金神254話「窮鼠」感想 ゴールデンカムイ
懐かしいサブタイ。
「窮鼠」は、2巻第9話と同じ。(→ゴールデンカムイ 基本データ)
杉元が造反組に追い詰められたり、アシリパさんが谷垣に捕まったりした回。
カラー扉、このアオリ文句はアシリパさん目線だ。
樺太から帰還して以降、物語がアシリパさん主役で語られることが多くなって。
杉元始め、ほとんどのキャラたちは、黄金だの国だのって、地上の形ある価値を求めてるけど、アシリパさんは、民族文化や未来って、形のないものを求めてるように見える。
それは、後段の、脱アイドル宣言にも繋がるけど。
尾形の思い出すヴァシリ、美化されてないか?
ヴァシリの描く尾形は妙に童顔だし。
お互いに気持ち通じ合ってて、なんだかな、この相思相愛っぷりは。
尾形、相手を手練の狙撃手って力量を認めてて、それでことさら美化してるのかも知れない。
狩りの獲物は、手強くて、美しいほうが良いもんね?
宇佐美と門倉がパンパンパンとか、*1
我々読者は一体なにを見せられてるのだだだだ。
背後から押し倒して服破いてスパンキングとか。
なんで宇佐美、軍衣の前開けてるのだ。いつ開けた。
P5、宇佐美「オジサンですねぇ 体力無いなぁ」
のときには、宇佐美、軍衣の前きっちり閉めてるのに、
次のページ、宇佐美「このお腹…」のコマではもう詰め襟開いてる。
タイミングでいうと門倉のお腹まさぐってるのと同時にボタンはずしてるんだけど!?
息弾ませながらスパンキングしてたり、P7最後のコマにしても、シーンとしては単なる拷問なのに、どーにも性的暴行の絵。
服の前開けて臨戦態勢だったり、効果音だったり、門倉さんも喘いでたり。*2
エロスでなく暴力が、性的な行為に結びつくのは、この『ゴールデンカムイ』って作品全体そうだけどさ?
特に宇佐美ってそういうキャラだよね。凄惨な場面のはずなのに、下ネタのコメディになる。
宇佐美「出してくださいよ!!」
なにを!?
……ええもちろん刺青人皮デスヨ。
これ牛山のコピーだ。オリジナルが失われる可能性が低そうな牛山のコピーを持たされてたってあたり、土方の門倉への評価なのだろう。
しかし、そもそも網走監獄で、先に手を出したのは門倉のほうでしたっけ。きっとあれ以来、宇佐美は門倉に執着してるんだ……
未だに宇佐美、門倉のこと「部長」って呼んでる。今、門倉部長って呼ぶの、宇佐美だけだ。
宇佐美が二十代後半、門倉五十代半ばなので、だいたい親子ほどの年の差なんだよねえ。*3
で、宇佐美、門倉の背中になにを見たの……
もしかして24人目!? 門倉がっ? のっぺら坊が想定してたはずのアシリパさんの和人の協力者が、門倉だったりしたら、なんか、イヤ……*4
あれ、18巻で門倉、ヌード披露してなかったっけ、って思ったら、背中はお尻のあたりだけだった。*5
その直後に尾形と宇佐美のバトルになるとか、こういう展開には痺れるゥ。
尾形、右の視界ないから気付くのが一瞬遅れた。
まだ右眼がないことに慣れてないようだ。
尾形と宇佐美、鶴見の下では一番に親しい仲ではあったんだろうけど、所詮はサイコパスとナルシシストなので、類には類になっても友にはならないよねー。
尾形は戦闘よりも殺害を優先するタイプだし、宇佐美は虐待と制圧。*6
この三〇年式銃剣、(前に杉元がいうように)先端部しかエッジがないから、へし折ったら威力ガタ落ちのはず。
ジャック・ザ・リッパー、あれ、アシリパさんには優しいのが意外。
ペドフィルじゃなかった。
というか、どのキャラも、アシリパさんを性的な存在ではなく、無性別の子供としか見てないんだな。イマドキのサブカルの中では貴重かも知れない。
アシリパさん本人は、杉元に対しては恋心があって、女として見て欲しいようだけど。*7
男同士で性的なニオイが濃厚なバトルしてるのに、女性が出てくると一気に性的要素なくなるのが、このマンガ……
ジャック・ザ・リッパー、処女厨のミソジニストだった。アイヌの伝説に涙まで流して歓喜するとか。
つまり女性嫌悪のヘイトクライムだと……
史実でもジャック・ザ・リッパーの犯行動機が、娼婦嫌いって説は根強い。*8
この「娼婦嫌い」の感覚は古今東西、どこの社会でも割と広まってて、買う客(ほとんど全て男)の側は無視して娼婦を一方的に堕落した犯罪者と見做す言説は多い。男尊女卑の形態の一つだよ。
ジャック・ザ・リッパーの出身が、ロシアなのかイギリスなのかポーランドなのか、どこであれ、ウイルクと日本語以外で会話出来ただろうし。
P14最後のコマに描かれてるのはロンドンの事件の被害者たち。だけどみんな綺麗な、眠るような顔に描かれてるのが、優しい。
JtR「やっぱり女性はひとりで子供産めル」
アシリパ「私は父と母が愛し合って生まれたんだ!!」
ちょっと唐突に思えるこの応酬。
人を、女性というだけで人間ではなく偶像として見なそうとする人達、それは、ジャンヌ・ダルクに擬える土方や、父の娘として見る鶴見やキロランケ、自分の純真さの象徴として見る杉元、全てへの反発でもある。
父と母にも名前があって、自分は自分個人としてこの世に在る、って、脱アイドル宣言。*9
一番の対象は、自分の遺志を継がそうとするウイルクに対してかも知れない。
アシリパさんもいずれ(象徴的な意味での)親殺しをするのか。*10
アシリパさんの母親。
リラッテ。
メインキャラの母親で名前が出て来るの、鯉登のお母さんに次いでやっと二人目っていう!
毒矢でなくて、ストゥでぶん殴るアシリパさん。
子供のチカラじゃどの程度のものか知らないけど!
このフルスイング、野球のフォームよね……
にしても、ジャック・ザ・リッパーのおかげでまた一つ、父との記憶が蘇った、って、どこに切掛があるのか、わかったものじゃない。
ところでP146の単行本の広告ページ、
なんでその絵。
黄金シャワーとか聖水プレイとか。
それも19巻、1年も前の単行本なのに。
*1:最近よく見掛けるバナー広告思い出してしまった。上等兵だし。
*2:尾形、もうちょっと早くこのシーンに来てたら、そっと後退って見なかったことにしたかも知れない。
*3:なんかこの宇佐美×門倉、海外のゲイポルノの「DAD」カテゴリみたいだな。「父モノ」の意味だけど、親子ほどの年の差CPで、年上が受けなのが少なくないっていう。
*4:念為。どうせ看守のときも、土方組でも、風呂は共同浴場のはずだから、刺青は隠せないよー。軍人たちもそう。
*5:→
*6:啄木のときも、宇佐美、殴ってたし。即、殺してもよかったのに。
*7:あれくらいの歳だと、女の子にとって同年代より大人の男性のほうが恋心の対象だもんな。
*8:単に見知らぬ人と二人きりになる職業が他になかなかないから狙われやすかっただけって説もあるけど。
*9:念為。アイドルidol の原義は宗教の偶像。人間ではなく、崇拝の対象やなにかの象徴としてみなされる存在。
*10:尾形に予言されてるようにね?