金神188「生きる」感想 ゴールデンカムイ
……期待を裏切らないな……
アニメの4巻がちょうど1月30日の発売で、尾形のジャケだったばかりなのに!*1
あまりに怒濤の展開。
え、結局、尾形がここまでアシリパさんを引張ってきたのは、自分を殺させるためだったの??
アシリパさんと尾形の対決に、杉元の乱入は充分に予想出来たから、予定調和的な決着にも思える。
アシリパさんは穢させないってのがこの物語の大原則だけど、寸前まで彼女を追い詰めたのが、尾形なんだ。初めて会ったときに自分の命を救ってくれたアシリパさん。ちょうど兄様の魂を救おうとした弟君と同じに。
2017年1月12日に発売された103話から、約二年にわたって続いた山猫スナイパーの物語の結末としては、妥当な落とし処だ。
もし彼が死んだら、作品の外でいろいろ大変なことになりそうだし。
死に臨んで勝利の笑みを浮べる尾形!
そういうやつだよ!
こいつ、こういうとこで笑うんだよな!
ステキだ。
だけど今後、アシリパさん、弓を撃てるかな? 弓をつがえるたびに尾形のしたり顔が浮んで来そうな。
射手の命にも等しい右眼と銃を失った尾形。
アシリパさんは尾形を殺しかけたって精神的ショック。
杉元は、あれほど憎んだ尾形を助けるはめになった。
三方一両損なのか。
いや、むしろ逆だ。
サブタイトルは、「生きる」なんだ。
杉元「この流れでは死なせねぇぞ」
杉元「あの子を人殺しにはさせねぇ」
杉元「お前の「死」にこれっぽっちも関わらせるもんかよ!!」
このセリフの畳みかけが圧倒的だ。
尾形は命を救われ、アシリパさんは人殺しにならずに済んだ、杉元はアシリパさんの魂と尾形の命を救うことで自身も救った。
三者ともギリギリのどん底で生を得た。
尾形の死は3人の死、尾形の生は3人の生になる。
尾形、最初に会ったときは杉元に殺されかけたところをアシリパさんに助けられて、今度はアシリパさんに殺されかけたところを杉元に助けられてるって因縁。
何度も死にかけてるのに、なんだかんだ言って運や人に助けられてるんだ。それこそ、彼が否定した神や愛ってやつじゃないのか。
尾形は魔弾の射手*2としての生命は絶たれたけど、自分の生にそれ以上の価値を見いだすのか?
……って、なんか、あっさり、左目でも充分に照準できそうなんだよな……普段から両眼開けて撃ってるし。
彼に罪科があるとするなら、それは、彼が怒りに駆られて撃ったこと、そのことに罪悪感を抱いてしまったこと。
弟とアシリパさんを重ね合わせてしまったこと。
自分が祝福を受けなかったことを拗ねて、自ら呪いを受けたこと。
ここから改めて、尾形は、怒りに充ちた魔弾の射手以外の生を「祝福された道」として歩むことになるのか?
その切っ掛けがアシリパさんの放った矢なのだから、アシリパさんは尾形の導き手になるのか。
彼に救いが必要だとしたら、最後には自分で救うしかないのだけど。
「神を探す話」って感がいっそう強まるんだ……
魔弾の射手としての生を絶たれることが、彼にとっての救いだとか祝福だとかになるとしたら、ちょっと切ない。
私自身にどうにもナルシシストの傾向があるから、尾形にも、回復不能な傷は負って欲しくなかったのだけど、これが彼の最善の道なのだろうか?
おそらく彼はもう少しは生き延びるのだろう――鯉登や月島達に殺されたり自死を選ばなければ。
この後あっさり死んだら、なんのために杉元は彼を助けたんだ……
にしても、二次創作界隈でこんな展開いくつも見た。
殺伐系杉尾クラスタとしては、尾形の毒を吸い出す杉元の絵なんて、美味しすぎますわよっ♥♥♥♥♥♥
ヲトメ心を裏切りませんわね、この先生はっ。
尾形の行動って、ほんとにわからんっ。
なんのために鶴見から離叛したのか。
土方に着いたのか。
ずっとアシリパさん達と行動を共にして、何故、キロランケと組んでウイルクを殺し、杉元を撃って、樺太行に付き合って、そしてキロランケも裏切ったのか。
全ては気紛れで、大きな目的なんか最初からなかったのか??
アシリパさんに自分を殺させる……あるいはアシリパさんを殺そうと決めたのは、いつからなのか? 弟君の幻想を見た時から?
尾形が大変なことになってる横で、再会を喜んで笑い合ってる3人がちょっと妬ましいのは確か。
尾形が完全な悪役になってるから仕方ないんだけどさ。
命があるだけでも幸いと思うべきなのか。
この話が、予定調和的に感じられるのって、今回の登場キャラ、杉元・アシリパさん・尾形・白石の四人が、象徴的なグループだからかも知れない。
ちょうど1巻で登場したメインキャラ全員だし。
尾形とアシリパさんは、それぞれ、理性の二つを象徴してる。
二人とも、射手って対象から一歩身を引いたところから見てるスタンスも共通してるし、性的な要素がないのも一緒。現実と直に関わらない。理詰めで理解しようとする。
尾形は、エゴ、利己的・自己中心的な合理主義。
アシリパさんは、倫理、個人の外から律する理性、スーパーエゴ。
エゴは常に合理的で、全てに理由を求めようとするから、突き詰めると目的を失って、ニヒリズム、虚無に陥る。尾形が急に死を求めたように。
人を行動に駆り立てるのは倫理だ。
倫理は常にエゴを統率して支配しようとするし、エゴは倫理を殺そうとする。
エゴと倫理が殺し合って共倒れになると、後には衝動(シライシ)しか残らないから、生の肉体(杉元)は両方を救わなければならない。
結果として尾形には回復不能な傷を、アシリパさんへは強烈なトラウマを残したけれど。
そうやってシンボリックに解釈できるんだよな。
ここまで痛切で劇的な尾形の決着のドラマ、
杉元とアシリパさんの再会、って盛り上げといて、
最後、吹雪も止んで雲間から光がさして、で、そこで、
聖水プレイかよ!?
……期待裏切らねーな、この先生はっ。
特に白石、よく拭いて乾かさないと、凍傷で大変なことになるよー八甲田山遭難事件のときとかねー
来週号の予告に載ってないから、来週は休載っぽい。
また絶妙なところで……
恐らく190話までが19巻だろうから、今度はどこで途切れるのか。
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Twitter見てたら、今回の展開、マタイの福音書が元ネタだそうで。
そのあと更に不吉な文句が続くんだけどっ?!
手の代わりに銃で勘弁してくんないかな。
マタイの福音書 5:29-30 ですから、もしあなたの目が情欲を引き起こすなら、その目をえぐり出して捨てなさい。体の一部を失っても、体全体が地獄に投げ込まれるより、よっぽどましです。 また、もしあなたの手が罪を犯させるなら、そんな手は切り捨てなさい。地獄に落ちるより、そのほうがどんなによいでしょう。 | リビングバイブル (JCB) | 聖書アプリを今すぐダウンロード https://www.bible.com/ja/bible/83/MAT.5.29-30.JCB
今回のエピソードがホントに聖書ネタだったなら、彼は、右眼と銃ととを引き換えに、救済されることになるの?
だとしたら希望が出てきた……