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金神209「ケソラプ」感想 ゴールデンカムイ

金神209「ケソラプ」感想 ゴールデンカムイ

谷垣が主の話は明朗だ……

尾形の物語と比べたらね。

登別の鶴見たちのサスペンスが続いたので、チカパシの物語に癒やされるw

うーん、そろそろ長いストーリーの終盤で、キャラの整理整頓かなあ。
キロランケ、尾形、そしてチカパシ。

ユカラをまんまなぞるような、チカパシの物語。
彼は登場からして、なにか因縁めいてるみたい。
チカパシについて - 野田サトルのブログ
8巻74話から辿ってきたチカパシの物語の、谷垣との分岐点。

作中ではごく短い時間なんだ。台詞も多く、じっくりとドラマ描いてる。
チカパシと谷垣が主役なので、他の人たちが完全にモブになってるし。
アシリパさんですら台詞が一箇所だけっていう。

9~10頁目。 ソリから落ちたチカパシがエノノカたちを見る、この逡巡に2ページも費やしてる!
9頁目でチカパシはソリの一行を背にしてエノノカたちを見てるのに、10頁目の大ゴマ、ここではもうソリの一行を振向いてる。

チカパシの心はとっくに決まってるんだけど、逡巡するのは、谷垣とインカラマッの“疑似家族”のせいだよね。
結局、彼に決断させるのは、エノノカと谷垣。
谷垣は兄貴分として。
エノノカとチカパシの関係がちょっと面白い。恋人なんてもんでもなくて、どうせ思春期前なわけで、まあこれから何事もなければチカパシはエノノカの家に婿入りすることになるんだろうけど、対等な関係ってのがいいやね。*1

ゴールデンカムイって作品全体、男性同士の関係性は必ず縦の関係で、女性はその関係性の外にある。男の序列や大義など、女達にゃ知ったこっちゃない、って図式。
だからこそ、男女が対等な立場で描かれてる。
ここでもエノノカとチカパシはあくまで対等なんだ。

チカパシ、見知らぬ土地に一人取残される……て思ったけど、いや、エノノカたちもチカパシも、同じアイヌでほぼ同じ言葉を話すんだっけ。*2
現代の私からするとサハリンって外国だけど、彼らにとっては広い範囲に住む同じ民族だもんね。

チカパシ「北海道戻っても 俺がいる場所無い…」
ゴールデンカムイ14巻第140話「アイヌの女の子」

銃が男根の暗喩なのはワカリヤスイ。
それでいて、マチズモにコダワラナイのがこの『ゴールデンカムイ』ってマンガ。
チカパシはある意味、二瓶の生まれ変わりみたいなもので。*3
あの村田銃、二瓶の息子→二瓶→谷垣って渡ってきて、そして今度はチカパシに。
リュウも一緒なんだ。
銃が生の肉体の象徴であるなら、リュウはチカパシの魂なのかもね。
最初はオオカミもヒグマもクズリを恐れていたのに、ちゃんと立ち向かうようになる。
そして猟犬と同時にソリ犬のリーダーになるなんて。

んー……もしかして、ゆくゆく、チカパシ、独立運動のリーダーに担がれたりするんだろうか??

キロランケの業火のような情熱や、尾形の暗く冷やかな物語、鶴見の淀んですえた泥沼からすると、谷垣周辺の物語は明朗で爽やか過ぎる。

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祝!連載5周年!

今週は、『ゴールデンカムイ』5周年だそうで。
2014年8月21日発売、ヤングジャンプ2014年38・通巻1693号から連載開始。
めでたい。
私が読み始めたのが3巻出た直後だから、連載開始からまだ1年経ってない時分。
そのとき、今のような展開になるとは全く、思いもよりませんでした。
本誌連載で読むようになったのは75話、それからいろいろあったなあ……

ゴールデンカムイ公式サイト

*1:アイヌの伝統では婚姻は男女両系で、“相手の家に入る”わけではないそうで。女性は母系、男性は父系なのだと。

*2:ピウスツキが蝋管に記録したサハリン・アイヌの音声を聞いた菅野茂によると、聞き取れない言葉もあるそうだけど、でも基本は同じアイヌ語の方言だし。→アイヌ民族否定論に抗する

*3:f:id:faomao:20190822183732j:plain