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日々是々

金神153「京都」 ゴールデンカムイ

金神16巻 感想 - day * day

夢は荒野を駆け巡る

気分はすっかり40年前の京都。
土井新蔵から人斬り用一郎に若返る。

いきなりウィンチェスターぶっ放してくる土方も土方。
相手が誰でどんな理由でここにいるのかもわかってないのに!
このジイさん、物騒すぎる。

用一郎の詳しいプロフは書かれないけど、岡田以蔵などが元ネタの、幕末の京都によくいた勤王派テロリストの一人であるらしい。
用一郎の為人、彼の懊悩については、司馬遼太郎の『人斬り以蔵』*1、や、その映画化、あるいは平田弘史の漫画化作品*2を踏襲して……るのかな。

とすると「先生」の元ネタは、武市半平太
人斬りは良いように手駒に使われて、最後には死に追いやられる……
まあ半平太と一党が捕縛された切っ掛けは、以蔵なんだけどな(司馬遼太郎によれば)
以蔵は斬首刑、半平太は壮絶な切腹を遂げることになった*3

用一郎、捕縛されたあと、どうやって獄を出て北海道まで辿り着いたのか、ちょっと気になる。
「先生」を売って免罪されたのかな。
本人、未だに、人斬り時代の結着に納得出来てない様子。
エゾシカ先生も戸惑っちゃう。
傍から見たら笑える情景なんだけど、なにか、笑えない。
なにも答えてくれないのは「先生」だろうとエゾシカ先生だろうと同じだし。
40年の断絶があろうがなかろうが、用一郎の問いに答えはなかったわけで。
所詮は人斬りなんて道具だし。それ以上になれなかったのが用一郎の悲劇なわけだ。
(「先生」を鶴見に見立てると、用一郎のスタンスに近いのって、名前も出て来ずに殺されてく「第七師団」、鶴見の部下のモブ達かな?)

そして政治を語り出す土方。

正義なんて所詮は独り善がりで、他の人々や、社会の有り様には関係ないのだなあ、と。

ここで出て来る「緩衝国」……榎本武揚の思想に元々あったのかな? 
このへんの日本史はまるで知らないけど。

前、佐藤優の本で解説されてたのを読んだなあ。*4
ロシアの「自治州」という存在について。
ロシア人は他国と直に国境を接したがらず、自国の周辺に広大な緩衝地域を欲するお国柄なので、自治州がその緩衝地域として置かれていた……と。
モデルケースとしてあげられてたのが、ハンティ・マンシ自治管区。(→ハンティ・マンシ自治管区・ユグラ - Wikipedia
自治管区になった後で油田が開発されてロシア有数の富裕自治体に。(ハンティマンシは「周辺」ってほど周辺でもない気がするが、まあ、ロシアからするとエカテリンブルクより東は極東なのかも知れない)
だからWW2後にロシアが北海道を占領していたら、北海道の東半分と千島・樺太を合わせて自治州として独立させていたかも、北日本民共和国とかいって、という話。そうしたら下手すると南日本よりも豊かになってたかもよ、と。
佐藤優のロシア贔屓の分はまあ割引くとしても、面白い説だと思ったものだ。

土方の構想もそれに近いのかな? 日本から見た構想だけど。
樺太・千島・北海道と合わせると資源も豊富だしね。
日露の両帝国の間にどっちつかずの自治州を、って考えは、キロランケとも共通してるんじゃなかろか。
土方がいう「日本」はなにを指すのか? 天皇(とそれを戴く政府)の主権、日本の憲法の及ぶ範囲かな?
満州や朝鮮、台湾とはまた違った、完全な独立国を構想してるっぽい。
土方は、アイヌ人、アシリパさんあたりを、天皇や皇帝と対等な国家元首に据えるつもりなんだろか。

壮大な構想に置いてかれて、急に「今」に帰って鎮火してしまった用一郎と、未だにかつての情熱を燃やし続けてる土方と。

ほとんど死にかけてるジイさんにわざわざ斬り殺さずとも、って気もするけど、これが人斬りの結着なんだな。

いつのまにかヤングジャンプ、デジタル本が同日配信になってる……紙本買うまでもないかなあ……

アニメ情報、キャラの新しい絵が公開されてるのね。
来週は、表紙&巻頭カラーですってよ!

*1:→『人斬り以蔵』

人斬り以蔵 (新潮文庫)

人斬り以蔵 (新潮文庫)

*2:

人斬り

人斬り

*3:作法に則って3回腹を切ったそうなので、武家の意地って凄まじい。

*4:『21世紀の戦争論


とか。