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日々是々

金神232「家族」感想 ゴールデンカムイ

そして家族になる――

サブタイ、「家族」なんだなー

鶴見がひそかに持っていた骨は、フィーナとオリガのもの。*1
彼の大義の奥底には、失った家族がいるのか。
月島が垣間見た後ろ姿は、鶴見ではなく長谷川さんなのかもね。

家族のキズナってのは、同胞愛。
それは、身近な存在に自我を投影して、我身の一部として感じること。

特に日本では、軍隊組織を一家に擬える。上官は父親、先輩は兄、のように敬え、と。*2
(他所の軍隊でも同じかどうかは知らない。米軍は兵士が短期間で入れ替るから、そんなに個人間のキズナはないかもね)

月島が、父を殺し、婚約者も失って、新たに求めた疑似家族が鶴見隊だったけど、彼はもともと機能不全の家庭で育ったから、理想的な家族に必須の強固な同胞愛を知らない。暴力と恐怖による秩序こそが集団のキズナだし道徳だと思ってた。
月島は、それでも、意図的には父親を殺せないくらいには、生まれついて持った倫理観がある。それに反してでも、暴力で秩序を守ることが正義だと思ってた。
それを、鯉登に、「健康的ではない」って言われちゃう。
鯉登は健全な家庭で育って家族愛が身に染みついてるから、素直に、鶴見の正義を信じられる。
鯉登「その私を信じてついて来い」
あのボンボンが、成長して、月島に「ついて来い」なんて言うなんて……鯉登は上官――兄貴分として成長してる。

前回の鯉登との対話で、月島は、鶴見を信じられなくなった。それは、彼の中で暴力による秩序――鶴見の下での疑似家族――が崩壊したこと。
だから、イゴ草ちゃんの生存を知ることが出来たならば、彼女と再会するのではなくても、鶴見以外の場所で真の家族――同胞愛で構築された家族――を探す道もあった。
月島「あれは本心だったのですか?」と、鯉登に水を向けたのは月島から。
己の正義を持つ「真っ直ぐ」な鯉登が何故、信用の置けない鶴見に従うのかと。
今回の鯉登の言葉で、月島は、鶴見の下で家族を見いだした。
だから、インカラマッの御託宣を月島はもう「必要ない」と断った。
もし、インカラマッの御託宣を聞いていたのなら、月島は、鶴見のもとを離れたのかもね。イゴ草ちゃんの生死を問わず。

鯉登「くだらない人間とは到底思えないのだ」と、鶴見を信じるのは、鯉登の強さでもあるし、弱さでもあるんだよな……
ウラジオストクの長谷川さんのことは、月島も鯉登も知らないわけで。
もしそれが鶴見の「真の目的」に関わるのだとしたら、彼の動機は非常に自己中心的ってことに。

あるいは失われた長谷川一家の代わりに、自分の部下たちを家族として守りたいのかも知れない。
だから裏切りを許さない。
鶴見の部下たちに妻帯者がいないらしいし、谷垣は鶴見よりも彼女と子供を選んだし。

だけど、そもそも、長谷川さんの悲劇の原因は鶴見自身にある。スパイとして、家族を偽っていたのは鶴見なのだし。
だから、長谷川さんの怒りは、どこへ向かうのか?

214話「雷型駆逐艦VS樺太連絡船」での鶴見の台詞、「ゆっくりと話したいことがあったんだがな…」というのが気になってる。
それまで怪物さながら描かれてたのに、いきなり真顔になる。*3
鶴見はウイルクのことをよく知ってるから、本当に、アシリパさんに話したいことがあったんだろうな、と。

月島が垣間見た鶴見の後ろ姿が、なんだか小さく見えてしまう。
もしかすると、「鶴見」のほうが虚像で、中にいるのは長谷川さんなのかもだ。
彼は残忍な悪党ではなく、ただのマキャベリストなのかも知れない。

鯉登「お前たちにはまんまと逃げられたと報告する」といっても。
鯉登が鶴見に嘘を吐き続けられるのか怪しい。
しかし谷垣一家を、鶴見がどうにか出来るものだろうか?

札幌での面々。
うぉお門倉、悪運www
宇佐美に見つかってたら殺されてるよねw
宇佐美の中では死んだことになってるけど、死体確認してないでしょ……
瓦礫の後片付けしたのに。

土方一味、尾形が参謀なんだな。
このごろの尾形は6巻あたりのチンピラっぽくて。
彼も宇佐美も銃持ったままだけど、お互い、気づかないものであるらしい。
今まで、宇佐美と尾形が対話したりお互いのことを言及してるシーンがないから、この上等兵同士の関係性がわからないw
剣呑な性格なのは共通してるのに、とことんクールな尾形と、常にホットな宇佐美と。*4

で、さあ、海賊房太郎氏。ビジュアル先行であんまりドラマが語られてないんだけど!
なんですか、このイケメンぶりはwww
1ページぶち抜きのピンナップとか。
そういやこういう正統派にフィジカルに美形キャラ、本作には珍しい。*5

そして歌志内。
え、また新たな脱獄囚?
だとしたら23人目ってことに。
ドレッドヘアの道化……

殺人ピエロったら、スティーブン・キングの「IT」か、ジョン・ゲイシー*6かってカンジだけど、子供を森に誘い込むあたり、アンドレイ・チカチーロ*7思い出してしまった。
「子供たちは森へ消えた」デスヨ。*8

……などと、新たな凶悪犯が登場するたびに、元ネタを考えてしまう、金神クラスタ・ビザーロ部。

バタバタと新キャラ出てきて、既存のキャラは新たな道を見いだして、って、ほんとに終盤みたいな展開。

そして、23巻の告知。
うわマジか、姉畑篇wwww
さすがに通常のテレビシリーズでは無理って話だったけど、特典アニメなら可、なのか。
姉畑よりもなによりも、このエピソード全体、尾形が、カッコよかったり怖かったり、って、出番多いし、表情豊かなので、楽しみ~
ヤンチャな尾形の魅力が特に出てるエピソードだっ

*1:今頃になってフィーナの指が切られてるのに気づいた→
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*2:というか、むしろ逆に、武家社会の家制度では、家族のほうが、武装集団と同じ絶対的な上下関係で統制されてたわけで。

*3:f:id:faomao:20200312194859j:plain

*4:尾形はそもそも意識の境界がごく狭くて自分の肉体よりも内側にあるんじゃないかって気もするから、同胞愛なんか歯牙にも掛けないんだろな。他人を殺すのも平気だけど自分が傷付くのも厭わない。「ブッ壊れるまで」彼は止められない。

*5:というかー三白眼でロンゲってちょっと昔の少女漫画の美形キャラの典型なんだよね――そうもちろん私の世代である――

*6:アメリカで、実業家で地元では名士だけど若い男性ばかりを強姦殺人してたシリアルキラー。ピエロがトレードマーク。→ジョン・ゲイシー - Wikipedia

*7:旧ソ連時代、主として男女の子供を52人ほど殺したシリアルキラー。→アンドレイ・チカチーロ - Wikipedia

*8:→『子供たちは森に消えた (ハヤカワ文庫NF)