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日々是々

金神291話「骨董品」感想 ゴールデンカムイ

大砲の達人!(ドンッ*1

鶴見隊を、「日本軍」とか「第七師団」とか表記するのに違和感がある。
鶴見の隊は、軍団でなく、ギャング、独立愚連隊でしかない。鶴見は、上からの統率を離れて、勝手に黄金探ししてるだけ。
目の前の黄金を手に入れることしか考えていないように見える。その後の事がまるで見えない。
クーデターなり新国家建設なり考えてるにしても、他のメンバーと、具体策を全く計画してない。
序列で言うなら、鯉登が二番手になるんだろうけど、鯉登も、鶴見の「本当の目的」、計画を知らない。月島も。
もしかすると、菊田や宇佐美は知ってたかも知れないけど、彼らは死んだ。
組織の運営、政治的な戦略から、現場の指揮まで、鶴見一人でやってるので、戦場で流れ弾に当たるなりして鶴見が死んだら、そこで全てが終ってしまう。
誰も後を継ぐ人がいない。
彼の掲げる大義を信じて着いてきた人たちの希望も瓦解する。
結局、彼らの集団は、鶴見への忠誠心だけで成り立ってる。
現場の指揮官一人が死んだら全て終るような組織は、近代の軍隊ではない。装備がどんどん近代化して死にやすくなってるのに、なんで、鶴見、中世の軍隊みたいに先頭に立つかなー。
鶴見が、クーデターだの新国家建設だのって構想があるにしても、先頭切って走ってる時点で、彼の大義は信用出来ない。

尾形が鶴見から離れたのもそれが理由かも知れない。
尾形は鶴見の最古参の部下の一人だから、彼の欺瞞性も知り尽くしてる。
同時に、最も理性的でエゴイスティックな人物であるので、忠誠とか戦友とか歯牙にも掛けない。
宇佐美との対話からしても、尾形は鶴見を信じられなくなった。その鶴見への不信を土方にも投影してるのだね。*2
ただし、宇佐美は、自分が満鉄のことを調べさせたせいで尾形が鶴見を疑った、自分が鶴-尾の中を引裂いたと思っていたようだけど*3、ほんとはそれ以前から尾形の心は冷めてる。*4
じゃなかったらこの台詞は出てこない。*5

血と肉の雨を浴びて、なんだかハイになってる鶴見。
部下たちの希望が全て、自分一人に掛ってると、彼もわかってるはずだけど、それでも最前線で先駆けする。
いずれ自分もその血と肉の雨になるかも知れないという覚悟と、同時に、しかし今自分は生きてる、という無敵感もあるのかも知れない。

鶴見「父の愛があれば息子に砲弾は落ちん!!」
ここでいう「父」は、神の暗喩かも知れない。
この作品全体、「父親」が神の似姿として描かれることはしばしばある。それはどのキャラにとってもそう。*6
この場で、弾に当たるかどうかは運次第。
神を信じろ、と言いたいけど、鯉登はクリスチャンではないから、代わりに父という。
鶴見が、鯉登親子の仲を修復したのは、結局、父なる者への敬愛を蘇らせて、正義とか大義への忠誠心を強固にするためか。
鶴見が鯉登に対して「自分を信じろ」というのでなく、「父(≒神)」を出すのが狡猾だ。鯉登は鶴見のことは信じ切れていないけども、父への敬愛は確か。

ワタシ個人としては、今回の一番の見所は、鯉登平二のビックリ顔。
自分たちが砲撃されるとは全く予想してなかったろうな。
所詮、相手は土方やソフィアたち、ギャング団だし。*7
でも、すぐに提督の顔に戻るのもイイ。
鯉登提督、鶴見のせいで道化役演じてることも多いけど、日清日露と実戦で叩き上げてきた将軍なんだ。

妙に職人面したマンスールとか。
ハイになって奇妙に躍ってる永倉とか。
ベテランたちが今回は楽しい。
決して骨董品なんかじゃない。

砲弾も一緒に隠してあったのかなー
火薬とか湿気てないか?
「三番艦「曙」散弾命中!」
は、……「敵弾」の誤植だよね?
この大砲用の榴霰弾ってないでしょ。
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ところで尾形は――?
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(昼間につぶやいたマトメ。2021/9/22 金神291話 雑感 - min.t (ミント)

*1:「フルボッコだドン」とは?意味や言葉の使い方、概要(元ネタ)など | 意味解説辞典

*2:
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*3:間の楔的に。

*4:
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*5:
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*6:尾形にしても月島にしても。月島が自分の道徳心を殺して鶴見に従ってるのは父親=神を殺したから。一方で鯉登は父への敬愛を保ち、自分の道徳心にも忠実だ。杉元は父に自分の幸せを考えろ、と祝福されたのに、それに背いて修羅の道を歩んでる、っていう。

*7:というか、ロシアの反政府勢力が日本国内で日本の軍隊と武力衝突してるんだから、国際問題ではないのか……?