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日々是々

金神271話「まだら模様の金貨」感想 ゴールデンカムイ

やっとタイトルが。

……はいいけど、なんで、英語+アイヌ語なのだろう。
作中に英語話者、ほとんどいないのに。*1
あの場で英語わかるの、鶴見だけじゃなかろか。
鯉登がもしかすると、陸士で英語とドイツ語でもやったかも知れないけど。
ちなみに、ソフィア“ゴールデンハンド”、ロシア人だから、ほんとはゾロタヤルカ(Золотая рука、英語で golden hand)のはず。
見た目は美貌の貴婦人だが…:実はロシアの「泥棒の女王」でした
Блювштейн, Софья Ивановна — Википедия(ロシア語)

鶴見のいう国防の意義は、たしかに、それ自体は妥当に思えるのだけど。
え、なんで北海道が昔っから日本だったような言い方なん……

鶴見「先祖からその国に住み 育てられた故郷を大切にし 暮らす人々を愛する者だ」
だとしたら、鶴見含め大和民族は、北海道に手を出すなってことになるじゃん。
明治政府は、北海道をロシアに渡さないために、アイヌを日本人に組み込む同化政策とった。それ以前は、蝦夷(と琉球)は日本ではない。*2

鶴見「だが見給え このまだら模様!!」
鶴見「各地で採れた砂金は 混ざり合わなかった」

……佐藤優がいうサラダ理論ってやつ? 「民族はサラダの中の野菜のように、どんなに混ぜても溶け合って一体になることはない」と。*3
鶴見がナショナリズムを強調すればするほど、どんどん信じられなくなっていく。
どうせ鶴見、一君万民だの、国家主義だの、信じてないでしょ……*4

この「まだら模様」って、鶴見の部下たちも思わせる。
彼らもまた一体ではない。
名前のないモブたちはともかくとして。

鶴見「眩いほどに美しく黄金色に輝くカムイ」
「美しいもの、輝くものは、魔物を惹き付けるので、触れてはいけない」って、アイヌの伝承であるよね? 中川裕氏の本で読んだ……気がする。
花とか。
呪われた黄金の伝説は、ゲルマン神話にもあるし、割と世界中に広くある戒めなのかも知れない。*5

鶴見「いわば…ゴールデンカムイか」
言語の謎はさておいて、ここで鶴見の口からこの言葉が出てくると、やっぱり、総毛立つ。
連載開始から5年半引っ張ってきて、ようやく、タイトルが!

アシリパさんに、アイヌの信仰への疑問を抱かせる。
じゃあ、だとすると、黄金は、なんのために地上に降ろされたのだろう。

鶴見「お前の愛する人間はみんな殺される」
これはずっとアシリパさんが抱えていた不安だ。
鶴見は彼女の迷いを読み取った。
彼女の不殺の誓いを、彼もまた気づいた。

鶴見「迷っているなら言い訳をあげよう」
ソフィアを、彼女がかつて愛した人の皮で窒息させようとするとか、鶴見ってそういうことするヤツだよねwww*6

アシリパ「ホケウオコニ」
この言葉もちょっと謎がある。
ウイルクもリラッテもアシリパさんも、この言葉はアイヌ語で発音してるはずだし、8文字のカナ書きでなく、horkew oskoni って5拍になるんじゃなかろか。
ウイルクは、アイヌ語を、ポーランド語なりロシア語なりで表記しようとはしなかったのだろうか?

とうとう陥落したアシリパさん。

一連の鶴見の訊問の仕方が、なんだか、尾形と似てて。
尾形の会話術とか交渉術は、鶴見が教育したんだろうか?って、ふと、思った。
元々、尾形、交渉とか他人との対話苦手そうだし。

中年男が少女を拷問してるのに一切、性的な暴力にならないあたり、この作品を安心して読める点ではある。
しかし、ソフィアへの拷問、レザーで窒息プレイで、しかもかつての想い人の皮って、ある意味、すごーくエロい。
このへん、作品に密かに埋め込まれた、グロテスクでビザールなグランギニョールかも知れない。

鶴見は金のカムイを、悪神と捉えてる。
妻子をケシ――阿片に喩えたり、て、どうにも鶴見の発想は黒い。
悪意的、厭世的、悲観的だ。
彼は、どれほど過酷な人生を送ってきたのだろうね。
だからこそ、妻子が阿片なのか。
鶴見にとってこの世は苦痛に満ちていた。
その中で、妻子の存在が安らぎになっていた。
だけど、それは、偽りの人生の上での偽りの安らぎだった。
しかし彼はその偽りの安らぎに、依存していた。
脳は、モルヒネの刺激を、脳内麻薬物質のもたらす幸福と区別出来ない。
その偽りの安らぎは、逆に、自分の置かれた過酷な現実を照らし出すのだけど。*7

*1:武器商人のトーマス、毛皮フェチのエディ・ダン、ジャック・ザ・リッパーくらいか?

*2:古事記の“大八洲”に琉球蝦夷は入ってない。水戸黄門琉球には行ってない。蝦夷には行ったけど。→水戸黄門海を渡る - Wikipedia

*3:作者氏が佐藤優を好きかどうかはわからないが、きっとお読みになられてることでしょう。

*4:なんとなく、独立国を志向するあたり、鶴見は石原莞爾を髣髴とするんだけど、決定的な違いは、鶴見は国家主義者でもまして超国家主義者でもないって点……それは、この作品は舞台は明治だけど、登場人物は皆、現代の価値観で生きてるってことなのだろうけど。

*5:指輪物語」についても、サウロンの作った指輪は、莫大な富の寓意だって解釈がある。

*6:思ったとおりだ。

*7:それこそが、マルクスの言う、「宗教は阿片である」の真意らしいぞお。単に毒草というのではなく。