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日々是々

金神305話「迷い」感想 ゴールデンカムイ

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尾形と鶴見はなにをやってるのだ。

車内で牛山×月島、土方×鯉登のバトルが繰り広げられてる間、屋根の上でもなにかトンデモナイ修羅場が進行してるのではないか……?
尾形と鶴見、前回に引き続いて、いったいどんな話をしてたのだ。

303話からの皆の位置を見てみると。

■ 303話

  • 303話 P4

    全体図。

  • 303話 P15-16

    月島が3両目後方へ投げられる。
    杉元が牛山たちを追い越して前方へ。
    車両を移ろうとしてるアシリパさんと白石を、鶴見が見ている。

  • 303話 P17

    鶴見の背後から尾形が声を掛ける。

■ 304話

  • 304話 P2

    位置関係は前回ラストと変わらず。

  • 304話 P11

    尾形と鶴見の痴話喧嘩。

  • 304話 P14

    月島が牛山に投げられて尾形と目が合う。

■ 305話

そして今回。
屋根の上の人影が、誰かわからなくしてあるので、非常に解釈に迷う。
サブタイ「迷い」、ここにもかけてあったのか。
単純に考えれば作画ミス*1なんだろうけど、いや、そう思わせるトリックかも知れない。
ただしP13はどう考えてもミス。
P17の絵と明らかに矛盾するし、位置関係からしてP17のほうが正しい。

あるいは、屋根の上に、尾形と鶴見以外の第三者がいる可能性も、なくはないのだけど。


■ 擦れ違い説。
作画が(P13以外)正しいとするなら、尾形と鶴見、前後が入れ替っているのではないだろうか?*2
だとすると、あえて人影を曖昧にしてるのもわかる。

  • 305話 P1

    前回から2週の間に、尾形と鶴見が擦れ違って鶴見のほうが前方に来てる。尾形には今すぐ鶴見を殺す動機はないし、鶴見にしても絶対にここで尾形殺さなければならないわけでもないので、擦れ違いもあり得る。
  • 305話 P8

    更に、尾形は後方に。

■ 作画が正しいとすると。

  • 305話 P1

    尾形、2両目に移動、鶴見が後を追う。
  • 305話 P8

    鶴見が尾形から離れる。月島、3両目前方に投げられる。
  • 305話 P13

    車両を数えると2両目で爆発してることになってるけど、P17からして爆発があったのは3両目の先頭のはず。

尾形と鶴見がキャッキャうふふと追っ掛けっこしてるらしい。


■ 作画ミス説。
単純に、P1、P8、P13は作画ミスしてるとする説。屋根の上の絵、車両が1両ずつズレてる。

  • 305話 P1

    鶴見が4両目に後退する。
    鶴見がそこで退くのか。尾形に「責任取って!」と詰め寄られて逃げる鶴見、それはそれでエモいぞ。
  • 305話 P8

    鶴見は尾形から遠ざかろうと、更に列車後方に移動する。

■ 以下共通。

  • 305話P9-12

    月島、手投弾受け取って投げる。
  • 305話 P13

    爆発。
    汽車の進行方向がよくわからないけど、おそらく下が前。
    牛山と月島がいるのは3両目なので爆発も3両目。この絵だと2両目に見えるのだけど。
    屋根の上の人影は1人しか見えない。尾形か鶴見のどちらかは5両目の最後尾まで下がったか、屋根から下りたか、爆発に巻き込まれて吹っ飛んだのかも知れない。
  • 305話 P17-18

    杉元が3両目と2両目の間にいて3両目の屋根が壊れて煙が出ている。
    そして、クマ――!
    ここでも屋根の上の人影は不明。

車内でのバトルの間に、尾形と鶴見の間になにかあって、二人のうちのどちらかは屋根から下りたようだ。

牛山、月島を何度も捕まえて投げ飛ばしてるけれど、手加減しているようだ。殺す気なら月島を捉えたときに頸椎をへし折ることもできるのではなかろうか?
一方で月島は銃床で殴ったりだの銃で撃ったりだの手投弾だの、本気で牛山を殺そうとしてる。
このへん、牛山はあくまで武術家であって、殺人者ではないのだな、と。
月島がタフだからまだ動いてるけど、普通だったらとっくに戦闘不能状態のはず。

この間、土方と鯉登はずっと4両目で戦ってる。
鯉登と、土方・永倉との剣戟はずっと期待してたけどね!
鯉登、身が軽い……チャンバラでそれってアリか。
P2-3、正面の突きを身を逸らせて躱して、真っ向上から切り下ろされるのを、後ろ上方に跳んで避けて座席の背に着地するとか、どういう軽業だよ。
ぎりぎり、現実味のあるアクションなのが見事。
さすがに娯楽作品ではオヤクソクの、「相手の刀身の上に乗る」なんてのはやらない……剣術も、彼の覚悟も嘘くさくなるしね。
決意を固める鯉登の襟章がアップになる。
彼も27聯隊の将校なのだなあ。

鯉登が傷を負う。
この作品全体、うっすらと、「傷はトラウマの象徴」*3みたいな法則を感じるのだけど。とするなら、この鯉登の傷は、部下たちを守り切ろうとする決意かも知れない。
恐らく土方は鯉登の顔、眼を狙ったのだろう。犬童戦のときも目潰しを狙ってたし。
左眼ぎりぎり、でも鯉登は躱そうとしてない。眼に当たらなかったのはただ運。
鯉登の上段からの打ち込みを土方が上で受ける……片足上げてるから受けにくそう。

そして土方。若輩者にはひたすら優しい……
そうか、「死人」か。
この『ゴールデンカムイ』って作品全体のテーマが、サバイバル=生存競争だったと思ったのに。
土方や月島は捨て身で戦ってる。
牛山は自分に自信があるので、自分は負けないと思ってるし。手投弾すら受け止めちゃうんだから。
杉元すら、もう、黄金だの梅ちゃんのことだのどうでもよくて、今はただひたすら目の前の敵を減らすことを考えてるっていう。アシリパさんのために。
サバイバルがエゴイズムだとしたら、「誰かのために戦う」というのは利他的な「愛」だ。
この時点で、「自分のために」行動してるのって、尾形だけだ……しかも権威や秩序を否定したいって、まったくの自己満足でしかない、究極のエゴイズム。
鶴見は未だによくわからない。

そういう意味では、自分の命に恋々としなかった勇作さんは「迷い」のない「死人」そのものだったのか。彼は部下たちのためのアイドルであろうとした。
しかしそれって彼の決死の覚悟、などとカッコイイことではなくて、恵まれすぎたゆえに自分のアイデンティティ、自我へのコダワリを持たないで済んだ故かも知れないね。

*1:この手のミスはたまーにあって単行本で修正されるしね?

*2:リバとかつい言いたくなる乙女心。

*3:ヒゲは人生経験、髪は気質。