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日々是々

金神263「海賊房太郎こと大沢房太郎」感想 ゴールデンカムイ

まさかの展開。

杉元「え…? 菊田さん?」
のコマの杉元の顔がイイ、というか初めて見る表情だ。
戸惑いを浮べて、しかし怒りも恐怖もない。
古い知人を見いだして、安堵の感情すら籠もってる。

杉元、1903年に入隊してるから当時21(数え)、1883-4年の生まれとして、故郷を出て放浪してたのが1899年~だそうだから*1、菊田さんと知り合ったのはその後らしい。
菊田、「ノラ坊」の名前を今まで知らなかったんだから、軍とは関係ないところで知り合ったことになる。
「地獄行きの特等席」って2人のキーワードらしい。

1902年にはもう鶴見の陰謀仲間だけど、この時はまだ戦前だから満洲がどうのって話はないので、鶴見の陰謀の目的は戦死者に報いるという話ではない。
7人のアイヌ殺害事件は1902年……この事件自体、鶴見が、捜査というよりも犯行自体に関わってるんでは?って気がしてるんだけど!
(ウイルクが何故、自分の犯行じゃないのに、真犯人をかばって収監されたのか、よほど縁のある相手じゃないのか、だとしたら長谷川さん=鶴見が真犯人でそれを庇ってる、としたら筋は通る……しかし、黄金を渡す相手は鶴見ではない……と思うけど、でも、アシリパさんに黄金を渡したいにしても漢字の日本語の音読みを知ってる人がサポートにつくことが大前提だし、でもそれは土方ではないし、キロランケもアヤシイので、可能性が高いのは鶴見か門倉になっちゃうじゃん……)

菊田「危ないです 鶴見中尉殿」
きっと鶴見、菊田の離叛に気付いてて、だから杉元諸共、撃ったんだよね。

そして房太郎のフィナーレ。
房太郎「海賊房太郎こと大沢房太郎のおかげだぞ」
最期に本名で名乗るとか。
「海賊房太郎」はあくまで仮の名に過ぎない、大沢房太郎として彼は生を終える、と。

何故、房太郎が、「自分の名を残したい」といいつつ、王国を目指すのか謎で。
名を残したいってのは、不死願望の一種だ。
政治家や実業家などで名声を博すとか、逆に、大悪党として名を残すとか、義賊を目指すのでなくて。島を買って自分の王国を作りたいというのは何故だろうと。
世間からハブられたので、一から自分の国を作りたい、というのは感覚的にはワカルにしても、理屈では筋が通しにくい。
「海賊房太郎」というのは、世間からつけられた悪名だから、だろうか?
「大沢房太郎」こそが、家族から受け継いだ「真の名」であると。
彼は徹底して血縁主義だ。名を残すために血を伝えたいという。
白石にも、伝記作家やジャーナリストとして名前を広めるのでなしに、あくまで子どもに、っていう。

名前、というのが一つのキーワードなんだろか?
海賊房太郎は大沢房太郎にもどった。彼はその名前を伝えて欲しいと、白石に言い遺す。
菊田は今まで「不死身の杉元」を自分たち鶴見隊の敵だと認識していたけれど、古なじみの「ノラ坊」の名を思い出す。

名前、に対してのコダワリは、作品全体、多くの登場人物で見られる……
名前、特に下の名前、イミナとかファーストネームとかは洋の東西、伝統的に、神聖で、その人の本質に結びつくものとされた……「燃える命」なわけですよ*2
ウイルクのアイヌ名にしても、アシリパさんの和名にしても、ただの名前ではなく、物語を転換させるキーワードになってるし。
杉元は「不死身の杉元」と名乗りを上げることで自分を鼓舞している……ホントは自分は役立たずの臆病者でしかないと思っていて、そこで「不死身の杉元だ」と叫ぶことで「不死身の杉元」という存在に変身する。特撮のヒーローのように。*3
逆に、ほとんどのキャラの母親の名前が今まで出てこなかった*4こと、宇佐美だってあんなに和気藹々としたファミリーなのに家族の誰も名前が出て来ないこと、なんてのは、あえて名前を消されているのかもね? 鯉登ユキさんは出番ほとんどないのに名前が出てくるのに。
そして、尾形・月島・鯉登・宇佐美はそれぞれ、鶴見の前で下の名前が明かされる。鶴見は彼等の名付け親のように振る舞うし、彼等はまるで鶴見の「子」だ。

とすると、房太郎が白石に「脱獄王で終わるんじゃねえぞ」といったのは、「大沢房太郎」の名乗りと対になってる。自分を卑下するな、汚名を背負ったまま終わるなってことだよね。
虎は死して皮を残す、人は死して名を遺すというけど、房太郎、名前も皮も遺した。

なんか、白石、(ジョジョの)スピードワゴンみたいだな……

最後の最後にソフィアさん乱入!ってところで今年1年の連載の終わり。
2020年は、第226話「聖地」から始まったのでした。

  • 連載開始した2014年が#1「不死身の杉元」~#18「救出作戦」、18話、
  • 2015年#19「駆ける」~#62「替え玉騎手キロランケ」、44話、
  • 2016年#63「モンスター」~#102「稲妻強盗と蝮のお銀」、40話、
  • 2017年#103「あんこう鍋」~#142「在留ロシア人の村」、40話、
  • 2018年#143「スチェンカ」~#185「再会」、43話、
  • 2019年#186「忘れ物」~#225「貧民窟」、40話。
  • 2020年#226「聖地」~#263「海賊房太郎こと大沢房太郎」、38話。

今年はアニメ3期もあったし。
終盤に向けて掲載ペースが下がった?
作者氏の以前の発言から類推するに、今年中には終わりそうだけどなあ……

新年最初の2021年6&7号(2021/1/7発売)は、ヤングジャンプの通巻2000号になるんだそうで。
週刊誌だから約40年、1979年創刊だそうですよ。
1000号毎の記念号は約20年に一度だから、その誌面に『ゴールデンカムイ』が載るっていうのが、ファンとして嬉しい。

ヤングジャンプ 2021年 1/29 号 [雑誌]

ヤングジャンプ 2021年 1/29 号 [雑誌]

  • 発売日: 2021/01/07
  • メディア: 雑誌

*1:ファンブック

*2:「Beautiful Name」

*3:あるいは、もしかすると、「不死身の杉元」というトゥレンペ、憑き神を降ろしてるのかも知れない。

*4:ファンブックで尾形やアシリパさんは明かされてたけど