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日々是々

金神27巻の感想。 ゴールデンカムイ

金神27巻の感想 ゴールデンカムイ

カバーは白石。
白石のカバーは以前は9巻だから、18巻ぶりってことに。
公式ヒロインなのに……
20巻のカバー、杉元+尾形・アシリパさんって主人公グループのときも、白石はハブられてました。

紙本特典の本体表紙はチンチリ。

口絵は245話のカラー扉だったもの。
この絵について以前、こう書いてました。 →金神245話「再会の街」感想 ゴールデンカムイ - day * day
まとめると、

  • この構図はカソリックの宗教画の1ジャンル「無原罪の御宿り」を思わせる。
  • 上の有古と菊田は映画「再会の街」のポスターのパロディ。
  • 鶴見を囲むのは三〇年式小銃、つまりこれは墓標。
  • 鶴見は天上から射した光で、墓場から蘇ったように見える。

鶴見をアンデッドのように見てるのは、205話のカラー扉「赤鶴見」(20巻の口絵)の絵がまるで腐乱死体のようで、それはやはりカソリックでいうトランジって種類の図像*1を思わせたので。
「武器に囲まれる鶴見」って点で対になってるし、掲載がちょうど1年後だった。
205話のカラー扉を「赤鶴見」と名付けるなら、こっちは「青鶴見」。

目次

本文

第261話『消防組』

いきなり見開きで炎上する工場の全景。
あーあ……案の定……

コラボもやってることだし。 サッポロビールの全面協力かも知れないけど、なんか、工場全壊しそうで不安。 網走刑務所みたいに。

金神251話「札幌ビール工場」感想 ゴールデンカムイ - day * day

この時代は大衆車の黎明期。
自動車が高価なオモチャから一般化される直前。
T型フォードの発売が1908年だそーですよ。*2

自動車の走行に沿って、擬音の描き文字が描かれてるのが、巧い。
当時としては原動機付きの車自体が希有だったので。
……でも馬に追いつかれてるんだけどね。
ガソリンエンジンもまだまだ初期なので、よっぽどウルサいんだろな、と。

史実では、1909年のキリンビールの宣伝販売車だそうで。
www.mikipress.com

 明治屋製のトラックはウイスキーを輸入していた同社が、英スコットランドのアーガイル(Argyll)製トラックを1909年に直輸入、ただちにビール型ボディを載せたものである。この画像は出来上がったばかりのものだが警視庁から「異常だ」と運行許可されずに前部を切断してようやく許可されたエピソードがある。

にしても、房太郎・親分・エディー、なにこのハードゲイ3人組……
そういやエディーさんも、全裸に毛皮でるんるんな、毛皮フェチでした。
スタッズ付首輪とか、もしかして親分はレザーフェチかも知れぬ。
ドキドキしてしまったけど、どうやらみんなパンツははいてるっぽい。

房太郎、つくづく融通無碍だ。
彼には王国を作るって自分の野望が最優先だから、それ以外なにものにも拘らないっていう。

菊田さんと鶴見隊の不穏な空気からして、菊田さんの裏切り、鶴見にバレてる。

みんなが黄金だの暗号だとアシリパさんだの取り合ってるのに、オガタとヴァシリは2人だけの世界。
ヴァシリの台詞、久しぶり!
ああアニメ4期でも彼の台詞(cv梅原裕一郎)がちゃんとあるのね。
やっとオガタの名前を憶えたけど、この場の誰も、ヴァシリの名前知らないし、そういや、ファンブックでも彼の名字書かれてなかったっけ。*3

第262話『札幌麦酒宣伝車追跡劇』

メインはってたキャラが次々と脱落してくと、いよいよ終わりも近いんだなあ、って気がする。
網走監獄のときには、結局メインキャラは誰も死んでなくて、新たな章への転換って感じだったけど。

房太郎が初登場したのは、2019年12月19日(木)発売号の224話「支笏湖のほとりで」だったので、ほぼ1年前。
作中でも上位の武闘派なのにそのビジュアル!? ってファンタジー
金神のキャラのビジュアル、ヒゲ=人生経験、傷痕=トラウマだと思ってるけど、髪=性格であるらしい。だから、アシリパさん・土方・鯉登なんかは基本真っ直ぐだし、房太郎もそんな気がする。
色々あっても、房太郎、「王様になる」って目標のために一直線だ。
彼は自ら、徒手空拳で黄金争奪戦に参戦した。

既に彼は死を覚悟した。
菊田の拳銃から白石を払いのけて自分が弾を喰らうとか、イケメンすぎるだろ……
房太郎「忘れるなよ」
彼は永遠の生を求めている……誰かの心の中にでも。*4
房太郎「あーあ…」
諦観。

鶴見と杉元。
それぞれ重いものを背負って、戦いに拘束されて、未だに戦場を走り続けてる。
この2人は相性悪っ 一緒にいた場面はほとんどなくて、小樽で杉元が拘束されたときと、網走事変の直後の数日間、あと樺太での一瞬だけ。

なのに、
杉元「鶴見中尉は/そういう男だ」
カケトモどうし、なにか通じるものがあるらしい。

そして。
単行本でなぜか追加された猫ちゃん!

第263話『海賊房太郎こと大沢房太郎』

まさかの展開。

杉元「え…? 菊田さん?」
のコマの杉元の顔がイイ、というか初めて見る表情だ。
戸惑いを浮べて、しかし怒りも恐怖もない。
古い知人を見いだして、安堵の感情すら籠もってる。

菊田さんと杉元とその他のトンデモナイ因縁話が語られるのは次巻になってしまった。

菊田「危ないです 鶴見中尉殿」
鶴見、菊田の離叛に気付いてて、だから杉元諸共、撃った。

そして房太郎のフィナーレ。
房太郎「海賊房太郎こと大沢房太郎のおかげだぞ」
最期に本名で名乗るとか。
「海賊房太郎」はあくまで仮の名に過ぎない、大沢房太郎として彼は生を終える、と。

何故、房太郎が、「自分の名を残したい」といいつつ、王国を目指すのか?
名を残したいってのは、不死願望の一種だ。
政治家や実業家などで名声を博すとか、逆に、大悪党として名を残すとか、義賊を目指すのでなくて。島を買って自分の王国を作りたいというのは何故だろうと。
世間からハブられたので、一から自分の国を作りたい、というのは感覚的にはワカルにしても、理屈では筋が通しにくい。
「海賊房太郎」というのは、世間からつけられた悪名だから、だろうか?
「大沢房太郎」こそが、家族から受け継いだ「真の名」であると。
彼は名を残すために血を伝えたいという。
白石にも、伝記作家やジャーナリストとして名前を広めるのでなしに、あくまで子どもに、っていう。

名前、というのが一つのキーワードなんだろか?
海賊房太郎は大沢房太郎にもどった。彼はその名前を伝えて欲しいと、白石に言い遺す。
菊田は今まで「不死身の杉元」を自分たち鶴見隊の敵だと認識していたけれど、古なじみの「ノラ坊」の名を思い出す。

名前、に対してのコダワリは、作品全体、多くの登場人物で見られる……
名前、特に下の名前、イミナとかファーストネームとかは洋の東西、伝統的に、神聖で、その人の本質に結びつくものとされた……「燃える命」なわけですよ*5
ウイルクのアイヌ名にしても、アシリパさんの和名にしても、ただの名前ではなく、物語を転換させるキーワードになってるし。
杉元は「不死身の杉元」と名乗りを上げることで自分を鼓舞している。ホントは自分は役立たずの臆病者でしかないと思っていて、そこで「不死身の杉元だ」と叫ぶことで「不死身の杉元」という存在に変身する。特撮のヒーローのように。*6
逆に、ほとんどのキャラの母親の名前が今まで出てこなかった*7こと、宇佐美だってあんなに和気藹々としたファミリーなのに家族の誰も名前が出て来ないこと、なんてのは、あえて名前を消されているのかもね? 鯉登ユキさんは出番ほとんどないのに名前が出てくるのに。
そして、尾形・月島・鯉登・宇佐美はそれぞれ、鶴見の前で下の名前が明かされる。鶴見は彼等の名付け親のように振る舞うし、彼等はまるで鶴見の「子」だ。

とすると、房太郎が白石に「脱獄王で終わるんじゃねえぞ」といったのは、「大沢房太郎」の名乗りと対になってる。自分を卑下するな、汚名を背負ったまま終わるなってことだよね。
虎は死して皮を残す、人は死して名を遺すというけど、房太郎、名前も皮も遺した。

なんか、白石、(ジョジョの)スピードワゴンみたいだな……

第264話『小樽の病院で見た女』

二階堂「目を覚ます前に殺しましょうか」
二階堂がいちばん正論言ってる気がする。
そういや二階堂、元々、キッツい性格なんだっけ。それで洋平も殺されたわけだし。

鶴見がマスク姿の怪人ぽいので、つい、超人的な人物を想定してしまうのだけど、やっぱり彼も人間なのだな、と。
特にその人間鶴見の部分が強調されてきたように感じる。
ファントムオブ札幌的な。
むしろそのほうがコワイ。

鶴見とソフィアの因縁……互いに親しい者の仇敵であるっていう。
顔が暗闇になってる鶴見コワイよ。

鶴見、ソフィアがキロランケの仲間のゲリラだとは知ってても、「ゾーヤさん」だとは気付いてなかった。
……ソフィア、昔と同じ服着てるんだよな……体形変わったのに……
「フィリップ」=ユルバルス=キロランケってことは知ってる。

しかし鶴見、家族を失った一番の原因は鶴見自身のスパイ活動で、ソフィア(やウイルク、キロランケ)を恨むのは、逆恨みにも思える。
自分自身へのどうしようもない恨みを、彼ら革命家らに転嫁しているのかも知れないが。
日露両帝国を敵に回す、ってスタンスでは、実は、鶴見も、革命家らも、同じなんだけどね。でも共闘出来ないのは個人的な怨讐ゆえ。

思いがけなく過去に出会う杉元、鶴見。
未来に邁進するアシリパさんにソフィア。
ソフィアが持ってたのはキロランケの遺品の刃物。
マキリの傷は親分が付けたんでしたっけ。
キロランケってとことん過去を捨て続けてたのに、みんな、キロランケと関わりがあるっていう。*8

房太郎について、
白石「失った家族と帰る故郷を取り戻したかった」 と、白石はいうけど。
むしろそれは白石自身なんではないかって気がする。
房太郎、「取り戻したい」って後ろ向きな動機よりも、新たに自分の国を――世界を創りたいというのではなかろか?


この話が掲載された2021年6&7号(2021/1/7発売)は、ヤングジャンプの通巻2000号だったのでした。
1979年創刊だそうで。
1000号毎の記念号は約20年に一度だから、その誌面に『ゴールデンカムイ』が載るっていうのが、ファンとして嬉しい。
めでたい。

第265話『鍵穴』

扉絵は意味深だ。
親密な家族像の隅に、例の機関銃を隠したカメラ台が紛れ込んでる。

ここから、1話目から6年半引っ張った、『ゴールデンカムイ』最大の謎、アイヌ殺害事件の解答篇。
……もし1年くらいで連載打ち切りになってたらどういう決着になってたのか、未だに気になってるんだけど。

月島の不信感は強い。
いままで散々、他人に裏切られ続けてきた彼は、人情の機微に敏感であるらしい……悪い方に。
鯉登、自分でも気付いてなかった内心を指摘されて、虚を衝かれてしまった。
眉が、いつも黒ベタなのに、わざと塗り残しされてる。
周囲に飛んでる謎の点々、これ、少女漫画ではオナジミの表現だけど、青年漫画では珍しくない?

鶴見「樺太では話し足りなかったよ アシリパ…」
この鶴見の顔は単行本での加筆分。
この場でこんなに優しげな顔をするなんて。

鶴見「そしてソフィア・ゴールデンハンド」
鶴見は「黄金」に対して鬱屈があるようだ。
嫌儲ってヤツか。
彼も出身は裕福だったようだから、その後、カネに関して辛酸を嘗めたのかも知れない。
このへん、モロに北欧神話を髣髴とする。(→ファフニール - Wikipedia

ロシア語でなく日本語でソフィアに話してるのは、アシリパさんにも会話を聞かせたい、と。
しかしソフィアさん、好きでもない日本語、17年間、よく憶えてたな。

そして、月島、なにその顔。
「妻子がいたなんて! よくも騙したわね!」
……みたいな。

いや、鶴見隊、妻帯者がいないのが気になってるんだけど。この時代、本人が結婚する気がなくても故郷に嫁が用意されてたりして、自分の結婚式にも出席しないこともあるくらいで。
だから、鶴見は意図的に独身者選んでて、部下たちに非婚を貫かせてたのかも知れないしね?
なのに、本人は既婚者だったなんて、裏切られたような気分かもね?

これから鶴見たちが重要な話をするってときに、一方で月島は全く別の感情を持ち込んでる。
その場の皆がココロを一つにしない、ストーリーが常に複数、同時進行してるってのも、この作品の特徴かもね。

鯉登はあんまり驚いてない。
彼は鶴見個人をリスペクトしてただけで、鶴見のプロフィールはあまり知らなかったようだ。
宇佐美の死体、近くにあるはずなので、生き返って怒鳴り込んでくるかもだ。

舞台が教会というのが巧妙だ。
ここは神の家。
祭壇の前に坐る鶴見、なんだかエラそうだし。
従前、度々鶴見が聖母マリアに擬えられてることからして、なるほど相応しいかも知れない。
(どっちかっていうと、鶴見はむしろ、真の神になり損ねたデミウルゴスなんじゃないかって気がするけど)*9

でもここはプロテスタントの教会なんだけどね。(→日本基督教団札幌教会礼拝堂(旧札幌美以教会堂)/札幌市
(ちなみにこの建物は1904年建築なので、作中ではまだまだ新しいはず) 聖母信仰は、カソリックなんかの教義だし、プロテスタントではない。(そもそも、カソリック偶像崇拝なんかが間違ってると抗議(protest)して興ったのがプロテスタントだし)

第266話『小指の骨』

新潟県人の鶴見や月島には、関東で生まれ育った私よりかずっと、日本海対岸の国々への警戒心は強いのかも知れない。
ロシアの沿海地方から朝鮮半島にかけての地域の潜在的脅威は無視できないと。*10

鶴見「日本人街から離れて店を開く変わり者がいたんだろう」
鶴見が月島に対して、目をそらすなんて!
鶴見「中央から遠く離れた軍人が」
この鶴見も珍しい。
鶴見、こんなに自嘲するキャラだったか?
妻子を守れなかったことへの負い目があるらしい。

戦艦カレバラの事件……18巻179話「間宮海峡」でウイルクの言ってた「ある情報」とはこの話だったのか。
*11

鶴見「もっと言えばあなた達が私の写真館を選んでいなければ」
というけど。
この鶴見の言葉は大いなる欺瞞だ。
ソフィアたち3人が写真館に来たから、長谷川は妻子を実家に退避させた。
3人が来なければ、長谷川一家団欒の最中に秘密警察が突然踏み込んできたはず。
そうだったとしたら、妻子もいっしょに連行されるか、人質に取られないために自分で妻子を殺すことになったんでは?

そもそも「長谷川さん」の一家自体が、鶴見が現地に潜入して諜報活動するための偽装工作だった。
鶴見「あなた達は何を得ることが出来たのか」
鶴見「妻と娘のこの世での役目は何だったのか」
の台詞は、実は、長谷川さんが鶴見に向かって言ってるのでは?
それを一番知りたいのは長谷川さんのはず。
長谷川さんにあらざる鶴見にとって、「妻と娘の役目」は偽装のための道具だった。
鶴見自身、充分にそれをわかってて、あえてこう言ってる。ソフィアに罪悪感を抱かせるために。
妻子を失った鶴見、家族の代わりに組織を得たソフィアに対して、ウイルクもユルバルスも、北海道で妻子を得てる。

鶴見は怒りで自分のしたことを忘れているわけではない。
このシーンの鶴見は、脳汁出てない。あくまで冷静・論理的・かつ欺瞞で、ソフィアを追い詰めようとしてる。

杉元「あの男なら時間をかけて追い込むはずだ」
この杉元の台詞はその鶴見の意図を示唆してるように思う。

実は今回、一番、冷静なのは鶴見なんだ。

キロランケはウイルクが変わってしまった、というけれど。
しかし、キロランケだって。故郷もユルバルスの名前も捨てて、北海道でアイヌとして生きることを選んで、故郷の人たちも含まれるかも知れないロシア兵と戦場で対峙することを選んで、さらには北海道の家族も捨ててソフィアと再会すること選んで、て、過去を捨て続けてたんじゃん。
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むしろ、定住しないジャコジカとして、彼は生きてたんじゃないのか?

第267話『断絶』

この扉はたぶん、265話の長谷川一家と対になってる。
皮肉なことだ。
長谷川さんの妻子が死に、ソフィアも夫や子供を持つことを諦めたのに、ウイルクは妻子を持って幸せか顔。

私は、ずっと、キロランケの妻子のことが気になってるんだけど。
6巻に出てきた、ふくよかな奥さんと、男児と、赤ん坊。*12
キロランケの家族のことは、杉元一行しか知らない。
アニメではハナからいなかったことにされてるけどね。
妻はいつ、夫の死を知るのか?

キロランケは、すぐにでも帰ってくるような感じで出立した。
それが永訣になった。*13
妻子と別れたとき、樺太まで行く予定だったのか?

キロランケの妻子(それにコタンの人たち――アシリパさんのコタンとは別の集落のはず)は、彼の出生、過去、計画、目的を知ってたのか?
網走行きから樺太行まで。ソフィアさんのこととか。
キロランケが逐一、手紙や電報を送ってたとは思えないけども。
そもそも「昔好きだった女に会いに行く」って、奥さんに納得させられるか……?

キロランケ「そもそも北海道は俺たちには関係なかったのに」

キロランケが最初から、あくまで目的は金塊にあって、身分を偽装するために妻子を持った(鶴見と同様に)というのなら、それはそれでアリだと思うんだけど。
妻子は単なるモブでしかないと。
でも、キロランケ、6巻でこう言ってるじゃん。

「俺の子供たちはこの土地で生まれアイヌとして生きていく」
アイヌの金塊を奪ったこと 俺は同じ国から来た人間として責任を感じる」
―― ゴールデンカムイ6巻
*14

アイヌの金塊を奪って自分たちの運動のために使おうとしたのはキロランケのほうだった、この台詞は本心ではなかったことになる。
*15

キロランケにとっては、昔のウイルク(と民族運動)>ソフィア>北海道の妻子、の優先順位だったんだろうか?

結局、ウイルクとキロランケ、反帝国主義の運動組織の内ゲバじゃん……
「お前は家族が出来て日和った!」って、安保闘争の学生かよ。
なんだか、高畑勲の「平成狸合戦ぽんぽこ」思い出させる(笑) 抵抗運動で武力闘争を選んで敗れて消えていくか、新しい体制に順応していくか。はたまた、愛する者のためだけに我を貫いて、紅の豚*16として生きていくか。

でも、アイヌ殺害事件があって、ウイルクがのっぺら坊として逮捕された後、キロランケは子を作った。

ウイルクは、北海道来てからもずっと、「ウイルク」って父が名付けたポーランド語の名前で通してた。
キロランケは、ユルバルスの名前を捨てた。*17
ユルバルスがキロランケの名前を得たのはいつなんだろう。誰から名付けられたのか?
ユルバルス母語タタール語だし、アイヌなのは曾祖母だから、彼がアイヌ語覚えたのはかなり後になってからじゃないのか?

彼はどこに根ざしてるのか……

鶴見「一つの国として合わさるのがソフィアやキロランケの掲げている「極東連邦」だ」
鶴見「ウイルクは北海道だけにちからを集中させて守ろうと」

16巻153話「京都」で述べられてる土方の構想はウイルクの受け売りだったらしい。*18

しかし、20世紀を過ぎた今から振り返ると、ウイルクもキロランケも、彼らの情熱は空回りしてるようにも思えてしまう。
少数民族の独立国は成り立たなかったし、いろいろあったけれど、でもなんとか、アイヌ含めた少数民族たちの記憶は今も受け継がれてる。(ひっそりと消滅した民族もあるだろうけど。例えば、千島や樺太アイヌはほぼ消滅した。しかし、樺太アイヌは、ピウスツキの録音した蝋管や、ニポポ人形なんかに断片的に残ってる。まあ和人にしたって古来の文化をそのまま伝えてるわけでもないしね?)
彼らは、帝国と戦って民族浄化されたのではなく、経済的社会的な理由で、近代国家に同化・吸収されていった。
記憶する人や物が残ってる限りは、民族は滅びない。

この場面、話してる主体は鶴見ってことも要注意だ。
「本音と建前」は、鶴見自身のことに思える。妻子への吊魂と、戦死者たちへの報いと、どっちかが嘘ではなく、同時に目的にしてるのではないか?

この場での鶴見は、アシリパさんを懐柔して、暗号を解かせることが目的だから、アシリパさんやソフィアを心理的に追い詰めるために、嘘を吐くかも知れない。
鶴見とソフィアが共通して話してることは事実なのだろうが。

第268話『一本の毒矢』

アシリパさんは危ういな……
12・3才だっけか。しっかりしてるように見えて、まだまだ子供なんだ。
社会科の勉強なにもしてない、民族とか、政治とか、まったく関心のなかったところに、キロランケに過激思想吹き込まれて、民族主義に目覚めちゃった。
中学生がネットde真実に出会っちゃったみたいな。
それは、ソフィアも同じなんだけど。

アシリパ「アチャはそういうひとだ」
ウイルクの方針は鯉登パパと同じらしい。
花沢パパもそう。

だけど、アシリパさん、ウイルクから直に民族や政治の話は聞いてないのだ……
ウイルク、アシリパさんにそういう教育する前に行動起こしてしまった。

鶴見は家族に嘘を吐いて結果的に妻子を犠牲にしたし、キロランケにしたって家族に過去を隠してた。

鶴見「そのカムイを守る戦いのためにウイルクたちはどんな悲惨な最後を遂げたのか」
ねえ鶴見、もしかして、自分のことを言ってる?
鶴見も、日本を守る任務のために、悲惨な成り行きで妻子を失った。
カムイにしろ国にしろ、本来は人間を守るためにあるはずなのにね。それらを守るために逆に人間が犠牲になる、て、本末転倒。
鶴見の中央への不信、反逆心は、妻子を失ったことに起因するのだろうか。

過去のパート。
鶴見の軍衣の袖がないってことは、音之進拉致監禁事件の後。

鶴見とシロマクルの対話も連載時より増量されてる。
この鶴見も人誑しの本領発揮で、シロマクルを舌先三寸で丸め込もうとしてる。
ほんとは鶴見、アイヌ民族の独自性なんかどうでもよくて、彼はアイヌは日本人に同化すべきだと考えてる。じゃないと北海道を日本の領土だとする正当性が薄れるから。

公式ファンブックで、八甲田山事件が1903年になってるのが解せない。単なる誤植と考えるのがいちばん納得出来るけど、

金神267話「断絶」感想 ゴールデンカムイ - day * day

*19

……やっぱり誤植だったらしい。

時間順だと、

この順序を明示するために、鶴見、わざわざ袖なしで登場したのか。

チエトイについての解説も増量。
その代わり、長谷川さんのコマが一つ消えた。

ウイルク「差別は無知から生まれる」
の台詞はナニゲに大きい。
無知ゆえに、未知のものを怖れて、逃走する(否認)か、排除・攻撃(差別)する。
ウイルクも、ジャコジカとして長く渡り歩いてきたので、辛い局面にあったりもしたのだろうよ。

各地のアイヌたちをまとめようとするウイルク、彼らを互いに反目させようとする鶴見。
鶴見の本心が、和人とアイヌの団結にあるとは思えない。彼は「真の目的」のために和人もアイヌも犠牲にしようとする――マキャベリストの本領発揮。

イケメンの策士と、仮面の怪人と、鶴見の過去と現在が並べて描かれる妙よ……

鶴見「私は一本の毒矢をウイルクに放った」
これでこそ鶴見なんだけどさ!
メンバーの疑心暗鬼を煽って、内ゲバに導いた。
17巻の、質問箱出張版で、「現代だったら」って問いに鶴見は公安*21って書かれてるんだけど、……ああいかにも公安警察がやりそうな手口だ、とか思ってしまった(笑)

鶴見「自ら皮を剥いで他人の生首にかぶせ」
いたいいたいいたいって!
彼の精神力を物語る。
のっぺら坊の顔、火傷じゃなかったのか。
のっぺら坊、目蓋もないもんな……
筋肉はほとんど影響しないように、特に頬の部分、喋れるように比較的浅い層だけまで剥いだんだ。
狩猟の達人だから、皮を剥ぐのは得意なんだ。
鶴見は目蓋がちゃんと残ってるから、ごく表層部分だけ。

第269話『ウイルクのやり方』

キロランケ、なんか、変わったな――
こんなヤバイ奴だっけ?
アイドルに一方的に入れあげて、裏切られた!っていって殺すストーカー殺人のパターンだ。
何故に彼は、そこまでウイルクに執着していたのだろう?
10代で彼らが出会ったとき、なにか、強烈な体験をしたのだろうか?

キロランケは、ウイルクが変わってしまったというけど、実はウイルクは変わってないのでは?
キロランケのほうが変わり続けてるようにも思えるしね?

アシリパさんは、ウイルクの真意を知らずに、一番の過激分子のキロランケに教育されたから……

ようやく、ウイルクの物語が語られる。

鶴見とウイルクが再会して……ウイルク、一目で長谷川さんだと気付いた。
そこでウイルクは全てを悟った。
鶴見が自分に対してなにを思ってるか、過去をアイヌにバラしてグループを内ゲバに追いやったのも鶴見だと。
ウイルク、あの場から逃げ出したら、どこへ行くつもりだったのか? キロランケと合流する?
最初から網走監獄なりに逃げ込むつもりだったのか。
え、ウイルク、結局、司法の手には渡ってなかった、死刑囚ですらなくて、犬童の私的な虜囚だったのか。
じゃあ、のっぺら坊が網走監獄にいることは、どこから漏れたんだろう。

鶴見とウイルクが顔を合せ、大ゴマの連続から細かいコマの連打、そして1ページ半の大ゴマって展開がドラマチック。

菊田さんは結局は、性善なる人であるらしい。
アイヌ殺害事件は日露戦争前だから、この頃から有古イポプテには目を掛けていたようだ。
アイヌらを内ゲバに導いた鶴見に納得出来ない様子。
しかしそれがアイヌへの同情心だとすると、菊田が密かに日本政府に与するというのも納得いかない……

ところで尾形は――?

キロランケ「引きこもって守ろうなんて弱腰の戦い方では帝政ロシアにも明治政府にも勝てない」
鶴見 うんうん

ここで鶴見が頷いてるってことは、え、鶴見も、「弱腰の戦い方」ではない手法をとるつもりか。
北海道を独立させて引き籠もるんではなく、もっと、中央政府に対して、クーデターまで考えてるのか……?
旧帝国だと、とにかく天皇の権力が絶大だから、クーデター成功させるには、天皇か皇族を巻き込むしかないんだけどな……*22

中央に対してクーデターよりかは、海外領土に独立国つくるほうが現実味がある気もする。*23
実は独立国はどうでもよくて、単に、妻子の復讐を、中央政府に果たしたいだけだとしたら、残念過ぎるんだけどなあ。
鶴見(土方もだけど)、国を造るって目標掲げる割には、自分が道半ばで死んだあとに事業を託す後継者がいないんだよね。

キロランケがウイルクを殺した――殺させた――のは私怨だったと。
網走であのまま何ごともなければ、ウイルクも、おそらくアシリパさんも、鶴見が確保してただろう。
だとしたら、ウイルクは、鶴見に黄金の在処を話しただろうか?
アシリパさんをダシに脅迫されたら、民族運動か、娘か、って、ウイルクは究極の選択を迫られることになる。
民族運動についてアシリパさんはまだなにも知らなかった。
とすると、あの場でウイルクは殺されたことが、ベストだったとも言える。
アシリパさんに刺青の暗号を託した時点で、ウイルクの「役目」は終わったことになる。

第270話『全ての元凶』

鶴見のいうことは何一つ信用出来ない。

尾形「くさい台詞で若者を乗せるのがお上手ですね」
(『ゴールデンカムイ』8巻)

鶴見は、(樺太の尾形と同様に)アシリパさんを籠絡して、キーワードを聞き出したいだけだ。
あっさりとアシリパさんに見抜かれた尾形に対して、やはり鶴見は年の功だけある。

鶴見「全ての元凶はどこにあると思う?」
といって、その後でウイルクの皮を被ってみせるのが、語るに落ちてる。
ウイルクが元凶だといいつつ、それは鶴見自身にも帰ってくる。

7人のアイヌを殺し合いに導いたのは鶴見だ。
アイヌと和人の分断は許せないっていいつつ、彼は、日本国に対してクーデター画策してる。
ウイルクが妻子を殺したというけど、その弾丸がホントに妻子を殺したのか、証明してないし。
そもそもの妻子の死の原因は鶴見のスパイ活動。
そして道化を演じてみせることで、鶴見自身への憐憫を引き出す。
鶴見の詭弁は多層だ。
ウイルクの所業への罪悪感、鶴見への憐憫、アイヌへの責任感、って、あらゆる感情を揺さぶろうとする。
誰も、妻子の非業の死を欺瞞に利用するなんて思わないだろうけど、鶴見ってそういうことしそうな人物の気もする。
鶴見が、妻子を愛してた、のは本当かも知れないけど、でも彼、「愛」を他者を操る為の道具に使う。

こうなると、
鶴見「あくまで私の目的は日本国の繁栄である」
の言葉すら怪しくなってくる。

鶴見「だがその個人的な弔いだけのために」
のコマ、ケシの咲く道の行く先が気になる。鶴見は「断じて無い」と明言したのに、わざわざこのコマが描かれてることの意味。
なんで妻子がケシなんだ。

とはいえ。

じゃあ、妻子の復讐でも、日本の繁栄でもないとすると、彼の目的はなんなのか?
彼は今までとことん無私で行動してる。

最初、鶴見が独立国を作るって構想を語ってたとき、ふと、「闇の奥」(コッポラ監督の「地獄の黙示録」の原作)髣髴とした。*24
鶴見はクルツのように、満洲に自分の王国を作るつもりなのかと。
今でも、なんだか彼は、満洲国作った関東軍のように感じるのだけど。

あっさりとコマされてる月島、鯉登。

ウイルクの顔の皮を被ってみせる、鶴見。
こういうグロテスクさは、この『ゴールデンカムイ』ってマンガの真骨頂(たぶん)
しかしソフィアもアシリパさんも、彼を哀れんでしまう。
その哀れみこそが、鶴見の思惑かも知れないのに。

有古が、第七師団・土方・中央、どこにつくにしても。
もし鶴見の言うことが真実ならば、鶴見隊も土方も中央も、すべては同じ目的ってことになる。
ロシアの脅威に対抗して、和人や少数民族含めた「日本」の繁栄を志向するっていう。

第271話『まだら模様の金貨』

やっとタイトルが。

……はいいけど、なんで、英語+アイヌ語なのだろう。
作中に英語話者、ほとんどいないのに。*25
あの場で英語わかるの、鶴見だけじゃなかろか。
鯉登がもしかすると、陸士で英語とドイツ語でもやったかも知れないけど。
ちなみに、ソフィア“ゴールデンハンド”も、ロシア人だから、ほんとはゾロタヤルカ(Золотая рука、英語で golden hand)のはず。
見た目は美貌の貴婦人だが…:実はロシアの「泥棒の女王」でした
Блювштейн, Софья Ивановна — Википедия(ロシア語)

鶴見のいう国防の意義は、たしかに、それ自体は妥当に思えるのだけど。
え、なんで北海道が昔っから日本だったような言い方なん……

鶴見「先祖からその国に住み 育てられた故郷を大切にし 暮らす人々を愛する者だ」
だとしたら、鶴見含め大和民族は、北海道に手を出すなってことになる。
明治政府は、北海道をロシアに渡さないために、アイヌを日本人に組み込む同化政策とった。それ以前は、蝦夷(と琉球)は日本ではない。*26

鶴見「だが見給え このまだら模様!!」
鶴見「各地で採れた砂金は 混ざり合わなかった」

……佐藤優がいうサラダ理論ってやつ? 「民族はサラダの中の野菜のように、どんなに混ぜても溶け合って一体になることはない」と。*27
鶴見がナショナリズムを強調すればするほど、どんどん信じられなくなっていく。
どうせ鶴見、一君万民だの、国家主義だの、信じてないでしょ……この作品は舞台は明治だけど、登場人物は皆、現代の価値観で生きてる。

この「まだら模様」って、鶴見の部下たちも思わせる。
彼らもまた一体ではない。
名前のないモブたちはともかくとして。

鶴見「眩いほどに美しく黄金色に輝くカムイ」
「美しいもの、輝くものは、魔物を惹き付けるので、触れてはいけない」って、アイヌの伝承であるよね? 中川裕氏の本で読んだ……気がする。
花とか。
呪われた黄金の伝説は、ゲルマン神話にもあるし、割と世界中に広くある戒めなのかも知れない。*28

鶴見「いわば…ゴールデンカムイか」
言語の謎はさておいて、ここで鶴見の口からこの言葉が出てくると、やっぱり、総毛立つ。
単行本1巻の発売から6年半引っ張ってきて、やっと、タイトルの意味が。

アシリパさんに、アイヌの信仰への疑問を抱かせる。
じゃあ、だとすると、黄金は、なんのために地上に降ろされたのだろう。

鶴見「お前の愛する人間はみんな殺される」
これはずっとアシリパさんが抱えていた不安だ。
鶴見は彼女の迷いを読み取った。
彼女の不殺の誓いを、彼もまた気づいた。

鶴見「迷っているなら言い訳をあげよう」
ソフィアを、彼女がかつて愛した人の皮で窒息させようとするとか、鶴見ってそういうことするヤツだよねwww

アシリパ「ホケウオコニ」
この言葉もちょっと謎がある。
ウイルクもリラッテもアシリパさんも、この言葉はアイヌ語で発音してるはずだし、8文字のカナ書きでなく、horkew oskoni って5拍になるんじゃなかろか。
ウイルクは、アイヌ語を、ポーランド語なりロシア語なりで表記しようとはしなかったのだろうか?

とうとう陥落したアシリパさん。

一連の鶴見の訊問の仕方が、なんだか、尾形と似てて。
尾形の会話術とか交渉術は、鶴見が教育したんだろうか?って、ふと、思った。
元々、尾形、交渉とか他人との対話苦手そうだし。

中年男が少女を拷問してるのに一切、性的な暴力にならないあたり、この作品を安心して読める点ではある。
しかし、ソフィアへの拷問、レザーで窒息プレイで、しかもかつての想い人の皮って、ある意味、すごーくエロい。
このへん、作品に密かに埋め込まれた、グロテスクでビザールなグランギニョールかも知れない。

鶴見「触れる者に無残な死をもたらし」
鶴見「どんなカムイよりも醜悪で凶暴で」
鶴見「眩いほどに美しく」
の台詞は、鶴見自身をも指しているようにも思える。
彼は自身が人誑しだと充分に自覚してるし、凶暴さも知ってる。
ここでも、作中のオヤクソク、「他人のことを言う時は自分自身のこと」が。

鶴見は金のカムイ、それに自身をも、悪神と捉えてる。
妻子をケシ――阿片に喩えたり、て、どうにも鶴見の発想は黒い。
悪意的、厭世的、悲観的だ。
彼は、どれほど過酷な人生を送ってきたのだろうね。
だからこそ、妻子が阿片なのか。
鶴見にとってこの世は苦痛に満ちていた。
その中で、妻子の存在が安らぎになっていた。
だけど、それは、偽りの人生の上での偽りの安らぎだった。
しかし彼はその偽りの安らぎに、依存していた。
脳は、モルヒネの刺激を、脳内麻薬物質のもたらす幸福と区別出来ない。
その偽りの安らぎは、逆に、自分の置かれた過酷な現実を照らし出すのだけど。*29

その他連載時との違い

ページ数は目次の数字に依ります。Kindle版などでは+2される様子。
全体、人物の服装、装備などが詳細になったりしてます。

■ 第261話『消防組』

  • 目次ページのキャラたちの相関図が本来261話の扉絵だった。背景にあった工場の全景は、冒頭の見開きに拡張。
  • P6、消防士たちの服が黒っぽく。以下、全て。
  • P6、最終コマ追加。
  • P7、菊田さんのコマ追加。P6-7合わせて1ページ分。
  • P8、アシリパさんはじめ服装、装備品の修正。
  • P8、宇佐美、白布で包まれてたのが、上衣を掛けられてる。
  • P8、鶴見の台詞の整理。
  • P10-11 尾形とヴァシリの台詞の整理。意味は同じだけど読み合いが細かくなった。
    連載時:
    尾形「俺があのロシア兵なら…煙の少ない工場の風上へ位置を取るかな」
    ヴァシリー「私がオガタなら…私が視界のいい風上に位置を取っていると考えるだろう だからオガタは敵の側面に回り込むため風下から煙の中に紛れて出てくるはずだ」
  • P11、最後のコマ追加。元は次のページの最初にあった分だけど、より立体的な構図に。
  • P12、最初にあったコマが前ページに追いやられてその分、コマが拡大。
  • P17、最後のコマ、杉元が横顔から正面向きよりに。台詞一つ削除。
  • P18、2コマ目の尾形も正面向きよりに。
  • P20 2コマ目の鶴見の表情。意思が固くなった。
  • P23、親分の入れ墨追加。
  • P24、2コマ目、ポンプ車の描写が細かい!!!!

■ 第262話『札幌麦酒宣伝車追跡劇』

  • P34-33、1ページ分3コマが2ページ分に拡大。
  • P34、猫ちゃん追加。後P74で出てくる猫らしい。
  • P37-38、1ページ分が2ページに追加、拡大。
  • P37-1、P38-2,3コマめ追加。
  • P40、宣伝車の質感が変更。
  • P44、2-3コマ目、宣伝車の向き変更。連載時は恐らくコピペだったのが、きちんと向きを変えていく。
  • P44、最終コマ、杉元の掴んだオブジェクトが変更。

■ 第263話『海賊房太郎こと大沢房太郎』

  • P55、最後のコマ、白石の台詞が削除!! ……白石のクズ度が減ったようだ。
    f:id:faomao:20210917160628j:plain
  • P56、最初のコマ、菊田の銃の火花追加。

■ 第264話『小樽の病院で見た女』

  • P64、ロシア語のフォントがモノスペースからプロポーショナルに。以下同様。
  • P76、最後のコマ、白石の台詞の変更。自分のことを省いた。
  • P77、白石の台詞、断定口調だったのが、推測に。

■ 第265話『鍵穴』

  • P82、俯瞰図追加。以下、1ページ分、コマの追加と拡大。
  • P85、鯉登の独白、全削除。
    f:id:faomao:20210917162256j:plain
  • P87、2-3コマ目追加。「普通に話せた」シーン。以下1ページ分追加。
  • P92、鶴見が1ページに拡大。以下1/3ページ分、次のコマに先送り。
  • P94、2コマ目、鶴見の顔が優しくなってて、逆にコワサが増加、っていう。
  • P94、鶴見からソフィアへの呼びかけが増量。ソフィアにマウント取ってる。あるいは、鶴見はカネを憎んでるのかも知れない。

■ 第266話『小指の骨』

  • P115、鯉登の顔の青筋が消えた。鯉登は、月島のように怒ってはいない。それだけ鶴見と距離を感じてるようだ。
  • P117、ソフィアの顔。涙がほとんど消えた。悲しみではなく、後悔か……

■ 第267話『断絶』

  • P124、キムシプが小樽の村の出身者、て追加に。
  • P125、「人物」って無機的な表記から「爺さん」に。

■ 第268話『一本の毒矢』

  • P143、ここから以下かなりコマ数の追加。鶴見とシロマクルの対話がスリリングに。
  • P144、シロマクルのマキリのアップ追加。これは現代作家の作品だそうで。
    f:id:faomao:20210325143113j:plain
  • P144、鶴見「見事な彫刻ですね」の鶴見の顔、微妙に笑顔に?
  • P145、2コマ目追加。
  • P150、以下、チエトイについて詳細に。代わりに長谷川さんのコマ削除。ふーむ。
    f:id:faomao:20210917165316j:plain
  • P152、以下1ページ分追加。シロマクルが緊張してる。鶴見の話術から逃れたいけど逃れられない。
  • P158、瀕死の男が、ラッチからシロマクルに。シロマクル、自分のマキリで刺されてる。

■ 第269話『ウイルクのやり方』

  • P163 4コマ目追加。……うさみん、それ楽しい?
  • P163、最後のコマ。キムシプのコマが大きく、正面向きに。
  • P165、元はその前の前ページにあった分。
  • P166、死体のコマ追加、2コマ目拡大。
  • P167、シロマクルの死体、生首から胴体付に。

■ 第270話『全ての元凶』
■ 第271話『まだら模様の金貨』

さすがにこの2話、加筆修正ないっぽい。

連載時の記事。

*1:死者の無残な死体の様を描いて、生者が彼らを憐れむことで死者の罪科が軽減されるという意味がある。仏教画の九相図絵巻と似た様なものかもだが。「死者のために祈る」→「死者のために教会に寄進する」→「死者のために免罪符を買う」などと商売優先になっていったので評判悪い。

*2:フォード・モデルT - Wikipedia

*3:

*4:実際、彼の元ネタの大沢房次郎、当時はすご――く有名で講談本だのいくつも出たっていうしね。

*5:「Beautiful Name」

*6:あるいは、もしかすると、「不死身の杉元」というトゥレンペ、憑き神を降ろしてるのかも知れない。

*7:ファンブックで尾形やアシリパさんは明かされてたけど

*8:キロランケ、故郷も、「ユルバルス」の名も、民族運動も、北海道の妻子も、みんな捨ててるんだよね。彼が日露戦争日本兵として出征したってことは、故郷から徴兵された人たちとも戦場で対峙する可能性もあったはず。なのに彼は「日本人として」帝政ロシアと戦うことにした。帝政ロシアは単に白人だけでなく、少数民族も含めた帝国なのに。その時点で彼は生まれ故郷を捨てたことになる。

*9:グノーシス神話だと、ソフィア(非人格的な神の叡智)が創った真の世界に嫉妬して、偽りの創造主(デミウルゴスヤルダバオト・別名ヤハウェが、この現実世界を創ったという。ヤルダバオトは嫉妬深く残忍で狂った神なので、この世は狂気を含んで、辛く、悲惨であると。この世の他に、全てが完璧な「真の世界」が存在するって、浄土信仰みたいな。→グノーシス主義 - Wikipedia

*10:やはり新潟出身の神林長平SF小説読んでもうっすらと感じた。「戦闘妖精雪風」に出てくる機械生命体ジャムだの、「敵は海賊」の精神寄生体マルガンセール人だの、人類とは全く違う形態で敵対するエイリアンがどこから発想されたのか、てのは興味深い。

*11:
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*12:
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*13:
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*14:
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*15:19巻の裏表紙、青い馬を精霊馬と見ると、キロランケの魂は、妻子のいるコタンに還ったとも取れるんだけどなあ……
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ゴールデンカムイ 19 (ヤングジャンプコミックス)

*16:porco rosso 、共産主義の裏切り者の意味にもなる。

*17:二人とも、それらの他に日本人としての和名も持ってるはずなんだけどね。複数の名前を持つということは、その人のいる社会の複雑さの現れでもある。

*18:f:id:faomao:20210204153822j:plain

*19:
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*20:事件の発生は1月だけど、アイヌが参加したのは2月10日以降。
遭難始末w付録.digidepo_844357.pdf - Google ドライブ
アイヌの捜索隊については、P.59~、P.164~あたりに。

*21:
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*22:全軍は天皇直属なので、たとえ第七師団を鶴見が掌握したとしても、天皇が号令一つで残りの師団を動かせるから。天皇以外だと、継承権のある皇族を巻き込んで、天皇を脅迫して禅譲を強いるとかね?

*23:満州鉄道警備隊が後の関東軍になり、満州事変を起こして傀儡の独立国を作ったみたいに。

*24:

*25:武器商人のトーマス、毛皮フェチのエディ・ダン、ジャック・ザ・リッパーくらいか?

*26:古事記の“大八洲”に琉球蝦夷は入ってない。水戸黄門琉球には行ってない。蝦夷には行ったけど。→水戸黄門海を渡る - Wikipedia

*27:作者氏が佐藤優を好きかどうかはわからないが、きっとお読みになられてることでしょう。

*28:指輪物語」についても、サウロンの作った指輪は、莫大な富の寓意だって解釈がある。

*29:それこそが、マルクスの言う、「宗教は阿片である」の真意らしいぞお。単に毒草というのではなく。
なぜマルクスは宗教を「民衆のアヘン」と批判したか(佐藤 優) | 現代ビジネス | 講談社(1/2)