金神312話「分け前」感想 ゴールデンカムイ
未練がましいのは承知の上で。
7年前の東京の件、杉元も鶴見も互いの関係を知らないんだっけ。
唯一、菊田さんだけが知ってた。
仇討ちとか簡単に考えちゃう夏太郎はまだまだ青い。
夏太郎は土方に憧れていた。それを奪われた悔しさを「敵」にぶつけたいだけ。
土方と共にいようとした永倉の心情とは違う。
近接にしろ銃撃にしろ弁舌にしろ、ありとあらゆる手段に長けてる鶴見、さすがなんだよな……
鶴見、杉元の頬肉、ちょっぴり囓ってるよね。
ボルト抜きの技、もしかして、鶴見が尾形に教えたのっ？
わざわざ相手に見せ付けるポーズまで含めて。
鶴見の提案……この鶴見の言葉に嘘はない。もう一人の部下もいなくなった。
彼が最後に会話した部下が尾形というのは、ひどく象徴的だ。
彼が機関車を切り離したのは、まだ残る部下達を見捨てたというよりは、鯉登や月島を代表として、彼らを解放した、と取れるのではないだろうか？
もうこれ以上、彼らを付き合わせて犠牲にする道理はないと。
自分一人なら満洲に渡って再起を図れるけれど。
彼にとって黄金や権利書は、計画のごく初期段階に過ぎなかったはず。
鶴見の大義って、満洲進出――要は侵略戦争なのだろうか？
妻子の復讐、日露戦争の兵士たちの吊魂も兼ねて。
部下たちへの最後の「愛」として彼らを解放したのかも知れない。
ウラジオストクでフィーナさんやオリガちゃんを逃がそうとして出来なかった。それはフィーナさんが幸一を本気で愛してたから。
フィーナさんの互恵的共感的な愛が長谷川一家の惨劇を招いたのだとしたら、鶴見にとってそのような愛はむしろ不幸でしかない。
だから、部下達とは、欺瞞的、打算的な「愛」、いざというときは一方的に切捨てられるような絆を結ぼうとしたのかも知れない。
尾形みたいに愛をこじらせていろいろやらかすやつもいるので！ だとしたら、宇佐美の搾取的で加害的ではあるけど忠誠の「愛」のほうがマシだった。少なくとも宇佐美は幸せの絶頂で死んだのだしね。
この『ゴールデンカムイ』って作品、一番最初は、杉元は200円、アシリパさんは父の仇討ち、って、ごく個人的な目的の冒険譚だった。
それが1巻4話の尾形の登場で、第七師団の関与が明らかにされた。鶴見の背負う大きな物語が提示される先駆けとして尾形が登場した。
8巻冒頭の土方組の座談会で、大陸のパルチザンだのの存在も明らかになる。その場にも尾形がいる。
尾形が、ありとあらゆる陣営を渡り歩いてて、鶴見も土方もソフィアもキロランケも、そもそも杉元の「惚れた女のため」って目的も最初から知ってるし、ついでに彼らの大きな物語とは全く独立したヴァシリの存在と目的も気付いてた。彼は往々にして第四の壁に抵触して、全体をウエメセで眺めていた。
それが、ソフィアや土方も死んで、彼らの大きな物語が潰えていく、尾形の死はそれを象徴してるようにも思える。
尾形の退場と共に、ストーリーは杉元とアシリパさんの個人的な物語に立帰った。
とするなら、尾形は、ミザリーのように無理やり生かされてきたキャラではなく、大きな物語の始まりと終幕を告げるために最初から用意されたのかも知れない。狂言回しが彼の「天から与えられた役目」だと。
彼が最後に口にする目的が、軍組織の権威の否定、つまりは大きな秩序の破壊だというのも象徴的だし、それを鶴見に理解されたことで彼の真意は大願成就してしまったのではないか？と。
ならば彼の死は、オキニのキャラの死としては悔しいのだけど、納得するのではあるよ。
8巻の表紙が尾形であるのは、狂言回しであることの暗喩かも知れない。*1
彼があらゆる秩序を否定しようとするサタンのようでもあるし、世界の初めに作られて終末を告げるリバイアサンのようでもある。（そして終末の後に屠られて人々に二次創作の糧を与える）
そして権利書。
結局、黄金が土地に変わったところで、それを巡って殺し合いになるのは変わらないじゃん。
カタチあるもの、誰かが所有し独占できるものを神と崇めることの愚かしさというか。
うーん、土地以外にも、もっとマシな残し方はあるように思うのだけどね。
それこそ言語や民族文化そのものの研究や継承の事業とかさ？ 現に今行われてるような。*2
土地問題はその一部だ……
どうせ白石がポケットに砂金を隠してるだろうと思ってたけど、杉元もだったかっ*3
これは土方が犬童にしかけた手のリフレイン……土方の兼定をふるうのも同じだ。
「ドシュッッ」とか、イイ音してるなあ。
どこを斬ったのか。
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原画展って、原作展とは別の、アニメの原画展か。
これも気になる～
の割に扱いが小さくないか？
今週の質問……え、オーバールックホテル？
ちな、キューブリックの『シャイニング』のあのホテル、全てセットっていうのものスゴいんよね。
