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日々是々

金神241話「消えたカムイ」感想 ゴールデンカムイ

房太郎ってキャラがわからない……

扱いに困るのだ、私の脳の中で。
尾形が「個性的な美形」であるなら、房太郎は、典型的な・没個性的な美形キャラだ。涼やかな優男――あくまで外見は。
どんなシリアスでシンミリして性的な意味合いの全くないシーンですら、彼は妖艶に映る。
彼の特徴――魅力というか魔力――が、長い黒髪にあるのは確かだろう、少なくともワタシにとってはそうだ。
網走の脱獄囚で・強盗殺人その他前科数十の凶悪犯で・ダイナミックなバトルする武闘派、ってストーリー上の設定なのに、作中で一番の長髪。バンコランか貴様は。*1
237話の水中バトルのときもヤケに髪が色っぽくて、まるで水中に棲んで人間を惑わして溺れさせる水妖のようだった。
彼の場合、特に髪を伸ばす理由があるとは思えなくて、むしろ邪魔なことが多いだろうに。船の機関に絡まったりね? あるいは、雄のクジャクのように、自らの強さをアピールするための伊達かも知れないが。

白石に迫る房太郎、会話の中身とまったく関係なく、房太郎がセクシー通り越して化け物じみてコワイ。
髪が触手のようにまとわりついて攻め立てる、て、なんの拷問ですかコレ。
それに耐えてる白石も相当肝が据わってる。
房太郎と白石、網走でもかなり親しかったようだ。
というか、房太郎、誰とでも親しくなれるんだよな、誰の懐にでも入ってく。
なんだろなー房さんの「近さ」。
そのへんが、王様を目指すカリスマ性かも。

アシリパさんとのっぺら坊の関係、すぐ気付くって。
白石、不思議なくらいに、網走の脱獄囚仲間のこと知らないのは、入ってから日が浅かったのか。
網走に700人の囚人がいて、のっぺら坊の計画に乗ったのが24人。これって特にとんがった連中を選ったんだろな……すぐに死んだりしなさそうなやつ。
のっぺら坊と直に会話した者はほとんどいないらしい。土方くらいだろか。
房太郎が土方と組まないのも謎。
土方は、暗号解読にアシリパさんが必要なことは知ってるんだよね?

房太郎「第七師団や土方歳三みたいな危ない連中と」
なんて他人事みたいに言ってるけど、房さんだって、強盗殺人その他前科数十の凶悪犯じゃんよー。
多分にじかに殺してる人数では作中でも上位なんじゃ。しかも戦場に行った兵士でなく、純然たる犯罪者だし。

白石「俺だってそこまで信用されてるわけじゃねえよ」
という白石、しかしその前のコマの杉元は、正直に話してる。
信用してないのは白石のほう。
杉元は白石をかなり信用してる――アシリパさんを託すくらいに。だけど白石はその信頼を、裏切ってる。

二人とも自分のことは棚に上げて、呑気なことであるよ。

房太郎の見せる、謎のメダイユ……入れ墨のバーコードにも似てる……
支笏湖に沈んでたってことは、のっぺら坊はこれを失った後に入れ墨を彫ったのだね。
気になるなあ。
暗号解読に必要なわけではなくて。
房太郎、網走監獄が壊滅したことは知ってるはず、その再建で移送される手下たちを脱走させたんだし。
でも、あくまで鶴見の流した、囚人たちの暴動が起きたって偽情報を知ってるのかな。
なぜに網走が壊滅するに至ったか、杉元や土方たちがそこにいたことは知らないはずだよね。アシリパさんがのっぺら坊の娘だからこそ、彼らは網走にいたんだし。
その後の樺太行も知らない。

謎のメダイユを見せられた白石、これの存在を知ってるのは、房太郎と白石だけ。
アシリパさんが必須のカギだと、房太郎は知らない。
囚人についての情報は、門倉・房太郎・鶴見が知ってるようだけど、誰も、全ての刺青のパターンは知らない。
そして最重要人物のはずのアシリパさん本人は、暗号のことも、脱獄事件のことも、そもそも父たちが金塊に込めた想いも、なにも知らないっていう。

オンコ、和名ではイチイ。
いろいろと特徴があるので、私もこの木が好き。たまに建物のエントランスなんかに植わってて深緑の常緑樹で季節によっては赤と黒の実がついてて、実を食べると美味しいけど、実の赤い部分以外、黒い種も含めて木全体が猛毒で死亡例もあるっていう。
ヨーロッパでも弓の材料として使われてた。*2

空に輝く巨大な男根。
……アシリパさん、なんでそれを想像したの……

星座の話。
「尾の長いクマ」って、実際に尾の長いクマはいないのに、アイヌにもギリシアにも、同じ図形がある不思議。*3 このシアラサルシカムイノカノチウが、今でいうおおぐま座なのかは不明だけど。
とすると、クノチウはカシオペア座のW字かな?
ちなみに、北極星は、チヌカルカムイ(私たちが見る星の神)だそう。

ちな、ヤマト民族は、ほとんど星に関心を持たなかったようで、ヤマト固有の星の名前って、日と月を除いては、「すばる」くらいしかないんじゃないかって。*4
星にまつわる神話も少ないし。
農耕民で、夜間に戸外の活動はしなかったせいだろか?

アシリパ「「消えてしまったカムイだ」って」
今後、恐らくは一世代の間に、アシリパさんたちのコタンは消滅する。
現実、小樽近郊にアイヌコタンの痕跡は見つかってないそうなので。
森林も切り拓かれ、コタンも消えていく。

コタンが消える、と言っても。
もしかすると、アシリパさんたちのコタンは、小樽の市街に呑込まれ、村人たちの子孫も和人と共に日本人として生きてるのかも知れないし。
アイヌの子孫という民族の誇りを心の中に保ちながら。

世界中で、黄金が貨幣として使われた理由は、適度な希少性*5と加工のし易さの他に、化学的に安定してて化合物を作りにくい=錆びて朽ちることがない、という点がある。
人々はそこに永遠の価値、神の祝福を見た。
形あるものは脆く儚い。
人は死に、国は滅びる。

ホロケウカムイは死に絶えた。
アイヌにとって、「生物種の絶滅」とはどういうことなんだろ。
その種のカムイが、二度と地上に降りてこなくなる。
しかし彼らはカムイの国はいるのかな?
その名を憶えている人たちがいる限りは。
カムイの国というのは、それを伝える人々の心の中にあるのではなかろうか?

アシリパさんの、杉元への感情はなんだろう。
誰も、アシリパさんを女性として見てないし、二人の間にあるのが恋愛感情には思えないんだけど。
金塊が見つかれば、父の死んだ理由がわかるかもだけど、杉元はここを去っていく。
今まで、父の遺志を継げば、更なる殺し合いになるっていう、大きな物語のジレンマが語られてきたけど、身の丈レベルのジレンマが出てきた。
金塊が見つかる→父の死の理由がわかる・遺志を継げる・戦争になる・杉元と別れる。
金塊を探し続ける→父の死は謎のまま・ちまちまと殺し合いが継続する・杉元と一緒にいられる。
金塊が永遠に見つからない→父の死は謎・戦争はどのみち起きる(史実では)・杉元はどうする?

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ところで、ヴァシリ……

*1:昔の――私の世代の――少女漫画では、美形っつーと長髪だったんであるよ。それに、洋の東西、伝統的に、長髪の男性=肉体労働をしない=上流階級=美男子の記号だ。房太郎とは正反対だ。

*2:特に有名なのが、イングランドのロングボウ。よく「長弓」って訳してるけど、イングランドのロングボウっていうのが特別な意味を持つので、ロングボウって言って欲しい。100年戦争時に、イングランドのロングボウ部隊に手を焼いたフランス軍は、イングランドの弓兵を捕まえると、二度と矢を射れないように人差し指と中指を切り落とした。すると、イングランド兵は、戦場で敵を挑発するのに人差し指と中指を突き出したという。それが、Vサインの由来って説。
こんな記事もあるしね。→中世の弓矢の殺傷力はえげつなかった。銃弾と同等の威力があった可能性(英研究) : カラパイア

*3:アイヌギリシアの繋がりというと、コロボックルの伝説にある、鶴との戦争の話が、アリストテレスの『動物誌』が元ネタなんだそうで。アイヌは交易民だったので、意外と大陸の文化を取り込んでたりもする、という。→

アイヌ学入門 (講談社現代新書)

アイヌ学入門 (講談社現代新書)

*4:日本書紀』には、アマツミカボシ/カガセオって神が出てくるそうだが。

*5:鉄のように有触れすぎてはないし、プラチナほど稀少すぎると貨幣として使えない。