金神202「狙撃手の悪夢」感想 ゴールデンカムイ

扉、なにこの往年のスプラッタームービー。

狙撃手が、でなくて、狙撃手にとって、悪夢なのね。
ちなみにほぼ1年前・40話前の第162話は、「狙撃手の条件」ってタイトルでした。

アオリ、きっと杉元は尾形との再会を心待ちにしてるから、「幸せ」なんだな……
相変らず、杉元と尾形のラブラブっぷりがヲトメ心にクリティカルヒットですよ（はぁと

襲撃に膠着状態の一行。
杉元、襲撃のこと気付いたのか。
鯉登「尾形が杉元を見落とすなんて」って、このへん、ちゃんと尾形の力量を把握してるあたり、将校らしい。

白石、基本、動物に好かれるようだ。
だからしょっちゅう囓られるし。
脱獄のときも動物を利用したりする。

月島と杉元、お互い、言葉も交してないのに、連携作戦。
ああこういうことってあるよねー
相手の力量信頼し合ってると、意思の疎通がなくても連携組めるものなんだよねー*1

ヴァシリ、遠くからしか尾形見てないのに、ヒゲや傷痕まではっきりと描いてる……観察力すごい。まるで画家だ。
ああ、尾形、「個性的な美形」*2だから、印象に残ってたのか……

ヴァシリの目的は、尾形との対決であるらしい。
しかしなぜここにヴァシリがいるんだろう？
163話の対決の後、尾形がどうなったか、彼は知らないんじゃ？

ロシア領内で白石を見掛けて、どこかで尾形と合流するはずだと考えて、ずっとつけてきたのだとすると。
彼は尾形に撃たれたあと、どこで治療してたのかっていったら、やっぱりアレクサンドロフ・サハリンスキーになるんじゃなかろか？　あのお医者さんのところ。1946年までは、アレクサンドロフがロシア領サハリンの中心だったそうだし。
だけど、キロランケ一行は、日本側からロシア側へ密入国してるし、革命勢力だと知ってるんだから、ロシア領で行方を探すのではなかろか。で、探してたら、脱獄騒動や、病院での一件を耳にしてるだろうに。
大陸へ渡ったとは考えずに、日本領へ来ているのが謎。
だから、ヴァシリがここにいる理由は、尾形とは関係ないように思えるのだけど。
たまたま白石を見掛けて、尾形もまだ一緒にいると思ったのでは？

強敵の乱入を察知した、ヴァシリ。
スナイパーだけあって感覚が鋭い。

なんかヴァシリ、キャラ変わった。
可愛くなった。
前髪生えたし、目が大きくなった？　見開いてるからだけではないよね。
少年っぽく見える。一年前はもっとおっさんだったのに。
顎がどうなってるのか気になるんだけど。
骨砕かれて流動食とかですかね。
ヴァシリがずっとモノローグだけど、喋れないのかも？

尾形に比べると、ヴァシリってフツーの人だ。根に持ってるし恐怖を感じてるし。
ヴァシリの凡庸さを見ると、やっぱ、尾形って怪物なんだ、って思っちゃう。
実は杉元も、尾形に匹敵するくらいの怪物で、少なくとも杉元本人はそう思ってしまっているから、尾形を同族嫌悪してる。
杉元「尾形…俺の手でカタを付けてやる！！」　て、執着するのは、尾形を殺せば自分の中の怪物も殺して、戦場から日常へ帰って来られるって、無意識に信じてるんだよね。
殺し合いという性行為*3を最も体現するのが尾形と杉元なのだとしたら、この二人の殺し合いは自慰行為――文字通り自分を慰める行為じゃん。

ただでさえ恋愛や性愛の要素の薄い、ゴールデンカムイってマンガだけど、とりわけ尾形に関しては愛に類する感情もドラマもいっさいないのが、心地良いくらいで。
尾形頂点として、彼を殺したがってる二人が三角関係の修羅場とか……ナニコレ。
殺伐系尾形ファンとしてはこういうドラマにこそ燃えるのですよ！*4

谷垣「尾形なら狙いはアシリパだ」
……ってのも、実はよく分らない。
何故に尾形はアシリパさんを殺したがってるのか、あるいは、なぜ谷垣はそう思ってるのか？

もしかすると、尾形の真の目的は、誰にも金塊を渡さないことなのかも知れない。
特に鶴見。
だから、そのキーとなるアシリパさんも殺そうとする、或はキーワードを奪おうとした。

もしかすると、金塊を奪い合う・あるいはそれを手に入れた後の内戦や武装蜂起の殺し合いをひそかに憂いはじめてるアシリパさんと、同じ結論なのではなかろか？
金塊自体を闇に葬りたい。*5
そのために、アシリパさんが出来るいちばん手っ取り早いことは、彼女自身がキーワード秘めたまま死ぬことなんだ。

もし、その意味で、尾形とアシリパさんの意志が共通してるのだとしたら、杉元、どーするよ？
アシリパさんを死なさないで金塊も葬るには、刺青人皮を出来るだけ手に入れて、焼却するなりすることになるんだけど。
その場合にしても、アシリパさんの願いを叶えようとするなら、自分も金塊を諦めなければいけなくなる。もし見つかってしまえば、隠しておくことは出来ない。
……っても、鶴見、独自に暗号解読するか、金塊の運搬された痕跡を辿って、自力で発見しそうな気もする。そもそも、5年前の事件自体、鶴見が関わってるのかもだし？

誰も死なせたくないアシリパさんと、誰にでも殺意を向ける尾形は対になってる。主人公である杉元を挟んで。
ただし尾形の殺意は、憎しみとは別のところから沸いてる気がする。

金塊探しのストーリーよりももうちょっとメタなレベルで、尾形の目的は、常に、皆の希望を砕くことなのかも知れない。
勇作さん、花沢中将、ウイルク、アシリパさん。尾形は、皆が夢や希望を託そうとする人々を殺す／殺そうとする。
それに金塊。
彼は、アナーキストであり、偶像破壊者だ。鶴見がいったように自身が軍神の息子としての偶像となることも拒否する。*6
大きな物語の悪役というに相応しい。すると主人公杉元にとってのラスボスは尾形ってことになる。
各地の神話で、太陽や月を囓って蝕を起こす怪物のような。*7

って、今回、尾形本人全く登場しないのに！
鯉登、谷垣、杉元、三人が彼の名を口にして、ヴァシリまで尾形が目当っていう。
今回の主役は尾形だった。

*1:オンラインゲームで難局に陥って、チャットする余裕ないときでもパーティメンバー信頼してると言葉交さなくても互いの行動が理解できるし、的確なパーティプレイで乗り切ったときはかつてない昂揚感を得るもので。それこそがオンラインゲームの大きな醍醐味かもね。

*2:17巻特典DVDパンフの質問箱出張版より。→

*3:→

「次はどんな強い変態が登場し阿鼻叫喚の殺し合いという皮をかぶった性行為が展開されるのか、読者の期待に応えてゆきたいと思います」
マンガで表現できる“面白さ”をすべて詰め込んだ歴史冒険活劇 ｜ SUGOI JAPAN Award2017 https://web.archive.org/web/20161228100823/http://sugoi-japan.jp:80/sugoi/07.html

*4:萌え、ではなく。

*5:だけどアシリパさんは、杉元が惚れた女のために金塊を欲しがってることを知って、嫉妬よりも、杉元の希望を叶えたいって気持ちがあって、言い出せない。

*6:偶像や英雄になることも拒否するって点も、尾形と杉元は共通してるな。杉元は自身が英雄とされるに相応しいとは思ってないからだし、尾形は組織の絆を一切拒否したがるので。

*7:DIAMIN Eclipse ってインクが青紫系の黒で。金神ファンでありかつインク沼の住民である私は、初見、ああこれ尾形のイメージカラーだ、て思ったけど、ネーミングからしても相応しいかも知れない。→Diamine Eclipse - Ink Reviews - The Fountain Pen Network