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日々是々

金神148「ルーツ」 ゴールデンカムイ

金神15巻の感想 ゴールデンカムイ - day * day

あの……高まるリスクって何なのでしょう……?

扉のアオリ、
どこから来たのか、何者か、どこへ行くのか。
元はカソリックの神学問答。
ゴーギャンの絵のタイトルでも有名だけど、ゴーギャンが南太平洋タヒチのビジョンにこの問いを重ねたのに対して、樺太なんて極寒の北国のキロランケに重ねてるのがニクイ。*1
アイヌ」ってのもそもそもは「人間」って意味だし。

トドの皮、……でけえ……

トド飯、なんか美味そう。味の想像全くつかないけど。
百合根や菱の実の炊き込みご飯とか。
樺太でも、米食なんだなあ。
穀類、大陸の北方だと米より麦のほうが一般的なのに、アイヌ達も麦でなく米。このへんは和人の影響かな。

土方(じいさん)にもタカル気満々の白石。

このおっちゃんはいつから飼育場やってるんだろな。
まさかポーツマス条約以降じゃないよね。

赤狐・黒狐・銀狐の関係についてはシートン動物記に出て来たな。
キツネは基本は赤で、たまーに黒化した黒狐が生まれる、更にそのごく一部に白い毛が混じった銀狐が生まれるので、シルバーフォックスのファーは貴重で高価だ、と。
飼育されてるのは黒化で固定されてるわけだが。
アリューシャン列島でも養狐が行われてて、逃げ出した狐が生態系に大きな影響を与えて大変だった、ってハナシが→『ネズミに支配された島』*2

キロランケの歴史講義。
千島樺太交換条約は1875年。

今度は、のっぺら坊ではなく、ウイルクとしての父の足跡を追う事になる、アシリパさん。

キロランケ一行が樺太に来た理由が明かされる。刺青の脱獄囚を追うだけでなく。
アシリパさんに樺太の現状、少数民族の悲劇と、抵抗者としての父親の足跡を見せて、彼女を同志として教育しようと。少なくともキロランケはそのつもり。……が、尾形の真意はほんっとにわからん。

尾形は、アシリパさんも、金塊に辿り着くための道具としか見てないようだ。
キロランケ「不信感を与えてはダメだ」って台詞。
尾形の冷酷な合理主義を知ってるから、 無理強いしても利にならないって理詰めで説く一方で、やっぱりアシリパさんを傷付けたくないって感情もあるわけで。

キロの目はずっと光が宿ってる。彼は純粋に独立運動を信じてる。
キロランケ「彼女を成長させれば」
彼が言うアシリパさんの成長って、パルチザンの同志になるってことなんだよなあ。
キロは、自分達には絶対の理があって、いずれアシリパさんもそれを理解して、賛同するはずだ、と信じてるようだ。
で、このへんの台詞からして、尾形のことも同志として信用してるんだな。

尾形も、結局は、金塊を求めてるんだろか? しかし何のための金塊なのか?
キロたちの独立運動に与するのか、彼等も裏切るつもりなのか。

今現在から20世紀の歴史を知ってると、帝政ロシアが倒れたところで少数民族独立運動は成らないし、共産党時代が帝政時代と比べてマシだったのか、どーか。

キロランケ「樺太はどちらの国のものでもなかったんだ」
樺太は季候が過酷すぎて、狩漁中心の少数民族が点在する以外、ほとんど産業のない、経済的には無価値な土地だったんだよな、日本や中国からしたら。
それが、もっと北からやって来たロシアが、漁業や交易や不凍港のために樺太~千島~北海道に目を付けた、と。
江戸時代中期から既に、ロシアと日本の折衝は始まってて、その間にアイヌ達も巻き込まれていった。*3
幕末以降、日本は、ロシアとの国境問題で、アイヌを日本国民として(アイヌが日本人でないなら彼等の住む土地は日本ではないことになってしまうから)同化政策を進めていった、って経緯が。
アイヌなどの狩猟民族は元々、土地の所有って考えがなくて、ただ狩漁や採収といった利用権が重要だったから、広い範囲を自由に移動してたし、土地へのコダワリも農耕民族よりずっと希薄だった。
千島や樺太から連れてこられたアイヌは、農耕民として定住させられたけど、慣れない土地で慣れない農耕なんて出来るはずもなく。
世界史からすると、少数民族が大国に飲み込まれて帝国の一員になるのは必然なんだけども。
20世紀後半になって樺太や千島は地下資源が注目されて、経済的に重要な土地になっていくし。

千島樺太交換条約のあとも樺太に残ったウイルク、絵からすると当時10才くらい? じゃあ死んだときは40くらいか。
ウイルクが日本にやって来たのは、インカラマッとのエピソードからして、20~十数年前なんですかね。
インカラマッも年齢不詳だが、尾形より上、白石と同じくらいってされてるので、30くらいでしょか。
すると二人が出会ったとき、マッちゃんがローティーンぽいので、少なくとも10年は前ってことに。
しかしキロはインカラマッとは(7巻まで)面識なかったようだから、キロが日本にやって来たのはその後になるのかな。
キロはマッちゃんより上、鶴見と同じくらいの歳ってされてて、え、鶴見、そんなに若いのっ!?ってのは置いといて、30代半ばですかね。

キロランケの台詞、あれ、この言い方だと、ウイルクと親が同じ(=兄弟)ではないの?
どころか、キロ、ウイルクと同じ村の出身ですらないの?
キロのルーツが謎すぎる……
ウイルク・アシリパさん・キロランケ、共通して青い目だし、アジア人との婚姻で青い目になる確率は低い(青い目は潜性遺伝で、アジア人の大半の褐色~黒目は顕性遺伝、だから片親がアジア人だとほぼ褐色~黒目になる)からこの3人が基本はアイヌなのに青い目ってことは、母方の祖先にも青い目の人がいたのか、或はまったく別の遺伝子で青い目が発現してるかってことになる。

キロランケはずっと、ウイルクのことだけを話してる。
キロ自身のルーツ、生まれたところや日本に来た経緯、ウイルクとの関係なんかは相変わらず語られない。

にしても、最近の尾形、なんか丸顔だな……!
釧路篇だともっと面長でオッサンオオヤマネコぽかったのに。

ルーツどころかフルヌードまで晒してるけど目的が全く見えない尾形と、(少なくとも読者には)ルーツは明かされてないキロランケと。

ああ、これが、ルーツ(どこから来たのか)・全裸(何者か)・目的(どこへ行くのか)って、アオリに繋がるのか!

お久しぶりの二階堂&宇佐美!
……二階堂、すっかり動物扱なんですが。
言葉も喋らなくなっちゃった。
鶴見に騙されてるのね……
見捨てないだけ、鶴見、優しい。

月島が樺太に行って今ここにいないから、宇佐美が代わりに鶴見へのツッコミ役なのね……

鶴見の部下、将校は鯉登だけなのか。
下士も月島軍曹・故玉井伍長だけ。
上等兵は宇佐美、と、尾形だった、けど、まだ他にも名前の出て来てない人達がいるのかもだ。
網走で、鶴見が「部下63人」て言ってたので、後60人は全部、一等卒になるのかな。
(鶴見が小樽での活動始めたのが去年の冬以降として、さすがに入ったばかりの二等卒は採用しないだろ……)

そしてまだ鶴見に付き合ってる有坂さん。
……ヒマなのっ!? 砲兵工廠はいいのか。中将さんなのに。

球体関節の義手。球体関節でどうやって開け閉めのギミックが出来てるのかナゾ。
中指の関節はダミーなんですかね。ってことは、拳を握ろうとすると、中指だけ立てることに……?
🖕
……ってこれもUnicodeにあるのかよ……

二階堂が……どんどん変貌してく。肉体的にも目減りしてるし、精神もおかしくなってるし。
元はといや、蕎麦屋で杉元を襲ったときに端を発してるのだけど。
今作中で一番の被虐者だし、それだけいたぶられながらもまだ生き延びてるって、杉元以上にシブトイ。
今じゃすっかり有坂中将の(というか作者の)オモチャ。
これもきっと、作者なりのキャラへの愛。
……二階堂って、一途すぎて虐めたくなるタイプだよね。

本人は杉元は死んだって言われて、杉元ロスに陥ってる模様。
そこから鶴見がどう治癒するのか、実は生きているって教えるのか、他の目標を与えるのか……?

今週のQ&A。
……∑( ̄□ ̄;)ノノ

ストレートに真面目にトリビアだなあ。

*1:そういやウイルクがカソリックって言ってたのでキロランケもカソリなんだろか。

*2:ねずみに支配された島 | ウィリアム ソウルゼンバーグ, William Stolzenburg, 野中 香方子 |本 | 通販 | Amazon

*3:てかさ。松前藩、もともと交易しか産業のない貧乏藩で、ロシアがたまに来襲してることが江戸幕府に知れたら防御設備を作らされる、そんなカネはないけどそしたら領知を取り上げられて幕府の直轄領にされてしまう、だからってロシアが来てることを幕府に伝えなかったって、どーゆー……