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日々是々

金神207「塹壕から見えた月」感想 ゴールデンカムイ

今回も過去の回収回みたいな。

faomao.hateblo.jp

鶴見が有古に見せてる刺青人皮は贋物だ。少なくとも「母」と書いてある1枚は。
江渡貝くんの作った贋作は6枚、うち2枚は土方の元にある。
有古が「都丹の」といったのが、そのうちの1枚のわけもないし、新たな本物「20人目」を渡すとも思えない。それは有古が独自に用意した贋物なのか。
208話で解答が。関谷でした。
鶴見が持つ江渡貝作のは4枚、有古が盗み出したのは6枚なので、少なくとも2枚は本物なの?
だけど「刃」も「罪」も、既出の本物・贋物どちらにも見当たらない。

菊田が探しに来るまでの四日間で、新たな偽物7枚目を用意したのか。土方が、事前に鶴見に対抗して偽物を用意しておいたのかも知れない。
あるいは手持ちの偽物や本物に線や字を描き足して作ったかも。(本物のパターンは複写しておいて)
恐らく鶴見は、偽物のパターンも全て複写して記録してあるはず。
皮そのものの真贋は「鉄」でわかるけど、パターンの真贋は別。

鶴見「一枚でも欠けたら」……いや、それも充分に予測して、冗長性たっぷり持たせてるはずだと思うけど。
キーワード horkew oskoni が5音なのに24枚も刺青作ってるんだし。
夕張とか、後藤とか、危なかった……岩息だって樺太行っちゃったし。

ちなみに、鶴見が持ってる本物は、コピーも含めて13枚のはず。
(後藤、尾形に殺されたチンピラ、白石C、津山、二瓶、辺見、家永、若山、夕張、鈴川、坂本、姉畑、都丹C……岩息のコピーは杉元が持ってるって言ってたけどどうせ鶴見に回収される)

サブタイトルがちょっと気になる。
〝見えた月〟なんだ。「二人で見た月」などでなく。
主体はあくまで月にある。
塹壕の底に見捨てられた二人を、月だけが見下ろしている。
この月は、鶴見を暗示してるのだろう。

菊田にとっては鶴見が中心であるらしい。
月なんて心変わりの代名詞みたいなものなのに、菊田は月を不変という。

この月は新月の直前、旧暦30日、晦日の月。
奉天会戦の最中で旧晦日なら、塹壕のシーンは、1905年3月5日(日)(旧1月30日)(→旧暦カレンダー(1905年3月)| アラクネ)ということになる。*1 

晦日新月の前夜の月は、日の出よりちょっと前、早朝に昇る。
だから、「一晩中月を見ていた」のではなく、月が見えたことで、朝が近い、一晩生き延びたことを知った。

奉天(現瀋陽)のデータが見つからないので近い緯度の函館を調べて見ると、
1905年3月5日、月の出は05:31:55、日の出は07:16:14。*2
奉天の現地時間がわからないけど、とにかく、日の出の1時間45分前に月が出ることに。
塹壕の底から見上げたのなら結構、月は高いし、晦日の月だと「真っ暗」と言えるかどうか、微妙。
現代パートでもだいぶ景色は明るくなってるし。
というか、原作の絵だと、月の真横に太陽が来ることになって、夜じゃないよな。
もっと、月の光る部分は下を向いてるはず。*3

月の円弧を弓に喩えるなら、その弓は太陽を狙っている。*4
今まさに昇ろうとする太陽を、射ようと待ち構えている月、なんて、意味深だ。

菊田と都丹のバトルが月齢10日前後(キロランケの死んだのも同じ頃らしい)として、それから20日ばかり経ってるようだ。

菊田と、宇佐美たちが対立してるように見えたのはブラフだったの?
二階堂は、菊田に対して、刺青のこと知らないって、嘘吐いたのに。

風呂といえば恒例オヤクソクの、全裸メールヌード(カメラ目線)。
とうとう鶴見と鯉登パパが脱いだ!

誰得。
――あ、宇佐美が出歯亀してるな。
ウサ得だった。*5

宇佐美、変態通り越して変質者になってく……
精神的に鶴見に囚われてる鯉登や月島に対して、宇佐美や二階堂は肉欲で執着してるのが可笑しい。

有古の危機。

ほらーやっぱり都丹庵二、生きてるじゃんー*6

これ、表層雪崩だから、殺すことよりも、戦闘不能→確保狙ったんだと思う。この辺一帯が有古の庭ならば、雪崩の流れる方向も知り尽くしてるだろうし。
金神195話「有古の庭」感想 ゴールデンカムイ - day * day
遺品がバンダナと皮だけってのが巧妙だ。バンダナは都丹のもののようだけど、死亡の確証ではない。皮は都丹のものとは限らない。
金神196「モス」感想 ゴールデンカムイ - day * day

有古、都丹の追跡をする前までは、囚人のことも刺青のこともほとんど知らなかったんだから、都丹を回収した後に話を聞かされて、土方につくことにしたようだ。
とすると、アイヌの入れ墨との類似はブラフなのかな?
重要なヒントをわざわざ教えるとも思えないし。

七人のアイヌ殺害事件は、(杉元とアシリパさんの出会いから)5年前とされてるし、とすると1902年、八甲田山事件のあった年、音之進拉致監禁事件も同じ年と推測できる。
有古は当時はまだ軍に入隊してなかった。
父の死に軍人が関わってると考えて、それを探るために軍に入ったのか、あるいは単に徴兵されただけなのか。

菊田「残念だよ」
っていうけどさ。
有古が「なんとしてでも父の殺された真相を知りたい・カタキを討ちたい」と思うのは充分に納得できるので、そのために自分たちを裏切った有古を、菊田が残念がるってのもちょっと不思議。
菊田にしてみれば、父親や一族って血のつながりよりも、生死を共にした戦友や鶴見への忠誠といった軍隊組織の価値観のほうが、重要であるらしい。
もしかすると、菊田も、父や肉親への鬱屈を抱えてて、それを鶴見に衝かれてたらし込まれたのかもね。

基本的に、当時の戦闘は昼間だけ(戦場全体を照らす照明ないし、暗視装置もないから、砲撃の照準もできない)なので、菊田と有古は昼間の砲撃から、晦日の月が昇る夜明直前まで放置されてたことになる。
菊田と有古、菊田が残念がるほど、強い結びつきがあったのか、少なくとも菊田は強く感じてたけど、有古にとっては、父の横死への感情を消すほどには、強い絆ではなかった。
菊田は、鶴見への永遠の忠誠を、有古と共有していたと思っていたのに。
有古にはそんな忠誠心より一族のほうが大事。

あれ、鶴見、都丹の刺青パターンいつ知ったの??……て、そういや、杉元がコピー持ってて、鶴見に没収されたんだっけ。
土方たちは、杉元が鶴見に確保されたことは知らない、けど、杉元と合流出来ないから、予測はしてるだろうし、あるいは死んだと思ってるかも。
キロランケや尾形、アシリパさん、白石がどうなったか、樺太に行ったことも知らないはずだ。

襖の陰から現れる鶴見が化け物じみてて。
宇佐美、なんでそこで噛み付くのよ?? 青筋立てちゃって。
こいつもまた人間離れしてきた。

鶴見の部下たちは、皆、心の何かを鶴見によって人質に取られてるのだね……
「魂を売り渡した」というべきか。
本人が望むと望まないとに関わらず。
尾形が逃亡したのは、そもそも売り渡すような「魂」がないからかもね?

*1:念為。旧暦は太陰暦なので日付はほぼ月齢。旧1日は朔日ともいって、新月になる。

*2:月の出月の入り(日本地名選択) - 高精度計算サイト日の出日の入り(日本地名選択) - 高精度計算サイト

*3:原作の絵、月齢カレンダーとかの絵をそのまま真似たんじゃないかなあ……

*4:太陽と月の位置関係は、こう。
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*5:あと脱いでないのって誰だ。土方と永倉か。ヴァシリもか。

*6:アニメ第3期も決ったことだし。せっかく水島裕なんて元祖アイドル声優なんだから、もっと活躍して欲しいよねえ。