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金神230「家永カノ」感想 ゴールデンカムイ

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谷垣狩りだぜ(月島)

けれどタイトルロールは、谷垣でもインカラマッでもなく、「家永カノ」っていう。
あくなき完璧と最高を追い求めた彼。
天才外科医で絶世の美女(風)って才色兼備で、更に完璧を求めた彼にとって最後のピースが母子を救うって善心だったと。
彼は自分が利己的な凶悪犯だと自覚してて、それが自分に欠けたナニカだと思っていた。
家永と尾形ってすごく近いキャラだと思ってるんだけどさ。自分が「何かが欠けた」人間だと自認してる。自分の中に「完璧」「理想」がある。
二人とも、良心とか慈愛って、厄介な部分が欠けてるんだけどさ……
家永は自己研鑽の欲求が強くて、それは、彼がナルシシストの傾向が強いからだろうけど。
彼が母子に憧れるってのは、自分には絶対になれないからで、無い物ねだりを続けてる限り、彼は永遠に理想を追い求めていられる。
他人を犠牲にして完璧を求め続けてた彼が、インカラマッって理想を見つけて、自分を犠牲にしても彼女に大願成就を託したと。

理想というなら、鯉登もまた、鶴見に理想を見てる。
彼には彼なりの「完璧」があって、鶴見がそれだと思ってる。だからもし、その理想を鶴見が外れたら、あっさり裏切りそうな予感がする。
「鶴見中尉はそんなこと言わない!」って本人に向かって言いそうな。解釈違いってヤツですよ。

鯉登は、なんだかんだいって、「まっすぐ」に育ってる。
210話「甘い嘘」の月島との対話も、よく見れば、鯉登はあくまで自分の側に寄せて解釈してる。
あくまで彼は自分自身が世界の中心にいる。鶴見は理想であって全てではない。そこが宇佐美との違いに思う。
本誌159話のカラー扉で鯉登に当てられてたのが「崇拝」の文字だし。*1 「崇拝」とは自分に足りないなにかを相手に見て、憧れる感情。つまりまずは自分なりの完璧や理想の姿がある。

母子や、彼女らを必死で助けようとする男を害するのは、鯉登にとっての「理想」ではない。
おそらく鯉登の理想とは兄だろうし、その兄が似た母なのだろう。鯉登ユキさん、この『ゴールデンカムイ』って作品全体通して希有な、「名前の付いたキャラの母親で名前のあるキャラ」なんだし。*2

鯉登はまた、自身が、月島の理想でもあって、鯉登が「善い人」を演じる限りは月島は救われる。
たとえ月島自身がどんな残虐行為に手を染めようとも。
月島は、自分は、鶴見の舞台の上で、手先を演じるのが自分の役目だと思ってるし、「ホントの自分」は全てを客席から傍観してるだけのつもり。
……って、単に、月島、自分が果せなかったので、リア充の谷垣たちに嫉妬してるわけじゃないよな???

ところで、谷垣がジェイソンステイサム(胸)だとしたら、特に今回の月島ってウイレムデフォーなイメージ。
執念深く標的を追いかけるなんてぴったり。

ラッコ鍋が去年の8月*3なので、作中のリアルタイムは5月ってことに。
アシリパさんたちの、小樽近郊のコタンに谷垣帰ってきたのはおよそ1年ぶり。
谷垣はインカラマッと共に、アシリパさんを連れて帰ると言ってコタンを出た。
そして、谷垣とインカラマッは、アシリパさんではなく赤ん坊を連れて帰ってきた。
稲妻&蝮の息子のことは鶴見たちしか知らなくて、フチたちも知らない。たぶん鶴見が赤子を預ける時に詳細は記さなかったろうしね。
フチが繕ってる紗綾形紋の服は稲妻の形見。

ところで谷垣、オソマちゃんになんて言い訳するんだ。

このコタン、鶴見の部下が見張ってるんじゃないっけ。
街でなければまずここに来るだろうと推測するだろうし。
ここまで来て一安心、なんてことにならないのが、この作品。

今回までが23巻になるのかな。今までの通りなら9月発売。
おそらく23巻は221話「ヒグマ男」から今回までだけど、221話、去年2019年11月21日発売号の掲載だから、単行本になるまで、最長10ヶ月かかってることに。このギャップがー

ところで出産って、えっ、先生がっ!?
(奥さんオメデタかなーだったら、おめでとうございます)

*1:
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*2:父親は肉体的に虐げられる、母親は個としての存在感が薄い、って傾向がある。この時代背景からして不思議なくらいに妻帯者が少ないし。そもそも女性キャラ自体少ないけどさ。他に、「母子ともに名前のあるキャラたち」って、長谷川さんちのフィーナとオリガくらいか?

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