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日々是々

金神283話「神の刺青」感想 ゴールデンカムイ

汝、其の名を濫りに唱える事勿れ

ああそうか、土方の刺青は、鶴見の側には知られてないんだ。
宇佐美が門倉から取り上げたのは牛山のコピーだ。

というか、ついに土方が脱いだ!
古稀ヌードですよ!?

……いやこのマンガ、ほとんどの男性キャラ、少なくとも一度は脱がされてるのに、土方は最後の砦だったしね?
70越えてるとは思えない、いい筋肉ですなあ。
まだまだ現役。

神を胸に抱いた老兵って、なんか、象徴的だ。
従前、土方って、(キリスト教でいう)死の天使っぽいと思ってるんだけど。*1

で、土方は、「神」が重要なキーワードだと読んだ。
ウイルクってカソリックだよね。インカラマッが言うには。
ウイルクにとって神とは、アイヌのカムイや日本の八百万の神ではなく*2キリスト教のアドナイ、ポーランド語のBógとか、ロシア語のБогのはず。
「神」の字で表わされるものが、ウイルクにとって、なにを意味するのか?
教えたのは鶴見か、土方か?
鶴見は黄金を神という。形ある物を神と崇めるって、偶像崇拝の愚を犯してる。形があるということは、誰かが所有し、独占出来るということ。だから、それを巡って人々は欺し合い、殺し合うって地獄絵図になる。
ウイルクが、鶴見と同じ轍を踏んでるとは思えないのだけど。
鶴見は、黄金の神が貪欲な悪神だと知っててなお求めようとする、そのへんが、彼自身が真の神になりきれないデミゴッドである由縁なんだな……

あるいは、ウイルク、北海道に渡ってリラッテと出会ってから、キリスト教を捨ててアイヌの信仰に帰依したのかも知れない。
過酷な独立運動よりもうちょっと現実的な民族運動に、と。
それが、純粋さを求めたキロランケとの対立点でもあるし*3

演説をしてるソフィア、これが彼女の大義なのだろう。
同じ車内に紛れ込んでる尾形
おおお、尾形、作中のリアルタイムでは第273話以来だから、10話ぶり!
母ちゃんのこと夢に見てる、しかもなんだか不吉な夢って、なにこの死亡フラグ……

尾形は、ロシア語出来るから、ソフィアの演説を聞いてる。
つまり彼は、鶴見の大義も、アシリパさんの希望も、土方の計画も、ソフィアの構想も、杉元の目的も、ヴァシリの標的も、みな知ってるんだ。
尾形は、全てを俯瞰する立場にいて、なおかつ独善的に正義をもたらす裁定者じゃなくて、気紛れに死をもたらす。
たまーに彼は第4の壁の手前に出てくる。それは読者や作者氏自身のようでもある。
とすると、死亡フラグは、彼だけでなくて、函館に向かう全員を予兆してるのかもね?

彼の思い出す母は優しい。
彼は、自分が殺した相手をほとんど気にもかけないけど、安らいでるときは母を思い出すし、緊張してるときは勇作さんを思い出すようだ。母の記憶は悪くはないらしい。
彼は、ネグレクトや虐待を受けて育ったわけでもなくて、母や祖父母から多少なりとも愛された記憶はあるようだ。宇佐美や鯉登ほどアットホームな家庭でなくとも、少なくとも月島よりはずっとマシな幼少期だった。
それでいてあの性格なあたり、やっぱり生来のサイコパスナチュラルボーンキラーなんだろな、と。*4
彼の母への殺意は恨みや憎しみではなく、花沢パパが言うように「憐れで疎ましかった」とか、あるいは、本人がいうように父に会わせたかった、狂ったまま生きるより幸せな記憶を抱いて死んだほうがまし、て考えたのかもだ。

無理矢理に汽車を動員した鶴見、そこに紛れ込んでるヴァシリ……
ヴァシリ、なんで、尾形が函館に向かうと知ったんだろ? なぜ鶴見たちが尾形と同じく函館に向かうと知った?
ソフィア一行の話を聞いたのなら、ソフィアたちと同行しそうなものだけど。 アシリパさんたちが移動するなら尾形もそれについてくはず、鶴見たちもアシリパさんと同じ場所を目指してるとわかってる?

*1:死神というより、神の定めた死すべき時を人に告げる天使。この概念については、Gクルーニー主演の映画「マイレージ、マイライフ」が巧く表現してる。→マイレージ、マイライフ - Wikipedia

*2:それらはむしろダイモン。

*3:ただしキロランケの信教は書かれてないし、彼がキリスト者とも思えない……少数民族シャーマニズム(この語源はまさに「サマ」)を大事にするとはいえ、信仰とは違う気がする。もしかして無神論共産主義じゃないのか?

*4:常に冷淡で、徹底したエゴイストで、、殺人を忌避する本能もない代わりに自己防衛本能もないようで、危険に身を晒すことも厭わない。そのへんもやっぱりサイコパスっぽい。