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日々是々

金神175「繭」感想 ゴールデンカムイ

特別付録は鯉登のクソコラ第二弾。

13巻124話の冒頭の……
鯉登、これ作るために自分の肖像、14枚も焼き増ししてる。
当時、写真の焼き増しってまだまだ高価だったはず*1
推しキャラへのにはカネの糸目つけない。
(素直に、鶴見と一緒にツーショット写真撮ってもらえばいいのに……)

……扉の惹句、またもや懐メロネタ*2

牛山www
やっぱり女郎屋行ってたのかwww
なにやってんだw
しかも、一回じゃないよね!?

関谷が、土方一味が自分を追ってきたことに気付く
→牛山がいるのを知る
→(単に変な刺青の男といったんじゃ他のやつも来るかもだから)牛山が遊郭に来ることを確かめる
→次に来たときに飲ませるよう女郎に頼む

牛山って、そういや、とことん女運悪いのかも知れぬ。
死刑囚になった原因も女性問題。
土方に再会した切っ掛けも、遊郭の女。

そうかー門倉さん、士族の公務員だと、蚕知らなかったりするんですかね。
で、なんで、そのアングルなのよ……

なんだかんだで、キラウシ、冷静だし理知的だし。

そういや、土方って、「アイヌ達と組んで北海道独立を目指す」って標榜してるんだよね?
金塊もアイヌ達の軍資金だと。
……っていう割には、アイヌ達と協議したりしてるように見えない、ただのギャング団っぽい。
資金はあるのかもだが、イマイチ、組織もハッキリしない(モブ達最近見えないのは、小樽とか各地に散ってるのか? どこかに本拠地があって、都丹とか夏太郎とかモブ達とかはそこで待機してるのか?)
土方もイイお歳だし、土方亡き後誰が計画を継ぐのかって後継者も見当たらない。
なんていうか、実現性が乏しいんだ……*3
キラウシは、計画に乗って土方一味に加わってるのか、それとも単に金で雇われてるのか……

あ、門倉さん、いつのまにか服着てる。

種繭雌雄鑑別器、面白い。どう動作するんだろう。
そういやこれ、ロシアンルーレットなのか。
糸車とか、ルーレットとか、回転する物体に人の運命を重ねたがるのは、洋の東西を問わないなあ、と。
タロットカードのホイールオブフォーチュンとかさ。*4 ))
マニ車や天気輪とかさ。
この鑑別器も、雌は採卵用に残すけど、雄は交配用の少数以外はすぐに採糸用に釜茹にするんだから、運命を分ける装置ではある。

関谷、いろんな手の込んだ運試しを考案してるw
なぜに繭にこだわるのだろう?

繭から出て来るのが、その繭を作った虫であるとは限らない。
家畜として管理されてる蚕ならともかく、そこらにいる蝶や蛾の幼虫、大概、寄生されてて、サナギから羽化するのは寄生バチだったりする……*5
欧米の文化では寄生昆虫は特に忌み嫌われるようで、邪神の名を付けられたりする(→新種の寄生バチを発見、宿主を操り頭を食い破る | ナショナルジオグラフィック日本版サイト)。*6 寄生昆虫の「あまりに残虐で悪魔的な振舞」ゆえに、神の存在を疑わせる論拠にさえなる。
そのようなおぞましい生物が、神の創った世界に存在していいはずがない、と。

関谷、まさかの元子持ち。
しかし彼の過去も痛ましい。
本質的には有神論者なんだな…… 愛する人の偶発的な死から、神に絶望して存在を疑うなんて定番のドラマだが。
関谷「俺のような人間を」なんてセリフからして、彼もまた自分の有り様、異常さに気付いて不思議がっているようだ。
もしかすると彼も生来の殺人者だったけど娘が生れてからは殺人を止めてたのかもだ。
それが、娘の死で、復帰した。妻とか恋人でなくて、あくまで娘ってところが、この漫画らしいな、と。*7
もし関谷の子供が、男の子だったら、また彼の絶望も変ってたのかもね。
しかし彼は一方で、絶対的な善悪の裁定者としての神に存在して欲しいと願ってる。
だから、被害者達に運試しをさせたがる。
なんだかとても素朴な、中世的な信仰心のようだ。

このへん、尾形と似てるようで違う。
尾形はもっと無神論だし、ニヒリストだし、エゴイストだし。
神の存在を疑うどころかハナから否定してる。恐らくは母の葬儀に父親が来なかった時から。
そして、神の存在を疑いもしない弟君や、神の代理人である父親も、自分の手で殺した。
自分の世界には神が不在だと確定させるため――「巣立ち」のために。

しかし、「神は試されることを嫌う」てもいうし。
関谷の狡猾な悪意すら跳ね返す、門倉の悪運っぷり、スゲエwww
まるで、負数と負数を掛け合わせると正数になるみたいな!*8

そして、運に頼らず自分の知恵で自己救済果した土方も、やっぱりスゴい。

トリカブトとフグ毒の拮抗作用については。

トリカブト保険金殺人事件 - Wikipedia
ところが、妻の血液を分析していた大野が、公判でアコニチンとテトロドトキシンの配合を調節することで互いの効力を弱めることができると証言した[1]。アコニチンはNa+チャネルを活性化させ、テトロドトキシンはNa+チャネルを不活化させるが、この2つを同時に服用するとアコニチンの中毒作用が抑制される、拮抗作用が起こることが判明した[2]。そしてテトロドトキシン半減期(毒物の血中濃度が半分になるまでの時間)がアコニチンよりも短いため、拮抗作用が崩れたときに、アコニチンによって死に至る。これにより、神谷が妻を毒殺することが可能となった。

こういうネタ好き。一見、アンビリーバボーだけど実は科学的裏付けがある、意外な展開てやつ。*9

*1:「値段史年表」によると、明治43年名刺判サイズの写真の撮影料が50~80銭とある。焼増はその半額として、25~40銭。現代の物価で1万倍として2500~4000円ってことに。

値段史年表 明治・大正・昭和

値段史年表 明治・大正・昭和

*2:MajiでKoiする5秒前 - Wikipedia

*3:キロランケ一行はそもそもなにを目指してるのか、革命なのか民族運動なのかよくわからない。もしかするとキロはロシアの革命を志向してるのかも知れない、が、アイドルになるはずのアシリパさんはまだなんの意志もない。いちばん計画が具体的なのは鶴見なんだけど、彼は致命的に、信用性がない……そもそも鶴見の「戦死者達に報いる」って大義は後付けで、彼は戦前は、あんまり大義や正義じゃない別の目的のために金塊得ようとしてたんだよね??? 具体性のない土方、意志のないアシリパさん、信用性のない鶴見、って、三竦みなんだ。

*4:タロットカードの成立は――古代エジプトって与太話を除いて――14世紀であるらしい。ちょうどそのころに糸車も発明されてる。人の一生を糸に喩えるのも西洋の神話で定番だし。ギリシア神話の運命の三女神のなかで、人の命の糸を切る女神がアトロポス……チョウセンアサガオなどに含まれる毒素アトロピンの語源になってる。アトロピンはまた、サリンなど有機リン系の毒物と拮抗作用があって、治療に使われる。「毒をもって毒を制す」ってこういうこと。

*5:我家で庭先にプランターおいてルッコラ植えておいたら、モンシロチョウの青虫がいっぱい付いてたのだが、しばらくするとみんなアオムシコマユバチに寄生されて、黄色い繭背負わされてたっけな。野性のモンシロチョウは半分以上が寄生されるので、爆発的増加はしないそうな。

*6:青虫なんかは農業害虫なんだから、その天敵の寄生蜂はむしろ益虫なんだけども。

*7:この金神って漫画全体、少女は無条件に無垢な存在に描かれてて(っても、アシリパさん、オソマ、エノノカの3人しかいない)、もっと下世話な人間に描かれてるチカパシ少年との差がw

*8:しかし、虚数虚数は掛け合わせても負の数にしかならないのだよ……

*9:金神172「阿寒湖のほとりで」 ゴールデンカムイ - day * day