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日々是々

金神284話「私たちのカムイ」感想

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どうせ、そのままの黄金として手に入れられるとは思わなかったけど(いや、冒険物のオヤクソクだから……)
カムイの住まう土地こそが民族の本質、っていうのはちょっと意外。
言葉や記念物といったメディア、過去の遺物としての文化ではなく、山野を渉猟して「今生きている」生活の実態が、民族の本質ということだろうか?*1

現実問題として、土地とか、実生活はそのまま経済でもあるので、「昔ながらの生活」を継続するのは難しいよね。
強引な同化政策というだけでなく、日露米といった大国の狭間で、少数民族たちも近代化に引きずり込まれていくことは避けられない。
権利の主体は誰なのだ。アイヌの個人なのか、なにかの団体なのか。
その人たちはどうしたのだ。
今、その土地はどうなってるのだ。
40年も土地ほっといたら、とっくに和人に不法占拠されてそうだけど。
ちょうど、アイヌ給与地事件とかあったころなので、心配になる。
だったらオーストラリアのウルル(エアーズロック)みたいに裁判で取り返すことになりそうな~

そういや、なにか不穏なものを感じる……と思ったら、この展開、アメリカの先住民族殺人事件、「花殺し月の殺人」*2髣髴とするんだ……土地という財産にまつわる、先住民と国と白人たちの事件。
――というのを、法華狼氏のブログ読んで思い出した。→『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』デイヴィッド・グラン著 - 法華狼の日記
この本、去年、私も読んだけど、めちゃくちゃ面白かった。

「災厄をもたらすといわれた黄金のカムイは私たちが本当に必要とするカムイに置きかわっていたんだ!!」
強大な神を屠って新たな国の礎にする、 というのは、世界中の神話にある。
旧約聖書リバイアサンも、「神に次ぐ強大な存在」であり、世界の終末に屠られて皆の食料になる。
あるいは鶴見が喩えに使う、鯨骨生物群集もそう。*3

鶴見がカニの仕草をするたびに、これ思い出す→鯨骨生物群集 - Wikipedia
鯨の死体を資源に、深海の暗闇の中に1つの国が勃興し、数十年でまた消えていくって、ロマンだ。
まるで巨人の死体から世界が作られるって神話的な話でもある。
そして、殺されたアイヌ達の遺した金で国を作ろうとする鶴見達も、まさにそのものだ。
金神130話「誘導灯」 #ゴールデンカムイ - day * day

金塊の行方を知って盛大に吉本風にコケる面々。
……ソフィアさんまで?? ソフィアさんそこまで日本語わかるのっ!?
フィーナさんには「日本語に興味がない」とか言われてたのに、実はちゃんと学んでた様子。

アシリパ「権利書が狙われていたのかもしれない」
えーウイルクが五稜郭に権利書隠したのは、のっぺら坊になる前だし、鶴見がウイルクの存在に気付く前だよね。
だから、誰かから隠すとしても、鶴見ではない。
他にこの権利書の存在を知ってるのは、榎本武揚から聞いた和人か、地権者ではないアイヌたちってことに?

半分の金額で土地を買い、あと半分は残っているらしい。
そういや脱獄囚たちは半分もらえる約束でした。
……ウイルク、誠実じゃん。*4

そして鶴見の朝の号令ってとこで、1ヶ月以上もの休載ですかっ。
夏休み……でなくて、みっちりお仕事なされる様子。
どんどん連載当初からの謎も明かされて、いよいよラストスパート、なのかなー
下りがあるのかどうかわからないけど*5

*1:ピウスツキの記録した樺太アイヌの音声を、後のアイヌが「死者の声だ」と嫌がった、って説を思い出す。言葉というのは精神の死骸なのかも知れない。
確かこの本に載ってたエピソード(うろ覚え)

*2:

*3:鶴見はシャチに擬えてるけど。

*4:

*5:
『スピナマラダ!』3巻
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