金神267話「断絶」感想 ゴールデンカムイ
キロランケの真意がわからん……
私は、ずっと、キロランケの妻子のことが気になってるんだけど。
6巻に出てきた、ふくよかな奥さんと、男児と、赤ん坊。*1
キロランケの家族のことは、杉元一行しか知らない。
アニメではハナからいなかったことにされてるけどね。
妻はいつ、夫の死を知るのか?
キロランケは、すぐにでも帰ってくるような感じで出立した。
それが永訣になった。*2
妻子と別れたとき、樺太まで行く予定だったのか?
キロランケの妻子(それにコタンの人たち――アシリパさんのコタンとは別の集落のはず)は、彼の出生、過去、計画、目的を知ってたのか?
網走行きから樺太行まで。ソフィアさんのこととか。
キロランケが逐一、手紙や電報を送ってたとは思えないけども。
そもそも「昔好きだった女に会いに行く」って、奥さんに納得させられるか……?
キロランケ「そもそも北海道は俺たちには関係なかったのに」
キロランケが最初から、あくまで目的は金塊にあって、身分を偽装するために妻子を持った(鶴見と同様に)というのなら、それはそれでアリだと思うんだけど。
妻子は単なるモブでしかないと。
でも、キロランケ、6巻でこう言ってるじゃん。
「俺の子供たちはこの土地で生まれアイヌとして生きていく」
「アイヌの金塊を奪ったこと 俺は同じ国から来た人間として責任を感じる」
―― ゴールデンカムイ6巻*3
アイヌの金塊を奪って自分たちの運動のために使おうとしたのはキロランケのほうだった、この台詞は本心ではなかったことになる。
*4
キロランケにとっては、昔のウイルク(と民族運動)>ソフィア>北海道の妻子、の優先順位だったんだろうか?
結局、ウイルクとキロランケ、反帝国主義の運動組織の内ゲバじゃん……
「お前は家族が出来て日和った!」って、安保闘争の学生かよ。
なんだか、高畑勲の「平成狸合戦ぽんぽこ」思い出させる(笑) 抵抗運動で武力闘争を選んで敗れて消えていくか、新しい体制に順応していくか。はたまた、愛する者のためだけに我を貫いて、紅の豚*5として生きていくか。
でも、アイヌ殺害事件があって、ウイルクがのっぺら坊として逮捕された後、キロランケは子を作ったんだよね??
あれだけウイルクを責めて、殴り合いまでしたのに。
ウイルクが逮捕されたので、計画が潰えたと絶望して、妻子を持った?
それが、網走の脱獄事件があって、アシリパさんが金塊探しを始めたと聞かされて、昔の情熱が蘇った……のか??
ウイルクは、北海道来てからもずっと、「ウイルク」って父が名付けたポーランド語の名前で通してた。
キロランケは、ユルバルスの名前を捨てた。*6
ユルバルスがキロランケの名前を得たのはいつなんだろう。誰から名付けられたのか?
ユルバルスの母語はタタール語だし、アイヌなのは曾祖母だから、彼がアイヌ語覚えたのはかなり後になってからじゃないのか?
彼はどこに根ざしてるのか……
鶴見「一つの国として合わさるのがソフィアやキロランケの掲げている「極東連邦」だ」
鶴見「ウイルクは北海道だけにちからを集中させて守ろうと」
16巻153話「京都」で述べられてる土方の構想はウイルクの受け売りだったらしい。*7
しかし、20世紀を過ぎた今から振り返ると、ウイルクもキロランケも、彼らの情熱は空回りしてるようにも思えてしまう。
少数民族の独立国は成り立たなかったし、いろいろあったけれど、でもなんとか、アイヌ含めた少数民族たちの記憶は今も受け継がれてる。(ひっそりと消滅した民族もあるだろうけど。例えば、千島や樺太のアイヌはほぼ消滅した。しかし、樺太アイヌは、ピウスツキの録音した蝋管や、ニポポ人形なんかに断片的に残ってる。まあ和人にしたって古来の文化をそのまま伝えてるわけでもないしね?)
彼らは、帝国と戦って民族浄化されたのではなく、経済的社会的な理由で、近代国家に同化・吸収されていった。
記憶する人や物が残ってる限りは、民族は滅びない。
この場面、話してる主体は鶴見ってことも要注意だ。
「本音と建前」は、鶴見自身のことに思える。妻子への吊魂と、戦死者たちへの報いと、どっちかが嘘ではなく、同時に目的にしてるのではないか?
扉の外の二人は、鶴見の本心を疑ってるようだけど。
この場での鶴見は、アシリパさんを懐柔して、暗号を解かせることが最大の目的のはずだから、アシリパさんやソフィアを心理的に追い詰めるために、嘘を吐くかも知れない。
鶴見とソフィアが共通して話してることは事実なのだろうが。
キロランケとウイルクの確執は、キロランケ→ソフィアの手紙に書かれてたはず。
鶴見がそれを知ったのは、ソフィア→キロランケの手紙の中で触れられてたか、あるいは、アイヌ殺害事件のさいに鶴見がウイルクに出会って直に聞いたのか。
アイヌ殺害事件についても。
死体は7人分あったはず。
しかもそのうち、1人は顔がわからなくて、ウイルクとして処理された。
つまり、死んだ7人のほかに、ウイルク(=のっぺら坊)、更に殺害犯が其の場にいた。
殺害犯は、ウイルクが真犯人でないのだとしたら、キロランケか、鶴見もしくはその部下か、まだ不明の第三者ってことになる。
- ウイルク
- シロマクル
- メシラ
- スクタ
- イレンカ
- ラッチ
- オシケポロ
当初、被害者とされたのはこの7人だよね。
だけどウイルクは死んでない……とすると、キムシプが、ウイルクの代わりに殺されたのか。顔が判別出来なかったんだから、首無しか顔を潰した死体に、ウイルクの服を着せたかしたのだろうな。
キムシプは、24巻233話「飴売り」で房太郎が会話してた老人の兄の人かな?*8
*9
これが1902年。
シロマクル、顔からしてどーみても有古(父)だよね!?
公式ファンブックで、八甲田山事件が1903年になってるのが解せない。単なる誤植と考えるのがいちばん納得出来るけど、もしかすると、ゴールデンカムイの作中ではそういう設定になってるのかも知れない。有古は父が死んだ後に、八甲田山事件の、第5聯隊の捜索隊に協力したことになるが?
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まあ今週一番のワタシ的な見所は尾形だけど!
第261話「消防組」以来ですよ。
12月・1月と登場しなかったから、今年初めての登場。