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日々是々

金神 9巻の感想 上 ゴールデンカムイ

ゴールデンカムイ ネタバレ 尾形百之助 単行本

8巻の途中あたりからヤングジャンプ買い始めたんですけどね。
続きが気になるし、カラーや扉のアオリなど単行本に収録されないものが結構多いのと、あと単行本になったときにどこが修正されるのか気になるのと。
今巻は特に、単行本になるのが待ち遠しかったのですよ。

今巻は短いエピソードが続いて、人間ドラマ主体で面白い。長い物語の中の大きな転換点という気がする。もちろん熱いアクションもあるよ!
江渡貝邸での会合とバトル、それから短い休憩、“脱獄王白石”、“新撰組の再会”、そして“ニセモノたち”……

ワタシ基準のごく主観的近視眼的な今巻の見所は、尾形の大活躍。登場人物で一番にお気に入りなので嬉しーい。
今まで主役に対峙する仇役が多くて、散々、彼の強さを見せつけられてきたので、仲間になるとスゲェ頼もしい。

カバー、初めて公式のアナウンスで見たとき、ビックリ。
白石はそろそろかなーと思ってたけど、……なぜにピンク。やっぱヒロインだから?
背表紙までショッキングピンクwww
まわり飛んでる白いの、雪じゃなくて、飴ちゃんだそーです。
ちなみに、本体表紙も、今回初めて、アシパさんでなく、白石!

カラー扉は、第69話の扉。
連載時には講談調の口上が入ってた。

口絵の人物紹介、人が増えてる…!
月島もレギュラー入りか! 好物の「えごねり」てなにかと思ったら、佐渡島の郷土料理らしい。月島は佐渡島出身なのか。

第81話は長閑な扉に反して、サスペンスフル。
冒頭から、主亡き後の江渡貝邸篇。
舞台はごく狭いのに、杉元一行と土方一味に鶴見隊まで乱入、って、ナニゲに登場人物多い。

“鬼の副長”土方の登場。
よく見ると、杉元が銃に手をかけてる一方で、キロランケがアシパさん庇うように動いてるのだよね。
杉元は、喧嘩っ早いてか、血の気が多いってか。

アシパさんが、「私の父は」て言ってる!
これねー……イマドキ、割といい歳した大人まで「お父さん」とか言っちゃうのに(本来、身内には敬称付けない)、日本語ネイティブでもないアシパさんは、正しく、「父」て言ってる。
彼女は日本語、どこで憶えたんだろ。学校があるのか、それなりの教養のある教師代わりの人がいたのか。もしかして、父やキロランケの部族の言葉も使えるトリリンガルだったりするんかしら。
(しかし、味噌は知らなかったのね)

永倉の提案は老獪に聞こえる。挑発して仲間に引き入れる気満々じゃないすか。
杉元、梅ちゃんのこと忘れてなかった――!
彼が緊張のあまり、アシパさんに声荒げてるのは珍しい。
そして家永……そろそろ、彼が高齢男性だってこと忘れられてないかしら……

なんだかんだで杉元一行と土方一味が合流して、総勢9人の大所帯でとりあえず飯を食うことに……この食卓囲む絵には驚愕。
元ネタはもちろんレオナルド*1の『最後の晩餐』なんだけど! このパロディが巧妙すぎて、ツッコミ入れずにいられない。
一番の注目はやっぱキロランケ。ええええ、マジでその席なの? 「裏切り者」ユダなの?! キロへの疑惑がいっそう深まるわけですよ。
杉元がペテロ、“最初の弟子”“教会の礎”ってのはまあ納得。だけどなあ、「ペテロの否認」の逸話が気になっちゃうじゃん。ペテロ、一度はイエスを裏切って激しく後悔するんだよね。
白石のヨハネで“最愛の弟子”って、本作のヒロインだし(公式設定)。イエスの12使途で一番最後まで生き残ったのがヨハネだそうだけど、白石も64年の東京五輪まで生きてそうな気がする。
アシパさんがナザレのイエスの席も納得。のっぺらぼうが黄金のカムイの化身なら、その御子で、救世主であることを期待されてるのだし。レオナルドの原作だとイエスの告発で凍りつく場面だけど、このアシパさんはもっと長閑なハナシしてるっぽい。
指を立てて裏切り者を示唆してる剥製を置いて。
牛山が大ヤコブ、“ヨハネの兄”ってのがちょっと困惑……白石とムショでそういう仲だったのかしら……
家永の位置はフィリポ、“馬を愛する者”の意味で、だから、ナンコ鍋(馬のモツ鍋)なのだなあ。
尾形は転向者って点がマタイと符合する。彼が腕を伸ばして椀を受け取ってるのがレオナルドの絵のポーズそのまんまってのが巧い!
永倉=タダイについてはよう知らん(別に、クリスチャンでもないしー)
で、土方=熱心党のシモンでしょう。熱心党ってのは民族主義者の徒党なので攘夷にこだわった土方にピッタリ。
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(『ゴールデンカムイ』9巻、17・18頁より)

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(レオナルド、L'Ultima Cena)

私。レオナルドってルネサンスの画家というより西洋史んなかで特に好きな一人なんすよ。だからこの絵初めて目にして、唖然→爆笑→欣喜雀躍てなくらいで、マジにコンビニで踊り出しそうになったくらい。
よくよく見ると、江渡貝邸、こんなに広い部屋あった?って疑問も湧くし(火炎瓶の煙からして玄関入って右手の部屋のようだけど)、しかも飯の準備する間にわざわざ剥製を配置し直してるし、剥製のポーズは8巻に登場したときにすでにこの場面のために考えてる、数ヵ月かけて仕込んだ大ネタだったんだ……!

このへんから、杉元と尾形の関係が、みょーに。
この二人、初対面で命懸けで戦ってるじゃん。ガチンコバトルですよ。しかも結果は杉元の完勝。
尾形は、銃奪われて腕折られて殺される寸前まで追いこまれたってのに、あっさり水に流してるし、むしろ杉元のほうがわだかまり抱えてるっていう、不思議。
尾形は度量が広いというより、恐らく生来の冷血漢、他人に共感しない、感情的になりにくいタイプだから“根に持たない”、けど、共闘仲間として信を疑われるのは心外だ、というとこなんですかね。だいたい彼が笑ってるのはウエメセな場面だ。
ところで、杉元のコマにキロが被せてあるのがやっぱ気になるのだよね……裏切者についてのセリフにわざわざ。

そして、82話の燃え回、家も闘志もヲトメ心も、ありとあらゆるものが燃える――!
今回は二階堂がタイトルロール。彼のヘッドギアにはツッコまないぞ……

尾形と土方が即、呼応して戦闘態勢はいるあたり、さすが歴戦のツワモノ同士の信頼関係が出来上がってるのだなあ。てかこの二人、似たもの同士って気がする。猫男な点とか。
司馬遼太郎土方歳三のことをやたらと猫のような男だと書いてて微笑ましい)

本誌連載で読んだとき、尾形がなぜ銃でなく銃剣使ったのがちょっとナゾだったんだけど単行本で弾の再装填のコマが追加されてる。
射撃については魔弾の射手とでもいうべき技量だけど意外と白兵は苦手なんかしら。
「死ね!」なんて敵に組み敷かれて、そこで笑う? 笑っちゃうの!? こういう絶体絶命の場面で薄笑いを浮かべられるのがステキ(きっと組織への忠誠心とか歯牙にも掛けないタイプとみた)。
で、そこに杉元が飛び込んで来て助けるとか、

この王道展開、萌殺す気か!!!
私を。

いやもう、この、杉元と尾形の遣り取りが!
素直に礼を言わない尾形も尾形だ。
杉元の台詞は本心なんだろうけど、嫌いな相手でも咄嗟に助けるあたりが彼らしい。

この前の段で。
牛山の背中にアシパさん貼りついてるのも笑えるんだけど(懐きすぎ!)、杉元が躊躇なく館に飛び込んでくシーンに安堵。
杉元はやっぱ純粋な攻撃型だし盾役は無理。牛山たちはあくまで戦闘には素人なのだよなあ。プロの戦闘員達が入り乱れてるときには出る幕ではないわ。

土方と二階堂の格闘……土方も古稀だもんな……さすがに若い兵士と組みあうのは辛いんじゃなかろかとちょっと不安に。
二階堂がどんどん壊れてく……精神的にも物理的にも。すっかり噛ませ犬なんだけど、とことん長生きしそうなんだよな、こいつ。
(でも、外耳ないと、音、聞こえにくそうだ)

連載時は、二階堂が土方に脚を切られたあと、すぐ外の兵士達の「出るな そこにいろッ」のコマになってて、なぜ土方は二階堂にトドメ刺さなかったのかが謎だったけど、ここで2頁も追補されてる。二階堂、必死に逃げ回ってた。よく出血多量で死ななかったよな……

増ページで尾形と土方の二つの大きな謎が解消されてスッキリ。
あと、ナニゲに大きな軌道修正に思えたのは杉元の最後のほうの「アシパさんは立派にアイヌを生きている」に続く台詞。杉元の旅の目的がアシパさん寄りになった気がする。

ところでこの回、連載時のアオリはこうでした。
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……
……
……
……おい。
(念のため。杉元の声聞きつけたときの二階堂に、懸けてあるっぽい)

前回が燃え回なら、83話は萌え回
激しい死闘から脱出して、戦士達の休日、とでも申しましょうかね。

この漫画、バトル民族学アクション動物サバイバル軍事スリラー伝奇浪漫ギャグ、とまさに闇鍋、でもさすがに萌えはないよな……と思ってたけど、まさか、杉元が萌キャラだったとは……
私ゃ今まで萌えとかKAWAIIとかちっとも興味なかったんだけど……ようやく「萌え」という情動が理解できた気がするヨ……
杉元ぉ……どおしちゃったのよ……不死身の英雄なのに。
対して、尾形がさながらクールな優等生。
この二人の応酬が、ヤバイ、萌え死ぬ……!
最初の出会いがガチなバトルだったので、いずれリターンマッチみたいな熱い展開でもあるのかと思ってたんですけどね、この二人。なのに、ヤケにちっちゃな火花が散ってるよう。

ヤマシギについて尾形をとがめてるアシパさんの背後で、ザコキャラっぽい顔してる杉元、ちっせぇ……
で、尾形も尾形でことさら銃の腕前誇示してみせたりして。
そういやこいつ、そもそも鶴見に追われて土方一味に逃げ込んだようなものなのに、あくまで“腕の立つ用心棒”として自分を売り込んだってくらい、強かなプライドの持主なんだ。
プライドの高さや、単独行動多くてオミヤゲ持って帰ってきたりって、いかにも猫だ……あのアイライン強調した、光彩の描かれない円らな瞳とか、毛繕い髪弄りも、なんだか猫っぽく見えてくる。

優等生にケチな悋気燃やす主人公って構図が、少年漫画のギャグみたいだ。
いい歳して大人げない小競り合いしてる様が、もう、カワイイカワイイ。これがっギャップ萌えってヤツか――!

飯食うときにその為人が露わになるというが!
嬉々としてジビエ振る舞うアシパさんに、服従しつつ目が泳いでる杉元、イヤイヤながらも彼女を思いやって付き合う牛山、そしてキッパリ拒否する尾形……
牛山は大人だ。実は全キャラきっての紳士かも知れない、女癖以外。
尾形は都会っ子て気がする。意外と育ち良さそうだし。北海道まで来て第七師団に入ったのは父親の引きなんか。(好物が鮟鱇鍋って、当時でも高級料理のように思う。アシパさんにまったく気遣わない点や、ばあちゃんっ子自認してるあたり、きっと一人っ子だよね)

ヤマシギの神話って、なんか、マザーグースの「スカボローフェア」思いださせる。
典型的な相聞歌みたいで、とすると、対になるクマゲラの歌もありそうな。
この下りの杉元と牛山、なんか、女子力高いぞ……

この回のアオリはこう。
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……これ数年後には意味わかんなくなってるかもな……

以下続く。

faomao.hateblo.jp

*1:ダ・ヴィンチとは言いたくない派。