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日々是々

金神212「怒り毛」感想 ゴールデンカムイ

怒髪、天を衝く。
ってやつ。

会話主体のドラマが続いたので!
ひさしぶりに血みどろバトル回ですよ!
こういうのが見たかった!

いままで、映画撮影とかスチェンカとかサーカスとか、和気藹々と楽しくやってたのに。
飯を一緒に食おうが、同じ敵を相手に共闘しようが、一瞬後に誰と誰が殺し合ってるかわからない、って、このドライさ、殺伐もまた、ゴールデンカムイって作品の油断のならなさ――コワさ――魅力でもあるんだ。

アシリパさんを取り戻す」って目標で皆が一致団結してたのに、アシリパさんと合流したら喧嘩別れ。カノジョのせいで解散、って、どこのグループだ。
結局、アシリパさんの向こうに、それぞれ、別のものを見てるんだな……
アシリパさんが鶴見を嫌ったせいだけど、しかし、「鶴見が信用できない」っていうのは、実は、アシリパさんが今まで杉元たちに散々、吹き込まれてたせいでもあるよね? だって、読者であるワタシからすると、ウイルクだって鶴見と同類の、冷徹なマキャベリストでテロリストなんだけど、アシリパさんはウイルクの本性を見抜けてない、ウイルクの良き父親としての面しか知らないで、全面的に敬愛してる。

アシリパさんの「当て」てなんだろ?
往路に世話になった人たち?
ヴァシリじゃないよな?

谷垣が言うとおり、アシリパさんは村に戻れない。
というかコタンの人たちを、鶴見がどうするのかわかったものじゃない。

杉元、強え……
アシリパさん絡むとね。

杉元×宇佐美、杉元×鯉登……

宇佐美ってなにかヘン。なんでそこでそんな音がするの……
宇佐美と杉元、今回(と前回)が初対面で、いや、釧路で顔合わしてるはずだっけ。いきなりバトル。
……杉元、どのキャラともそうか。いきなり殺し合い。尾形、白石、二階堂s、鯉登、谷垣も。で、殴り合って仲良くなるかと思えば、ちっともそうならない。

杉元に銃突付けて、月島、ちょっと、間を置いた。
杉元が降伏すれば撃たないつもりだった、このへん、月島、ぎりぎりのとこで自我を持ってる。
でも杉元は逃走を選ぶし、月島も躊躇なく撃つ。

不用意に近付く、鯉登……これ、140話でクズリに襲われたときと同じパターンだし、204話の稲葉もそうだし、そもそも、第1話で杉元がアシリパさんに助けられたときにも出てくるし。

杉元「近づくなッ まだ毛が寝ていない」
(第204話「残したいもの」)

鯉登「逃げればこうなることはわかっていたはずだ」
「こうなること」って、杉元が撃たれること、だけでなくって、杉元がまた人を殺すことも予兆させてる。
もちろん鯉登にはそんな意識はなくて、杉元がもう行動不能状態だと思ってるんだけど。
アシリパさんは、杉元の「怒り毛」に気付く。
死の淵ギリギリにある杉元が、激昂に駆られる。
月島もまた察知する。戦場経験があるだけに。彼も「不死身の杉元」の噂を聞いてる。

そして。

杉元「俺は不死身の杉元だ!!」
出たッ
この台詞!!
この「ゴールデンカムイ」って作品を象徴する台詞ったら、これでしょう!!*1
アニメ2期でも最後の台詞だったし。

荒々しい筆致、1ページぶち抜きの大ゴマで。

杉元、躊躇なく鯉登の胸刺してる。貫通してる。
何発も撃たれてるのに。
三八式が三〇年式から引続き殺傷力弱めとはいえ至近距離だし、かすり傷ってわけにはいかない。咄嗟に、致命傷にならないように身体丸めて体幹部など守ってる。

大暴れして、また、アシリパさんを怯えさせてる、杉元。
アシリパさん、自分が自我を貫こうとすれば、杉元をなお地獄に追いやることになる、って。

鯉登……心臓は逸れたけど――というか杉元、正確に狙ってる余裕なかったろうけど――予断は許さない。
剣を振う余裕もない。

そういやこれ、第98話「薩摩隼人」で杉元が鯉登に撃たれたのと同じ場所か。杉元は貫通してない、盲貫銃創。鯉登の二六年式拳銃より、杉元の銃剣のほうが貫通力あるっていう。

月島「いつも感情的になって突っ走るなと注意していたでしょう…」
って、ここでの鯉登は別に感情的になったわけじゃない、単に不注意なだけ。
月島のこの台詞は過去の自分自身に言ってるように聞こえる。
感情的になって、父を殺したこと、鶴見を殴ったこと、鶴見を殴ったことで鶴見に誑しこまれたこと。
自分が感情に走ると、いつだって、後戻りできない、より破滅的な道に堕ちてしまうと、身に染みてるので、鯉登にはその轍を踏んで欲しくなかった。
月島、鯉登の兄・平之丞とほぼ同い年*2。この二人の間に、疑似兄弟のような交流があったのは確かだろう。
月島は、ベテランの軍曹として、新品少尉の鯉登を指導・補佐すると同時に、監視役でもあった。

月島(昨日は素直に聞いてくれたのに…)
あああ、ようやく、「昨日」つまり前々回210話の意味がわかった。
月島は、心のどこかで、自分が鯉登を殺したかった、あるいは、自分が殺すことになるだろうと思ってたのではないだろうか?
「早く鶴見中尉に会いたい」ってはしゃぐ鯉登を見る月島の微妙な表情が気になった。
もし、昨日、素直に聞いてくれてなかったら、少将にバラされる前に、月島は鯉登を殺さざるをえなかった。
その一方で、いつかは、鯉登が鶴見に背いてくれることを願ってるんではないか?
月島は自己肯定感が低いから、本心では鶴見は間違ってると思ってるんだけど、自分から鶴見に逆らうことはできない、ただ観客として「鶴見劇場」を見物するしかない。
自分では出来ない、鶴見への叛逆を、ひそかに鯉登に託してた。
だけど、自分の使命として、鯉登が鶴見に背いたら、自分が手を下すしかないとも思ってた。
自分の希望を託す相手を殺さねばならない、と決意することで、自分の忠誠心を再確認していた。
希望と忠誠心の二律背反ガチバトル
このまま鯉登が死んでくれれば、自分が手を下さなくてもよくなる。
月島の希望が潰えていく、同時に、彼の矛盾が解消される、カタルシスがここにある。

え、鯉登、死亡フラグ??
でもなーそういうフラグを全力でヘシ折るのがこのゴールデンカムイって作品……
鎖骨の下あたり刺されただけか。
杉元だって胸に月島の弾が貫通してるんだしな。
重傷だが致命傷とまでは言えないか。

ここでもし鯉登が死んだとしたら、彼の「天から与えられた役目」がなんなのかわからない。
キロランケを殺したことなのか、月島を鶴見から離叛させることなのか。
鯉登父はどうするだろなー
杉元を恨むのか。
使命を果すのに元より死は覚悟とはいえ、同行したいわば戦友に裏切られたわけだし。

二人の横を通り過ぎる鶴見。
一瞥くれただけ、っていう。

210話の。

鯉登「そんなに必要とされていたなんて嬉しいッ」
……いや、鶴見のホントの狙いは鯉登パパの権勢なんだけど。それわかってるのに、自分が必要とされてると思い込もうとしてる。
金神210「甘い嘘」感想 ゴールデンカムイ - day * day

鯉登「行け月島 私はいいから…」
……ってのは、鶴見が自分を介抱してくれると思っていたのかも知れない。
「そんなに必要とされていた」のだから。

だけどそれは錯誤だと、鯉登は気付くかな?
鶴見にとって部下たちなんてその程度。
鶴見は忠誠に値しない人物なんだって。

月島も、自身は鶴見劇場の観客のつもりでいたんだけど、実はタダの小道具に過ぎないと気付いたろうか?
小道具が観客になることはできない。

さらには、鶴見が語る、戦死者たちに報いるという言葉も、疑わしくなってきた。
鶴見にとって部下たちなんて捨て駒にしか過ぎないんじゃないだろうか?

210話。

月島「政権転覆や満州進出が必要不可欠ならば 彼について行ってる者たちは救われるんだから…」

の、「政権転覆」の語がなんだか唐突に感じたのだけど、これ、尾形のことを言ってるの?? その前の、「父親を殺せて満足したはずだ」の台詞と合わせて考えると。
尾形は将軍である父を殺した、その先は、アナーキストとして体制や秩序を全否定するのだろうと?
尾形は、花沢パパを殺したことで、結果的には満鉄の計画推進に加担してる。それは鶴見の満州進出にも沿うんだけど。

しかしだよ。
南満州鉄道、いわゆる満鉄って。ロシア帝国シベリア鉄道の東端の東清鉄道のさらに南満州鉄道部分(哈爾浜~大連~旅順)とその周辺の権益を指す。
東清鉄道は日清戦争後にロシアによって建設が始まったので、鶴見と月島が軍刑務所で出会ったときにはまだ、満鉄は影も形もない。
その時点で、鶴見の目的はなんだったのか。満州に自分の国を作ろうと、考えていたのかどうか。
鯉登が鶴見と出会ったときも、まだ、満鉄に日本は関係ない。日清戦争であの辺の利権を手に入れたはずだけど、三国干渉で、ロシアに横取りされてしまった。
日本が満州に本格的に進出するのは日露戦争の後、南満州鉄道の利権を獲得してから。*3
「戦友たちに報いる」って言い出したのは日露戦争以降のはずなので、戦前から鶴見についてる月島や尾形、菊田なんかは、それ以前の鶴見の目的を知ってるはずなんだけど、それはなんだったのか。
もしかすると、花沢将軍が、満鉄経営にノリノリだった可能性もあって、それだと鶴見が花沢将軍を謀殺する必要はなくて、むしろ花沢勇作を取り込んで花沢将軍を操ろうとしたかも知れない。
黄金を手に入れることがひとまずの目的であるのは確かなようで、それはなんのための資金なんだろう?
アイヌの黄金の話を知ったのはいつなのか。5年前のアイヌ殺害事件より前に知っていたのでは?
奉天会戦のときには、鶴見は既に刺青の囚人たちのことを知ってる。
ウラジオストクでウイルクが口にした「ロシア政府からの情報」というのも気になって、それが黄金の話なのか、どうか。アイヌたちが日本政府とコト構えるためにロシアから武器を買おうとしていて、その話が、ウイルクたちや、長谷川=鶴見にも伝わっていたのかも知れない。

結局、鶴見の「すべての最終的な目的」ってなんなのだろう?
月島は、鶴見の最終的な目的がなんであれ、「彼について行けば救われる」といってるんだけど、実は、月島自身、それすら内心疑ってるのではないか?
210話の会話は、なんだか、白々しい。「~はずだ」っていうのは本心疑ってるのを自分で無理やり納得しようとしてるように聞こえる。尾形の台詞と同じく。
月島だって、尾形が、「父を殺させてやる」だけで鶴見に従うとは思わないだろうし。
現に尾形は早々に見切りをつけて離脱した――まあ彼はもっと目的がわからないんだけど! 真にアナーキストで、トリックスターなだけなのかもだし?
作中で、もっとも理性的・合理的な人物として書かれてるアシリパさんも尾形も揃って、鶴見を見限ったって意味は大きい。

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今週の少年サンデーに、高橋留美子氏と野田サトル氏の対談記事の前編が載ってる。なんか……少年マンガの大ベテランと、野田氏の対談って意外な取り合わせに思える……そうか、高橋氏は鯉登推しか。なるほど、言われてみれば面堂に似てるわwww*4

ちなみに、サンデー本誌の対談記事は小録で、全文はどうやら、スマホのサンデーウェブリアプリのみの掲載らしい。
ざっと、文字数で2/3くらい。

*1:第185話「再会」で尾形に言わせるのが憎いんだ。ちなみに、これまでに、「不死身の杉元」って台詞で言ってるのは、杉元本人は10回で最多だけど、鶴見が7回、尾形が6回で、この3人がトップ3なんである。

*2:音之進が1886年生とするなら、月島や鯉登兄は73年あたりの生。

*3:このあと満鉄警備部門を前身にあの関東軍が創設されて、1906年生まれの「ラストエンペラー愛新覚羅溥儀を担いで満州国樹立するのが1932年。金神の時代からはまだ20年以上ある。

*4:高橋留美子というと、真先に「うる星やつら」なオールドオタク。いやスゴかったから、往時のうる星人気。アニメの箱が売り出されたのもこれが最初じゃなかったっけ? レーザーディスク33枚組とかですよ?