今回の表紙は鶴見 with 三八式機関銃。
13巻だから“死神”鶴見なのかな?*1
「肋骨服と機関銃」ですね。
カ・イ・カ・ン……*2

ゴールデンカムイ 13 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 野田サトル
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2018/03/19
- メディア: Kindle版
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三八式機関銃、モノクロの絵だとわからなかったけど、金(恐らく真鍮)と黒なんですね。
鶴見の白服、赤い背景、白いケシ*3の花も合せて、赤白金黒なんて強烈な色彩が、機能美通り越して凄惨美醸してて、いかにも、鶴見。
カラー口絵は、141話のカラー扉だったもの。
ちなみに、紙本限定特典の本体表紙の衣装図鑑は、キラウシニシパのルウンペでした。
あっ本文より先に、あらすじにて、新人看守君こと宇佐美の名前が出てるじゃないですかー
目次
第121話 暗中
コタンコロカムイの呪いで視界を奪われた状態でのバトル。
前回の狂喜乱舞の露天風呂入浴シーン*4に引き続き、続・裸夫祭。
バトルが熱い!……のに、フリチンってだけで、どーにも笑いがもれてしまう……
キロ……気の毒に……
え、子供の腕と間違えるくらいの太さなんですかっ!?
ベニテングタケ……デケえ……
なんですかこのアングル。*5
入浴のときでも銃を近くに隠しとくなんて、さすが尾形……!
このへん、上等兵になるだけあるんだなあと、つくづく。
谷垣「また嫌味を言われる」て、そういう心配する谷垣(笑) よっぽど猫様がコワイらしい……散々しごかれたんですかね。
尾形と谷垣、気脈通じてて互いに互いのことよくわかってるのに、本気で殺し合ったりしてるし、バディでもないが、ライバルとも言えない、アンチバディてんですかね。
尾形がいちばん親しみを感じてる相手は谷垣なんでしょう……谷垣、かわいそうに……
38式、30年式と比べて、ボルトカバーの開閉時の音がうるさくなったそうですが。
かすかな銃の音と、松明の燃えるニオイに気付く都丹。
アシリパさんの灯明を即、利用して、ヘッドショット決める尾形。
この攻防の展開が精巧で痺れる……!
あれだけ危機的な状況からあっという間に一人倒しちゃう、て、やはりすごいですね、このチーム。というか、尾形とアシリパさん。
あれれ、アシリパさんの灯す光で尾形が目標を見つけるって下り、この二人の関係を暗示してるとみるのは、穿ちすぎですかね?
尾形が真剣にガンマンの顔してるのがカッコよすぎて堪りませんわ……っ
素っ裸で銃構えてる、って絵が、エロいです。
(こういうシーン、なんか、ロバート・ロドリゲス監督とかの作品髣髴とするんですが。凛々しさと緊迫感とエロスにお笑いまで混じってる)
杉元、また傷増えた……
彼は肉体の耐久性に自信過剰なんですよねえ……痛みを無視しちゃう、けどダメージは確実に蓄積してそうで心配。
(なんかねーついつい、まだ抗生物質も輸血もない時代だしなあ、って思っちゃう……)
杉元はね、勇敢に振舞ってるけど、実は臆病なライオンなんですよ……特に人間関係において。それを自覚してるから、無理しちゃうんですね……
第122話 インカラマッ 見る女
キロランケとアシリパ父は幼馴染みだし、北海道来てからも交流があったはずなので、キロランケがインカラマッ知らなかったのが謎。
インカラマッ「私がウイルクの顔を見ることは二度と無い」という占いは当たってしまった。
ウイルクが死んだのなら言わずもがな、のっぺら坊だとしてもやはり顔がないのだから。
湖に落ちたインカラマッを救う谷垣。
巨大化した谷垣が蒼天から降ってきて、タメから変身ポーズして全裸に……
って、あくまでこれはマッちゃんの夢の中。
着実に進行してる、谷垣とインカラマッのラブストーリー。
……ほんとにラブなのかしら??
「運命は変えられる」、ていうか。
予定調和とか、安易な展開しないんですよねえ、この作品。
占いは当たるべき、とか、「こういうキャラならこうなるべき」みたいな、アリガチな定石を外してくって展開が小気味よい。
そして着実に敵を減らす尾形。さすが!
彼が活躍してくれるだけでシアワセ。*6
きっとこのシーンは山猫ファン向けのサービスショットっていうんですかね。
銃撃だけに。
……でもさ、これ、尾形、都丹の銃声と発砲炎だけを頼りに撃ったのよね?
ヘッドショットでなくて相手の胸に当たってるところからしても。
味方に当たるかもって考えてない。
そのへんも実に、彼らしい。
第123話 形勢逆転
見下ろしの杉元の立姿の元ネタはピエール・エ・ジルの『マーキュリー』かも知れない*7
尾形、杉元、アシリパさんのトリオのチームバトルって初めて。
杉元、普段は尾形を嫌ってるのに、戦闘のときはきっちり連携してる。やっぱ戦士同士の信頼は篤いんですよねえ。この二人のブロマンスというよりか、もうちょっと剣呑な関係性が、どうしようもなくヲトメ心を燃やすのですよ……!
5頁3コマ目についクスリ。大胆なアオリ構図だが、銃で隠してる……どうしても尾形の股間描かないつもりのようで。
モロ出しで戦ってる杉元に対して、尾形は不自然なくらいに描かれない。
性器なんて、生の人間の象徴の最たるものを、無機的な凶器で置き換えてる*8のは、彼の非人間性や、人として期待される心の欠如を表現してるように思えるのですが。*9
ちょ、アシリパさん、どこ触ってんのっ*10
シリアスで緊張した場面なのにこーゆー絵を入れてくるので油断ならないっすねえ(笑)
でも文字通りの撒き菱、とっさに使うなんてさすが。
外で待ってろと言われても、彼女がそんなこと聞くわけない。
真っ暗闇の中で裸の男達が右往左往ってシチュエーションは喜劇なのに、実際は命懸けのサスペンス。
機械的に殺してく尾形に対して、生身の肉体として戦ってる杉元。
杉元と都丹の取っ組み合い。
「オラ 咥えろよ」て、それ、袖搦ですやん。
尾形の銃にしても杉元の格闘にしても、エロスとタナトスが混然一体になってて、作者のいう「"殺し合いという皮をかぶった性行為"」*11てやつだ。
都丹の怨念が語られる。彼とて根っからの悪人ではないのだと。
都丹の言葉に、トラウマが蘇っちゃう杉元。
杉元は人殺しを後悔するタイプだから。
そして最後の最後に、土方、登場。
都丹も、土方には丁寧語になるんすね……頭上がらないようだ。
第124話 思い出の写真
アシリパさんは都丹も許して、救いの言葉を差し出してる。
まるで彼女は救世主みたい。
絶妙な構図でキロランケの股間隠してる白石w 隠すのは白石の役目……しかし白石のは誰も隠さないっていう。
谷垣に対しては上官風吹かす尾形。
刺青人皮のリスト、……うーん、これ、杉元一行の分なのかな?
鯉登少尉、帯帽がハッキリ描かれたのは初めて。
船酔いするから、父親が海軍の将軍なのに、彼は陸軍に来たんですかね。
106話での運動能力からすると、三半規管丈夫そうなのに。
クソコラがますますヒートアップしてますよ?
「早くまた戦争が」って不穏なこと言ってるけど、まあこの時代の新品少尉にとってはそんな感覚なんでしょうかねえ。実戦経験ないし。
やっぱり、鯉登、カワイイw ダメなとこ含めて。
そういえば、ここで、鯉登の服は白だけど、月島の服はトーンが掛かってる。これ、月島の服は黄土色の夏服なのかな? 後で月島の服が黒、鯉登が白で出て来るけど、このときは鯉登は黄土色の新色の冬服なんでしょうかね。ちなみに136話のカラー扉では鯉登は黄土色の、多分冬服着てるんですよ。制服の話をまとめました。→鯉登の制服の色。 - day * day
新人の偽看守君、ようやく、宇佐美って名前が明らかに。
鯉登とはまた違ったタイプの、鶴見のグルーピー。
鶴見の万年筆……デラルー(De La Rue)社のオノト、夏目漱石ご愛用で有名なモデル。*12
今は、デラルー社は万年筆作ってないんですよね。この時代、まだ、国産の万年筆もないし、モンブランですら創業前だったりして、文具業界の栄枯盛衰は激しい。
鶴見が使うんならインクは耐水性のブルーブラック一択だよなあ、とか、ミーハーな万年筆ファンとしてついつい注目してしまう。
オノト、ちょうど1906年に発売されて丸善が輸入販売してたそうで、鶴見、最新モデル持ってたりするってことは、文具マニアなのかも知れない。情報将校だから文字はいっぱい書くでしょうし。
当時の万年筆、6円くらい、今だと6万くらいですかね、今でもモンブランなんかはそんなところから始まるので、あんまり感覚的に変わらない。
「頭が沸騰しちゃう」、油断するとこういう台詞が紛れ込んでくるwww*13
落書きに、鯉登があからさまに嫉妬してるし。
杉元達、そろって撮影大会。
牛山、大ストゥ持ってるしw 家永とツーショット、見た目はお似合いなんですけどね。
なぜか脱がされる谷垣。脱がすほうも脱がすほうだが脱ぐほうも脱ぐほう……疑えよぅ。
「いいよいいよぉ」とか声掛けてるの誰っ?*14
一体、谷垣をどうしたいのよ……
谷垣、いつのまにか弄られキャラになってる……尾形ばかりか杉元や作者にまで。
白石と啄木。
この二人のコンビ、すげえ心配だわwww
カネの面で。
やはらかに積れる雪に
熱ほてる頬ほを埋うづむるごとき
恋してみたし
→石川啄木 一握の砂
啄木、数々のアカン逸話があるけど(特に金田一京助に対してとか)、歌はイイ。自分のダメさをとことん歌っちゃう。
土方の写真。
40年前と同じポーズなのがじんわり。
あれ、尾形は写真撮ってないの……?
白石も遊びに行ってて写ってないし。
81話の「最後の晩餐」のパロを予言とみると、白石=ヨハネと、尾形=マタイは、生き残りそうな気が。
しかしヨハネ(ヨカナン)は最後は斬首刑になるんですけどね……
尾形はこの物語全体の記述者になるんじゃないのかなあって希望。
第125話 実りの季節
フチの唄は、107話にも出て来た子守唄。
稲妻と蝮の赤ん坊、眉毛が。
もう夏の終わりっ?! 早っ。
101話で6月くらいだったから、鮭の遡上が始まる季節だと、9月初めくらい?
山の幸の数々。
木苺、サルナシ、ドングリ、ヤマブドウ、……あんまり植生は本州と変わらないんですね。
サルナシはキウイフルーツの原種。中国のサルナシをニュージーランドで品種改良したのがキウイフルーツ。*15
なぜにクマ狩りにこだわるんですか、アシリパさん。
アシリパさんは、ヒグマを1撃で仕留められる毒矢を使うから、他の人達よりかは、ヒグマを恐がらないのかも?
杉元がいつの間にか、着物からジャケットになってる。
鮭を獲ってる3人組……と思うと、土方、キロ、谷垣の偵察隊。
土方、さらっとアットゥシ似合ってる~
網走監獄、今は、いくつかの建物、本舎や鏡橋(宇佐美君が渡ってた)などが近所の博物館に移築されてるぽい。
アシリパさん「私は……怖い」 彼女がこんな台詞を吐くのはきっと杉元に対してだけ。
よく見ると涙まで浮かべてるし。
アシリパさんがナザレのイエスになぞらえられてるのだとしたら、今の彼女は神の存在に疑問を抱いてしまった場面。
「真実を知りたい」っていうのはなんだか、『ジーザスクライトスーパースター』を思い出させる。*16
そして、実は、107話からずっと登場していた尾形の皆勤記録が、ここで途切れてしまった……
尾形は単独行動してたんでしょうかね。*17
第126話 門倉看守部長
潜入工作の手順が詳細に。
珍しく白石がチェアマンに!
さすが、脱獄王。
調子こいてるシライシ。
なんですか「ピュウ☆」ってっ。
この「ピュウ☆」のページまるまる、単行本で追加されてるんですよね。
尾形に指突きつけてるコマ、なんの意味が、て、つい勘ぐりたくなるんですが。
なんかこのトンネル掘り、ホームズの『赤毛連盟』思い出させるんですけど。
すっかりアイヌになりきってる谷垣。
あの距離でインカラマッを見えるのか、谷垣。
マッちゃんの占いは如何に?
そうか、この時点で宇佐美がまだ看守やってて、谷垣と顔合わせてたら、一発で互いに互いの正体バレてたんだな……
小さな港町に物々しい軍服の一団……鶴見隊が結集。
有坂閣下再登場*18。
有坂「これが開発途中の試作品だよ」――後の三年式機関銃ですね。
作中では107話以降、三八式機関銃は出て来ないんですけども、今回の表紙でわざわざ三八式なのは、色彩的な理由なのかしら。
作者様のTwitterから。
今週登場した三年式機関銃。模型の作者様にゴールデンカムイの時代三年式は存在するかと相談した。「制式採用は大正三年だがそれまでに何年もかけて開発するので存在してても不思議じゃない」というミリオタにあるまじき柔軟な回答。歴史年表に記された瞬間、空から物が降って来るわけではないのです。 pic.twitter.com/RGSEJ29h5g
— 野田サトル (@satorunoda) 2017年7月20日
いつのまにか鶴見隊が冬服に……なってるんだけど!
鯉登の軍服、モノクロ画だからわからないけど、白じゃなくて、黄土色というかカーキ色というか国防色というか、こういう色なのかな?1906年から冬服に採用になったっぽい。満州の黄土の色に合わせての変更らしいですが。
なんか……ついこの前夏服になったのに、早い。
宇佐美くん、とうとう墨入れちゃった……今より儒教道徳のウルサイ時代だから、彫物はどーなんですか。
そのへんも含めて、鯉登「めちゃくちゃ気合い入ってる」……
鯉登まで退かせる宇佐美君。
鯉登の上官らしいところも初めてじゃないですか。
でも宇佐美に退いてるあたり、お坊ちゃまっぽい。
鯉登は絶対、墨入れたりしそうにない。士族か華族でしょうし。
なんで鯉登は宇佐美にキレてるんでしょう……
鶴見に対して、崇拝してる鯉登と、熱狂してる宇佐美、なんですかね。
そして門倉さんの暗躍。
いいねえ、昼行灯が夜には大活躍ですか。
なんだか中村主水か後藤隊長みたい。
こうやって猪口携えてる絵がイイ。
門倉さんちは監獄の敷地内なんですね。宇佐美君の官舎は橋渡った先らしかったけど。
俯瞰図にある周辺の家屋が刑務官の宿舎だと思ったのですが。
看守長だから敷地内なんですかね。
てか土方、杉元たちに教えてなかったんだ……
門倉、7年前から勤務だし、のっぺら坊の事件が5年前。
土方が網走に来たのがいつなのかはよくわからんが。
第127話 本当のチタタプ
鮭のチタタプ。
なんでチタタプっていうと、杉元、ハイテンションになるんだ。
夏太郎もチタタプ。
よく見ると、アイヌたちのセリフはちゃんと「チタタプ」って「プ」が小文字になってるのに、和人達は杉元も含めて「チタタプ」なんですね……アイヌ語の発音って難しいようだ。
和泉守兼定でチタタプしようとするチカパシ……
日本刀ってテンション上がるよね!
(でもこれ、後できっちり脂落とさないと赤鰯になるよ……)
土方ジジィ、子供にはとことん優しい。
そして、尾形がついに「チタタプ」!
今回、彼の台詞これだけ。
打ち解けてきたのか根負けしたのか。
保護した元野良猫が、なかなか懐かないで荒ぶってたのが、いつのまにか側で寝てる、みたいな。
尾形も「チ(我々)」に加わって、ようやく「本当のチタタプ(我々が刻むもの)」(→1巻)
はしゃいでるアシリパさん。
声(というか写植文字)の小ささに表れた尾形のプライドを慮って静かに見守る杉元、谷垣、牛山が優しい。
杉元も谷垣も牛山も、尾形のプライドが山のように高いこと知ってるし。
このプライドって、尾形が見せる希有な「人間らしさ」の1つではあるんですが。
たかが「チタタプ」の一言、そこにコダわっちゃうなんてプライドというにもアホくさいんだけど、そういうケチなプライドみたいな、漢心の機微は、小娘にはわからんのですよ。
で、3人が、アシリパさんにそういうこと説明しないのも、また漢心ってものでしょう。
アシリパさんは、小娘ゆえなのか「神の子」ゆえなのか、そういう、ちょっとした機微を無邪気に踏みにじることが、しばし、あるんですよね。きっと彼女の中には、そういう曇った感情はないんでしょう。(杉元の女性関係に関しては別)
このへんの、「女子供にわかってたまるか」みたいなヒネくれたドラマって痛切。そしてそこに漂う漢らしさのダメな部分に萌~*19
杉元、チタタプの件で夏太郎や谷垣にはウエメセになってる、なのに、尾形には思い遣ってる。
もしここでアシリパさんがいなかったら、杉元たちが「お、尾形、やっと言えるようになったな」などと上から目線になって、尾形がまたヘソ曲げるだろうし。
小娘のアシリパさんだからこそ許されるわけで。
2コマもかけて、一人ではしゃぐアシリパさんと無言の男達を対比させてるのが、巧妙。尾形のプライドと、それを守ろうとするおっさん達の絆。
鮭のフルコース。
お粥とかマッシュポテトとか。生鮭の焼いたのとか。
ふつーに定食メニューっぽくて、味の想像が付いて、素直に、美味そーって思えるんですよね。
なんか焼き鮭食いたくなってきますよ……
この饗宴のシーンも、深読みしようと思えばまた興味深いですわ。
土方は、永倉・夏太郎・尾形の3人に背を向けてる、ってことは、この3人のことは信用しきってる、少なくとも自分を裏切ることはないと信じてるともとれる。
永倉は昔からの盟友、夏太郎は忠実な崇拝者、尾形は用心棒って契約上。
対して、牛山や家永には相対してる、彼らのことは信用してないんでしょうかね。
また、谷垣一家も正面奥ってことはあんまり近くもないし信用してもない、杉元達は横。
杉元やキロ、家永は全員を正面に置いてる、心の底では誰も信用してないのかしら。谷垣たちも。
アシリパさんはキロのほうを向いてるんですよね。
牛山が家永に背を向けてるのは、信用してるのか。
永倉が、尾形に顔向けてるのって……やっぱ6巻で殺されかけてるから、信用しきれないんでしょうかねー。このへん、土方とはまた別の思惑が。
尾形にしてみたら、永倉や夏太郎は眼中にないようで。
饗宴といや、81話の「最後の晩餐」を思い出すけど。
さっそくインカラマッを口説きにかかる牛山。そういや一行で唯一の落しお年頃の女性でした。
でも谷垣との仲に気付いてあっさりスルーする。
牛山って男女の機微に悟い……マジ紳士……
インカラマッの話を信じるなら。
鶴見は、のっぺら坊はウイルク=アシリパ父ではないと思ってる、ってことに。
インカラマッの過去の話にキロランケは出て来ないし、キロランケは(7巻まで)インカラマッに会ったこともない、アシリパさんは父からインカラマッの話を聞いたことがない……
だいたい、「ウイルク」の名前を出してるのは、インカラマッだけで、アシリパさんもキロランケもその名前を一度も口にしてない。言わずもがな、ってことかも知れないが。
鶴見はキロランケのことをどこまで知ってるんでしょうかね? 第7師団の工兵隊にいたことは最低限知ってるんでしょうか。
キロが「アイヌの金塊」にどういう関わりを持ってると、鶴見は思ってるんでしょうか。
そして、鶴見がインカラマッと接触した理由も謎。
インカラマッは、のっぺら坊がウイルクではないこと、ウイルクが死んでることを確認するために網走に来た、という。鶴見が「谷垣を利用しろ」といってるのはそのことなんですかね。
たまたまアシリパさん一行が金塊探しの過程でのっぺら坊に会いに行く話になって、インカラマッがそれに便乗することになったけど、それまで、彼女はどこでなにをしてたんでしょうね? 5年前のアイヌ惨殺事件まではウイルクは小樽にいたのだし、一度も会いに行かなかった?
門倉さんの事情。
門倉って関東に多い名字なんですよねー。
多分、彼も、ちょいちょい外に出て、土方と連絡取ってたんですかね。
次の新月は再来週って言ってる、野郎だけの露天風呂入浴シーンのときが月齢26くらいだから、それからもう2週間くらい経ってることに。
第128話 新月の夜に
尾形、なにやってんですかw
4コマもかけて。
戻るってるしwww
猫か。
猫だな。
会議にも加わらないし。
この、協調性のなさよ……
計画の最終局面だけに、今一度、意志を確かめたい土方。
「出自がやっかいだ」って。厄介なんだ?
尾形が、栄誉のために、皆を裏切るかもって考えてる?
尾形の目的はナゾ。
脱走といっても、それは成り行き上で、ホントは、5巻で谷垣始末したら、素知らぬふりして鶴見隊に戻るつもりだったじゃないですか。
父親殺しまでの彼の目的はただ「父親に愛されたかった」ことだとすると、もはや彼には大きな目的はない。かといって鶴見の元で彼の傀儡、第7師団の偶像――アイドルになるのもイヤ。
鶴見の束縛を逃れて、土方組に駆け込んだんですが。
尾形は、父親のことは、土方には喋ってなかったのね。
師団では、あくまで「公然の事実」であって「公然の秘密」じゃないわけで。当時の軍隊内にプライバシーなんかないし。現代とは家族観もプライバシーへの感覚も違うし。
尾形は秘密にしてたわけではなくて、むしろ、「喋らない」のが彼なわけで。
……ん、谷垣とキロランケだとぅ? 尾形とキロちゃん、もしかして戦中から交流あったりすんですかね。
尾形のウィンクってコワイんですが(笑)
捨て台詞吐いてまた潜行する尾形。この段に及んで波風立たせずとも。
彼は他者との絆こそが束縛と感じるのか。他人と感情を共有しない故に。
「お互いに信頼が」って。
アシリパさんもまた、父親に不信や疑惑を抱いてるわけです。
単に父に会いたいんじゃなくて、大罪を犯したのかどうか確かめたいと。
父親との確執って、モロに尾形と共通してるんですよねえ。
アシリパさんにとっては、のっぺら坊がもし父だとしたら、その行為は許しがたい。
えーのっぺら坊がアイヌ惨殺事件起こして収監されたのって5年前なのでは?
「7年間見た来た」わけじゃない。
インカラマッ、1000回も占ってるとかっ
そのたびに可能性の数字が変わる、確率的事象……シュレディンガーのキツネですかっ。結局は「開けてみるまでわからない」。
なにこの量子宇宙。
やっぱり家永につけ狙われる夏太郎。
どうして、ジジィに容易くしてやられてるのよ、夏太郎。
ところで、サブタイの「新月の夜に」って、もしかして、『嵐の夜に』にかけてたりするんですかね。
白石は嵐の夜を推してるし。
暗闇って意味で共通してるし。
第129話 五翼放射状平屋舎房
ヤンジャンの表紙にグラビアに扉、って3枚もカラーがついて、う~んゴージャスぅ☆
……だったのに単行本では全て未収録という残念さ。
せめて谷垣のグラビアくらいは……
本篇。
さっそく見つかって看守達を武力制圧する羽目になってるし。
あれだけ綿密に計画してたのにあっさり破綻。
「心を1つに」なんてチタタプしてても、すぐに仲間割れ始めちゃう。
杉元、最初は「門倉さん」て言ってるのに、次には呼び捨てになってるんですね。
土方は門倉を庇っててなんだか胡散臭い。
この不穏な空気、前回の尾形の捨て台詞、まんま。
ミッションインポッシブルを乗り越えてようやく対面したのっぺら坊。
顔の皮剥がれたばかりか舌まで切られている……*20
無惨な容貌に驚愕する3人。
のっぺら坊とアシリパさんの大胆な見開き。
この1画面ってすごく映画的な画面の思うのですが。
神との対面に擬えられてるようにも。
アシリパさんは、実はのっぺら坊ではなくて、自身の中にある父の記憶と対面してるのですね。そして、目の前の男は違う、と見抜いた。
土方と門倉の不審な動き。
都丹は、杉元が土方に似てるっつーけど、杉元はこういう権謀術数できるタイプじゃないですよ。
第130話 誘導灯
風雲急を告げる網走監獄。
のっぺらぼう(偽)*21、立てますやん。
顔の皮剥がれて、舌も切られてる、……死刑にするか、替え玉になるかで、選ばせたんですかね……
連れ去られるアシリパさん……え、杉元、ワザと手を離したんだ。彼女を取敢えず逃がすために。
二人の手がアップになるコマが切ない。
犬童「私が密かに作った「非常報知器」」、だそーですよ、別人28号氏。
この替え玉、門倉が知らないわけはないし、だから土方も知ってる。
でも白石達は知らなかった、ってことは、土方の脱獄事件のあとに用意された、門倉は土方と緊密に連絡取っていたってことですね。
土方・門倉・都丹だけが替え玉のことを知ってたと。
インカラマッ「谷垣ニシパから電報が届くと」の台詞がわかりにくい。
最初、「谷垣からの電報が小樽に届くたびに、鶴見に教えていた」と読んでしまったんですね……でも、あれ、インカラマッ、小樽からずっと谷垣と一緒だよな? という疑問が。
これ、「『谷垣が偽名で小樽に電報打ってる』と鶴見に教えたことがある」といいたいんですね。
「教えていました」って、過去進行形なのが混乱の元……過去に継続的に何度も教えたように取れるんですよ。
鶴見がいかにも悪の首魁っぽくて痺れる。
いいぞぉ、これでこそ本領発揮だ。
鶴見隊、変人ばかりでお笑い要素高いけど、こういうときは凄みある。
雷型駆逐艦、排水量305トンとかですよ……可愛らしい。
でも陸戦に船持ち出すの卑怯……
雷型、全部で6隻就役して、1隻が日露戦争前に沈没してるので、『ゴールデンカムイ』のリアルタイムのときには5隻。
うち4隻も持ち出すなんて、どんな動員力なんですか。
おお、鯉登のパパ上が登場。
少尉よりも先に下の名前が。*22
いつのまに鶴見、海軍を巻き込んでるの。
「もすッ」てなんなのっ。薩摩人の挨拶なの……
色黒なのは遺伝なのっ。
鯉登平二の元ネタは餅原平二ですかね。06年当時の、大湊要港部司令官、薩摩出身。
芝居がかる鶴見。
鶴見がカニの仕草をするたびに、これ思い出す→鯨骨生物群集 - Wikipedia
鯨の死体を資源に、暗黒の深海の底に1つの国が勃興し、数十年でまた消えていくって、詩情に満ちた生態系のロマンじゃないですか。
まるで、巨人の死体から世界が作られるって創世神話のようでもあり。
そして、殺されたアイヌ達の遺した金で、死んだ戦友達への手向けに国を作ろうとする鶴見達もまた同じ。
いつも冷静なようで、鶴見も決戦を前にハイになってるようで。
月島がいつも通り冷静なまま。
鯉登君は実践初めてのハズ。
あれれ、やっぱり鶴見は、真のっぺら坊がアシリパさんの父だと知ってる・思ってるんじゃないですか。
インカラマッが鶴見に聞いたという、キロランケの仲間でアシリパさんの父じゃない説はウソだったと。
鶴見がインカラマッにウソを言ったのか、インカラマッが皆にウソを言ったのか?
杉元組、土方組、鶴見隊、犬童隊、て、バトルロイヤル。
皆がアシリパさんとのっぺらぼうを巡って争う。
え、13巻ってここまでなの!?
またすごいとこでクリフハンガーするぅ。
目に付いた本誌連載時からの変更、修正
今巻、夜のシーンが多くて、本誌の印刷だとすっかり潰れちゃってたんですが。単行本で紙本でも電子本でも、くっきりと見易くなってよかった。
■ 第121話「暗中」
■ 第122話「インカラマッ 見る女」
- P14、森の中を逃げる谷垣とキロランケの後ろ姿、追加。
- P40、都丹「どうして~」のコマ追加。
■ 第123話「形勢逆転」
- 銃声を聞く都丹、ブウウンの後のコマとセリフが一つ削除。実際、銃弾は音速超えるから、銃声聞くよりも着弾のほうが早いんじゃないかって気がする。少なくともなにか言葉を発する余裕はないはずだと思ったのでした。
- 廃旅館の中でのバトル、ページ数増加。尾形のアップのコマがひとつ追加。
■ 第124話「思い出の写真」
- 刺青人皮のサムネが微妙に変わってる。
- 最後のコマの写真、谷垣の写真とアシリパさんのとが変更に。
■ 第125話「実りの季節」
- 扉にあった歌がなくなってる……
- 監獄の全景を俯瞰するコマにアシリパさん追加。彼女らのいる位置が明確に。
■ 第126話「門倉看守部長」
- 網走監獄侵入計画を詳しく語ることで、白石がエラソーに。
- 白石の「ピュウ☆」全て。
- 有坂さんの機関銃。本誌のときは有坂さんのセリフで「三年式機関銃」ってなってて、一部で物議を醸したのですよ。大正3年に制式採用されたので「三年式機関銃」なんですけども、ゴールデンカムイの時代設定は明治のはずなので、いくら有坂さんでも改元が近い(=天皇が近々死ぬ)こと予言しちゃアカンだろと。不敬罪ですよ。
- 鯉登の軍服。本誌では鶴見と同じ黒ベタだった。旧冬服なのかな? 単行本で白なのは、新冬服の黄土色なのかと思ったけど、もしかすると124話と同じ夏服のままなのかも知れない。
■ 第127話「本当のチタタプ」
- 「俺の親父は」の門倉さん、ヒゲを触る仕草が追加。
■ 第128話「新月の夜に」
- 土方と尾形の会話がびみょ~に変わってる。やっぱり尾形とキロランケの関係が匂わされるように。
■ 第129話「五翼放射状平屋舎房」
* 監獄の俯瞰図の見開き、囚人などのコマがいくつか追加。
* のっぺら坊とアシリパさんの上下の見開き画面追加。
■ 第130話「誘導灯」
この回は全般的に修正が多くて、次巻に収録されるはずの131話の台詞なども混じってるんですよね。
巻をまたいで加筆修正になるようで。
13巻14巻合せて網走本篇ということかもしれない。
12巻のときもだけど、尾形のスタンスがかなり変わったように思います。*23
- アシリパさんと杉元の別れのシーン。二人が手を伸すコマ。
- 「逃げろアシリパさん」の台詞。
- 「非常報知器」の台詞。あの替え玉はそういう意味だったのか。
- 雷型駆逐艦について。「吃水が1.85M」だったのが「1.5M」に訂正。
- 今回唯一あった尾形のコマが消えた!
(ヤングジャンプvol.1838)
- 鶴見隊の一行、連載時はもうちょっと暢気な雰囲気だったのに、モブ兵士追加で、レギュラー達の表情も、より凄烈に。
- 鯉登の服。本誌では黒服に描かれてたのが、白服に。
- 最後のコマの鶴見。勇壮というより禍々しいというか。凄みが増した。
連載時の記事
第121話「暗中」
第122話「インカラマッ 見る女」
第123話「形勢逆転」
第124話「思い出の写真」
第125話「実りの季節」
第126話「門倉看守部長」
第127話「本当のチタタプ」
第128話「新月の夜に」
第129話「五翼放射状平屋舎房」
第130話「誘導灯」
*1:そういや「4」巻も鶴見でした。
*2:念為。いちばん最初の薬師丸ひろ子主演の『セーラー服と機関銃』のキャッチフレーズ→セーラー服と機関銃 - 作品 - Yahoo!映画
*3:ケシにはいくつか種類があるけど、阿片を取るPapaver somniferumは白花が多いんだそうで、だから白花なのだなあ、と。なんとなくケシって赤やピンクのイメージがあったんだけど。
*7:→Musée d’Orsay – Exposição: Masculino / Masculino. O homem nu na arte – de 1800 até os dias de hoje | A Simplicidade das Coisas — Augusto Martini
*8:103話の短刀もその一環。
*9:「人の心がないことに苦悩する」って、そういやPKディックの書くアンドロイド(andro=人、-id=疑似。人間モドキの意味)みたいだ。映画の『ブレードランナー』にしろ原作の『電気羊』にしろテーマはアンドロイド(レプリカント)の葛藤だ。ディックは自身を、人の心がない、故に社会から疎外されるアンドロイドに準えてる。その苦悩は『オズの魔法使い』のブリキの樵にも通じるし、さらには『フランケンシュタインの怪物』にも遡る。ただし、彼等は、心があるからこそ苦悩してるんであって、ちょっとその心が非定型なだけ。問題の原因は往々にして寛容になれない周囲にあったりする。
*10:このカット、公式のアナウンスにまで使われてたのに一瞬で削除されてしまった……
*11:→ (web.archive.org)マンガで表現できる“面白さ”をすべて詰め込んだ歴史冒険活劇 | SUGOI JAPAN Award2017
*12:→夏目漱石 余と万年筆 神奈川近代文学館 夏目漱石デジタル文学館>収蔵品一覧>遺品ほか>オノト万年筆
*14:どうやら作者様だった模様。
*15:どーでもいいことだが。某ゲームに「クッチェ」って果物が出て来るんだけど、正体がわからず。ファンタジーの架空の果物かと思ってたら、『ゴールデンカムイ』でサルナシ/キウイフルーツだと知った。そういやなんとなくキウイっぽい絵だった。
*16:「教えてくれ、俺は真実が知りたいだけなんだ、あなたは一体誰なんだ、なにを犠牲にしたのだ」……これユダの歌なんだよなあ
*17:サルナシ食べ過ぎて酔っ払って寝ていたのかも知れない。マタタビの仲間だし。
*18:ちなみに有坂閣下のモデルは劇画の大御所平田弘史氏だと思う→平田弘史先生訪問記(其ノ壱): たけくまメモ
*19:それが、成人男性の仲間意識故なのか、旅の仲間故なのかはよくわかんない。男心だ、と言われてしまうと、私にはワカラナイことになってしまうが。
*20:この下り、『ベルセルク』のグリフィスちょっと思い出した。
*21:囚人番号が二十八って、「別人28号」って地口だったらイヤだ。
*22:鯉登少尉の下の名前は139話までお預け。
*23:山猫ファンには重要なことなんである。