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日々是々

動画37話の感想。ゴールデンカムイ

□「あばよロシア」

マンガの本編は単行本も完結したけど、アニメ4期がやっと始まりましたよ、と。

今期からはスタッフもスタジオも一新したそうで。
いままでの不満点も払拭されてるといいなあ。

■本編

3期までの回想のシーン、正直、観るのツライんだけどね。

原作の21巻201話「あばよロシア」~203話「似顔絵」に相当する話。
と、18巻171話「樺太アイヌの刑罰」~172話「阿寒湖のほとりで」の部分。

前よりよく動くようになってるし、原作にない構図も多いのが嬉しい。
アニメとマンガは、別の表現手段だと思うの。

あ、お婆ちゃんの口噛み団子のシーケンスカットされた。だから、白石がカラスを呼ぼうとして撒くのが、米でなく、スーシュカになってるのだね。

ついでに鯉登と月島の「バルチョーナク」の会話がカットされてる。
代わって静香での鯉登と月島の会話が増えてて、鶴見への心酔が強調されてる。「バルチョーナク」の会話が飛ばされたこと考えると、後々、もっと劇的なカタチで、鶴見との乖離を表わすことになるのかな。

ヴァシリの襲撃。ヴァシリの視点、高すぎない!? 5階建くらいから撃ってないか?
彼は喋れないので、今後のセリフは全て日本語の独白になるはず。声当ててる梅原裕一郎氏、ロシア語喋らずに済んでよかったのではっ?

ヴァシリと杉元。
この作品全体に通じるけど。
つくづく言葉はアテにならない。拳と銃と剣のほうが真の対話してる。

ヴァシリは接近戦を嫌う。
尾形は接近戦も厭わない*1 そこが、ヴァシリが尾形に勝てなかった所以かもね? ヴァシリのほうが普通の人間というか。味方を見殺しにするのは平気でも、ゼロ距離で敵を殺すのは苦手っぽい。
杉元に組み敷かれてあっさり戦闘放棄してるし。
ヴァシリの絵、前にメモ帳のグッズにもなったけど、ソフトの特典になりましたよ?*2
尾形と、他の3人の描込みの差が可笑しいのと、え、いつその角度から見たの、て、謎構図と。*3

それから一転して阿寒湖の土方組。
原作では18巻、まだキロランケが生きてるころの話だし、鶴見たちも網走にいるころ。
樺太アイヌの刑罰についてのシーケンスもカット。こういう各地の伝統文化の解説が全体に省かれてるのは仕方ないのかな。動画劇場のほうで補足されてるのもあるけど。

関谷輪一郎篇、3期で飛ばされたから心配したけど、後々、彼が話題になるから組み込まざるを得なかった模様。でも、稲妻篇はないかな。
関谷、本誌連載時と単行本でかなり変わったキャラだった。アニメは単行本に沿ってる。*4

門倉さんとキラウシは良いコンビ。
門倉が蚕の繭知らないの意外だけど、この時代の士族だとそういうものだろか。*5
チヨタロウのBGMは、樺太サーカス少女舞踏団のときのBGM。
若山親分もナニゲに本編では初登場でしたっけ。日高のモンスター篇はOAD*6
関谷と土方の心理戦もヒソカに注目。
土方は牛山を気にしてないように言う、関谷は本心を見抜いてるし、結局、土方は仲間を見捨てられない。
関谷は狡猾だ……

埋められた土方で、以下、次週。

■OP、ED

OPがスゴい。度肝抜かれた。
原作のギャグやファンシーな空気を排除して、「カッコイイ」ほうに振り切ったカンジ。
だけど、主題は、アシリパさんの不安と恐怖ではないか?
杉元の後ろ姿とか。
杉元、白石と3人で束の間欣喜雀躍してると思うと、闇の中から現れる鶴見の圧倒的な悪役感。
土方たちの凄惨な血塗れバトル。
神経を苛立たせるように不安を醸す尾形。ファンとしてはどうしても彼に注目してしまう。今期、出番少ないはずだけど、やけに存在感がある。後ろ姿の彼が向き合ってるのは……え? 勇作さん? 肋骨服が見える。これだけ勇作さんが大きく描かれるってことは、今期で最後までやるのかな。尾形がアシリパさんに向き合ってないのは、彼の本命は彼女ではないからだろう。
パラパラ踊ってる白石、牛山、谷垣……あ、谷垣、踊れるようになったの。彼らはアシリパさんにとって癒やし役として信頼できる存在であるらしい。
謎のアールデコの部屋はフランク・ロイド・ライト設計の自由学園明日館をちょっと思い出した。(→建築 | 重要文化財 自由学園 明日館*7) 直のモデルというより様式が似てる。実はアールデコ(1910年代~)も明日館(1921年築)も、この『ゴールデンカムイ』の時代(1908年?)には少し早い。鶴見、時代を先取りしてる……!*8 五角形が強調されてるのは五稜郭を意識してるのだろか?
アシリパさんが立つ花園、一見、美しい光景だけど、よく見るとこれケシの花だ。鶴見の夢想に直面してる。
中川裕氏によれば、アイヌ文化では花のように美しいものは魔を呼ぶので厭うとされてるそう*9。それは黄金の神が皆を不幸にするって鶴見の台詞にも通じる。*10
そして裸夫3人衆が謎ポーズで立ち塞がって、アシリパさん茫然として立尽くしちゃう……
そういやこの3人とも、初登場はオールヌードだった。シチュエーションはギャグなのに筋肉とBGMで有無を言わさずカッコイイ。
よく見ると3人ともちゃんと下履いてるし、菊田さんは拳銃持ってる。イポプテの背中はヤケにセクシーだ……ファンブックで作者氏がイポプテを「セクシー」って書いてたのがやっとわかった。それも虐めたくなるようなセクシーさ。*11
房さん、アニメのために作られたようなキャラだよなあ……。なんでこんな超ロン毛でマッチョな美形キャラなんか出したのかって思うと、画面映えする。*12

ゴールデンカムイ』、これだけ様々なキャラが出てくるけど、〝みんなで力を合わせて強大な悪に対峙する〟っていうような物語じゃないんだ……
皆が皆、それぞれの理由で、殺し合ってる。
絶対の悪人もいなければ、善をもたらす神もいない。

エンディングは打って変わって、メタなギャグ風。
いちいちコメントがオカシイ。いかにも作者氏が書きそうなコメントなんだけど! もしや新聞の絵からして作者氏が描いたの?
文字がいかにもコンピュータのフォントから作ったような文字だしね?
え、明治42年(1909年)??? 全て終わった後ってこと?
ここにも勇作さんがいるし!?
杉元、え、京都のネタとかあるじゃん。わざわざそれ持ってくるのか*13
ヴァシリ・パヴリチェンコのフルネームは最終314話でやっと登場した。
なぜにヴァシリィって伸ばさないのかと思うと、彼はウクライナ系のルーツであるようだ。「パヴリチェンコ」の姓の元ネタのリュドミラ・パヴリチェンコも旧ソ連時代のウクライナ出身(→リュドミラ・パヴリチェンコ - Wikipedia)。ヴァシリの出身がロシア帝国エレニンカとされてる*14のは、ヴァシリ・ザイツェフ(→ヴァシリ・ザイツェフ - Wikipedia)にちなんでいるのだろうけども。
夏太郎、「途中参加」ってあるの、彼が登場する「茨戸の用心棒篇」はOADになったから。*15
エンディングでネタバレしまくってないか? どうせアニメ見る人は原作も全て読んでるはず、ってこと?

紙片が吹き飛んで、全ては風と共に去りぬってオチもイイ。

■ その他

放送開始前の同時試聴会もずっと見てたんですけどね。
第四期放送記念!キャスト出演同時視聴会 開催決定ッ!! -TVアニメ「ゴールデンカムイ」公式サイト-
皆さん、ビールを聞こし召してメートルが上がってくのが可笑しいwww
カウントダウンボイスも合わせて。(→COUNTDOWN VOICE -TVアニメ「ゴールデンカムイ」公式サイト-

杉元・白石は、キャラと声優さんのイメージがほとんど一致。
アシリパさん、彼女が現代人だったらあんな風かも知れない、ってちょっと思う。
尾形、つだけん氏がサービス精神旺盛過ぎて、つい、「オガタはそんなこと言わない……」って言いたくなる。けどイベントなんかで尾形そのままのロールプレイだったらヤダ。
宇佐美は、ああ、中の人は普通だ、よかった……てホッとする。カウントダウンボイスでの戸惑いっぷりが全てを物語る…… 後半、キャラの変質度が上がったというか。アニメ化への作者氏の嫌がらせか。ヒヒン。
鶴見、芳忠さんだと貫禄がありすぎる……もっと若いイメージ*16
鯉登に対して小西氏はなんだかお兄さんっぽい。弟の成長見守ってるようだ。月島役の竹本氏と良いコンビなんだよねーっ

*1:好きではないようだけども。杉元との初戦でも接近戦に持ち込んだ(で負けた)し、9巻のモブ兵士とも已むを得ず接近戦してる(で負けた)。スチェンカのときも早々に敗退してたっけ。ラッコ鍋のときの相撲には加わってないよな。

*2:アニメイト 七大キャンペーン【2】「杉元&ヴァシリお絵描きコースターセット」プレゼントッ! -TVアニメ「ゴールデンカムイ」公式サイト-

*3:殺せなかった相手に固執するヴァシリと、殺した相手に固執する尾形の対比も面白い。ここでもヴァシリのほうが健全だ。ヴァシリは相手を仕留める、少なくとも死を確認すれば、区切りを付けられるけど、尾形はそうはならない。相手を生き返らせられない以上、解放されるには自分が諦めるか、死ぬしかない。

*4:

*5:私の世代だと小学校のときに理科の授業で飼育したんだけど。

*6:

*7:

*8:この時代の洋館は、実際には、28巻に描かれた旧帝国ホテルのような、ネオルネサンス様式。ちなみに明治村で有名な帝国ホテル玄関はライトの1923年の設計。

*9:

*10:この作品、美を追究しようとして犯罪者になるやつばかりだ。家永、熊岸、江渡貝くぅん、上エ地……鶴見もそうだし、勇作さんも本人が人の純粋な美しさを求めた挙句に尾形って特大の魔物に殺されたようなものだし。

*11:223話で尾形上等兵を目にしてイポプテ、即起立して怯えてる、その胸に尾形がわざわざ触れてるの嫌がらせだよね。

*12:ベルセルク」のグリフィスとか、高村薫の「李歐」をちょっと思い出す。徒手空拳で王を目指す美形キャラ。美形であることが重要なのだ。王者としてのカリスマ性と生れつき聖別されていることの記号として。あと神林長平敵は海賊」の海賊ヨウメイ。なぜか海賊って長髪の美形なの……?

*13:〝服の交換〟ってかなり性的な意味のある言葉だ…… →金神28巻の感想。 ゴールデンカムイ - day * day

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*16:鶴見、1866年あたりの生まれだから作中では40代前半のはず。「反逆の将校」というキャッチフレーズからして、昭和維新226事件あたりの青年将校がモチーフなのだろうけど。例えば桜会とかやってた橋本欣五郎が1930年の3月事件・10月事件のときに46才だし。このへんの「反逆の将校」の系譜について、『暴走する日本軍兵士』がまとまってて面白い。「全く新しい説」というわけでなく、むしろぼんやり思ってたことを明文化されたカンジだ。作者はイスラエルの情報将校。海外の研究の引用も多いし。