のっぺら坊)は、結局、数々のナゾを残したまま死んだ。*15
いちばん真相に近いのは、キロランケなんだろうけどなあ。

キロランケ、最初はまるで鍛冶屋のレギン*16のように思えたのだけど。
後々でユダにも擬えられてたりするし?
彼がアシリパさんに対して見せる親愛の眼差しは、肉親ゆえの保護の感情なのか、それとも独立運動の道具としてのアイドルなのか?

白石は、キロや尾形の謀略は知らないんだよね、きっと。

結局、一歩先行してたキロ一行よりも、杉元達のほうが先に、岩息を見つけてるんだ。
岩息は白石に気付いて隠れてたのか。
でも、白石の目的が、刺青人皮(と金塊)だとは知らなかったと。

うーん、岩息、尾形と対話しようとして、殺されて皮剥がれたりしないですかね……
カソリックでは聖職者を神父(ファーザー)というのだよな。
尾形が父なるものを憎んでるとしたら、さながら聖職者のような岩息なんて恰好の獲物だ。
杉元「銃には勝てない」……なんてまるで預言めいてるじゃん。

そういや白石や岩息、ハゲなとこが聖職者っぽいよな。
白石はアシリパさんのカウンセラーみたいだし、岩息は教誨師みたいだし。
二人ともすごーく世俗的なのに。
他者に(読者にも)救いを与えてる。

そして最後は、アシリパさんと杉元の笑顔。
アシリパさん強いよなあ。

第148話 ルーツ

トドの皮、……でけえ……
トド飯、なんか美味そう。味の想像全くつかないけど。
百合根や菱の実の炊き込みご飯とか。
樺太でも、米食なんだなあ。
穀類、大陸の北方だと米より麦のほうが一般的なのに、アイヌ達も麦でなく米。このへんは和人の影響なのか、南方由来の民族の故かな?

土方(じいさん)にもタカル気満々の白石。

狐の養殖といえば。
アリューシャン列島でも養狐が行われてて、逃げ出した狐が生態系に大きな影響を与えて大変だった、ってハナシが→『ネズミに支配された島』*17

キロランケの歴史講義。
千島樺太交換条約は1875年。

今度は、のっぺら坊ではなく、ウイルクとしての父の足跡を追う事になる、アシリパさん。

キロランケ一行が樺太に来た理由。刺青の脱獄囚を追うだけでなく。
アシリパさんに樺太の現状、少数民族の悲劇と、抵抗者としての父親の足跡を見せて、彼女を同志として教育しようと。少なくともキロランケはそのつもり。……が、尾形の真意はほんっとにわからん。

尾形は、アシリパさんも、金塊に辿り着くための道具としか見てないようだ。
キロランケ「不信感を与えてはダメだ」って台詞。
尾形の冷酷な合理主義を知ってるから、 無理強いしても利にならないって理詰めで説く一方で、やっぱりアシリパさんを傷付けたくないって感情もあるわけで。

キロの目はずっと光が宿ってる。彼は純粋に独立運動を信じてる。
キロランケ「彼女を成長させれば」
彼が言うアシリパさんの成長って、パルチザンの同志になるってことなんだ。
キロは、自分達には絶対の理があって、いずれアシリパさんもそれを理解して、賛同するはずだ、と。
で、このへんの台詞からして、尾形のことも同志として信用してるんだな。

尾形も、結局は、金塊を求めてるんだろか? しかし何のための金塊なのか?
キロたちの独立運動に与するのか、彼等も裏切るつもりなのか。

今現在から20世紀の歴史を知ってると、帝政ロシアが倒れたところで少数民族独立運動は成らないし、共産党時代が帝政時代と比べてマシだったのか、どーか。

キロランケ「樺太はどちらの国のものでもなかったんだ」
江戸時代中期から既に、ロシアと日本の衝突は始まってて、その間にアイヌ達も巻き込まれていった。
幕末以降、日本は、ロシアとの国境問題で、アイヌを日本国民として(アイヌが日本人でないなら彼等の住む土地は日本ではないことになってしまうから)同化政策を進めていった、って経緯が。
アイヌなどの狩猟民族は元々、土地の所有って考えがなくて、ただ狩漁や採収といった利用権が重要だったから、広い範囲を自由に移動してたし、土地へのコダワリも農耕民族よりずっと希薄だった。
千島や樺太から連れてこられたアイヌは、農耕民として定住させられたけど、慣れない土地で慣れない農耕なんて出来るはずもなく。
世界史からすると、少数民族が大国に飲み込まれて帝国の一員になるのは必然なんだけども。
20世紀後半になって樺太や千島は地下資源が注目されて、経済的に重要な土地になっていく。

千島樺太交換条約のあとも樺太に残ったウイルク、絵からすると当時10才くらい? じゃあ死んだときは40くらいか。
ウイルクが日本にやって来たのは、インカラマッとのエピソードからして、20~十数年前なんですかね。
インカラマッも年齢不詳だが、尾形より上、白石と同じくらいってされてるので、30くらいか。
すると二人が出会ったとき、マッちゃんがローティーンぽいので、少なくとも10年は前ってことに。
しかしキロはインカラマッとは(7巻まで)面識なかったようだから、キロが日本にやって来たのはその後になるのかな。

キロランケはずっと、ウイルクのことだけを話してる。
キロ自身のルーツ、生まれたところや日本に来た経緯、ウイルクとの関係なんかはこの時点ではまだまだ語られない。

尾形はルーツどころかフルヌードまで晒してるけど目的が全く見えない。

お久しぶりの二階堂&宇佐美!
……二階堂、すっかり動物扱なんですが。
言葉も喋らなくなっちゃった。
鶴見に騙されてるのね……
見捨てないだけ、鶴見、優しい。

月島が樺太に行って今ここにいないから、宇佐美が代わりに鶴見へのツッコミ役なのね……

鶴見の部下、将校は鯉登だけなのか。
下士も月島軍曹・故玉井伍長だけ。
上等兵は宇佐美、と、尾形だった、けど、まだ他にも名前の出て来てない人達がいるのかもだ。
網走で、鶴見が「部下63人」て言ってたので、後60人は全部、一等卒になるのかな。
(鶴見が小樽での活動始めたのが去年の冬以降として、さすがに入ったばかりの二等卒は採用しないだろ……)

そしてまだ鶴見に付き合ってる有坂さん。
……ヒマなのっ!? 砲兵工廠はいいのか。中将さんなのに。

球体関節の義手。球体関節でどうやって開け閉めのギミックが出来てるのかナゾ。
中指の関節はダミーなんですかね。ってことは、拳を握ろうとすると、中指だけ立てることに……?
🖕
……ってこれもUnicodeにあるのかよ……

二階堂が……どんどん変貌してく。肉体的にも目減りしてるし、精神もおかしくなってるし。
元はといや、蕎麦屋で杉元を襲ったときに端を発してるのだけど。
今作中で一番の被虐者だし、それだけいたぶられながらもまだ生き延びてるって、杉元以上にシブトイ。
今じゃすっかり有坂中将の(というか作者の)オモチャ。
これもきっと、作者なりのキャラへの愛。
……二階堂って、一途すぎて虐めたくなるタイプだよね。

本人は杉元は死んだって言われて、杉元ロスに陥ってる模様。
そこから鶴見がどう治癒するのか、実は生きているって教えるのか、他の目標を与えるのか……?

第149話 いご草

月島が主役の回のはずだが、どうしても鶴見の存在感のほうが目立ってしまう(贔屓目)

言葉はキツいが、なんだかんだんで岩息の身を案じる月島。
彼もツンデレだ。
和やかに一行に別れを告げる、岩息。

このアイテム刺青リスト、んー鶴見隊の分だけか。
結局、杉元も、土方一味の土方や牛山、「茨戸」の刺青のコピーは貰ってない。
あ、家永が抜けてる。家永、外科医として優秀だから、鶴見も、さっさと殺して皮剥いだりしないよね、きっと。
贋物の人皮は、土方が2枚持ってるので、鶴見の手元にあるのは4枚のはずなんだが?

月島「いつか取り返しのつかないことになる」

舞台は唐突に、明治29年(1896年)に。
月島が鶴見の腹心になった経緯。

鶴見、このとき少尉さん。
鶴見第1形態ってすっげえイケメンだと思うのです。
まだ頬がこけてなくて、ちょっとふっくらしてる。
私が金神のキャラで一番好きなのは尾形だけど、一番セクシ~だとか二枚目だと思うのは、鶴見だ。あの性格も含めて。

月島もまだヒゲ生やしてない。

月島が佐渡の出身ってのは単行本でなんとなく明かされてたけど、鶴見も新潟出身でしたとは。

ようやく月島の下の名前が。
(ハジメ)ちゃん」
わざわざフォントの級数とウェイト上げてるのは、ファンサービスですかね。
なにげに2巻から登場していきなり和田大尉射殺してたりするのに、「月島」って名前が出て来たのは8巻が最初だし、今回149話になってやっと下の名前。
喧嘩に明け暮れて、鼻の軟骨折っちゃったりしたんでしょうか。

新発田の第2師団ってことは、歩兵第16聯隊。
入隊してすぐに日清戦争(1894年)とあるので、月島が志願兵なのか徴兵なのか不明だけど徴兵として21で入隊したとすると、月島は1873年前後の生まれってことになりますかね。

鶴見、1866年前後の生れのようなので30前後ですかね。
普通は陸士出たての少尉は23才、陸大行って30前には佐官になってる例が多いから、ちょっと出世が遅い。
陸士でなくて一般の大学卒だとか留学経験あったりするのかも知れない。

月島もまた、親殺しの凶状(スティグマ)持ちだった。

「親殺しは巣立ちのための通過儀礼」というのなら、月島が巣立ったのは、抑圧され搾取される一方の被害者としての自分。

月島の殺意はワカリヤスイ。
社会(といっても狭い地元地域でしかないけど)からは悪童と排斥され、ろくでもない父親に人生を牛耳られて全ての希望を失われたすえの、ルサンチマンの爆発。
そこまで絶望してようやく父親を殺すことが出来たのなら、月島はやっぱり「普通の人」だ。
結果として、死刑囚となり、国家という父親よりも大きな権威によって生命を奪われることになったとしても。
そんなクソ親父の下に生まれついた自分はクソ親父を殺すことが自分の生だとして、それを果したので、人生を終わったと思ったわけだ。

だけど、全てを失ったと思っていた月島は、鶴見によって、彼女が生きているという希望を胸に点す。
二度と彼女に会うことはないとしても、クソ親父に付随することだけが自分の人生ではなかったと。

つくづく、鶴見って、メフィストフェレスなんだ。
現世に絶望した者の前に現れて、希望を囁く。
「この世はまだ捨てたものではない」と。

しかしだ。

鶴見「「えご草ちゃん」は」って、あくまで、「えご草ちゃん」。月島のいう「いご草」じゃなく。
鶴見は実のところ、(ゲーテの書いたファウスト博士に対するメフィストフェレスのような)月島自身の心の中で絶望に抗う半身なんかじゃなくて。
鶴見自身の目的を持った利己的な存在だし、そのためにあらゆる手段を使うマキャベリストだし、胡散臭いデミゴッド(偽りの神)だ。
*18

言葉巧みに月島を籠絡する鶴見。
この鶴見の弁舌が素晴らしすぎるwwww
策謀家の本領発揮。
今までの人生をフォーマットして、自分の道具としての人生を与えてやると。

え、ここから牢内でロシア語勉強して、少なくとも日常会話出来るくらいまでになったのか!
すごいよハジメちゃん。
その才能も見抜いたのか、鶴見。

鶴見「第七師団に転属になった」
屯田兵を改組して、第七師団が編成されたのはちょうどこの年、1896年なのだよね。
月寒に、ていってる。
第七師団、この頃はまだ、札幌にあったようで。
特務機関はわからんけど、屯田兵にしろ、そもそもがロシアを牽制するために置かれたんだから(他の師団が、元々は鎮守=地方の反乱・内憂を抑えるために設けられた軍に端を発するのに対して、屯田兵は最初からロシアって外敵に備えるために作られた組織)、情報機関があっても不思議じゃない。

一気に時間が飛んで、1905年の奉天郊外。

ずっと鶴見に騙されてたことを知ってしまった、月島。
9年間、確認しなかったのね……

じゃああの髪の毛はなんだったんだ。
きっと月島、あの髪の毛に頬ずりしたり下着ん中に入れたりしてそうだし?
……誰の毛なんだよ……

月島が鶴見に向って怒ってるなんて初めてだ。
そして多分これが最後。

第150話 遺骨

鶴見に殴りかかる月島。
吹っ飛ばされてる前山さん。
彼もつくづく不運な人……

鶴見「誰よりも優秀な兵士で」のコマの鶴見は端正で美形だ。
本来なら、感動的な、お涙頂戴な場面のハズなんだけど。
読者には、どーせ鶴見が全く信用できない人物だって、わかりきってる。
彼の台詞、「優秀な兵士で信頼できる部下で戦友だから」って。
本心ではあるんだろな。
都合の良い男って意味の婉曲表現。

対する月島の表情。彼のこんな顔も初めてだ。

その直後に、ちゅど――ん

鶴見を庇おうとした月島を見上げる鶴見の口元。
この微笑がイイw
獲物が罠に掛かったことを確信した笑みだ。

鶴見は頭を負傷して、月島は腹を。

忠魂碑の前に佇む二人――はこの砲撃の前。
月島は、こうやって鶴見の心情を見てる、死んだ戦友達への哀悼や無念を共有している(少なくとも月島はそう思ってる)から、心底は鶴見を疑えないのだよな。
死者を思い遣る心を人質に取られてる。

ひょんなとこで出てくる杉元。
杉元が抱えてるのは重傷で末期の寅次だ。
寅次も奉天会戦で戦死したようだ。
旅順攻囲戦のとき、杉元が白襷隊にいたってエピソードがあったし、もしあの時点で寅次が死んでたら、梅ちゃんのことがあるから杉元が決死隊に参加するはずもないと思った。
親友の死で、杉元は生き延びなければならない理由が出来た。

鶴見の語る、えご草ちゃん事件の顛末。

鶴見「この戦争はもうすぐ終わる」
奉天会戦が05年2月下旬から始まって、奉天陥落が3月10日。*19 ちょうど、この話の掲載されたヤンジャンの号(3月8日発売だった)と同時期。
ポーツマス条約が調印されて正式に戦争が終わるのは9月5日、もう半年待たないとね。

鶴見「信頼できるのはお前だけだ」
……ってこの殺し文句、何人に言ってるんですかね、鶴見さん。

月島「死んでいった者たちのためにも」
……もう、鶴見のことはどうでもよくて、彼への恩義や忠誠心よりも、死者達への責任感が強調されてる。

なぜに、鶴見がモブ兵士を通じて、いご草ちゃんの遺骨の話を月島に伝えたのか?
鶴見は、月島を試したのかも知れない。彼の覚悟を。
いご草ちゃんって希望を心に抱えてたら、「身の毛もよだつ汚れ仕事」にはついてこないだろうから。(現に杉元は、最初に鶴見に勧誘されたときや、二瓶戦の後の谷垣との会話で、鶴見の大義にちょっと心動かされたけど、アシリパさんって希望に先に出遭ってるから、鶴見には合流しなかった。今もアシリパさんと再会するために鶴見隊についてるわけで)
だから、心の逃げ道を断ち切った。
もし、それで月島が鶴見から離れるようだったら、尾形に命じて月島を殺させてたのかもだ。
月島は自分を裏切れないと、砲撃のシーンで確信したので、付け足しのように、いかにも作り物めいた話を語った。
これも、103話で馬車の中で鶴見から尾形への白々しい賞賛の言葉に対応してるんだな。

私にはどうしても、尾形と月島の違いが気になってしまう。
どちらも親殺しの凶状持ちだけど、鶴見に付き従ってる月島と、離叛した尾形と。
月島は、鶴見が信用できないことを気付いてはいるけど、鶴見に従う以外に、生きる意味がない。だから、彼の甘言にすがるしかない。悪魔(メフィストフェレス)によって救済される。
一方で尾形は、冷血ゆえに、鶴見の甘言を疑いつつも絆を求めて呑み込むようなことはしない。既に親殺しによって自身を解放してるので、最早、救済や絆を必要としない。
鶴見「そして私の戦友だから…」って、8巻78話の、「仲間だの戦友だの……くさい台詞で若者を乗せるのがお上手ですね」を思い出させる。
乗せられた若者と、「たらし」と切って捨てる若者と。
生きるためにウソでもいいから他者との絆を求める者と、
生きるために自分から絆と断ち切って孤高を保とうとする者と。

ラストの6ページ、小樽でのシーンも単行本での追加。
本誌では、■そして悪魔は仮面を被る。
ってキャプション1行で片付けられてた。

鶴見の面覆、(恐らくは鉄板に)ホーローなのか。
裏面描かれるの初めて。
鶴見、ケガのせいで人格障害になったのかと思うと、戦前からあんまり変ってない。
「例の計画」をいつから練っていたのかわからんが。
開戦時には、まだ、北海道独立の野望はなくて、でも金塊のことは知ってた。
私利私欲で金塊を追おうとしてたのか、或は戦前からなんらかの大義を持っていたのか?
戦費調達に必死だった政府や軍中央も金塊のことを知ったらほっておかないはずで、それを隠してるわけだから、なにか謀略を懐いてたのは確か。

月島は、もう、いご草ちゃんのことはすっぱり忘れることにしたようだ。
生きていようが死んでようがどうでもいい。
今までは彼女の思い出に縋ってたけど、鶴見の唱える大義に殉じることに決めたと。
鶴見のため、じゃなくて、大義、ってほうが大きいのかな。

結局、えご草ちゃんの運命の真相は、読者にも、明かされない。
月島が納得したのなら、それ以上、探ろうとするのも無意味か……
こういう、「ホントのところ」を語らないのって、このゴールデンカムイって作品の真骨頂にも思うんだけど。
後々の伏線にもなるし、正しさをメタな立場からウエメセで俯瞰し裁定する者が不在なのだ。
絶対的な存在がいない。

サブタイトルの『遺骨』って、
月島の婚約者・満州に埋められた戦死者達・それに寅次、3つの意味があるのだな……
月島は、ホントは、彼女は死んだと思ってるようだ。
鶴見は戦死者達の無念に報いようとしてる。とりあえずその大義を掲げてる。
杉元は、寅次の遺骨は指しか持帰ることが出来なかった。*20

奥付その他

予告ページの絵の元ネタは、ザ・ドアーズの「StrangeDays」のジャケット。*21

その他目に付いた本誌連載時からの変更

■ 第141話 樺太アイヌ

  • 前回140話のラスト2ページ、鯉登がクズリに近づいて背中に跳びかかられるシーン、本誌では141話の冒頭だった。2ページまるごと、巻をまたいで早送りされた。
  • 右ページ始まりになったので1ページ分追加。コマ数は変更なくて各コマが拡大されてる。
  • 「杉元は射撃が苦手」のキャプションだったのが杉元のセリフに置き換わってる。
  • キロランケ。シルエットだったのがちゃんと衣装も描き込まれた。

■ 第142話 在留ロシア人の村

  • エノノカの算盤。
  • ロシア語がちょこちょこ変更されてる。

■ 第143話 スチェンカ

  • 谷垣の胸毛、増毛。
  • 岩息の登場。一コマ早い。大ゴマで光や靄のエフェクト追加。
  • 岩息の回想のコマが縮少されて、その分、殴り合いのコマが増量。

■ 第144話 劇突!壁デスマッチ

  • 扉、「100年にひとり」が「1000年」に、レア度10倍。
  • 「はあッ☆」のコマの背景。なんですかこの海産物トーン。

■ 第145話 ミスター制御不能

  • 冒頭、2ページ目からの殴り合いが4ページ丸ごと追加。

■ 第146話 ロシア式蒸し風呂バーニャ

  • 谷垣「ここは協力しなきゃいけないのにッ」岩息「協力だと?」のセリフカット。
  • 岩息殴ってるコマ、谷垣の股間のシルエットが追加。なんで毎回毎回単行本でいちいち股間のブツが強調されるんですかっ。ヲトメが喜ぶとでも思ってるんですか。……ええもちろん。
  • リュウがクズリに向かっていくページ追加。リュウが凜々しくなる。
  • 鯉登「猛獣と怪物が戦っとるぞ」のセリフのコマ削除。
  • 銃を構えた谷垣、口開けてたのが閉じてる。

■ 第147話 トドを殺すな

  • 水に落ちた鯉登の股間
  • バーニャを覗き込んでる子供達。
  • 尾形の顔がちょっと整った。本誌だと疎かにされがちなんだ……尾形の顔。上瞼と眉が常に平行になるのが正しいようだ。
  • アシリパさん「きっと生きている」のセリフ追加。

■ 第148話 ルーツ

  • 鶴見達のシーン、擬音や擬態がいくつか追加。
  • 鶴見「ああん」追加。
  • 二階堂のコマ追加。

■ 第149話 いご草

  • 冒頭2ページ追加。ツンデレ軍曹。
  • 月島が回想に入る直前の顔アップ追加。
  • 奉天会戦。砲台のシーンに樽が追加されてる。なんだろこれ。

■ 第150話 遺骨

  • 寅次を抱える杉元が遠ざかっていくページ追加。
  • 月島「死んでいった者たちのためにも」のセリフ追加。
  • ラスト6ページの小樽でのシーンまるごと追加。

連載時の記事

第141話「樺太アイヌ」
第142話「在留ロシア人の村」
第143話「スチェンカ」感想
第144話「激突!壁デスマッチ」
第145話「ミスター制御不能」
第146話「ロシア式蒸し風呂バーニャ」
第147話「トドを殺すな」
第148話「ルーツ」
第149話「いご草」
第150話「遺骨」

*1:まったくの私見だけど、福山雅治の『美しき花』って歌が私的な音之進君のイメージにピッタリだ。

*2:→『アイヌ学入門』アイヌ学入門 (講談社現代新書)、『北海道の歴史』北海道の歴史 (県史)……なんか。

*3:ゴールデンカムイ 12

*4:このあと延々と半年にわたってトーナメント戦が続いたり、とっくに死んだはずのヤツが出て来て「ずっとここで療養してたんだ」とか言い出したりはしない。

*5:アイヌばかりか尾形にまで。

*6:

*7:ザンギ連続技 ダブラリ3段4段 - YouTube ……っても私は格ゲーはちっともやらないので、実は「StreetFighter」のシステムはよく知らない。

*8:ちょーっと危惧したけど、これ、修正されなかったねえw

*9:鎌と槌 - Wikipedia

*10:インターナショナル (歌) - Wikipedia

*11:メーデー歌 - Wikipedia ……なんだけどこのメロディ自体は明治末の軍歌に由来するってのが面白いやね。小学校の応援歌に使われてたなあ。

*12:それを考えると、尾形ですら、救済されるべき憐れな咎人には思えないのだ。彼はウエメセの救済や祝福こそ最も嫌うのではなかろか?

*13:俺より強い奴に会いに行く (おれよりつよいやつにあいにいく)とは【ピクシブ百科事典】

*14:マナティジュゴンなんかの海牛類は、偶蹄目に近い草食動物。対して、トドやセイウチ、アシカ、アザラシは食肉目。

*15:尾形に殺されるためだけに137話まで生かされてたのかも知んない。

*16:不死身のジーグフリートのドラゴン退治の仲間だが、実はドラゴンの弟で、後にジーグフリート裏切る。

*17:ねずみに支配された島 | ウィリアム ソウルゼンバーグ, William Stolzenburg, 野中 香方子 |本 | 通販 | Amazon

*18:この、房内での鶴見と月島の対話って、8巻の鶴見と谷垣の対話をなぞってるし、また、11巻の、尾形と花沢の対話にも擬えられてるのは確かだよね。
尾形は花沢との後で鶴見とも顔合わせてるけど対話してない。しかも、月島や谷垣が、鶴見とちゃんと対話してるのに対して、尾形は死にかけた花沢パパ前に一方的に告解するだけ。そのへん、尾形の孤高、それも杉元みたいな自責の念から結果的に一匹狼になってしまうんじゃなくって、ハナから対話の相手を求めてないって猫科っぽい孤高さなんだ。

*19:この日が日露戦争の雌雄を決した日として、陸軍記念日と定められた。40年後に米国はこの日に合せて日本の首都東京への大空襲を実行したわけ。

*20:WW2中の話で、日本軍では戦死者を纏めて荼毘に付すので誰の骨かもわからない、それでも骨が帰ってくれば良い方、なんて状態だったので、同じ部隊の仲間が死者の指を切り取って持帰るという習慣があったそうな。いつからなのかわからないけど、日露戦争のときにもあったのかもね。→死体の文化史

*21: