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日々是々

金神222「刺青人皮」 ゴールデンカムイ

そういや「刺青人皮」ってキーワード、第1回から出て来てるのに、サブタイになったのは初めてなんだなー

菊田と谷垣の会話は第213話「樺太脱出」からの続き。

菊田に質問されて、谷垣。 一瞬躊躇した挙句、鶴見の部下の一等卒であることを放棄した。 もう戻れない。 谷垣「マタギの谷垣です」の言葉は重い。 鶴見を裏切ってしまった。 鶴見がそれを絶対に許さないとわかってるのに。 耳鼻削ぎどころか生きたまま皮を剥がれかねないぞ…… インカラマッだってなにをされることか。 すがすがしく、目をキラッキラさせて、覚悟を決めた。

金神213「樺太脱出」感想 ゴールデンカムイ - day * day

ところが。
案の定、インカラマッ、妊娠してるじゃんー
何ヶ月よ? 受胎したのが8月だし。
避妊してないのに妊娠を想定してなかった谷垣、つくづく無責任な。

そもそも女性キャラ自体が希有だけど、中でもインカラマッは「母親」っぽい。
青い冠り物に赤い服ってカラーはもろに聖母マリア
一方で、ウイルクとの関係は、マグダラのマリアをも思わせるし。

長谷川さんがあんな目に遭ったのに、家族を人質に使う鶴見。
むしろ長谷川さんの件があって、家族を失う辛さを知ってるからこそ、人質に使うのかも知れないと思うと、鶴見の闇は深い。
あくまで、長谷川さんは仮面に過ぎなくて、鶴見の方が本性なのだろう。本質的に、人間性を信用出来ないって意味で、尾形なんかと同じ側の人間なのだ。
あのマスクをつけたとき、鶴見は、装うのをやめて、本性を露わにした。

Man is least himself when he talks in his own person.
Give him a mask, and he will tell you the truth.
人がありのままの姿で語る時、その本音とは遥か遠いところにいる。
仮面を与えよ、人は真実を語るだろう。
―― オスカー・ワイルド

だけど、鶴見、拳銃渡して、杉元をどうさせるつもりなんだ。
力尽くでアシリパさんを拉致しても、協力するはずがないんだし。

背後で鶴見にシンクロしてる宇佐美www

菊田「そこらの庶民は」
って菊田。
でも、兵士に報いたいって鶴見の方便は戦後のもので、戦前の鶴見は別の目的を掲げてた、ってこと、戦前から付き合ってる菊田はしってるはずで。
菊田のこの一連の言葉は、軍人の傲慢さにも聞こえる。

このへん、一ノ瀬俊也『故郷はなぜ兵士を殺したか』で語られてる、前線と銃後の熱量の差と通じるかも知れない。
戦前、戦中はさかんに戦争に熱狂し、煽っていた銃後が、終戦後は急速に戦争を忘れていった、戦死者たちへの追悼行事も資金不足で中断したりした、と。
とはいえ。
満韓の権益をめぐって清やロシアと対立があって日清戦争は勝ったけど、日本には歴史的にロシアへの恐怖感が根強くて、だけど日露戦争自体が「必要がなかった」とも言われるくらいだし、ポーツマス条約で「勝利」とは決まってもロクに賠償取れない、「臥薪嘗胆」合い言葉に十年我慢してきたのに、と庶民側の不満も大きかったのは確か。

故郷はなぜ兵士を殺したか (角川選書)

故郷はなぜ兵士を殺したか (角川選書)

杉元一行、ヴァシリがしれっと混ざってるけど、彼、まったく事情わかってないんだよね。*1

ふと、平太の元ネタは、アルフレッド・パッカーかも知れないと思いついた。「金鉱掘りのガイド」「5人を殺して食った」ってあたりが共通してるなあと。
もしパッカーが元ネタだとしたら、相変らず、作者氏の、犯罪者のアレンジの仕方がすごい。
→【アルフレッド・パッカー事件 - Wikipedia

小樽の永倉邸。
キラウシものんきーだよな……
そもそも土方は、アイヌ独立運動しようっていうんじゃないのか。
当のアイヌのキラウシは、あんまり運動に熱心でもないし、「帝国に呑込まれる!」て危機感もないし。彼自身は、社会がどう変わってもなんとかやっていける、って、自負心が強いのかもね。しなやかにタフだ。その意味では尾形に通じるものがある。
ウイルクやキロランケの独立運動の意志は、ロシアを見てきたからだろう。多くの少数民族たちの現状を目撃した故に。
有古は何故に軍に残って、鶴見隊に参加したのか。
彼は土方のアイヌ独立運動をどう考えてるのか。キラウシと話はしたのか。
八甲田山事件に関わってるところを見ると、和人のことを嫌ってるわけでもなかろうに。彼は菊田につられて、アイヌも和人も隔り無く、兵士たちに報いるという鶴見の口車に乗ってるのか?

キラウシは、そういや、イノシシって見た事ないはずだよね。北海道にイノシシはいないから。
豚は飼育されてるの見たかも知れないけど。

のら尾形www
つくづく彼は猫っぽい。火鉢にしがみついてるし。
なんだかんだで土方一味に再合流するのか。

しかしコイツが真に恭順するはずもなく。
彼が上目遣いで、しかも毛繕いしてるのは、嘘を吐いてるとき。
おそらく土方には、彼が嘘を吐いてるということがバレてるだろうしね?
網走のあの状況で、誰が、のっぺら坊や杉元を狙撃出来たのかって言ったら。
有古すら信用しない土方が、尾形を信用するはずもない。

ソフィアのこととアシリパさんのこと、二つの重要な点はそのまま土方に伝えてる。
尾形、樺太でキロランケが殺されることは想定してなくて、恐らくはソフィアやキロランケと共に黄金を探すつもりだったのだろうけど。
ソフィアに合流しないで、土方の元に戻ったのは、土方のほうが目があるとみたのか、土方や牛山の刺青人皮を狙ってるのか?

相変わらず、彼の目的は謎。
尾形「俺の樺太土産はふたつある」……棒鱈はもう品切れ?

尾形「鶴見中尉たち
尾形は、鶴見個人ではなく、彼の率いる集団で見てるようだ。
かつて自分がその一員だったのに。

尾形も、また顔変わったよねーっ
1巻、5巻、6巻、8~13巻、14~現在と、それぞれキャラも顔も違う。
杉元一行にいたときは、先輩面フカしてたけど(年齢は白石のほうが上だけど)、土方一味にいるときは若いチンピラって感じだ。

土方一味も、土方個人への付合いで従ってる門倉や永倉、夏太郎は別にして、とりあえずカネが目的の牛山やキラウシって、結束力は緩い。
牛山や尾形、門倉なんかは、他に居場所がなくて、ここにいるだけにも思える。
鶴見への忠誠心で結束してる鶴見隊や、それぞれ違う目的で集まってる杉元一行って、それぞれ、グループの成り立ちが違って、それが、皆で共闘出来ない理由なのかも知れない。

ところでこの座敷。
ん、脇息使ってるのは永倉なのか。
尾形「向こうからも来るさ」のコマの尾形、そういや、こんな、金魚鉢の縁にかける猫のアクセサリーあったなあ……

ん、鶴見、関谷の写しも持ってるはずだよね。

今回222話、カウントダウン、とかって書かれると、もうそろそろ大詰めなのかなーって気もする。来年中に完結するのかな?
第111話は「忘れ形見」……姉畑篇の最中でした。あれからもう倍の話数になったんだなあ、と思うとちょっと感慨深い。
リュウはもういない。

そういや、ヤングジャンプ巻末の「今週の質問」が面白い。
「リラックスする音や音楽」に対して、雨音と、猫の喉の音を挙げてる作家さんが複数いる。
無音って答えてるのも、野田サトル氏ともうひとかた。
ちなみに私も、出来るだけ無音にしてる。音楽を聴く習慣がなくて、iPhoneにイヤフォンつけたことないし。

*1:「鼠たちの戦争」読んだら、ヴァシリの元ネタの、ワシリー・ザイツェフ、モンゴロイドって描かれててちょっとビックリだ。映画「スターリングラード」だとジュード・ロウがやってたのに。

鼠たちの戦争〈上〉 (新潮文庫)

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スターリングラード (字幕版)

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「ザイツェフ」の語源はウサギだという。杉元がヴァシリの頭巾を引張ってるのはウサギの耳のイメージなのか……