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日々是々

金神205話「シネマトグラフ」感想 ゴールデンカムイ

……どこからツッコめばいいの……

扉のアオリ、以前もこんなの書いてましたっけね。(扉については後述)

今週の扉、そういや、日露戦争の新聞報道で「乱射乱撃雨霰《らんしゃらんげきあめあられ》」って言い回しが流行って、それをモジって「感謝感激雨霰」って言葉が出来た、って説を思い出した。
金神138「喪失」 ゴールデンカムイ - day * day

冒頭、月島と杉元がやたら説明っぽいのは、これ、読者に向けて、目下彼らがどう考えてるか、って説明に思える。
それが客観的真実かどうかは別として。どうせこの作品、神の視点で全てを俯瞰してる存在はいないし。

杉元「俺が話す」……てのは、なにを、杉元がアシリパさんに話すんだろう?
暗号の鍵についてのこと? 「俺が訊く」って質問するんじゃなくて、杉元のほうからなにかを話したいんだよね?
で、月島も後々、また不思議なことを言う……

杉元「鶴見中尉にはまだ会ったことは無いはずだが」
もしかすると会ってるのかもよ?
ウイルク、北海道に来てから、鶴見と会ってる可能性がないとも言えず。
幼いアシリパさんも一緒に。
当時はまだ鶴見の負傷前だから、長谷川さん=鶴見と気づいたかもよ?
ウイルクが何故、やってもいないアイヌ殺しの罪を被って収監されたのか、顔を失った経緯はなにか? この辺も未だに大きな謎。

怖い顔の鶴見は、杉元の脳内イメージ。杉元も散々な目に遭わされてるしね。
杉元「あんな男に」……て、月島、言い返さないのかw
鶴見が「あんな男」だとわかりきってるけど、月島はついていくことにしたから。

謎の撮影隊、稲葉勝太郎ジュレール君というらしい。
史実では、稲畑勝太郎とコンスタン・ジレル。……ジレルなのかジュレールなのか、フランス語の発音どっちが近いのかよくわかんない。

おそらく彼らは、稲畑勝太郎とコンスタン・ジレルなんだろなーと。 →稲畑勝太郎 - Wikipedia
金神204「残したいもの」感想 ゴールデンカムイ - day * day

ここで引用されてるのは、まさに、ジレルの撮影した映像。


Auguste & Louis Lumière: Les Aïnos à Yeso - I (1897)

アシリパ「声は写真と一緒に残せないのか…」
トーキーの発明はもっと後……
何故に、アシリパさん、言葉を軽視するのか不思議でもある。
現にピウスツキの録音した蝋管も残ってるし、知里真志保のように書き言葉で残すって手もあるんだけど。

アシリパ「言葉が違うひとたちにも伝わるはずだ!!」
少数民族であるがゆえの艱難というか。
言葉以外で伝えなきゃいけない。
一方で、アシリパさんは、父の暗号って、ごく限られた相手にだけメッセージを伝えようとするメディアも解読しなくちゃいけない。
映像→言語→暗号って順に、メディアの符号化の度合いが進んでく。

そして何故か、アシリパ坐の結成www
黒眼鏡の映画監督つーたら黒澤明
黒眼鏡にディレクターズチェアって、どこから持って来たのよ!?*1 口角泡を飛ばすアシリパさん……
いつのまに、こんな、文化の保護に傾倒するようになったんだ。
「新しいアイヌの女」とか自負して、アイヌの伝統文化にあんまりこだわってなかったのに。

ヤケにノリノリな、杉元&鯉登。
冷めてる月島。*2
杉元、帽子はそのままでいいのか。
鯉登はなぜ女役にこだわる。

ところで、当時、フィルム、かなり高価だったんでは。
スポンサーは鯉登なのかなあ。
主役にしてやるって言えば、嬉々としてカネ出しそうだ。

月島「時間が無いんだぞ」……って、ええ、月島は、一刻でも早く鶴見と合流したいんじゃないんだ??
鶴見と合流する前に、杉元がアシリパさんとなにかしようとしてる、その杉元の意向を叶えたいと思ってる。
杉元がなにを考えてるのかわからないのに。月島、どうして杉元を信用してるんだろな。

(たゆんたゆんにはツッコまないぞ……!)

ヴァシリがシラッと参加してるし!
しかも美術さん。
この松前城、どーにもどっかでみたような。

ja.wikipedia.org

ヴァシリ、手にしてるその写真どこで手に入れたのよ!?
金神の時代は、まだ、昔の天守閣が残ってたようだ。現在の資料館は、昔の天守閣の外見だけ、忠実に再現したものらしい。

「チンポ」の語の登場回数、今回が最多記録じゃないだろか。

ジレルの(現存の)映像のように、アイヌたちの躍りを映像記録として残すのではなくて、脚本書いて監督してアイヌではない彼らに演技させて、って、映画作品として記録しようとしてる。
それが創作であることを大前提にしてるわけ。

アシリパさんがその名前を知らないとしても、念頭にあったのはメリエスのような映画かも知れない。(→ジョルジュ・メリエス - Wikipedia
エイゼンシュテインやグリフィスよりは前……映画がまだ舞台の芝居や奇術の延長だった時代。

「斑文鳥の身の上話」、ちょうど、チカパシの身上と一致してるんだ。
チンポネタ二連荘の後に、こういう話持ってくるのずるいー
……あれ、次兄の人はどうしたんだ。

末っ子が主人公っていうのは、末子相続の風習*3の名残なんだろか。
アイヌも末子相続が主だそうで。

ヘンケは、エノノカとチカパシを結婚させたいのかな。

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本文がどーにもドタバタでコメディなのに*4、扉の鶴見がまたスパイシーで。
銃で作られた巣に包まれた鶴見中尉、しかも怪物じみてるし肌は緑で腐乱死体みたいだし。
ヤングジャンプの公式サイトで事前に公表されたときからアタマ抱える。

銃といっても、ほとんど機関銃だと気付いた。
機関銃、サブでない固定式のマシンガンってのは、本来は防御のための武器なんだ。
近づくものを全て破壊するっていう。
尾形が、小銃や拳銃って、攻撃のための武器を愛用するのと対称的だ。尾形はノーガードで攻撃にステ全振りしてるようなヤツだしな。
鶴見はなにを守りたいのか?
一番守りたかったはずの妻子を守れなかった。といっても、長谷川ファミリーはあくまで、偽りの生活に過ぎなくて、スパイなんてやってたらそんな悲劇は織り込み済みのはず。
長谷川一家を殺したのは鶴見自身とも言える。
鶴見は、長谷川さんの経歴を完璧に創り上げてるんだから、単純に海外在住の日本人が臨時に軍にスカウトされたなんてもんじゃなくて、専門に訓練して潜入工作員になったんではなかろか?*5
情報収集のための部隊は最強の攻撃力を必要する。敵地に少数や単独で潜入して蒐集した情報を、必ず生還して持ち帰るため。*6
鶴見はスパイだからこそ、マキシム機関銃を隠してたわけで。 その本来は防御のための最強の武力を、稲妻&蝮篇でも、網走篇でも、彼は攻撃のために使ってるっていう。もう守るものがないんだろか。
長谷川さんが妻子もろとも死んで、残ったのはアンデッドの怪物なのかもね?

*1:映画監督といえば→映画監督のイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

*2:先日のアニメのイベント、月島役の竹本英史氏が朴訥で、なんだか月島軍曹まんまに見えてしまった。

*3:世界中にある。ペローの「長靴を履いた猫」や「シンデレラ」も、末っ子が財産を得る話。

*4:みんなでワイワイじゃれ合ってる中に尾形がいないというのは、彼のファンとしてとても寂しいのだけど。

*5:中野学校の設立はこれより30年も後だけど(→陸軍中野学校 - Wikipedia)、当時、情報員を教育する機関があったのかどうか? 学校みたいな施設でなくても、適性のある人をスカウトして訓練したりはするだろうし

*6:私ゃミリタリのことちっとも知らないので、『戦闘妖精雪風』(→戦闘妖精・雪風(改))でそういう理屈を読んで、目からウロコだった。「ジョーカー・ゲーム」(→ジョーカー・ゲーム (角川文庫))でもそう書かれてるし、現実のイージス艦も、そういう運用だよね。