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日々是々

金神20巻の感想 ゴールデンカムイ

ゴールデンカムイ 20 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

ゴールデンカムイ 20 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

とうとう20巻の大台ですよ……! 3巻の頃に出逢った身としては感慨深い。

表紙の杉元はけっこう意外。
20巻の内容からして、表紙に誰が来るのか予想が難しかったのも確か。
有古や菊田は今巻が初登場だし。
1巻、10巻が杉元だったから、20巻でも妥当ではあるね。

ゴールデンカムイ 20 (ヤングジャンプコミックス)

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それより驚かされたのが、紙本限定特典の裏表紙。*1
尾形とアシリパさん!
この3人が表紙に来るなんて……!
しかもこれ、19巻で3人が再会する直前の絵なんですよ。
尾形、絵では薄笑い浮べてるけど、作中では全然そんな余裕もなかった。

公式ではこんなこと言ってるし、闘志剥き出しで銃剣に手を掛けて殺る気満々の杉元なんだけど、この直後、杉元は尾形の命を助けて、3人とも救うことになるっていう。
あまりに劇的な大逆転で、すごい展開。
樺太篇のクライマックス。
*2

やっぱり、私は、杉元-アシリパ-尾形の3人+白石に特別な、メタな関係を見てしまうのだ。
白石はこの場面の見物人、第四の壁の手前にいる。

アニメの第3期のキービジュアルも、そういえば、氷上の尾形目線の杉元だった。*3
とすると、20巻の表紙がこうなるのは必然だったのかな。

……だけに、「手洗い祝福」って、……この文字マジなん??

目次

第191話 故郷の水

無言の皆の中で唯一、素直に弔意を口にする白石。
やっぱり素直だ。
嘆いてるのが白石とアシリパさんだけ。
杉元だって付合い長いし、一度は肌を合わせた仲だっていうのに!*4

白石「真面目すぎる男だったんだよ」
やっぱり、キロランケは、大陸の民族運動って初志貫徹するつもりだった。
その為にアイヌの金塊を奪おうとした。
ウイルクは、もう、北海道のアイヌに溶け込んでて、彼等のために使おうとした。
……ってことなのかな。

キロランケは、のっぺら坊=ウイルクって確証はなかった。
それを確かめてから、殺した。
金塊の一部を持って支笏湖で捕まったのはのっぺら坊=ウイルク。
金塊を隠したのは、暗号を書いた、のっぺら坊=ウイルク。
七人のアイヌを殺したのは……? ウイルクでないのなら、キロランケか鶴見ってことになる。
なぜ、キロランケは、のっぺら坊の収監直後から行動を開始しないで、5年も待ったんだろ? 行動しようとした矢先に徴兵に取られて、じきに日露開戦で徴兵期間延長されて身動き取れなかったのかな?
で、帰還してアシリパさんに会いに行ってもいつもいなかった、と。
アシリパさんと杉元の出逢ったのが1907年の春だとすると、網走脱獄は06年前半。その直後に土方はキロに会いに行ってるので、そこで二人がなにを話したのか、のっぺら坊は、土方になにを託してキロランケに伝えたのか?
5年前の事件に鶴見はどう関わってるのか。
結局、キロランケの出自はともかく、金塊にまつわる事件については何も明らかになってない。

放り出される尾形。
彼が生きてるだけでシアワセですとも……

あ、そうか、鯉登とアシリパさん、今回が初対面なんだ。
一応、先遣隊のリーダーって鯉登のはずなんだけどな。

お懐かしの岩息舞治!
帽子も被らないで、寒くないのか。
殴られて喜んでるとか……
杉元、帰るな。

杉元「アシリパさん これ返すよ」
ってのはアシリパさんのメノコマキリ。
コマから外れてしまったけど。
アシリパさんのメノコマキリ、大きさがよく分らない。
刃長5,6センチにも見えるし、10センチにも見えるし。
杉元の肥後守(最大で10センチほど)と同じくらいの大きさだろか。
アシリパさんが背負ってるのは杉元の荷物なのかな。

ソフィア一味は、ただキロランケの死を悼み、一行を見送る。

一転して、舞台は登別。

また温泉か。
新展開、新キャラ登場。
って、いきなり全裸か。
とうとう浩平と宇佐美も脱いだ!
ファンサービスが良すぎませんか。

新キャラ菊田特務曹長*5。 特務曹長って、准士官だっけ、将校未満では最上位、月島よりも上だ。

菊田「やはり俺の合流による戦力強化を相当期待しているようだな!!」
この台詞は単行本で追加されたものだけど、菊田への印象がだいぶ変わる。
連載時、最初、造反組かとも思えたけど、もっと脳天気で忠誠心高い、模範的な軍人のようだ。

暗闇の下駄の音といえば、都丹庵二。

浩平がヘッドギアをはずしてるの久々。
耳朶ないと音が聞取りにくそう。
あれ、マトモに応答してる。
彼は杉元が死んでると思ってるんだよね、杉元ロスからは回復したのか、むしろ杉元失ったことで正気に返ったのか?

そして宇佐美、なにやってんだwwww
コイツ、苦行してエンドルフィン中毒して法悦得るタイプっぽい。
サンダンス*6喜んでやりそう。

第192話 契約更新

扉でいきなりなにやってんすか。

ビッグマグナムで一躍話題の菊田特務曹長
と、アイヌ日本兵有古一等卒、キロちゃんと入れ替るように登場して来ましたよ?
イイ面構えだ。

菊田や有古は、刺青の脱獄囚のことは知らない。

有古、ちゃんと、同じ階級の二階堂にはタメ口で、それ以外の宇佐美・菊田には敬語使ってる。

宇佐美「じゃあそいつもアイヌでは?」のコマの宇佐美、なんか妙に美形だ。
宇佐美、真面目な顔してると、けっこう美男子なのにね。

都丹「今度見かけたら教えますよ」……これ都丹に言わせるとか、悪趣味だw

いっぽう樺太では。

そういや、アイヌニヴフも、ピアッシングしてるんだ。
むしろ、和人や漢民族なんかの儒教文化圏でピアスや文身を嫌うって伝統のほうが珍しいのかも知れない。*7

アイヌの服、北方民族なのに、南方の着物と同じに合わせ襟っていうのが例外的なんだそうで、アイヌ民族が南方にルーツがあることの一環って説。

尾形はまだ意識不明。
また勇作君見てたりしないか?

谷垣「この男が少数民族の独立に共感するとはおもえないが」
デスヨネー
鯉登「本当に純粋に金塊が欲しいだけなんだろうか」
樺太篇の最大の謎の一つ。

何故に尾形がキロについたのか、てのも、謎。
土方の構想は夢想的過ぎる。
で、キロたちの民族運動や革命がマシと考えたのか。
https://twitter.com/FaoMao/status/1046300522053943296

前々から気になってるけど、今になってこの話題が出て来るってことは、ウイルクの死は単に、キロランケとの内ゲバではないようだ。

彼が今後改心して知ってることや心情をすべて打明けるとは思えないけど。
尾形の目的っても、尾形、アシリパさんを穢すために死のうとしたよね!? どうでもよくなっちゃったの??
彼には、金塊を手に入れるとか、或は中央だの陰謀だのの外に、メタに、父≒神を殺すって目的があるように思えるのだけど。*8

ウイルクの死で5年前の事件の真相が遠のいて、キロランケの死でウイルクの死の理由が遠のいてしまった。
どっちも、実は、尾形が知ってるのかもだ。

月島が。
スヴェトラーナを何が何でも連れ戻す!っていうんじゃなくて、ちゃんと彼女の意志も尊重してるとこがイイ。
賢い。
しかし、スヴェトラーナと岩息の冒険譚ってスゲエ気になるんですがっ。

それはまた別の話
って措いて物語世界を広げてく演出って、好き。

杉元とアシリパさん。
やっぱりそういう話になるよねえ。

鶴見の目的にはアシリパさんは不要だから、アシリパさんをジャンヌ・ダルクに仕立てたい土方やキロより、鶴見のほうが、杉元には都合がいいのかもだ。
金神14巻の感想 ゴールデンカムイ - day * day

でもさ。

アシリパさんをこの金塊争奪戦から解放するんだ
……って、それ、あくまで杉元の願望よね?
アシリパさん自身の意志は確かめてない。*9
どころか嘘吐いてまで、アシリパさんを、可憐な少数民族の少女のままでいさせようとしてる。

81話の「最後の晩餐」パロを踏まえると、この「嘘」はもしかして、聖書にある「ペテロの否認」に擬えられてるのかも知れない。ナザレのイエスが捕まったあと、兵士に職務質問されたペテロは、第一の弟子なのに、自分は知らないと嘘を吐いて逃げた。人間の臆病さ・弱さを説く話だけど、杉元の嘘も、彼女の真の想いに気付くことなく、身勝手に少女に縋ろうとする弱さ、愚かさを意味してるようにも思える。

彼女自身がホントはなにを望んでるのか――のっぺら坊の目指すアイヌ独立運動なのかそれとも杉元の望む平穏な生活なのか、それって、のっぺら坊も杉元も、知らない。
アシリパさん本人の意志は、誰も知らないどころか、気にもしてない。
杉元も、のっぺら坊も、自分の希望を、彼女に託してるだけだ。
金神14巻の感想 ゴールデンカムイ - day * day

その後の歴史を知ってるなら、確かに、杉元が望むようにアシリパさんはコタンに帰って平穏な暮らしを送るのがベストではあるんだけどさ。
この物語の10年後、1917年にはロシア革命が起きるし、やがてWW2から終戦に。
アシリパさん、21世紀まで生きることだって有り得るし、もう、伝統的なアイヌではなくて、日本国籍を持った、アイヌ系日本人として生きることになる(もちろん和人も伝統的な生活ではなく、どんどん文明化・洋化されてく)。

で、しかも、これ、尾形と全く同じこといってるじゃん。

尾形「アシリパもこの殺し合いから「上がり」だ」
尾形「コタンに帰って婆ちゃんに元気な顔を見せてやれ」
尾形「お前がそんな重荷を背負うことはない」

(185話『再会』)

尾形は後段アシリパさん殺そうとするくらいだから、単に彼女を言いくるめたくて思い遣ってるふりをしてるだけなんだけど、杉元も、利己的なパターナリズムが擬装した思い遣りで、同じことを言ってるって、皮肉。

アシリパさんの当座の目的は、父が死んだ理由を知ること。
単に、キロランケとの争いではないと見てる。
それは金塊を探す過程で明かになると思ってるようだ。

アシリパ「じゃあまだ道は同じだな」
杉元「契約更新だ」

これ、読者との間の契約も更新されたってことかな。

1~5巻:囚人狩り
5~14:網走でのっぺら坊に会う。
14~19:杉元とアシリパさんが再会する。
と来て、
19~:金塊探し、って、初志回帰。

だけど、アシリパさんは、杉元やみんなが金塊争奪戦で殺し合うことを憂いてる。

殺し合いの末に金塊を見つけてその先は?その金塊を使って更に殺し合うのか? (164話「悪兆」)

杉元にとっては、金塊を見つければ終わりなんだけど、アシリパさんはもっと先を見てる。

アシリパさんが、キーワードを鶴見に伝えれば、もう鶴見にとってアシリパさんは用済みで、「上がり」、解放されることになる。*10
でもアシリパさんは、金塊が見付かったら見付かったで、その後に予想される暴力を恐れてるんだ。

最悪、アシリパさんがキーワード秘めたまま死ねば、暗号解けなくなって、金塊の発見がかなり難しくなる*11、そこで争奪戦も殺し合いも終了になる。
だから、皆を救うためにアシリパさんが死のうとすることも充分有り得るわけで*12、それをどう回避するかが、杉元の最終目標になるのかも知れない。

第193話 登別温泉

また裸か!
相変らず野郎ばかりが露出高いんですが。

化物の話。
「不死身の杉元」、が、怖がってるのがミソ。生きてる相手には全く臆さないのに。
……いきなり尻見せとか*13、化物でなくても、関わり合いになりたくねえな。
目玉の魔除けも世界中にあって。
トルコのナザルボンジュウ(→ナザール・ボンジュウ - Wikipedia)とか、プロビデンスの目とか。
鳥避けのバルーンとか。
昆虫や魚など*14、動物でも蛇の目模様(眼状紋 - Wikipedia)を持つ種は結構いるから、多くの動物に共通して、恐怖を煽るのであるらしい。

お爺ちゃんは日本語話せない……わけでもないと思うけど。
和人の町で取引したりしてるんだし。

アシリパ「悪いことをする奴は見られるのが怖い」……の背後に伏せってる尾形が描かれてるのがイミシンだ。
彼の回想の中で、母親と弟君は眼が描かれてない。彼らに対しては、尾形、悪いことをした、って罪悪感があるのか。
母親に対しての無機質な感覚と、弟君への感覚は違うようにも感じる。
弟君に対して罪悪感があるにしても、しかし尾形の前に現れる勇作君はひたすら優しい。尾形の中では勇作君は兄様を恨んでいないのだ。

アシリパさん、シライシと同じ発想なのか。
小学生か。
……そんな年だっけ。
三人でなにやってんだwww

登別温泉の一行。

……菊田さんなんのプレイよそれ??
菊田も変態一味……

都丹の一味は按摩として潜入してるのね……

カルルス温泉。→カルルス温泉 - Wikipedia

菊田たち、宇佐美たちとは協力してないのか。
鶴見隊ですら一枚岩ではないらしい。
造反組以外にも内部分裂があるのか……?
浩平はそもそも造反組だったんだ。
しかし宇佐美が鶴見に対して造反を考えるとは……思えない……が……いやもしこれで彼も造反組だったとしたらスゲエ変わり身だけど!

菊田の眼帯、これ、海賊の眼帯と同じだ。
暗闇での戦闘になるかも知れないと予測して対策してくるあたり、さすが歴戦のツワモノ。
横に倒れながらの射撃とか、二丁拳銃とか、もお定番のシーンではあるけど、むちゃくちゃカッコイイ。

第194話 硫黄のにおい

地獄(谷)のバスターズ。
引続き、登別温泉でのバトル(ただし着衣)。

都丹庵二、なんかキャラ変わった気がする、と思うと、ああ、アニメで水島裕だったw
昔の水島裕の声で想像出来る……!

暗闇と硫化水素の煙の中でのバトル、なんて、まさに地獄の風景まんまw

菊田、ホルスターの防弾ベストって、ヘン……って思うと、この頃はまだ、防弾ベストって開発されてなかったか。
よかった、コレクションが銃とかで。
敵の頭の皮剥いで集めてそうな顔してるのに!!*15

助太刀にくる、宇佐美たち。

宇佐美がいるのに躊躇無く撃つ菊田w
さすが。(当時の拳銃弾じゃ、人体なかなか貫通しないかな)

二階堂の射撃スタイル、あ、連載時と絵が反転してる。
右が義手だから、ボルトどうやって引くのか疑問だったけど、右腕で銃を抱えて左手で撃つのだね。

宇佐美「…いやあ~バレました?」
イイ顔しやがるwww

喰えねえなあ。
……て顔してる、菊田。

宇佐美、どうにも、いつもハイで変態チックで、腹の底が見えない。
ハリウッド映画だと、このタイプ、バトルの序盤で死ぬんだけど。
尾形とはまた違ったタイプの変質者。

有古一等卒だけがマジメに見える……けど、彼もまた変な可愛らしい性癖とかあったりしませんかね……

有古、小さい頃入っただけじゃ、氷筍のこと知らないか。
当時は普段から人の出入があったなら、氷筍なんか育つ間もないのか。

「形勢逆転」とか、いつぞやの全裸バトルの回思い出す……

やはり暗闇に引き込むってのが、都丹の基本的な戦術。
狭い洞窟なら標的も狙いやすいし。
敵の側は、跳弾考えると、撃ちまくれない。
拳銃弾ならともかく、ライフル弾は跳弾しそう。
しかしもっと奥に入ると、反響が強くて、聴覚も不利になりそうではある。

なんだか、このシーケンスって*16、ゲームみたいだ。
特殊マップに特殊アビリティ設定して、マルチプレイヤーでどう戦うか、って。
ゲームだから勝敗の行方わかんない。誰が最後まで生き残るのか……?

第195話 有古の庭

ゴールデンカムイに関連して、八甲田山雪中行軍遭難事件が以前から気になってたので、言及されて嬉しーい。
同じ明治陸軍だし、いずれ触れられるんじゃないかなあと思ってたけど。

八甲田山雪中行軍遭難事件」て書かれてるコマは、たぶん映画「八甲田山」の中の一コマが元ネタ。
上官囲んで兵士達が風除けになってるんだけど、外側の人からバタバタ倒れてくっていう。

有古が、アイヌの捜索隊に参加してたなんて、美味しいエピソードを。
有古一等卒、古力というのが和名らしい。
陸軍の作った報告書『遭難始末(付録)』によると、似た名前のアイヌが出て来る。*17
有櫛力蔵、坂木力松あたりが名前の元ネタかな? 名前以外は詳しいこと書かれてないけども。

宇佐美がね。
宇佐美「置いてかないでください 暗いです~」
って、素直に泣き言いえるのがスゴい。
この作品の野郎ども、特に軍人ともなると、みんな、「どうってことない」とか言っちゃうのに。
こういう融通無碍な性格は、貴重だ。

罠にはめられたことに気付いた都丹。
これ、表層雪崩だから、殺すことよりも、戦闘不能→確保狙ったんだと思う。
この辺一帯が有古の庭ならば、雪崩の流れる方向も知り尽くしてるだろうし。
どのみち、捜索して刺青を手に入れる必要はあるんだし。

音に頼ってた都丹が、音を利用して負かされるって皮肉。

第196話 モス

ニヴフなんて、アイヌ以上に、マンガに取上げられること少ないような。
樺太自体、マンガに出て来ないもんねえ……

ニヴフの村ではしゃいでる一行。
やっぱり杉元、アシパさんと一緒だとつくづく嬉しそう。
軍帽にコダワリがあるわけじゃないのね。

鯉登、パパ上まぢリスペクト。
ほんとに、育ちの良い、苦労知らずのボンボンらしい。
月島の口から鶴見の名前聞いて、この顔wwww

え、先遣隊、密入国なんだw
さすがに旅券や入国許可証、とってる暇なかった。(たぶん申請しても半年とかかかりそう)
会話、ニヴフの人たちはアイヌ語出来るのか。アシパさんが通訳してる場もあるし。
ニヴフや、エノノカたちはロシア語できるっぽい。

いっぽうで登別。

宇佐美www
浩平が杉元ロスのショックで正気に戻ったと思ったら、宇佐美の変態度がどんどん増していくんですけどっ?!
そういや浩平、誰にもタメ口なのね。

この皮、都丹じゃない。
12巻118話の都丹と、文字や線のパターン違う。

今回の、「父礼奴小里登路?●●」と読めるけど、どの文字も今までに出てきた刺青の脱獄囚19人誰とも重複してないし、江渡貝くんの贋物でもない。*18

生きてる都丹をどこかに匿ってることになる。
だとすると、有古は、菊田や鶴見に忠実なわけではない。

遺品がバンダナと皮だけってのが巧妙だ。バンダナは都丹のもののようだけど、死亡の確証ではない。皮は都丹のものとは限らない。
これ、菊田が集めてるのが頭の皮だったら誤魔化せなかったんだけど。

帝国軍人としてみれば帰属を疑われることは心外だろうけど、軍とアイヌが対立したらどっちにつくかって、究極の選択だ。

有古のアイヌ名、イポテ。
イ(所)+ポケ(暖かい)+テ(ここ)、温泉の意味であるらしい。

鯉登「あいつが改心して本当のことを話すなんて」って読みは恐らく正しい。
鯉登はそれなりの期間、尾形と付き合ってるし、性格よく知ってる。

ラストのコマ、尾形、嗤ってる。
いつのまにか意識取り戻してる。
この状況で嗤えるって、こいつ、どんだけタフなんだっ。

杉元「救いたいのはあいつじゃねえ」
杉元はアシパさんを助けたい一心で、すべてそのために行動してる。
だけど、アシパさんは人々が殺し合いになること自体を憂いてる。
地獄に堕ちるから人を殺したくない、と彼女はいうけど、
この地獄って、死後のことだけじゃなくて、現実で人々が殺し合うこと、それが人々に与える精神的負担を指すわけで。*19
杉元は、今まではずっと尾形と反目し合ってたけど、アシパさんを救うために、尾形を救い、対話しなくてはいけなくなる、って、なんだか象徴的。
冷酷で利己的な尾形は、杉元の自我の化身として描かれてる。だから、杉元にとって、尾形との対話は、自身の心の深淵を覗き込むこと。
杉元は自身の内省をずっと避けてきたのだけど。
……でも、作者氏によれば、杉元は成長しないそうだから、結局、尾形との和解もないのかなあ。
杉元が救いたいのは、生身のアシパさんというよりか、純真な少女に縋るしかない自分自身でもある。その感情を自分でも利己的だと気付いてるから、尾形を嫌ってるんだよね。
実はアシパさんも、杉元が夢みるほど純真無垢ってわけでもなくて、白石にイラズラ仕掛けたりとか、割と俗な、歳相応の子供ではある。杉元に幼い恋情抱いてるのを、皆は気付いてるのに、杉元だけは気付かないのも、杉元にとってのアシパさんは恋愛みたいな肉体的な感情は持たない聖なる少女だから。

第197話 ボンボン

尾形、ロシア語出来るんだ。鶴見の部下だしなあ。
鯉登に銃突き付けてる尾形、……もしかしてノーパン?

なんてとこに注目して現実逃避したくなるくらい、また、衝撃の展開ですよ。
尾形、いったい、なにがしたいんだ。全方面を敵に回そうとする。
病院連れてくと大暴れするって、猫か。
……猫だった。

≡ΦwΦ≡

絶対に折れないあたり、彼というキャラなのだな……
いやほんと、なにがしたいんだ、尾形は。

尾形「Барчонок(ボンボンが)」
て、なんでロシア語。
尾形から鯉登への罵倒が「ボンボン」って。尾形はそれほど出自にコンプレックスがあるのか。
自分も将軍の息子なのに捨てられたから?
鯉登は鯉登で尾形のこと山猫とか言ってるので、差別と偏見むきだしで互いに互いの出自をディスってる。*20
鯉登はロシア語わからない模様。陸士で習わなかったの? 鶴見、月島、尾形の3人がロシア語で話してると鯉登は蚊帳の外に置かれることになる。ロシア語グループが一番にコアな陰謀仲間なんだろうか。
でも鶴見、英語ドイツ語ロシア語中国語フランス語は出来そうなマルチリンガルなのに、薩摩弁は出来ないていう。

一方。
杉元「なんとか助けられないか」
って言ってるのは、きっとアシリパさんの望み。
杉元は、感情的には尾形を殺したいけど、自分の良心をアシリパさんに委ねてるから、彼女の願いは無視できない。
といってもできるだけアシリパさんの願いをかなえたいというより、自分の良心をアシリパさんに仮託してるんだ。杉元は、本来は、人殺しに強い罪悪感を抱く「普通の」人なので、尾形を殺したいって感情を抑えるのに、アシリパさんをダシにしてる。
尾形の逃亡に気付いた杉元の顔!
彼がこんな顔をするのも初めてだ。
杉元と再会したときの尾形、彼に珍しい恐怖の表情を浮かべてたけど、今回の杉元も驚愕と恐怖を浮かべてる。互いに互いの凶気と戦闘力をわかりきってるゆえに。
恐るべき敵の死を半ば予想してたこと、それを裏切られたことへの、驚愕と恐怖。この二人も対等で対立し合ってる、「殺し合いという名の性行為」象徴するコンビだ。

鯉登の過去話。
樺太篇はやたらと回想話多い。月島、尾形、ウイルクやキロランケ、鶴見と来て鯉登。それぞれの過去を辿って今に至る。

鯉登の音ちゃん14才。……髪型のせいもあるけど、今とあんまり変わった気がしない……
後段、音之進が1894年に8歳と出て来るので、彼は1876年生れ、このエピソードは1900年の話ということになる。

鯉登が乗ってると、なんだか幼稚園児が三輪車乗り回してるように見えないこともないけど。
これで240ccだから今だと要普通免許(自動二輪でなく、普通車扱い、いわゆるオート三輪だね、きっと。)。当時は自動車免許なかった。*21
家から持ち出したバイクで校庭走り回ってるってDQNか。
14歳の幼稚園児か。

まあ最高出力1.75PSなんて、今のCBR250RRなんかと較べたら、オモチャみたいなものだけど。*22
しかも坂道苦手ってトルクも弱い。

出合頭の交通事故。
このシーンも単行本で大幅追加。
この謎の紳士が鶴見っていう。
2人の出会いがいっそうダイナミックかつドラマチックに。
音之進、昔はもっと、ヤンチャだったんだ……

鯉登の悪童と、それを上回る鶴見の悪人っぷりが強調されましたよ?
鶴見はショタ属性もあった。

窘められて赤面する、音ちゃん、なんか可愛いぞ…… 鹿児島で、冬でもないのにスタンドカラーきっちり閉めてるの、育ちの良いお坊ちゃまって感じもそこに繋がってる。

鶴見、実は武術も相当強いっていう。
スパイやるくらいだから一通り鍛えているんだろうな。
怪物のような描き方が増えた。

鶴見「太刀は真っ直ぐで綺麗なのに…」
ああ、いいよな、こういう殺し文句。ついニヤニヤしてしまう。

鶴見は、前から音之進のことを知っていて、この出会いから仕組まれていたのかもね?
鯉登にしろ、尾形にしろ、親が将軍・将軍候補って、いずれ出世するだろうと見越して、その息子を手懐けようとしたのかも。

鯉登、なんだか上に兄がいて末っ子って気がしてたので、ああやっぱり、て。
親から無視されたっていうのなら、ケースは違えど、尾形と同じ寂しさを味わってることになる。

一方で、鶴見、こういうクサい芝居するようなヤツだし、音之進もそれにうかうか乗ってしまうようなやつなんだなあ、と、つい、シラけてしまう……尾形のように。

第198話 音之進の三輪車

鯉登さんちの音之進
このごろ少しヘンよ どうしたのかな?

彼には彼の懊悩がある。
音之進のコンプレックスについて、前にこんなこと書きましたん。

鯉登もなにか鬱屈あって、それがまた鶴見に誑しこまれて心酔してる一因なのかもね。鯉登は、尾形や月島とは反対に、パパ上まぢリスペクトな人だから、彼の必死さは、父なる者達に認められたいって欲求なんだろうか。それが、杉元には「チヤホヤされてその気になってるだけ」に見えるのかも知れない。
金神16巻の感想 ゴールデンカムイ - day * day

音ちゃんは詳しく語ってないのに、鶴見はあっさりと見抜いてる。
このへん、さすが鶴見、人誑しの本領発揮。

戦艦松島は当時の日本海軍の旗艦。
松島 (防護巡洋艦) - Wikipedia)

音ちゃんの船酔いにはそんなヘヴィな由来があったとは。

明治27(1894)年に音ちゃん8歳ってことは、彼は86年生なんだ。とするとゴールデンカムイの物語本篇のリアルタイム(1907年)には21歳。
このへん(陸軍士官学校卒業生一覧 (日本) - Wikipedia)参考にして。
有名な軍人だと、今村均(陸士19期卒)と同い年ってことになる。
んー音ちゃん、19期(1907年12月26日任官)ってことはないから、16~18卒。

年代 任官*23 卒業生の例
15期 1904年2月12日 猪熊敬一郎*24
16期 1904年11月1日 永田鉄山
17期 1905年4月21日 東條英機
18期 1906年6月26日 阿南惟幾、山下泰文
19期 1907年12月26日 今村均

(卒業生の例は、歴史もミリタリもあんまり興味ない私でも名前を知ってる人物ってことで)
永田と東條は1884年、阿南が87年、山下が85年の生れ。
陸士って年度によって課程にバラつきがあって、1年で卒業したり2年だったりするけど(特に04年以降は戦争始まったので陸士の卒業、任官が早まったようだ)、16期は1903年に入校、04年に卒業任官。
17期は04年入校(19期は今村均の経歴からして05年7月に入校らしい)。
日露戦争で戦地に行ったのは一般に15期まで、16期で従軍した人もいるそうだけど。
音ちゃん、86年生まれで17期なら、19歳で任官ってことに。同期では若いほう。
(ちなみに、花沢勇作さんは、元ネタの大迫三次に沿うなら、14期で1903年6月26日任官。日露戦争開戦時の聯隊旗手は14期が主のようだ。戦死したりしなければ、戦争中に中尉に昇級して後輩に引き継ぐ)

この頃の鶴見、日清戦争直後の149話と較べるとちょっと頬がこけてる。よっぽど特務機関での仕事が忙しいのか。

そして2年後……1902年。
音之進、ちっとも変わってねえwww 相変わらず三輪車乗り回してるし。
海軍兵学校は16歳から入学資格のようだ。
ここから陸軍に転向して陸軍幼年学校→陸士で、16期か17期ってことになるのかな。
(幼年学校は3年間つーから18期かも知れない)

ちなみに、1902年1月には、例の八甲田山雪中行軍遭難事件(→1902年八甲田山雪中行軍遭難事件 - day * day1902年八甲田山遭難事件『遭難始末』 - day * day)があって、陸軍への志願者が大幅に減った(徴兵逃れや、海軍に志願する人も増えた)そうなので、海軍からの転向組は願ってもないはず。

三輪車にしろ、お坊ちゃんぽい髪型にしろ、彼の子供っぽさを演出してる。
しかも、いかにも子供っぽい小道具に見えて、その実、全然、無力な子供じゃない。

と思うと、いきなり拉致られる音之進。
雨に打たれる三輪車って、とっても詩的な情景ではある……排気量240ccの原付トライクだけど!

大事にしていた三輪車 お庭で雨に濡れていた
(→山口さんちのツトムくん

犯行グループ、少なくとも3人。

鯉登邸って。どんだけ海軍って優遇されてるの。

鯉登ママ! ユキさん!
兄弟揃ってあの眉は母親譲りだったのか……
というか!
ゴールデンカムイ』のレギュラーメンバー、名前と台詞があって複数巻に登場するキャラの中で、母親にも名前と台詞があるのって、初めてですよ!?
とことん母親の影が薄い本作では珍しい。

そこへ怪しい人影が。
鶴見、参上。
もう見るからにアヤシイ。

鯉登平二「海軍にロシア語が話せっ者はおらんかったんか?」
……いや、いないわけないだろ……
特に北海道なんてロシア警戒してるんだし。
でも何故、「ロシア語」なんだ?

三輪車がロシア領事館で見つかったという。
たったそれだけで、ロシアの関与をほぼ断定して、陸軍の特務機関から鶴見呼んでる。
音之進が拉致られたのはもっと別の場所のはず。
ということは、犯行グループは、音之進を連れ去るのとは別個に、わざわざ、あの三輪車を領事館まで運んだことに。

えー、ドディオンブートン。三輪車trikeといっても。
排気量240cc、車体重量100kg超あるんですが。
現代だと、普通二輪ではなく、オート三輪に分類されるトライクですよ?*25
領事館は坂の上にある(これって日本政府が、街のどこからでも監視できるように、わざと、その場所に建物作らせたってことだよね?)というので、トルクのショボいドディオンブートンで上るの面倒くさい。
牽引するにしても、運転するにしても、かなり目立つはず。

中山「とっくに犯人から脅迫が来てもおかしくないはずだが」
だよねえ?

なんだかんだでわかり合ってる父子。
でもこの二人の懊悩は、すごーく現代的に思える。
当時の軍人だったら、息子は人質に成り得ないように思える。
天皇の軍隊のほうが個人より優先されるから、息子を人質にロシアに脅迫されたなら、鯉登パパは腹切らざるを得ない(切腹……よりは拳銃かなあ)。
息子はその場で自殺しなかったことを責められる。
なのに、鯉登パパ、このあと無事に出世して、5年後には少将に昇進して大湊要港部の司令官にまでなってるんだ。
この件はまったく彼の経歴に響いてない。
よほど巧く処理したらしい。

高級将校子息の誘拐事件だの、電話の逆探知だのと、なにこの、NCIS*26
だけど海軍の部隊、憲兵隊とかでもないし。
というか、海軍、とことん人材不足なん……

囚われの音之進に差し出される、月寒あんぱん。
あんパンといえば。
ここまで伏線張られてると、どうしたって気になるじゃないのさ。
単なる誘拐事件なんて面白くない。

鶴見はギブス*27じゃない……

第199話 坂の上のロシア領事館

相変らず胡散臭い鶴見。
まるで犯人たちの作戦や動向をすべて把握してるような?

脅迫電話、あれ~?
誘拐の脅迫電話って、まず、「鯉登中佐か?」(相手の確認)「息子は預った」(事情説明)「返して欲しくば」(取引条件の提示)って話続かないか?
いきなりロシア語で要求だけ伝えるってヘン。
犯人側は、ロシア語わかる人が電話に出ること大前提にしてるよね。それ以前に、どうやって電話掛けてきた? 交換手に相手の電話番号伝えるの、日本語なの?
犯行グループが、そもそもロシア人だってことも伝えてないし? もしこちらにロシア語わかる人いなかったらどうするつもりだったんだ。
前回、鯉登平二「海軍にロシア語が話せっ者はおらんかったんか?」なんて言ってるくらい、鯉登パパの周囲ですら、陸軍から派遣してもらうまでロシア語出来る人がいなかったのに。

鯉登パパはgdgd言ってるけど、音之進だってタダの子供じゃなくって、軍人の雛っ子だし。
軍人勅諭に書かれる「おのが本分の忠節を守り、義は山岳よりも重く、死は鴻毛よりも軽しと覚悟せよ。その操を破りて不覚を取り汚名を受くるなかれ」*28って価値観の中で生きてて、父子共にそれは身に染みてるはずで。
だから、鯉登パパがあえて言ってるのは、やっぱり子供への未練があるのかな。
音之進にそれが通じたのかどうか、すくなくとも、死ぬ気で自助努力しろ、っていうのは伝わったみたいだ。
父に見捨てられたと愕然とする音之進、絶望するんじゃなくって本気で抵抗始めるあたり血の気多い。

ここから、鯉登パパと鶴見のナイト&デイ、バイクとガンのアクションとか、作者氏の本領発揮。*29……いやトライクだけど!!!(念為、二輪車=bikeに対して、三輪車=trike)
鯉登パパすげえ。きっと若い頃はブイブイ言わせてたのね――て、待て、鯉登パパの若い頃は原動機付車両自体ないだろ……なにをブイブイ言わせてたのだ。馬か。
このトライク(ドディオンブートン)、パパが普段から乗り回してるのか。
現役か、このオヤジ。

ドディオンブートンのレースの映像。

vimeo.com
The De Dion Motor Tricycles Races organised and managed by Team Jarrott on 29 November 2017 including prize giving on Vimeo

意外と大きい。240ccだもんな。
セルモーターでない、押し掛けかよ。
ペダル漕がないと止まるの……
ぺかぺかなエンジン音とかさ……
でも楽しそうwwwwwwww

コーナー、やっぱり難しそう。
今のトライク、ジャイロとかピアッジオとかトリシティとかだと、前後輪の間に回転軸があったりして車体を傾けられるんだけど、ドディオンブートンはバンクしない……無理やり傾けると、転倒する……だから、身体低く落として、重心下げてるのか。

鶴見も乗り慣れてるな!
すっげえ楽しそうwww

なんですかその路端の女性へのウィンク。

そしてクラッシュ!
ついに鯉登パパまで脱いだ!?

大丈夫? 鶴見……顔から落ちてる……

鶴見がどんなにセクシーかつジェントルマンに振る舞おうが、私の中の鶴見のイメージは、「福笑い」だから!*30

第200話 月寒あんぱんのひと

祝200話!

案の定、音之進の拉致監禁事件は鶴見の謀略。
単なるロシア工作員による誘拐事件じゃ面白くないしね!

実行犯、結局、白帽子が尾形なんだ。顔に鼻血着いてるし?
監禁中、妙に鯉登に優しく振る舞ってたのが意外なんだけど。

音之進に拳銃突付ける図は3回も繰返されてる。
そして旭川で士官候補生の鯉登とすれ違ったときの尾形。
4コマとも全く同じ角度。

しかし、すれ違ってガン飛ばし合ってる尾形と鯉登……尾形、なんでこんなに鯉登を憎んでるのだ。監禁中の鯉登に白帽子がヤケに親切なのが気になる。むしろそれは月島の役割だろうと。
鯉登も、この時点で尾形のことはあまりよく知らないはずなのに、睨みつけてるし、尾形の目付きが気に入らないのか。
第99話の飛行船での遣り取りからして、尾形は余裕かまして鯉登を見下してて、鯉登がムキになってるようにも見えて、尾形がそんなに鯉登を憎んでるようには思えなかったんだけどね。
ただ「ボンボン」って生まれが良いことだけを妬んでるのか? 尾形、そんなにケツの穴の小せえヤツだった?

しかしやっぱり、孤高のオレ様な尾形には、こんな上から目線のポーズが真っ先に思い浮かぶし、よく似合う。
第109話で谷垣と再会したとき、とかさ。
第137話でウイルク達狙撃したとき。
第82話でモブ兵士に組み敷かれてたときでさえ、ウエメセだったし。

この事件、1902年ごろだよね、とすると80-81年生らしき尾形は、まだ一等卒? それとも一選抜で一年目で上等兵になってるのか。もしかすると20歳未満で志願してとっくに上等兵になってるのかもね?

鯉登親子は鶴見の手の上で、すっかり道化役。
ペチンってなによ!? チクビフェチなの?! 先生はっ。
大団円で和んでる3人、その背後の3人。

前回、音之進が抵抗したのは、あんぱんで、鶴見の言葉を思い出したせいか。
「兄の代わりではない」と。
実は鯉登パパだって、ちゃんと音之進のこと大事に思ってる。

尾形の御開陳とか微妙なファンサービス挟んで現在に。*31

尾形、最初は完全にモブだったのに、5巻で強烈な再登場して6巻で存在感増して、8巻第75話あたりからずっと主人公パーティになって、200話のうちちょうど半分の100話分に登場してて総選挙で2位になるくらい主役の1人で、このままずっと最後までメインストーリーに絡んで行くんだと思ってた。
この去り方はアザトイ……

杉元「馬を狙う!!」
……っていいながら、馬でなく尾形を狙ってるし、それで2発も外してるっていう。

馬上で尾形の笑み。
彼は賭けに出た。「当てられるものなら当てて見ろ」と。
杉元と、神に対して。
カムイレンカイネを信じて、結局撃たれなかったキロみたいに。

尾形も撃たれない。杉元は射撃が下手だし、あるいは当てる気がないと踏んだのか。杉元が当てる気がないとしたらそれは杉元自身の良心やアシリパさんの願いのせいだし、当てられないのならやっぱり神の御蔭。
尾形は、杉元と、賭けに、勝った。
神も愛も彼には実感出来ないのだけど、なんだかんだで彼は愛や神に助けられてる。
いっつもだ。

革命という大義に縛られたキロランケは死んで、尾形はひたすら生き延びる。
彼は自由だ。

笑いながら去っていくなんて、すごく彼らしい。
屈服も贖罪も絶望もしない、救済も求めない。
わざわざ心の平穏のために他者との絆を欲するような、脆弱な人間であるはずがない。
やっぱり彼はこうであるべきなんだ。

杉元、尾形がいずれ戻ってくることを予想――というよりか願ってるように見える。
尾形が元気に逃げていって、杉元も、嬉しそう。
杉元は、あくまで、戻ってきて欲しい、あるいは、殺されたくなければ二度と戻るなと、アンビバレンツな望みなんだろか。
元気な彼をぶっ殺したいらしい。

杉元はなんだかんだいって尾形を助けたがってる。
杉元から尾形には、憎しみと憧れが同時にあるように思える。
それは、実は尾形から杉元にもあるのかも知れないが。
尾形の自由さ、良心や忠誠心や倫理まで含めてあらゆるしがらみを自分で断ち切ってく彼は、杉元の憧れなのかもだ。
尾形は、杉元というキャラの中の、利己的合理的な自我の部分の分身みたいなものだから、杉元が尾形を憎むのは自己嫌悪の現れでもあるし、一方で彼が生きている以上、杉元自身も自由でいられる、と。
杉元が「アシリパさんを解放する」って決意してる(第192話)のは、実は、アシリパさんでなく自分自身を解放したいんだよね。杉元は、いつも、アシリパさん本人ではなく理想化された偶像として、アシリパさんを見てる。

杉元はあくまで「金塊を見つけて」と言ってる。金塊を見つけて解放されるのは、アシリパさんではなく杉元。
アシリパさんは、自分だけじゃなくって、杉元やその他大勢が、金塊争奪戦やその後の騒乱や独立戦争で殺し合うことを危惧してて、殺し合いというこの世の地獄から「皆を」解放したいと思ってる。

そんな杉元からすると、冷酷で暴戻な尾形は殺し合いの象徴だ。そして尾形は、自分を解放するために、暴力に躊躇しない。

第192話 谷垣「どうして尾形はキロランケと組んでいたのか」
第196話 鯉登「あいつが本当のことを話すなんて」
杉元「尾形には聞くことがある」

繰返される尾形への疑問。
彼らの台詞は、読者やとりわけ尾形のファンの疑問を代弁してる。
……ほんと――に、尾形はなにも考えてないんじゃなかろか……?
ただひたすら、刹那的に生存と自由を求めるだけで。
まるで猫の生き方そのものだ。

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……ところでパンツ穿いてる?
やっぱ解放感だよね。(痛そうだけど)

おまけ。

200話の尾形。 - day * day

連載時との違い

ページ数はKindle版準拠。

■ 第191話 故郷の水

  • 目次の絵は連載時191話の扉。
  • P7、3コマ目のキロランケ、ちょっと線が増えた。
  • P8、2コマ目のアシリパさん、顔がまっすぐに。連載時はまだ蟠りが濃かったのが、もっと純粋に死を悼む表情になったように思える。
  • P9、コマの整理、谷垣のコマの削除、というか、19巻に送られた。
  • アシリパさん「本当か!?」のコマの追加。心底驚いたように。
    f:id:faomao:20191220012048j:plain
  • P10、「そうだソフィア」コマ反転。
  • P10、「彼女ならすべての真相がわかるかも…」の台詞追加
  • P16、最後のソフィアのコマ、次のページから前送り。
  • P17、一行を見送るソフィアと、その手下たちのコマ追加。
  • P22、最後の菊田のコマ追加。
  • 菊田と有古、2人ともふりがなが修正。連載時は、「キクダ」「アラコ」になってた。次の号から変更されてるので、この回だけ誤植だったらしい。

■ 第192話 契約更新

  • P31、「サハチセ」の表記変更。
  • P33・32、アイテムや人物が追加。
  • P38、2コマ目、台詞変更。
  • P39、アシリパさんの台詞、「アチャがなぜ殺されたのか」だったのが、「誰がアイヌを」「アチャになにが」と、アチャが主体じゃなくなった。
  • P39、杉元「まあな」のコマからP40の最初の2コマ、計1ページ分弱追加。

■ 第193話 登別温泉

  • P43、扉追加。連載時はカラー扉だった。
  • P59、都丹、1発が3発に。そりゃそうだよなあ、都丹なら撃ちまくるはずだし。

■ 第194話 硫黄のにおい

  • P72、二階堂が左右反転。
  • P75、ここも二階堂が反転。

■ 第195話 有古の庭

  • P87、菊田と有古の会話、有古の主導になった。

■ 第196話 モス

■ 第197話 ボンボン

  • P118、3コマ目、鯉登の台詞が「待つ」から「死ぬのを確認する」に。死ぬのを待つ、の意味だったらしい。
  • P123、鯉登の台詞が「ロシア語!?」に。尾形がロシア語出来ることに驚いてる。
  • P126、薩摩弁、以降、修正。うーん、明治時代の薩摩弁、ってことかな?
  • P127、鯉登と鶴見の出会いが大幅にページ増。このへん、連載時は最終ページまで、鶴見の顔は黒ベタだった。

■ 第198話 音之進の三輪車

  • P145、鯉登パパ、大佐に出世してる。
  • P149、ロシア領事館のコマが拡大、以降、ページ送り。
  • P153、5コマ目の鶴見、左右反転。上の鯉登パパと向き合う構図に。

■ 第199話 坂の上のロシア領事館

  • P174~、鯉登パパと鶴見の特濃タンデムが増量。
  • P179、クラッシュが見開きに。

■ 第200話 月寒あんぱんのひと

  • P186、黒帽子が部屋を出て行ったコマが削除。
  • P187、白帽子と黒帽子、2人ともまだ室内にいる。
  • P193、3人の連隊番号が明記。制服が修正。
  • P195、死んだロシア人の身元について。
  • P199、最後の尾形の後ろ姿のコマ、追加。
  • P199~200、杉元、連載時には1発だったのに、2発撃ってる。どっちもハズレ。
  • P200、「ははッ」と笑う尾形のコマが拡大。
  • P201、鯉登の2コマ追加。
  • P201、最後の杉元のコマ拡大。瞳の色、変更に。
    f:id:faomao:20191220012052j:plain

連載時の記事

*1:公式サイトで帯含めて見られる→ゴールデンカムイ 20/野田 サトル | 集英社の本 公式

*2:金神の表紙、基本、戦闘モードな絵……それも、腕試しとか小競り合いじゃなくって、本気の殺意。11巻のアシリパさんですら、矢に毒が付いてて、殺る気満々。

*3:TVアニメ「ゴールデンカムイ」公式サイト

*4:四十八手って組んずほぐれつ……って相撲のことですよ?

*5:連載時、キクダってルビ振られてたけど、キクタが正しいようだ。彼のモデルは『イングロリアスバスターズ』のブラピ説が有力なようだ。……頭の皮剥ぐの?

*6:アメリカ大陸のインディアンの一部がするピアッシングして支柱から吊されて踊る儀式。

*7:

身體髮膚、受之父母。不敢毀傷、孝之始也。
身体髪膚これを父母に受くあえて毀傷せざるは孝の始めなり(シンタイハップコレヲフボニウクアエテキショウセザルハコウノハジメナリ)とは - コトバンク

漢民族も、古代は文身いれずみ文化だったし、そもそも「文」の字自体が刺青入れた背中の象形文字

*8:彼はさながら、サタンのように描かれるのだよね。

*9:これ、梅ちゃんに対しても同じ。200円でアメリカ連れてくってあくまで寅次のプランであって、梅ちゃんの意志は全く確かめてない。→杉元と梅ちゃん、と寅次 - day * day

*10:土方達がアシリパさんを奪おうとするかも知れないので、決着するまでは保護することなるかもだが、鶴見にとっては、アシリパさんは敵にはならないので、殺す必要もない。

*11:でも、鶴見なら、他の方法でも金塊見つけ出しそうな気もする。金塊の量からして運搬と隠匿にそれなりの手間暇掛かってるはずだし、関わった人を探し出すとか、隠し場所にアタリ付けるとか。

*12:ナザレのイエスが殉教したように。

*13:このフレーズで、往年の少年ジャンプのマンガ思い出した人はきっと同世代。

*14:ジャノメチョウ科マトウダイ - Wikipedia

*15:イングロリアス・バスターズ - Wikipedia
菊田のモデルがこの映画でブラピ演じるレイン中尉ともっぱらの噂だけど、この映画もイタリア映画の「地獄のバスターズ(The Inglorious Bastards(英題)、Quel Maledetto Treno Blindato(伊語原題))」って元ネタが→地獄のバスターズ - Wikipedia

*16:むしろこの作品全体が、そう見えないこともない。

*17:f:id:faomao:20190328145258j:plain

*18:208話で正解が。関谷でした。

*19:グロスマンによれば、戦時中、空襲で一方的な殺戮にさらされた都市の市民より、最前線で敵兵と顔付き合せながら殺し合った兵士のほうが深刻なPTSDを発症すると。多くの人にとって殺されることより殺すことのほうが苦痛で、だからこそマクベス夫人は亡霊に苛まれるのだよね。

*20:花沢将軍、史実の大迫尚敏をなぞるなら、男爵なので、嫡男だったら百之助が爵位を継げたはずなんだけどね。当時は妾腹の庶子が嫡子になることも珍しくなかったし。

*21:日本で運転免許の制度が出来たのは1903年だそうな。

*22:私は以前、CBR250RR乗ってた。今はジャイロがちょっと興味あるw 250ccに改造してる人いるんだなあ。

*23:卒業後、少尉になる年月日。卒業即日任官ってわけじゃない。

*24:「鉄血」作者の人。1883年生。

*25:車幅があるので、ホンダジャイロ(宅配ピザのトライク)等とは違って、軽自動車の扱い。

*26:アメリカのサスペンスドラマ。海軍・海兵隊絡みの刑事事件を扱う捜査班。→『NCIS 〜ネイビー犯罪捜査班 - Wikipedia

*27:「NCIS」の主任、主人公。

*28:陸海軍軍人に賜はりたる勅諭 - Wikisource』より

*29:野田サトル氏のバイクの絵というと→画像についての雑記 その① - 野田サトルのブログ

*30:

*31:今まで尾形の男性器が描かれることはなくって、常に凶器で置き換えられていて、いかにも生まれついての殺人者である彼を表現してるように思えた。今回は、そういう属性もどんどん削ぎ落として、生身の彼になっていく、という表現なんだろうか?