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日々是々

金神228「シマエナガ」感想 ゴールデンカムイ

サバイバル、厭戦論、それにドラえもん、って、なにこの闇鍋。

こういうのが、ゴールデンカムイって作品だよねw

ヒグマの足跡見分けるとか、杉元、着実にサバイバリストとして熟練してるじゃないですか。
ウイルク→アシリパさん→杉元、って、実地で知識や技術が受け継がれてる。

14ページ目、この絵は構図や台詞からして、そのまま「ドラえもん」(14巻「無人島へ家出」)のパロディ。コマ割りまで全く同じだ。*1
不死身だけど唯一射撃の下手な杉元が、勉強も運動も出来ないけど射撃だけは上手いのび太に擬えられてるのがウマイというか可笑しいというか。

その昔、70-80年代あたり、アウトドア、特に、無人島ブームってあったのですよ。
アメリカの新聞マンガや秋竜山のマンガの集成もあったし。
アニメでも「ふしぎな島のフローネ」とか「ピュア島の仲間たち」とか。
子供向けに「もし無人島に漂着したら!?」なんてサバイバルガイドも何冊も出てた(ただし信憑性はどーか)
タツムリの食べ方(数日、絶食させてフンを出させるんだってさ)とか、ロープワークとかさ。
露営するときは河原や中洲は厳禁、なんてのも憶えた! ……ってもキャンプすら行ったこと一度もない、宅キャンパーだけど。

この「ドラえもん」の話もその一環。ドラえもん、結構、サバイバルの話多いよね。未来の超科学と、人外の地との対峙がオモシロイ。
そもそも無人島ブーム自体、当時の、高度経済成長の余波の好景気とかピカピカキラキラの科学技術万能的な未来予想図へのアンチテーゼかもね。環境問題も騒がれはじめたころだし。

のび太は、10年経ってドラえもんが救助に来てくれたけど、ドラえもんのいない杉元は自力でなんとかするしか。

杉元「動物の油はほのかな甘味とまろやかさが」
当時の和人には、魚の胆や卵巣以外の、動物性の油脂って珍しいだろうなあ。
現代だと、バターだのラードだの生クリームだのってありふれてる。
脳ミソは60%が脂肪だから、アシリパさんがコダワルのも無理もないよねー。

ふと、寅次や梅ちゃんのこと思い出す、杉元。
杉元はすっかり戦争に倦んでる。
杉元「人間の若い男と同じさ……怖いもの知らずで好奇心があって好戦的で調子乗りだから」
杉元筆頭に、尾形も鯉登も谷垣も夏太郎も宇佐美も、そんなやつらばっかり。
月島から上は怪しくなってくる。
牛山や門倉は完全にオッサン。キラウシは中間かしらね。
しかし、鶴見、世代としてはオッサンのはずだが……?

杉元が汚れてくのに対して、シマエナガがなんだか太ってる……?
杉元、自分は飢えてもシマエナガにはちゃんと食べ物あげてたあたり、優しい……

念為。「食うために太らせてた」わけじゃないと思う。
恒温動物は基礎代謝にもカロリー消費するので、餌として食べた分以上のカロリーを溜めることはない。
シマエナガが、杉元と同じものを食べてるかぎりは、「太らせて」後で食うよりも、早く殺して食べて、餌の分のカロリーを節約したほうがマシ。*2
杉元、根は善良な小市民なんだよね……
たまたま体力的に戦場に向いてただけで、本来は、同輩の死を悼んだり、殺してくうことに強烈な罪悪感を覚える。

Twitter見てたら、シマエナガの太り方が一週間ではアリエナイという。
ということは、太ってるのは、杉元の食欲からきた幻覚であるらしい。

杉元「残っているわずかな…最後の力を」
……って、要は、今まで一緒に暮らしてたシマエナガ殺して食う気力ってことねwwww

なんかちょっと美味しそう。
焼きシマエナガ
食う直前になって救助が現れる、って、残酷なジョークwwwww
杉元もウパシちゃんも、当事者には笑い事じゃないんだけど!
杉元「いただきまぁす!!」の言葉が重すぎる。

アシリパさんは、情を移さないために、子熊と距離を置こうとした。
それは彼女が理性の人であるからだろう……将来の残酷な別れを予想して、最初から精神的なリスクを回避する。
杉元は考えなしに情を移して、泣きながら殺すはめになる。
罪悪感を背負い込んで、その罪悪感の分だけ彼には生き続ける理由が出来る。
「この傷の数だけ闇夜を駆けぬける」*3ですよ。

苦楽を共にした相棒を最後には食う、って、そういや、レンジャー部隊の訓練の伝説にもあったっけ……*4
それは、戦争の現実そのものかも知れない。

杉元が寅次に感じてるらしい強烈な罪悪感。
若い奥さんや小さい子供のいない自分が代わりに死ねばよかったとでもいうような。
サバイバーズギルト*5ってやつだ。
作中の戦場体験者たちが皆、少なからず感じているらしいけど*6、もしかすると寅次の戦死に、杉元は直接的な責任があるのかもね?
彼を守れなかったって、梅ちゃんへの負い目もあるし。

ドラえもん」のギャグの要素の一つ、未来の世界の猫型ロボットであるドラえもんと、のび太の、微妙に通じてない感覚。
ゴールデンカムイ』で全体に流れてる、誰も心から理解し合えないで勝手に想像して勝手に傷付いてるって諦観と相通じてるかも。
他人のココロは空想に過ぎなくて、ただ目の前の生き物との命の遣り取りって現実があるだけ。
杉元、一週間、独り言言って暮らしてるわけで。
シマエナガのウパシちゃんでも、バレーボールのウィルソン*7でも、相手は誰でもいい、ただ自分のイマジナリーを投影する偶像というだけ。
バレーボールよりか、シマエナガのほうが、イザって時は食えるけどね。

最後のコピーで「胸糞」とか書いちゃってるけど、現実ベースだから仕方ない。現実そのものが残酷な世界。
ところで、杉元は、シマエナガ、ちゃんと食べたんだよね?? せっかく殺したんだし。

ほろ苦いオチで終わりかと思うと、ヤングジャンプ巻末の質問コーナー。
こういうとこでシレっと「ファンレター」って書いちゃう作者氏、流石ですわっ。
(私が送ったぶんも保存されてるんだろなー大したこと書いてないんだからさっさと燃やしてくれればいいのに)
今週の質問に「ファンレター」って書いたのは、野田サトル氏と、フォビドゥン澁川氏。
あーそういやヤンジャン、『ゴールデンカムイ』掲載号は必ず買ってるけど、私が読むのってこのお二方の作品だけだなあ……
最後のページまで読者サービスに気を抜かない姿勢がステキ。

*1:
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ドラえもん (14) (てんとう虫コミックス)

ドラえもん (14) (てんとう虫コミックス)


念為、引用するためにちゃんと「ドラえもん」買ったよっ。

*2:畜養だの養殖だので、動物を飼って太らせるのは、本来なら人間の食用にならなかったり美味しくない牧草や飼料を、美味しい肉や乳製品に変えるため。動物の基礎代謝や排泄、さらに人間の労働力のぶんだけ、カロリー効率はマイナス。アイヌが子熊を飼うのも同じ。

*3:MUSIC -TVアニメ「ゴールデンカムイ」公式サイト-

*4:→【レンジャーは昔犬を食べていた|レンジャー訓練】とか。あくまで都市伝説ではあるが。獣医学部でも似たような話はあるし→【大学で一番辛かった授業 ビーグル犬の外科実習 | +獣医のペット病院ウラ話!?

*5:サバイバーズ・ギルト - Wikipedia

*6:たぶん尾形は別。

*7:キャスト・アウェイ - Wikipedia