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日々是々

金神248話「教会」感想 ゴールデンカムイ

アオリと最後の2首は、『一握の砂』より。(→石川啄木 一握の砂

  • 腕拱みて このごろ思ふ 大いなる敵目の前に躍り出でよと
  • かなしきは 飽くなき利己の一念を 持てあましたる男にありけり

「一握の砂」読むと、啄木のヤバさがひしひしと伝わってくる。
啄木の歌、感傷的で繊細に思えるけども、本人はものすごく傍迷惑な人物だったので、『ゴールデンカムイ』で描かれる人物像もそう遠くはないのかも知れない。
啄木(や太宰治も)は、人格異常者なんだろうけど、本人、それを自覚して文章で表現しちゃうのが、スゴいしヤバイ。*1

ところで地図引きちぎってるけど、あれ、あっさり復元されそうな?

私娼窟での聞き込み。

牛山「今夜だけは道に立たずに家にいろよ 殺されるぜ」
……って、やばいやばいやばい。
ロンドンの「ジャック・ザ・リッパー事件」、「5人目」は屋内で殺されてるじゃんっ
ジャック・ザ・リッパー事件」の写真でいちばん有名なメアリーケリー。
夜半から明け方にかけて、邪魔も入らず思う存分死体を切り刻んだ。
犯人は、この一件で満足したので、その後しばらく犯行に及ばなかった、とも言われてるしね。
ジャック・ザ・リッパーマニアの啄木が、皆に注意してないわけないと思うけどな;

ようやく、「ジャック・ザ・リッパー」の背中の刺青や顔?が出てきたけど。
初出が2019年12月26日発売号掲載の225話「貧民窟」だから、半年も前だ……ずいぶん引張った、って感じ。
作中では2ヶ月だけど。
「貧民窟」は23巻収録のはず、今回「教会」は25巻だろうし、今までにない長期戦。
「グリーンスリーブス」の歌や容貌からしてイギリス人であるらしい。
なぜに彼が、ロンドンの事件を模倣してるのか、ロンドンの事件の真犯人と同一人物なのかどうか。*2
全裸にナイフ持ってるとか、こういうセンス大好きだwwww
男性器が凶器で代替されて描かれるのはオヤクソク。

ロンドンと札幌、まあ、共通点は、川と教会があるってことだけよね。
少なくとも2000年の歴史のある街*3と、物語の時点で40年しか経ってないごく真新しい街と。
都市の違いは地図にも現れてて、ロンドンはいかにも歴史の紆余曲折を経た複雑な街路をしてるし、札幌は新開地らしく真っ直ぐな碁盤の目のような地図。*4

「5件目」がサッポロビール工場とか……
この見開きは実際には1909年頃の写真が元らしい。→1906年 大日本麦酒株式会社の設立 | 歴史・沿革 | サッポロビール
そういや今、コラボやってるしねえ。
いいのか;
工場に、どこか、朝まで邪魔の入らないように(女連れで)閉じ籠もれる部屋があるんだろか?

*1:例えば、夢野久作の「猟奇歌」(→夢野久作 猟奇歌)なんてのはすごーく作為的でイキがってるように感じるけど、啄木の場合は天然物という気がする。

*2:現在知られてる「ロンドンの事件」の最有力容疑者は、コミンスキーというハンガリーユダヤ系移民の男……当時の警察官僚などが彼を真犯人だと考えていたけども、有効な証人もなくて(科学捜査以前の時代なので、捜査は目撃証言が最大の決め手だった)逮捕できず、ロンドンの事件の数年後に精神病院に収容されて死ぬまで入院した、と。Pコーンウェルが指摘してる画家のシッカート説よりかは信憑性があるように思える。

*3:カエサルの「ガリア戦記」に既に集落が記述されてるし。欧州や中東や中国にはこういう数千年に渡って人が住み続けてる都市がザラにあって、現在の多くの国家がせいぜい数百年、キリスト教だって2000年ほどなので、都市こそが民衆の歴史なのだなあと。

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Jack the Ripper - Wikipedia
WW2のドイツの空襲で、ビクトリア朝時代とは、だいぶ、街路も変わってしまったそうだけど。
ちなみに、ビクトリア朝ロンドンを体験するなら、「アサシンクリード・シンジケート」(→アサシン クリード シンジケート - Assassin's Creed Syndicate | Ubisoft)がオススメ。本篇の舞台は1860年代だけど、追加シナリオでまんま「Jack the Ripper」もあるしねっ。
「ホワイトチャペル」の地名の由来になったのは、今回出てくるセント・ボトルフ教会ではなくて、セント・メアリー・マトフェロン。
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