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金神147「トドを殺すな」 ゴールデンカムイ

金神15巻の感想 ゴールデンカムイ - day * day

殴り合いって世俗の極みのような肉と肉の交流と同時進行で、崇高な対話が。

杉元は、結局は、神(のようなもの)を信じてるんだよな……
「カント オロワ ヤク サク ノ アランケプ シネプ カ イサム」、自分には天から下された役目がある、と。
だけど、梅ちゃんにしろ、寅次にしろ、のっぺら坊にしろ、周囲の人を守ることが出来ない、彼等のためになにもしてやることが出来ない。遣わされた役目を果すことが出来ない。
彼の怒りは、自分に役目を与えてくれたナニカを裏切り続けている自分自身への怒り。
*1

岩息は、まるで教誨師、聖職者のようだ。
どうして他人でタダの殴り合いの相手である岩息が、杉元に許しを与えることが出来るのかったら、人を許すとか、神のようなものは、個人の心の中に存在するものだから、だよね。
岩息は、杉元の中のナニカを代弁して、許しを与えたわけだ。

そして、水入り。
これって洗礼なんですかね。

……氷のはった水に落ちて、よくみんな平気だな……
なんかこの杉元と岩息、まるで、1巻の白石とのときのようだ。

そして再び、入浴グラビア……なんでみんなカメラ目線になるんだよっ!?
まだ杉元のいった「妙案」にこだわる鯉登。 結局、杉元は、岩息と戦いたくて、面々を黙らせるために「妙案がある」ってデマカセ言っただけなのね。
鯉登はそういう機微はわからない。月島はさっさと勘付いてたようだけど!

あのクズリの死体、ちゃんと捌いたのかな。

岩息「もっと強いやつを探しに行こうか」って、「ストリートファイターII」のコピー「俺より強いヤツに会いに行く。」を思い出させる。*2

ところで。
月島「樺太を出ろ」のコマ、よく見たら、月島の背景に描かれてるの、鯉登の股間というか陰毛……?じゃん。
絶妙な吹き出しの配置の合間にチラ見せとか、なにを描かれてるんですかっ先生。

尾形!
139話、2017年の11月30日発売のYJ53号掲載以来だから、2ヶ月以上ぶりの登場ですよ!
15巻分で最初の登場なんだああああ。
(14巻で最初の登場が137話で、15巻が147話だ……)

アシリパさん、取敢えず元気そうで良かった。
なんだかんだいって、みんなでサバイバルしてる。

二又の銛って初めて見た。
樺太で使われてるんだろか。

尾形の変顔って珍しい(笑)
相変わらず「ヒンナ」って言わない。
頭に当てても死なないやつもいるんだよ。
杉元とか。

アシリパ「今度強い奴を倒す時は頭を狙わないことだな」……って対杉元の伏線ですかね。
アシリパさんはしばし預言者になる……

そういや尾形の獲物で大きいのはせいぜい人間、あとエゾシカくらいなわけで。
ヒグマ猟の経験はなさげ(5巻では、単に追い払っただけだし)
ヘッドショットで仕留められなかった、って、悔しいだろうな(笑)

今回のサブタイは、フォークソングに由来するようだ。
トドを殺すな/友川かずき - YouTube
(大型の食肉動物はたいていそうだけど)人間との生存競争で個体数が減少してるし、今では国際的には保護動物に指定されてるし。

しかし、トドといって、私が真っ先に思い出すのは唐沢なおきのエッセイマンガ。ラッコの密漁していてトドに食い殺されたという親戚の話……昭和時代とは思えないワイルドな話。
海のギャングて言われたりもするし、単に憐れな絶滅危惧種ってわけでもない。
なんせ最大で1トンにもなる大型肉食獣だし。*3

再び、岩息と杉元……ってこの背景、トドとヒグマか(笑)

アシリパさんと白石がお茶してる店。
テーブルの上のオブジェは、サモワールて湯沸かし器。
ロシアつーたらサモワールで湯を沸かして淹れるロシアンティだ。

アチャ(ウイルク=のっぺら坊)は、結局、数々のナゾを残したまま死んだ。*4
いちばん真相に近いのは、キロランケなんだろうけどなあ。

キロランケ、最初はまるで鍛冶屋のレギン*5のように思えたのだけど。
後々でユダにも擬えられてたりするし?
彼がアシリパさんに対して見せる親愛の眼差しは、肉親ゆえの保護の感情なのか、それとも独立運動の道具としての所有なのか?

白石は、キロや尾形の謀略は知らないんだよね、きっと。
ところで白石、寒くないの?

結局、一歩先行してたキロ一行よりも、杉元達のほうが先に、岩息を見つけてるんだな。
岩息は白石に気付いて隠れてたのか。
でも、白石の目的が、刺青人皮(と金塊)だとは知らなかったと。

うーん、岩息、尾形と対話しようとして、殺されて皮剥がれたりしないですかね……
カソリックでは聖職者を神父(ファーザー)というのだよな。
尾形が父なるものを憎んでるとしたら、さながら聖職者のような岩息なんて恰好の獲物だ。
杉元「銃には勝てない」……なんてまるで預言めいてるじゃん。

そういや白石や岩息、ハゲなとこが聖職者っぽいよな。
白石はアシリパさんのカウンセラーみたいだし、岩息は教誨師みたいだし。
二人ともすごーく世俗的なのに。
他者に(読者にも)救いを与えてる。

そして最後は、アシリパさんと杉元の笑顔。
アシリパさん強いよなあ。

*1:対して尾形は徹底して無神論なんだ。
役目を与えるべき天すら否定しちゃう。
他者から与えられる祝福だの救済だのを否定する。それは親殺しに象徴されてるけども。
彼にとっては、天とか神とかにすがろうとすること、祝福や救済を求めること自体が、巣立つべき幼少時代、「いくじのなさ」なんだ。
彼の行動原理は他者からの承認の欲求でなくて、山のように高いプライドだよな。仕留めた獲物の死体を積み上げて独りで高みに登ろうとする。
特に銃だけど、銃に拘泥するわけでもない。獲物を狩る狩人としての自分、それこそが自分がこの世に存在する根拠だと思ってる。
彼には同胞愛って感情がないから、人だろうが鳥だろうがトドだろうが、全部、獲物でしかないんだよな。

*2:俺より強い奴に会いに行く (おれよりつよいやつにあいにいく)とは【ピクシブ百科事典】

*3:マナティジュゴンなんかの海牛類は、偶蹄目に近い草食動物。対して、トドやセイウチ、アシカ、アザラシは食肉目。

*4:尾形に殺されるためだけに137話まで生かされてたのかも知んない。

*5:不死身のジーグフリートのドラゴン退治の仲間だが、実はドラゴン・ファフニールの弟で、後にジーグフリート裏切る。