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日々是々

金神249話「それぞれの夢」感想 ゴールデンカムイ

扉、白石かよ……

なんで房太郎、いちいち無意味にセクシーポーズなんだろ。
文中では一言も、美形だとか二枚目だとかフィジカルビューティ高いとか書かれてないのに、何故かいちいち美形アピール。*1

房太郎はこの世を謳歌してる、だから不死に憧れる。王国を作ったり、血筋を残したい、或はコインに自分の顔を刻みたいと。

房太郎「子供をたくさん作って俺の家族の国を作るんだ」 というのは不死願望の一種なわけで。 「血」を通して自分の一部を子々孫々、残したいと彼は言ってる。

金神236話「王様」感想 ゴールデンカムイ - day * day

アシリパさんは、あくまで、アイヌの未来を守りたいという。
自分自身の幸せのことは考えてない。
アシリパさんも真面目すぎる――のは、キロランケに感化されたせい?
アイヌの未来、といったところで、20世紀以降、人間の流動化が進んで、世界中どこでも、伝統文化を守るのは難しい。
和人だって生活様式も文化も大きく変わったし、むしろ積極的に変えてきた。便利・安全・快適を求めて、不都合な伝統は捨て去って、新たな文明・文物を甘受した。
ゴールデンカムイ』の時代は20世紀初頭だけど、その50年前はまだ江戸時代で、洋服を着てカレーを食べてる人はほとんどまずいなかった。50年なんて意外と短くて、土方や永倉、門倉、牛山はもちろん、鶴見ですら、江戸時代の生まれなんだ。彼らは時代の急激な変化を直に見て生身で感じてる。
アイヌのような少数民族は、隣接する大国からの外圧で変わらざるを得ない面が大きくて、それにはなかなか納得しづらいだろうけども。
伝統を守るってことは一方で過去に固執することでもある。

房太郎は、今生きてる自分自身の未来を希望する。
房太郎も腹の底が見えない……
房太郎は、和人の中のアウトローなので、民族なんかどうでもいい。自分の父祖もいないし。

もしかすると、ウイルクは、民族運動よりも娘の幸せに思い至って、転向したのかもね?
それがキロランケと袂を分かった原因かもよ?
*2

ジャック・ザ・リッパー、え、マイケル・オストログ説なんだっ!?
ちょっと衝撃。
それも、フォロワーとかでなくて、ロンドンの事件の真犯人、本人だと。
現実のオストログ、1833年生れなので、土方(1835年生)と同じ世代じゃん……
札幌のジャック・ザ・リッパー、歳は、コスミンスキー(最有力容疑者、1865年生)のほうが近いんだけどね。(→Michael Ostrog - Wikipedia

切り裂きジャック 127年目の真実 (角川ebook nf) (角川ebook nf)*3
p222
(3) マイケル・オストログ――ロシア人の医者で刑務所に入っていたが、後に殺人の衝動に駆られることがあるため精神科病院に収容された。前科は最悪の犯罪の部類に入り、殺人事件当時の居場所は確認できていない。
p224
三人目の容疑者マイケル・オストログは、三羽烏の中ではもっとも可能性の低い候補者だ。こそ泥かつ詐欺師で、一八八八年までに何度も逮捕され投獄されていた。だが暴力を振るったことはなく、あっても逮捕後に一度警察官に銃を向けたくらいで、マクノートンが言うように殺人の衝動に駆られることがあったことを裏付ける根拠はまったくない。監獄から精神科病院に移されたが、自殺願望はあっても他人に危害を与える危険性はなかったようだ。精神科病院に収容されたことさえ、牢獄よりもましな場所で過ごすために精神病を患っているふりをした詐欺行為だったと考えられる。切り裂きジャック事件が発生した当時はフランスの牢獄にいたとする記録もあるが、この記録は信用できないと反論する研究者もいる。いずれにせよ、オストログの人相は切り裂き犯のプロファイルとはまるで違っている。事件当時は五〇代半ばで、身長も約一八〇センチと、すべての目撃証言で言われたよりも高かった。
(最初の文と二番目とで記述が喰い違ってるのは、最初のは、当時の警視長マクノートン卿の覚え書きの抜粋だから。)

今回描かれた、ジャック・ザ・リッパー=オストログ説は、現実の事件への作者氏の仮説ではなく、あくまでフィクション、勝手なツクリバナシって宣言なのかなーっ
じゃあ、何故、あえてマイケル・オストログって実在の容疑者の名前を出すかってったら……?

もしかして、この札幌のジャック・ザ・リッパー=マイケル・オストログ、実は重要人物だったりしないか?
ロシア人だから、のっぺら坊とロシア語で会話できたはず。
だいたい、脱獄事件って二年前なのに、それからなんのアクションもなく、いきなり立て続けに事件起こしたのも妙だし。
のっぺら坊と密約があったりする?

彼は10年ほど前に横浜で事件を起こして収監・死刑判決受けたんだっけ。
1894年に不平等条約領事裁判権が改正されて、外国人でも裁けるようになった
……ってそもそも、このオストログ、国籍不明だったわ。

領事裁判権日米和親条約では認められていなかったが(第四条で米国人も「公正な法」に従うとされていた)、安政4年5月26日(1857年6月17日)の日米追加条約で認められ、そのまま安政五カ国条約に引き継がれたものである。江戸初期には外国人にも日本の法律が適用されており、平戸のオランダ商館員が死罪になった例もあるが[9]、その後はオランダ人が犯罪を犯した場合は、その処罰はオランダ商館長に委ねられるようになった[10]。したがって、領事裁判権は幕府にとってはむしろ都合が良かった。開国後に外国人の犯罪を領事裁判で裁いた例としては、モース事件[11]やアイヌ人骨盗掘事件[12]がある。 ―― 安政五カ国条約 - Wikipedia

啄木は、オストログの犯行動機を、聖地の再現と見る。
現代でもロンドンでジャック・ザ・リッパーの所縁の地点を巡るダークツアーってあるし。
(本来の宗教ではない)「聖地巡り」って、なにも近年の日本ではなくて、昔っからロンドンなんかであった商売だし。*4

ジャック・ザ・リッパーにも彼の夢がある。

そして聖地といえば、宇佐美wwwwww
おお、軍装姿って久々じゃん。
門倉さん逃げて――!

半年以上にわたって続いてるこのジャック・ザ・リッパー篇、やっぱり最後は山猫が持っていきそうな気がして、期待と不安半ばだ。

*1:元ネタの海賊房次郎、まあ、講談の主人公のオヤクソクとして、美形ってことになってるけどさ。

*2:こないだちょっと考えた→ウイルクとか。 - min.t (ミント)

*3:ジャック・ザ・リッパーについて、割と新しい知見含めて概要まとまってて有難い。著者はコスミンスキー説だけど。

*4:恐怖の都・ロンドン (ちくま文庫)」の著者も、元々、この手のロンドン・ダークツアーのツアー会社を運営してて、そのガイドブックとして書いたのがこの本。