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日々是々

金神179「間宮海峡」感想 ゴールデンカムイ

La Pietà....

また特大の爆弾がががが。

あああ、フィーナさんとオリガ、死ぬのか。
フィーナさんは死にそうな予感がハナからしてたけど、娘さんまで一緒に亡くなるとは。

ここでウイルクのいう「ある情報」ってなんだろう?
アイヌの隠し財産を、ロシア政府が掴んでたとは思えないし?

大陸に残るという、ソフィアさん。
「愛してるからなんだ、「けど」じゃなくて。
ウイルク達はどうしても北海道に渡る必要がある。単に逃げるのではなくて。
しかし彼と共に北海道に行くよりか、大陸で運動の地固めをしたい、ってことなのかな。

この後、ウイルク達の辿ったルートを、逆に、十数年後のキロランケ一行が辿る。
「今」リアルタイムが1907年頃でアシリパさんが10〜2才とするなら、1895〜7年の生まれってことに。
ならばこのエピソードは、日清戦争(94〜5年)よりは前でないと。149話との関連にしても。

ウイルク、北海道に渡って早々に、インカラマッとの淡い交際や、アシリパ母との出会いがあったんだ?
よっ女っ誑し。
ってもしかして、最初から自分の子供を戦士にするために、アイヌの女性と結婚して子供産ませたんだったりする?

ウイルク達、北海道に渡って何年も潜伏してて、「5年前」(02年前後らしい)になって「7人のアイヌ殺し事件」を起こしたのもわからない。
アシリパさんが、ヒグマを一人で倒して、戦士として一人前に育つのを待ってたのかな?

現在のキロランケ一行は、どうやら、この後、大陸に渡る模様。
大陸のソフィアさんの仲間って、まさか、西欧にいるレーニン一味じゃあないよね。

ソフィアさん、収監されてまだ10年ほどのはずだけど、一体、この間になにがあったのよ……
タフになりすぎだろう……

サブタイの「間宮海峡」は、念為、樺太ユーラシア大陸の間の海峡。
タタール海峡、韃靼海峡とも。てふてふが渡って行ったことで有名な。*1
幅が狭い上に浅い(しかも大国はあまり熱心に調査探検しない)ので、長年、大陸と樺太は地続きだと思われてた。
江戸時代の日本の探検家・測量士・幕府隠密の間宮林蔵達が地続きでなく海峡だと確認して、それをシーボルトがヨーロッパに報告した。
チェーホフ旅行記の中にも、間宮林蔵の名前が挙がってたりするので、欧州やロシアでも知られていたようだ。
だけど、シーボルト事件が発覚した発端も、間宮林蔵の報告だっていう、皮肉。*2

キロランケ達の去ったあと。
まさかの展開。
写真家にしてスパイ長谷川幸一は世を忍ぶ仮の姿、実は彼こそが、今の鶴見だった……

( ⊙ω⊙)! (  Д ) ⊙ ⊙   _, ._ ( ゚ Д゚) …? (つд⊂)ゴシゴシ   _, ._ ( ゚ Д゚) …   _, ._ (;゚ Д゚) …?    工エエェェ(´д`ノ)ノェェエエ工

ちょ
おま
顔違う!

彼はことごとく虚構の人だ……名前も偽名、身分も嘘、眼鏡も伊達。
そのぱっちりお目々も偽物だったのっ

ようやく鶴見のフルネームが。
鶴見篤四郎(ツルミトクシロウ)
正直、彼のフルネーム、最後のほうまで明かされないんじゃないかって思ってた。
1巻から登場してる最重要人物の一人なのに、連載も半分をとうに過ぎてようやく下の名前。*3

さすがに、ここで彼の登場は驚愕びっくり
アシリパさんとプロフの似た赤児の登場は、長谷川に注意向けさせないためのレッドヘリングだったの、って。
「悲劇に巻き込まれそうな善良な市民」が、実は本人も善良でもない諜報員で、更には皆がよく知るキャラだったと。3号かけて彼という人物が暴かれていくのが見事。
こうやって、読者の予測を、軽く凌駕するドラマを叩きつけてくる作者氏には、ただただ感服。

勝手なこと書き綴ってごめんなさい。

しかしこれで逆に、想像したとおりかそれ以下の展開だったなら、ひどく失望しただろうから、むしろ、安堵と歓喜と、作者氏への畏敬がなお増そうというもの。

死児を抱く彼は、107話の聖母子図のリフレイン。*4
でも、今回は死せる我が子を抱く、ピエタのお題なのが切ない。
鶴見がなぜか赤児には優しいと思うと。
彼にも人並みの慈愛があったんだねえ。

え、でも、こんなことがあったのに、鶴見、銃マニアなんだ。
斯様な悲劇を経験しながら、自分もまた、暴力と謀略と残虐を愛するのは、それこそが本来の彼なんだろか? 水面下に凶暴な歯列を潜ませて、あくまで表面は滑らかに静かな暮らしを装ってた。

ああ……長谷川こと鶴見、目が死んだ……
鶴見の眼に影がさしてるのは、(163話の尾形と同様)やっぱり、能面のように人外を模してるのかな?*5
戦士達が、戦闘中に生きるチカラで目が煌めくのと対称的だ。
しかし鶴見は、今までかぶっていた長谷川という仮面を外した。
彼は本質的に、人類の中にたまに現れる、怪物と呼ばれたりもするタイプの人物であるのだろう。
それが、任務のために、家族を持ち善良な市民を演じていたのだけど、今はその必要もなくなった。

この後、鶴見、日本戻って陸士入って将校になったのかな? あるいは、逆に、将校になった後、諜報員としてロシアに潜伏したのかも? どっちにしても、出世が遅いのも納得。陸士→陸大って将軍目指すエリートコースじゃなかった。
そもそも、軍での出世を目論んで将校になったわけでもなさそう。
149話で、日清戦争後の1896年に少尉鶴見と月島の対話が出てくるから、当時、陸士出たての新品少尉だとしたら、陸士6期卒*6とかになるのかな。
この件で、日本軍や、革命家達への復讐を考えた? ……とは言え、スパイなんてやってたらいずれロクな目に遭わないことはわかってたはず。
では、彼は怒りをどこに向けるのか。

ここから前々回177話の、和気藹々とした日本語講座の場面見返して「今」の彼らを思うと意味深だ。
「長谷川」こと鶴見はいずれ自分の部下達を率いて謀略を巡らす。
「フィリップ」キロランケは革命戦士として活動を再開する。
「グリゴリー」ウイルクの遺志は土方歳三に受け継がれた。
あの場面に、この「ゴールデンカムイ」って物語世界で進行する3本の軌跡が一点に交叉していたんだ。
そして彼等全員に関わる「ゾーヤ」ことソフィア。

ん、キロランケは、「長谷川さん」が鶴見だとは知らないんだよね? もちろん尾形も鶴見の過去、キロ達との因縁は知らなかろう――鶴見が話してなければ。
鶴見は、フィリップ=ユルバルス=キロランケと知ってる。ロシア側にキロランケの情報を流したのは、殺されても構わないと思ったからのはず。しかし、ヘタしたらアシリパさんも殺されてたかも知れなかったのに? キロや尾形がついてるなら、そこまでの事態にはならないと読んだ?

鶴見隊の面々、妻子持ちいないんだ、と思うと、鶴見自身が悲惨な死別を経験してるので、あえて妻子持ちは採用しなかったんだろか。
いや、妻子持ってたら、鶴見の大義なんかについて来ないのかもね。フラストレーション抱えて死に場所を求めて迷える若者達を、仲間だの戦友だのって言葉で誑しこんできた。
よっ男っ誑し。

休載の前にデカい爆弾が来るのは常套手段……休みの間に悩みぬけというのだろうか…?


ふと、ウイルク達が長谷川のもとを訪れてなかったらどうなってたろうと。
長谷川は、ウイルク達の正体に気付いて、彼らを追って秘密警察が来るかもと考えて、妻子を実家に逃がすことにしたんだよね。
だけど警察が追ってきたのは長谷川自身。
ウイルク達が来ていなければ、妻子がいるときに、秘密警察が家に来ていたわけで。
おとなしく連行されるか、徹底抗戦するか、妻子と共に脱出を計るか。
自分だけ連行されようと思っても、妻子もやっぱり連行されて尋問されるに決ってる。
例の機関銃持出して徹底抗戦するか。
最悪、逃走するのに自分で妻子を殺したかも知れないなーと、ふと。
妻子を殺した銃弾は、ソフィアかキロランケのものかも知れないが、彼女らの死の責任は、長谷川自身にある。だからウイルク達を恨む筋合いはない。
日露の諜報合戦の被害者なわけで。

長谷川のもとを去るウイルクが、なんの感傷も見せないのが気になるところ。
ソフィアは嘆き悲しんでるし、キロランケも彼女を慮っているのに。
もしかすると、ウイルクも、鶴見に近い、冷徹なマキャベリストなのかも知れない。
アシリパさんの思い出すウイルクと、キロランケの語るウイルクの像がまた微妙に違うし。

*1:「てふてふが一匹 韃靼海峡を渡って行った(安西冬衛「春」)」……念為、これで全文の一行詩。

*2:

新装版 間宮林蔵 (講談社文庫)

新装版 間宮林蔵 (講談社文庫)

チェーホフ全集〈12〉シベリアの旅 サハリン島 (ちくま文庫)

チェーホフ全集〈12〉シベリアの旅 サハリン島 (ちくま文庫)

とか。

*3:「トクシロウ」て、濁音入らないのがいかにも「らしい」。サイチ、ヒャクノスケ、オトノシン……対して、ゲンジロウとかハジメとかトラジとか、濁音入ると入らないとで微妙にキャラクタがわかれてるような?

*4:f:id:faomao:20171004151506j:plainゴールデンカムイ11巻)

*5:能面で死者や怨霊、妖怪って、生者でない者は白眼の部分が朱泥や金泥で塗られてる。

*6:95年卒任官、次の7期97年に任官なので、96年に少尉なのは遅くとも6期ってことに。陸士行かないで将校になるコースもあったかも?