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日々是々

金神198「音之進の三輪車」感想 ゴールデンカムイ

鯉登さんちの音之進

このごろ少しヘンよ どうしたのかな?

彼には彼の懊悩がある。
音之進のコンプレックスについて、前にこんなこと書きましたん。

鯉登もなにか鬱屈あって、それがまた鶴見に誑しこまれて心酔してる一因なのかもね。鯉登は、尾形や月島とは反対に、パパ上まぢリスペクトな人だから、彼の必死さは、父なる者達に認められたいって欲求なんだろうか。それが、杉元には「チヤホヤされてその気になってるだけ」に見えるのかも知れない。
金神16巻の感想 ゴールデンカムイ - day * day

音ちゃんは詳しく語ってないのに、鶴見はあっさりと見抜いてる。
このへん、さすが鶴見、人誑しの本領発揮。

戦艦松島は当時の日本海軍の旗艦。
松島 (防護巡洋艦) - Wikipedia)

音ちゃんの船酔いにはそんなヘヴィな由来があったとは。

明治27(1894)年に音ちゃん8歳ってことは、彼は86年生なんだ。とするとゴールデンカムイの物語本篇のリアルタイム(1907年)には21歳。
このへん(陸軍士官学校卒業生一覧 (日本) - Wikipedia)参考にして。
有名な軍人だと、今村均(陸士19期卒)と同い年ってことになる。
んー音ちゃん、19期(1907年12月26日任官)ってことはないから、16~18卒。

年代 任官*1 卒業生の例
15期 1904年2月12日 猪熊敬一郎*2
16期 1904年11月1日 永田鉄山
17期 1905年4月21日 東條英機
18期 1906年6月26日 阿南惟幾、山下泰文
19期 1907年12月26日 今村均

(卒業生の例は、歴史もミリタリもあんまり興味ない私でも名前を知ってる人物ってことで)
永田と東條は1884年、阿南が87年、山下が85年の生れ。
陸士って年度によって課程にバラつきがあって、1年で卒業したり2年だったりするけど*3、16期は1903年に入校、04年に卒業任官。
17期は04年入校(19期は今村均の経歴からして05年7月に入校らしい)。
日露戦争で戦地に行ったのは一般に15期まで、16期で従軍した人もいるそうだけど。
音ちゃん、86年生まれで17期なら、19歳で任官ってことに。同期では若いほう。
(ちなみに、花沢勇作さんは、元ネタの大迫三次に沿うなら、14期で1903年6月26日任官。日露戦争時に聯隊旗手は14期が主のようだ)

どうやら、鶴見と音之進の出会いは1900年。
この頃の鶴見、日清戦争直後の149話と較べるとちょっと頬がこけてる。よっぽど特務機関での仕事が忙しいのか。

そして2年後……1902年。
音之進、ちっとも変わってねえwww 相変わらず三輪車乗り回してるし。
海軍兵学校は16歳から入学資格のようだ。
ここから陸軍に転向して陸軍幼年学校→陸士で、16期か17期ってことになるのかな。
(幼年学校は3年間つーから18期かも知れない)

ちなみに、1902年1月には、例の八甲田山雪中行軍遭難事件(→1902年八甲田山雪中行軍遭難事件 - day * day1902年八甲田山遭難事件『遭難始末』 - day * day)があって、陸軍への志願者が大幅に減った(徴兵逃れや、海軍に志願する人も増えた)そうなので、海軍からの転向組はウェルカムだったんでは。

三輪車にしろ、お坊ちゃんぽいロンゲにしろ、彼の子供っぽさを演出してる。
しかも、いかにも子供っぽい小道具に見えて、その実、全然、無力な子供じゃない。

と思うと、いきなり拉致られる音之進。
雨に打たれる三輪車って、とっても詩的な情景ではある……排気量240ccの原付トライクだけど!

大事にしていた三輪車 お庭で雨に濡れていた
(→山口さんちのツトムくん

犯行グループ、少なくとも3人。

……あれ?
なにかおかしくね?

鯉登邸って。中佐でこの豪邸かよ……
どんだけ海軍って優遇されてるの。
(俸給、陸軍の階級より1つ上の階級と同等のようだ。だから陸軍大佐に相当するのかな)

鯉登ママ! ユキさん!
兄弟揃ってあの眉は母親譲りだったのか……
というか!
ゴールデンカムイ』のレギュラーメンバー、名前と台詞があって複数巻に登場するキャラの中で、母親にも名前と台詞があるのって、初めてですよ!?
とことん母親の影が薄い本作では珍しい。

そこへ怪しい人影が。
鶴見、参上。
もう見るからにアヤシイ。

鯉登平二「海軍にロシア語が話せっ者はおらんかったんか?」
……いや、いないわけないだろ……
特に北海道なんてロシア警戒してるんだし。
でも何故、「ロシア語」なんだ?

三輪車がロシア領事館で見つかったという。
たったそれだけで、ロシアの関与をほぼ断定して、陸軍の特務機関から鶴見呼んでる。
音之進が拉致られたのはもっと別の場所のはず。
ということは、犯行グループは、音之進を連れ去るのとは別個に、わざわざ、あの三輪車を領事館まで運んだことに。

えー、ドディオンブートン。三輪車trikeといっても。
排気量240cc、車体重量100kg超あるんですが。
現代だと、普通二輪ではなく、オート三輪に分類されるトライクですよ?*4
領事館は坂の上にある*5というので、トルクのショボいドディオンブートンで上るの面倒くさい。
牽引するにしても、運転するにしても、かなり目立つはず。

トヨタ博物館|ド ディオン ブートン 1 3/4HP / De Dion - Bouton 1 3/4 hp

うー???

中山「とっくに犯人から脅迫が来てもおかしくないはずだが」
だよねえ?

鯉登「父上はオイのためにロシアの言いなりになることは絶対に無い」
鯉登平二「音之進には死んでもらうしかなか」

なんだかんだでわかり合ってる父子。
でもこの二人の懊悩は、すごーく現代的に思える。
当時の軍人だったら、息子は人質に成り得ないんだよね。
天皇の軍隊のほうが個人より優先される。
息子を人質にロシアに脅迫されたなら、鯉登パパは腹切らざるを得ない(切腹……よりは拳銃かなあ)。
息子はその場で自殺しなかったことを責められる。
なのに、鯉登パパ、このあと無事に出世して、5年後には少将に昇進して大湊要港部の司令官にまでなってるんだ。
この件はまったく彼の経歴に響いてない。
よほど巧く処理したらしい。

高級将校子息の誘拐事件だの、電話の逆探知だのと、なにこの、NCIS*6
だけど海軍の部隊、憲兵隊とかでもないし。
というか、海軍、とことん人材不足なん……

この時期の電話って、アナログもアナログで、音声の振動を電磁石でそのまま電圧の変化に変換して電話線で送ってるだけなので。
野戦電話の電線を、電柱の電話線に直に繋いで、傍受も割り込みも出来るんだよね。
電話線1本が電話回線1本、電話番号1つに対応してる(都市部だと分岐した共有回線もある)。

囚われの音之進に差し出される、月寒あんぱん。
あんパンといえば。

このブログで、金神の具体的なストーリーについて、当っても外してもハズカシーので、予想したくないんだけど。
ここまで伏線張られてると、どうしたって気になるじゃないのさ。
単なる誘拐事件なんて面白くない。

 
音之進の拉致監禁、これって全体、鶴見の謀略じゃねえの?
 
拉致の実行犯は、鶴見の部下、月島や尾形かもよ?
月島と尾形はロシア語出来るし、拉致の実行犯、鯉登との身長比からして、ロシア人なら小柄だし、日本人の可能性もある。
全く顔を見せない、顔の形すら見せてない。
わざわざ重い三輪車を運んでロシアの関与を疑わせてる。
名前のあるキャラだと、月島、尾形、宇佐美、菊田はもう軍にいて、鶴見の下に就いててもおかしくないし。
前回197話で、わざわざ、尾形がロシア語出来ること明かしてるのも、アザトイ。
 
だとしたら鶴見の目的は、鯉登親子に恩を売って、手懐けようということかな?
1902年だから、例の「アイヌ7人殺人事件」が起きた前後。
鶴見はもう、アイヌの金塊を知ってて、謀略に動き出してるのかもだ*7
海軍の将軍候補である、鯉登パパを味方にすることが出来れば、かなり有利だ。
実は2年前の出会いから仕組まれてた、のかも知れないけど。
 
鶴見はギブス*8じゃない……
 
じゃあなんで、音之進に、あんパンで鶴見のことを想起させたのか、ちょっと疑問ではある。
鶴見の謀略だと気付かれちゃマズいのに。

そんなところで、次回……え、次号予告に載ってないじゃん、休載ってこと?

*1:卒業後、少尉になる年月日。卒業即日任官ってわけじゃない。

*2:「鉄血」作者の人。1883年生。

*3:特に04年以降は戦争始まったので陸士の卒業、任官が早まったぽい。

*4:車幅があるので、ホンダジャイロ(宅配ピザのトライク)等とは違って、軽自動車の扱い。

*5:これって日本政府が、街のどこからでも監視できるように、わざと、その場所に建物作らせたってことだよね?

*6:アメリカのサスペンスドラマ。海軍・海兵隊絡みの刑事事件を扱う捜査班。→『NCIS 〜ネイビー犯罪捜査班 - Wikipedia

*7:そもそもアイヌ殺し自体が鶴見の謀略かも知れないし、だったらもっと以前から鶴見は黄金を知ってることになる。北海道に来たウイルクと組んで黄金奪う計画だったのかもよ?

*8:「NCIS」の主任、主人公。