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日々是々

金神231「出産」感想 ゴールデンカムイ

鯉登が別嬪さん。

白馬に乗って颯爽と駆け付けるとか、マヂ王子。
危機を救われたのは谷垣だけじゃなく、むしろ月島のほう。

月島「お前はずっとずっと前に選択を間違った」
これは月島自身に向けた言葉だよね。この作品全体、どのキャラも、自分のことを言うときは正直になれないし、他人のことをいうときは自分のこと言ってるし。

鯉登「谷垣に頼るのがアシリパを見つける唯一の方法では無いだろう!?」
つまり、鶴見は谷垣の忠誠心を試したのだよね。
どうせ谷垣には出来ないとわかってる。

月島が青筋立ててひそかに激怒してるのは、自分が正しくないとわかってるから。
でも、今の自分は鶴見の舞台の上が全てだと思ってる。舞台のそとを完全に捨ててる。
鯉登は、上官命令、と言う。鶴見が唯一絶対のルールではなく、そのそとにも軍組織って秩序や、別の正義があると、鯉登は説く。

鯉登は自分の正義を持ってる。
一方で、鶴見への強い思慕もある。
だから、もし、鶴見に従うことで道を誤るならば、「後悔と罪悪感にさいなまれるだろう」

月島は、自分の欲求として、鶴見の大業を見届けたいという。

鯉登は覚悟という。
鶴見に従うことが、自らの正義に沿うのか悖るのか、まだわからないけれど。
その挙句に、後悔と罪悪感を負うことになったとしても、その覚悟を決めた。
彼には彼の道があるし、月島も鶴見も父も、その途上にいるだけ。

鶴見が目標ではない、それは月島だって同じはずだと。
だから、「まだ遅くないッ」

ベタだけど、鯉登はやっぱり美しいな。
彼が正義を語ることで、月島も読者も救われる。

ところで、私のまったく独断で、鯉登のテーマソングは、福山雅治『美しき花』なんだ。
『【PV】美しき花 《歌詞付き》 / 福山雅治 《Video Clip》』 - YouTube
♪愛しながら 愛されながら 美しき花になれ
春よ春よ 春が来た まっすぐに咲き誇れ 君よ
頑張りながら つまずきながら たくましき花になれ
春よ春よ 春が来た まっすぐに咲き誇れ 君よ

このへんのサビがワタシ的な音之進のイメージにピッタリ。
別に、福山雅治のファンてわけでもなくて、ただこの歌だけに思い入れがあるのだけど。

アニメの2期のオープニングで、鯉登が、ストーリーに反して自ら飛行船から飛び降りるカットになってるのは*1、浮ついたところから地に足を付ける、の暗喩なのであろうよ。
16巻の表紙の彼はまだ空の上にいるのだけど。

一方で15巻表紙の月島は、まだ、監獄にいる。けどもその銃剣の切っ先は鶴見に向けられてる。

幼少時の人間関係は、将来、社会での他者との付合いかたの基礎にもなる。
多くは家族・家庭がその習練の場になるのだけど。
鯉登は健全な家庭に育って、平均的な良心も持ってる。故に「真っ直ぐ」だ。
谷垣や杉元、アシリパさんも同じ。
尾形は機能不全の家に育ったけれども、彼の場合はむしろ自身持って生れた厄介な特質(良心や罪悪感の欠如、冷淡さ、なんか)に救われているのではなかろか。抑圧を解消するために人殺しをも躊躇しないのは、強い。周囲の人には迷惑かも知れないが。
……宇佐美、幼少期の家庭環境は健全なのに、なんであれほど鶴見に執着してるんだろ。
不健全な家で育って、それでも平均的な良心を持った月島はサイアクだ。
悪辣な父に許嫁まで殺されたと聞かされても、自分の意志では父を殺せなかった。

おおう、イゴ草ちゃん、やっと振向いた!
あくまでこれ、月島の心象風景だから、より美化されてるんだろうけど!
月島、今まで顔を思い出せなかったのは、自分と彼女が同じ世界にいなかったから。
イゴ草ちゃんは月島の良心。

彼女の顔を思い出したことで、月島、表情をとりもどした!

(これも前々から言ってるけどぉ)なんかさー、イゴ草ちゃん、後々、ひょっこり出てきそうな気がする……
東京で上流階級の奥様になって、子供三人くらい連れて、ふくよかになっててさ……

にしても、2週間前まで(連載実時間)殺し合ってた連中が、一緒に出産を手助けするって、怒濤の展開に吃驚。
こういう、絶対の危機に、鮮やかな最善の筋道を与えてくれるのが、この作者氏のストーリーテリングの巧妙さに思う。

アイヌのお産の手順もオモシロイ。
やることない男共には臼でも転がさせておけってことか……
仰向けに出てきたってことは、女児なんだ。

*1:
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