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日々是々

金神250話「打ち上げ花火」感想 ゴールデンカムイ

上エ地ぇ……

サブタイにもなってる花火、やけに存在感大きい。
現代人からすると花火って単なる祭りの余興だけど、彼らには、もっと、神々しい出来事のように捉えられてるようだ。
たった一発なのに、なにか天啓のような。
白石なんか冠り物まで脱いでるし。
複数の場所で様々な人々のドラマが同時進行してて、それが一つの啓示的だったり破滅的だったりする出来事でまとめられる、ってのは、よくある展開だけど。*1

なんで上エ地の回想とか……
実は高級軍人のお坊ちゃまとか、意外な生立ちだ。
ちょっと唐突すぎる気がしないでもない。
父親との関係は、ちょっと尾形にも似てる……というかチビ圭二が尾形そっくり。P14の彼、初見、尾形かと思っちゃった。P13が尾形のコマで終わったし。
しかし尾形のようにエキセントリックすぎる過去よりは、もうちょっとリアルな人間ドラマを書いてるのかな?
上エ地は「がっかり」がキーワードのようで。
父に激しく責められたり月島みたいに暴力振るわれたり、或いは尾形みたいに完全に無視されたりするわけでもなく。
強権的、抑圧的ではあっても、そんなにヒドイ父にも思えないのだが。
チビ圭二、どんな問題を起こしたのだ。飼い犬の存在が不穏なんだけどっ!?
例えば、同級生らに虐められて、犬も殺されてしまったとかね? それで復讐したら、彼のほうが責められた、のかな?
あるいは、学校で起こした問題で、親がしつけと称して飼い犬を殺したのかもね?(子供のころ飼い犬を親に殺された、というのは、上エ地の元ネタであるウェイン・ゲイシーにあるエピソード。子供に限らず虐待のパターンで、相手のペットや大事にしてるものを殺したり壊したりてのはよく聞く。相手を絶望させて、自立心を殺ぎ、支配しようとするのだ。)
なぜに彼がシリアルキラーになったのか、今のところはまだわからない。

彼も、父親が神の似姿として書かれてるのだね。
父は神の似姿であり、上エ地本人も、他者に支配的で神の様に振る舞おうとする。
顔面の刺青は、もしかして、現代以上に強い、「身體髪膚。受之父母。不敢毀傷。孝之始也。」な儒教道徳への反発なのかもね?
とすると、いろんなルーツの文様をごちゃ混ぜにしてるのが安っぽいと感じたけど、文化へのリスペクトではなくて単に親への反抗心ってことかな?
なぜに花火に反応してるのだろう?
涙まで浮べて。
もしかして、父親が日清・日露の戦争で爆死したか、もっと卑近に花火の事故で死んだとかあるんだろか。
母親の存在が希薄なのはいつもの通り。*2

杉元、尾形のこと好きすぎだろう……
片時たりとも忘れないなんて……
杉元が尾形に向ける敵意は、単純に宿命のライバルという以上に別の感情があるような。アシリパさんを殺人者にしかけたことだろか。
杉元にとってアシリパさんは絶対に無垢なアイドルでなければならないから。
しかし、アシリパさんはアイドルでいるよりは杉元と対等な相棒であることを望んでいる。
アシリパさんも杉元も、尾形の家庭の事情なんか知らないので。彼がアシリパさんに誰を重ねているのかわからない。なぜに咄嗟に尾形がアシリパさんを否定しようとしたかも。
いつも合理的で冷徹な尾形が、感情的になる理由も。
短絡的に結論を出そうとする杉元に対して、アシリパさんは彼の内面を探ろうとしている。
父の仇敵であり、自分をも殺そうとした尾形を、憎みきれないアシリパさん。

彼らは知らないのだけど、もし尾形の目的がアシリパさんを殺して皆をがっかりさせることだったとしたら、その千載一遇の機会は既に第246話にあった。
そこに現れた勇作さんは、あくまで、尾形の脳内の存在に過ぎない。
しかも尾形の前に現れる勇作さんは、尾形を責めたり恨んだりするわけじゃない。尾形は勇作さん殺しそのものについては、罪悪感がないようだ。
従前、本能的な倫理の希薄な尾形に対して、アシリパさんが外挿的にスーパーエゴというか導き手のようになるんじゃないかって思ってたけど、その役目は勇作さんなのかもね?

しかし尾形の目的は未だにわからんっ。
P6からすると、今はどこかの屋内にいる模様。
うーん。
彼は何が目的で、一行につかず離れずなのか。
鶴見を撃ちたいなら、網走でその機会はあったはずだし。
どこかグループにつくとしたら、ヴァシリともども、ソフィア組に入るのかなあ、とちょっと思った。

ところで宇佐美。
宇佐美「こんなに広いと精子が足りないな」
いやここで射精する必要ないでしょ……? まだこの場所では犯行が行われてないんだから……
公道でプレイするのがクセになってしまったのか……
門倉 ジャック・ザ・リッパーよりもヤバいッ
女性切り刻むシリアルキラーよりもヤバイって言われちゃう、宇佐美ん……
*3

宇佐美、門倉が土方と組んでるって、いつ知った?
網走のときは知るチャンスなかったよね。
門倉の態度から即攻撃態勢になる宇佐美すげえ。もしかして、鶴見隊では一番、戦闘力高いのかもね。
銃床の一撃食らっても、宇佐美の胸倉掴む余裕のある牛山もスゲエけど。*4

ところで、ジャック・ザ・リッパーことオストログ、刃物剥き出しでうろついてるん……どこかの部屋に誘い込むんじゃなくて。
20年前のロンドンの事件だと、「公式の5人目」メアリー・ケリーは屋内で殺されて時間をかけて解体されてるんだけど。

*1:横光利一の「蝿」とかね。「歌っているのは誰?」や「マグノリア」みたいに映画でもある。

*2:何年か前の授賞式の動画が興味深くて。野田サトル氏が(声+髪の毛の先っちょだけとはいえ)出てる希有な動画だけど。親について聞かれて、え、そんなこと仰るんだ、と、ちょっと意外だった。ご両親、その会場にいらしてるのに。

*3:切り裂きジャック 127年目の真実 (角川ebook nf) (角川ebook nf)」によると、ロンドンの事件の当時、現場で拾われた被害者のものとされるショールに、精液と、尿道上皮細胞の一部がついてるそうなので、恐らく犯人がそこで射精したと推定されてるしね。まあホントにそれが被害者の遺留品だったのか、100年の間にコンタミしてないのか、などなどと疑問は多いが。さらにその細胞のDNAは、当時の最有力容疑者の親族と一致する点が多いというけども。

*4:この歩兵小銃、銃剣付ければ手槍になるし、銃身握れば鈍器に、そしてもちろん飛び道具にもなるって、いろいろ考えられてるんだと感心した。