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日々是々

アニメ「茨戸の用心棒」感想 ゴールデンカムイ

主人公のはずの杉元がいないのに、ちゃんとアニメ化してくれただけでも有難いw

元ネタが黒澤明監督の『用心棒』なのは言わずもがな。
用心棒の映画が110分もあるのに、よく24分で映像化できるなあと思うと、しかし金神のアニメシリーズも1冊分を2回で片付けてるので、まあそんなものか。

ちなみに、黒澤『用心棒』も、ダシールハメットの『血の収穫』が元ネタだったりする。
(田舎町で二つの勢力が全面抗争の一触即発なところへ、ナナシの主人公がやってきて、引っかき回して死屍累々、ってプロットはまんま3作に共通してる)

北海道の地理は全く詳しくないので、漫画やアニメに描かれる景色が現実なのかはさっぱり。
建物のいくつかは、「北海道開拓の村」にあるものらしい。

ストーリーはほぼ漫画通り。

日泥達……あれ法被の襟に「日泥」の文字が消えてら。
しかも最初のシーン、新平いるじゃん!
土方がチンピラ二人殺したの見てるんじゃん。

なんか、こう……土方のセリフに違和感あるんだよねえ。
チカラ入りすぎてるというか、いかにも「アニメっぽい」というか……
中田譲治なんてチョーベテランな方だけに。
(中田氏本人は、もうちょっと枯れたイメージだったのに、監督の意向なんだそうだが)
永倉も、どーにも、「エレメンタリー」のモーランド・ホームズっぽいので。もっと普段は好々爺装ってるように思ってた。

尾形と土方が目を合せるのはアニメならではの演出。

土方が千代の護衛役のチンピラ達を皆殺しにするのも、『用心棒』にあるシーン。

尾形「ヤクザが喧嘩に~」、あ、これ原作にない、オリジナルのセリフだ。

火の見櫓。
漫画だともっと遠くにあるように思えたんだけど、意外と近く見える。
単行本だと山本理髪店から火の見櫓まで60m離れてることになる。

『用心棒』の最初の抗争のシーンで、三船敏郎演じる主人公は、火の見櫓に上がって高みの見物決め込んでるんだ。
それが、尾形はここから撃ってくる。
傍観者から転じて最凶の射手って、正反対のキャラに。
こういうアレンジがつくづく巧い!

この、尾形が妊婦の千代子を撃つシーンが強烈なんだ。
実は永倉の変装なんだけど、尾形、それを知ってたわけじゃなくて、「恐らくそうだろう」って推測してただけ。
彼の冷酷さを端的に表わしてる。
戦友だろうと妊婦だろうと射殺に躊躇しない。
ヒルな渡り鳥というかコウモリ野郎。
その後、網走篇までずっと頼もしい真面目な軍人のように振る舞ってたけど、やっぱり彼の本性は冷血漢だ。
だが、そこがいい。

撃ち合い・斬り合い・殺し合いのシーンも漫画のままだ。
オリジナルの演出とかは一切なし。

終盤の新平との遣り取り……あれ、こんな感情的なセリフなんだ、ってちょっと意外。
これ、日泥が新平を撃ったあとに日泥殺してもよかったはずなのにわざわざ助けてるんだ。
後々、「あんこう鍋」のエピソードにつながる。
でもこの時点で既に尾形は父親も殺してるんだよなあ。
何故に新平にムカつくんだろ?
漫画だともうちょっと淡々としたふうに感じてたので、こんな本気で怒ってるようなのは意外だ。

付録の「ゴールデンカムイ質問箱・出張版」見てて。
……あれ、ヒトラーの真似って、ミスリードなんだ。
んーヒトラーは少なくとも仲間内には誠実だった(だから最後は自殺した)けど、鶴見はもっと利己的な、超人思想の持ち主ってことかな。
そもそも「戦死者達に報いる」ってのも後付けで、本来は、あんまり正義でも大義でもない動機で金塊を得ようとしてるってこと?
(尾形との会話からしてそういうことだよね)