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日々是々

200話の尾形。

これまでのゴールデンカムイ200話のうち、尾形がちょうどその半分の100話に登場してる、てのは、なにか象徴的だ。

尾形の登場回、数えてみた(xlsxファイル)
……でも、自分で見てチェックしただけなので、正確かどうか自信がない。
漏れがあるかも。

尾形百話之助。

……はともかくとして、キリがよくて、出来過ぎてて、これから当分は彼の再登場がないとでもいうような。
もしかすると、このままフェードアウトするのかもだし?

尾形、特に単行本11巻以降、悪役にシフトしていって、顔も、連載時と比べて悪人顔に描き変えられてる。*1
このへんから、彼の死の予兆が濃厚になっていく。

だいたいの作品で、私の好きなキャラって、終盤で死ぬから!
まるでその物語の世界のその後に、彼らの存在は許されないとでもいうように。
予定調和のように彼等は作者という神に殺される。

ゴールデンカムイがそんな在り来たりの作品だとは思いたくないし、要は尾形に死んで欲しくないのだけど。

作者氏のインタビューなどからすると、尾形の人気は想定外なようで、ああやっぱりな、と。
尾形について、5、6巻の、彼が再登場したあたりから、きっと彼は女性に人気が出るだろう、しかしその理由は男性にはわかりづらいだろう、と直感したものだった。
案の定、作者氏にしろ、アニメで尾形役演じた津田健次郎氏にしろ、そんなことを仰ってて、まあ韜晦も含めてだとは思うけども。
実のところ、直感はしたものの、尾形の特に女性への人気の理由は、私にもよくわからない。

尾形の死が予定されていたのかはわからないけども、主人公であるはずの杉元にほぼ互角の人気キャラだけに、迂闊には殺せない。

その彼が、当分は物語の表舞台から降りるかのように去っていくのって、なんだか、追放刑みたいだ。

姉畑篇や、樺太アイヌの刑罰の下りで出てきたように、洋の東西、部族単位の小さな社会では、死刑はないところが少なくない。
皆が皆顔見知りなので、知り合いを自分の手で殺したくない。人間の最も本能的な禁忌が働くのだ。
代わりに、神判や追放刑といった、罪人の生死を神に委ねる刑罰になる。
「確実に死に至らしめる」という意味での死刑ではないといっても、重傷を負わせて村から追い出すとか、縛って川に放り込むとか、生き埋めにするとか、崖から突き落とすとか、毒を飲ませるとか、死ぬまでの苦痛を長引かせる刑罰なので、けして、人道的だったり、慈悲の心ではない。ひと思いに殺してくれたほうがマシかもだし、見せしめ効果も期待されている。罪人への人道的配慮ではなく、執行者の精神的負担を軽くするための刑罰なわけ。
近代化につれて、斬首刑といった、「確実に速やかに苦痛が少なく」死に至らしめる死刑が主流になってくのも、洋の東西を問わず同じ。

時として殺人も厭わないウイルクと違って、アシリパさんは絶対に人を殺したくない。
彼女に付き従う以上、杉元は尾形を殺せない。
アシリパさんを救うために今まで散々人を殺してきた杉元が、尾形については、彼女を救うために尾形もまた救わなければいけない。
殺したいけど殺せない人物は、追放するしかない。

しかし、神を信じない者にとっては、追放は刑罰に成り得ない。
尾形は、道理や倫理からも解き放たれて、自由だ。

物語の定石として、尾形は死すべき運命にある。
しかし、「運命は変えられる」というのが、この『ゴールデンカムイ』って作品で何度も繰返されてるテーマの一つではある。

尾形の逃亡は、まるで、物語の定石からの逃亡――解放のようにも見える。
そして物語そのものからも解放されようとしてるのだろうか?

尾形がこのまま退場になるとは思わないけどさ。

作者氏が、去年の冬~春頃の記事で、「物語は6合目付近」とか言ってたので、下りがあるのかどうかわからないけど*2、10合目は300話未満であるらしい。
もしアニメの3期があるとしたら、この200話が一つの区切りになりそうに思える。

ゴールデンカムイ、2014年8月21日発売号で連載が始まって、最初は刺青の囚人との対決だったのが、連載一周年が近付いた辺見ちゃん篇終えたあたりで大きく話の流れが変わり、網走監獄へ向うという目的になる。
その前の作者氏の「スピナマラダ!」が1年で連載打ち切りになってる、どうやら1年というのが連載の継続を決める大きな区切りであるらしい。
今作は長期連載が決定して、本格的なストーリーに移行した、その転換点で尾形が再登場する。(5巻・第43話「シンナキサラ」、掲載は15年7月23日発売号)
網走篇までが、『ゴールデンカムイ』って作品全体の前半のようだ。
網走篇を終えて樺太篇に移行する、その転換点もまた、尾形の銃弾なんだ。
そして今回の第200話で尾形が去っていくのも、なにか、大きな区切りであるように思える。
尾形自身は、メインのストーリーである、黄金探しにも、杉元の救済にも、鶴見や土方の独立計画にも、ほとんど興味を示さずに、かといって本人になんの目的があるのかもよくわからないのに、大きなストーリーの要所要所で流れを換えてく。

次に尾形が登場するのは、どんな場面になるのだろう。
(とかいって、あっさり次回から尾形とソフィアの珍道中が始まったりするかもよ?)

*1:

第101話「鯉登少尉叱られる」
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とか、
第120話「奇襲の音」
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とか。

*2:

f:id:faomao:20190531233216j:plain『スピナマラダ!』3巻