金神169「メコオヤシ」感想 ゴールデンカムイ
山猫が見ている。
老夫婦の娘さんは、スヴェトラーナ。
「明かり」とか「聖なるもの」の意味だというから、灯台守の夫婦の娘には似つかわしいけど、なんか、アシリパさんと被るな。
そういや、日露戦争の日本海海戦で沈められた戦艦にもありましたっけ。
山猫の話が延々と。
とうとう原作中で、尾形、山猫にされてしまいましたよ……
元々、映画『山猫は眠らない』のシリーズがあって、で、作品の場外で山猫スナイパーって二つ名だったのに、芸者のほうに由来付けちゃったかー。
(作中の時代に、「山猫スナイパー」って言い方ないしな……)
……尾形、不思議と、いないとこで話題に上ること多いんだよな。
妙に人気だ。
今週は一言も喋ってないのに!
鯉登「山猫の子供は山猫」
こいつ、屈託なくそういうこと言っちゃうんだなー
軽率というか傲慢というか。
エリート育ちのお坊ちゃまで、自分が虐められたことないんだろ。
鯉登「あの性格だ」「私も大嫌いだ」 ……てのは、うん、ワカルw
リアルで身近にいたらイヤなやつだもの。
Twitter見てたら、何故か、「尾形の出自は秘密だった」「なのに誰かが師団中に暴露した」ことを前提にしてる人が少なくなくてちょっとビックリ。例えば128話でも、本誌連載のとき、土方の「谷垣源次郎から聞いているぞ」って台詞から、「尾形の秘密を喋るなんて谷垣はヒドい!」って感想をいくつも見掛けた。あるいは単行本の103話でも「勇作君が考えなしに兄様って言ってバラしてしまった」、とか。
これ……当時の軍隊はプライバシーなんかないし、係累思想信教交友関係なんか身上調査の書類に書かれるから、尾形の出自は師団内では広く知られてたろうし、秘密でもなんでもなかったと思うんだ。
各市町村役場に、兵事課って部署があって、徴兵対象の住民の身上調査書を軍に送ったり、召集令状を配ったりしたわけ。
家族関係って特に重要事項(反社会的だったり、政府や軍部に批判的な身内がいるのはちょっと芳しくない)だから徹底的に調べられたはずだし。
野田サトル氏もそれを自明として描いてるんじゃないかな? 土方も「公然の事実」って言ってる。「公然の秘密」じゃなくて。
*1
月島「くだらない軽口だ」 杉元「本当にくだらねぇな…」
月島や杉元は、イジメがキライ。
躊躇いなく「くだらない」って言える彼等は誠実だ。
谷垣も言い淀んでるのは、良識がある。
鯉登は嫉妬もあるのかな。鶴見が尾形を重用してたことに。
しばし、尾形と鯉登が対比される。
出自から性格から正反対だ。
花道もあるし。(→金神も画面に花道があるのだなあと気付いた話。 #ゴールデンカムイ)
鶴見の陰謀にいちばん深いところで関わってるけど、反目してる尾形。
鶴見に心酔してるけど彼の陰謀はごく浅いところしか知らない鯉登。
でも似てるところもあって、嗜虐的な点とか。尾形の場合は生来の気質だけど、鯉登は世間知らずなだけ。
杉元は、鯉登のようには尾形を嫌いになれないらしい。
初対面でいきなり殺し合いになって、いろいろあって、で、本気で殺されかけてるのに。
謂われのない迫害を受けた、ってちょっとは同情的になっちゃった?
杉元も、それに月島も、そういう迫害を受けた過去があるから。
でもきっと、尾形自身は、他人に対してはそういう軽口をいうタイプな気がする……
「あの性格」だし。
「山猫」て。
宮沢賢治の童話、『注文の多い料理店』や『ドングリと山猫』が有名だけども……
イエネコの起源は大陸のリビアヤマネコって言われてる。日本列島のイエネコは奈良時代に連れてこられた人為的な外来種で、元からいるヤマネコの種類は、ツシマヤマネコとイリオモテヤマネコだけ。
野生化したイエネコ、野猫を山猫ということもあるけど、オオヤマネコは現在の日本の領土にはいない。*2
でも、宮沢賢治が書いたのは、人を襲うくらいだから、オオヤマネコのはず。
日清戦争のときに、朝鮮半島からオオヤマネコを日本に連れ帰って、巡回動物園を始めた人がいたのだそうな。*3
それが木下大サーカスのルーツの一つだと。
だから、当時から日本でもオオヤマネコはある程度は知られていたかもね。
鯉登「山猫会社とか…」
wildcat campany は英語の成句。(→「wildcat company」に関連した英語例文の一覧 - Weblio英語例文検索)
上記の通り、日本では近代以前はヤマネコ自体があまりメジャーな動物じゃないので、慣用句は少ない。
鯉登君、士官学校行ってるし、薩摩閥だから、英語かドイツ語くらいは出来るはず。
月島「山猫は「芸者」を指す隠語だ」という話。
その前の鯉登の台詞の「山猫」にしろ、性的な意味よりもむしろ、身分を卑しんでるように思える。
当時、地位や財産のある人に、妾や庶子がいるのは当り前だったので*4、むしろ妾の出自や身分のほうが問題視される。
芸人や芸能人は河原乞食って言われるくらいに「下賤な」職業だったわけですよ。(ちなみに、歌舞伎役者や落語家も勿論のこと、華道の師匠もこの分類だったようで、このへんの感覚は現代と全く違うなあ)
タバコ入れになんで拘るんだ、チカパシ。
アシリパさんとチカパシ、考えることは一緒なのがオカシイ。
タバコ入れに、なにか、象徴的な意味が有るのかな?
キロランケ「お前の親父は」 自分の感想じゃなくってウイルクのことを話すキロ。
キロランケは、ウイルクに崇拝みたいな感情がありそうな。
うん、まあ、猫の肉は脂多くてマズいってのが定説だ。
そして新キャラ。
また濃いいいいいいい。
モデルは、ソフィア・ペロフスカヤですかね(→ソフィア・ペロフスカヤ - Wikipedia)。
元ネタのソフィアさんはインテリ階級の令嬢なんすけど、うーむ……
キロちゃんの好みの太めの女性ってもしや。
(『天空の城ラピュタ』のドーラ母ちゃんに似てるって噂もなきにしもあらず)
ゴールデンカムイに、ゴールデンハンド……
……なんで英語なの?
革命の話には、尾形は全く興味ない模様。
山猫を見つけて……撃とうとする。
尾形は、山猫に、母を見たのか、自分を見たのか?
山猫、出て来ちゃったよ……orz
*5
17巻分は、やたら尾形の物語が多くて、ファンとしては嬉しいんだけど!
なんで、こんなに尾形の物語を長々と綴るんだよう。
尾形の情念生々しく描いとけばファンが喜ぶと思ってるのかよう。
それはそうなんだけど。
もっとドライでクールでソリッドなやつじゃないのかよう。
まるで、杉元差し置いて、樺太篇は尾形が主人公みたいじゃないか……
尾形、「茨戸の用心棒篇」で、妊婦の千代子を撃ってるんだよな。
実は永倉の変装だったけど、撃った時点で確信はなかったはず。
尾形の冷酷さを端的に表わすエピソードでもあるけど、もしかして、千代子の子が「妾の子」(これも本当は違ったんだけど、この時点では、日泥の子という認識だった)だから、撃ったのかも知れないと思い至った。
つまり、彼は、自分に近い者、似た者を殺そうとする*6。それは自己嫌悪、自己破壊の願望があるのかもだ。
そんなに思い詰めないでくれよう。
誰か、彼を肯定してやってくれよう……「わか」ったり改心したり後悔したり治ったり、そんな「普通の人」にならなくたっていいんだって。*7
期せずして尾形を止めるのはやっぱり、アシリパさん。
最後のコマ、孤高に去っていく山猫の足跡と、皆と共に歩いてく尾形。
今週が合併号ってことは、来週は休刊であるらしい。
再来週の170話までが17巻分になるはず。
*1:このへん参照のこと。→
*3:→『明治のサーカス芸人は なぜロシアに消えたのか』
ヤマダ曲馬団のこととか出てくるよー。
*5:165話もだけど、こっちが好き勝手書いてる二次創作のほうとネタがカブるとちょっとツラい。これで最後の最後、一番肝腎なところで、決定的に意見の相違があったら立ち直れないかも知んない。
*6:もちろん縁もゆかりもなくても必要があれば躊躇なく殺す。