金神163「指名手配書」感想 ゴールデンカムイ
まるで幽鬼のよう。
引き続き、ロシア兵ヴァシリくんの視点で始まる。
トリガーに指掛けて撃つ寸前で躊躇うヴァシリ。
ここらでもう死亡フラグがっ
イリヤも死亡。
脇腹撃たれて、即死はしないけど致命傷には違いなかった。*1
15歳のキロちゃん。
既にヒゲ面だしピアス穴開けてるんだ。
1881年3月に15歳ってことは、1865か6年生まれ、リアルタイムが1907年と言われてるから、41・2才ってことに。
……もっと若いと思ってた……
投げた爆弾が馬に当って慌てるキロ。馬は殺したくないよねえ。
そこをすかさずフォローする……ウイルク。
貧相な顔のジジイに見えるけど、これが皇帝のアレクサンドル2世(→アレクサンドル2世 - Wikipedia)
遺影の写真*2だと大礼服着てる。
「ウイルク Wilk」はポーランド語で「狼」*3の意味だそうで。
キロランケの本名ユルバルスが「虎」の意味だから、狼と虎のコンビ。
ウイルクの傷は皇帝殺しの傷だった。
あー
21世紀の私は、その後のロシア革命からソ連の終焉まで多少なりとも知ってるけど、1917年より10年前にいる白石もアシリパさんも、そんな歴史は知らない。
白石からすると、キロちゃんは単なる皇帝の殺害犯というだけ。
ナロードニキやそこから派生した組織がなにをやったのか、彼らがどんな歴史を作ったのか。
血の日曜日やポチョムキン号の反乱が1905年にあったばかり。
まだ1907年なんだ……レーニンはトロッキーやスターリンなんかと共にボリシェヴィキ名乗ってメンシェヴィキと内ゲバしつつ、ペテルブルクやらヨーロッパやらで地下活動してるころ。
ウイルクやキロランケは、彼ら西方の革命勢力とは袂を分かって、東方に逃げてきたのか、或はこちらで流刑囚や少数民族、ユダヤ人達と結託するつもりだったのか……
14巻139話のキロちゃんの台詞、
キロランケ「金塊の情報を古い仲間たちに伝えに行くはずだったのに…」
の「古い仲間たち」というのは、アイヌや少数民族のパルチザンではなく、ナロードニキやその後のボリシェヴィキ、労働者代表会議のことだったりするん……?
元々彼らは帝政打倒を目差す革命家だったのに、いろいろあって極東の蝦夷ヶ島まで辿り着いたときには、ウイルクはむしろアイヌや少数民族の独立運動にシフトして行った、と。
キロランケはまだ革命の情熱に燃えている、というか金塊の情報で焼け木杭に火がついたんですかね。
――て、マヂでロシア革命までハナシ持ってくんですかあ??
虎がデカい風呂敷広げ始めてる一方で、二人っきりですごーく濃密な対決をしている山猫たち。二人のために世界はあるの。*4
なんだかんだでパーティメンバーの尾形の心配をする白石。
キロランケ「独りにしろと言われただろう?」
……うん、ソロにはソロの戦術があるんだよ……その時にはパーティはむしろ邪魔でしかないんだよ……
白石が持ってるの、イリヤのモシン・ナガンなのか。
アシリパさんはすっかり蚊帳の外。
ハナから、尾形が、ヴァシリを呑んでる。
尾形のほうが上手なんだ、狩人として。
人としてはダメなんだけど。
尾形の計略に陥る、ヴァシリ。
何がスゲエって、尾形、自分自身を囮にしてるんだ。
ヴァシリが一流のスナイパーだから、きっとデコイだと思うだろう、棺を見て屍体と入れ替ってると考えるはずだ、と。
ヴァシリがもっと考え無しのヘタレか、尾形の計略すら読める人物だったら、最初に撃たれてた。
あの位置からなら確実にヘッドショット狙えたはずだし。
尾形、完全に相手の力量を見抜いた。
雪を食べてる尾形、目の色が違ってて、コワイw
妖怪じみてるんだけど、さらに、能面の怨霊みたいだ。
人外や幽鬼の役。(→能面怨霊系一覧表)
「此世の者ではない」と。*5
死者の面をかぶり、屍体になりきってる。
……そういや尾形の顔、能面みたいだな。色白で無表情で。
尾形はあっさりと人間であることを捨てられるんだなー
一晩中、微動だにしない。
木化けじゃなくて、屍化け。
そりゃー屍体は勃起せんよなー。
――というか、猫?*6
人間を捨てられなかったヴァシリくんの負け。
当ったのは微妙な位置。
顎を撃ち抜いてて脳や動脈には入ってないような?
殺さずに、尋問するつもり?
*1:ライフルの弾丸は高速で回転してるので、体腔に入ると臓器を巻き込んでミキサーにかけたようにシッチャカメッチャカにするのだそうで。杉元や月島が、満身創痍なのに、腹や体幹には貫通創ないのはそのせいなんだね。腹に食らってたら死んでる。
*2:Alexander II by Levitsky - アレクサンドル2世 - Wikipedia
*3:→Wilk szary – Wikipedia, wolna encyklopedia、「Вилк」はポーランド語の発音のロシア文字表記
*4:尾形が父権的なモノ全てを憎んでるのなら、打倒皇帝、て、キロちゃんの思想にシンパするのもワカルんだが。二人の接点は父=皇帝殺しで、それこそ神殺しの物語に他ならなくて、革命ってやつだ。皇帝殺しのウイルクが、父殺しの尾形に殺されるって歴史の繰り返し。でも尾形って新体制を作ることには興味なさそうで、むしろ全ての社会秩序の敵、アナーキストになりそうな?
*5:能面、怨霊や幽鬼は、白目の部分が金や赤。
*6:以前、うちで、ネズミが家具の後に逃込んで出て来ない……そしたら猫がその前でず――っと待ってるんだ……3時間くらいして見たら、猫、その場で寝てた……そもそもそのネズミ、猫が外から持ってきたんだけどな! 結局、そのネズミ、翌朝におかんが捕まえて外へ放り出してたが。